民泊を自分で管理したい理由は、たいてい費用です。住宅宿泊管理業者への委託費は、稼働日数にかかわらず発生します。
ただし、自主管理は選べる場合と選べない場合があります。事業者の希望では決まりません。観光庁は、住宅宿泊事業者が次のいずれかに該当する場合は住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があるとしています。届出住宅の居室の数が5を超える場合、そして届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合です。
裏返すと、居室の数が5以下で、かつ宿泊させる間に不在にならないなら、自主管理できます。この記事では、その条件を細かく確かめ、自分で行うことになる業務と、途中で自主管理を続けられなくなる場面を整理します。日々の業務そのものは民泊運営の基本にまとめています。
条件は2つ、どちらも満たす必要がある
条件は「または」でつながっています。どちらか一方に当たれば委託が必要です。
居室の数が5を超えないこと。これは居住しているかどうかと無関係に効きます。事業者が常に在宅していても、居室が6つあれば委託が必要です。届出住宅を複数持つ場合や、居室数の多い戸建てを使う場合は、居住の有無より先にこの数を確認してください。
宿泊させる間に不在とならないこと。ここが自主管理の実質的な制約になります。
なお、住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者である場合において、自ら住宅宿泊管理業務を行う場合については委託不要とされています。管理業者の登録を受けているなら、居室数や不在の条件にかかわらず自ら行えます。
「不在にならない」は買い物も禁止という意味ではない
日常生活が送れないのでは、と思われがちですが、そこまで狭くはありません。
観光庁は、日常生活を営む上で通常行われる行為である生活必需品の購入等については一時的な不在に該当するとしています。一方で、業務等により継続的に長時間不在とするものは一時的な不在には該当しない、としています。
時間の目安も示されています。一概に定めることは適当ではないとしたうえで、原則1時間、ただし生活必需品を購入するための最寄り店舗の位置や交通手段の状況等により当該行為が長時間にわたることが想定される場合には2時間程度までの範囲とされています。
つまり、近所への買い物は大丈夫だが、外で働きながらの自主管理は成り立ちません。日中に仕事へ出るなら、その時間は不在です。副業として考えている場合は、ここで判定が決まります。
判定の主語にも注意が要ります。「不在」とは住宅宿泊事業者が届出住宅を不在にすることをいい、住宅宿泊事業者ではない他者が届出住宅に居たとしても、事業者自身が不在としている場合は「不在」として取り扱われます。家族に留守を頼んでも、条件は満たしません。
逆に、宿泊者が全員外出しており届出住宅にいない場合は、事業者がその間不在となっても「不在」の扱いとはならないとされています。判定されるのは宿泊者が滞在している時間帯です。
一時的に不在にする場合であっても、宿泊者の安全の確保に努めることが必要とされています。時間内なら何をしてもよい、という趣旨ではありません。
隣に住んでいる場合の例外
届出住宅に住んでいなくても、自主管理できる場合があります。観光庁は、委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる場合として、次のいずれをも満たす場合を除外しています。
1つは、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の建築物もしくは敷地内にあるとき、または隣接しているとき。もう1つは、届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が5以下であるときです。
ただし条件が付きます。住宅宿泊事業者が当該届出住宅から発生する騒音その他の事象による生活環境の悪化を認識することができないことが明らかであるときは除く、とされています。
観光庁は、同一の共同住宅内や同一の敷地内にある場合であっても、敷地が広範であるためそれぞれの住戸の距離が著しく離れている場合その他の自己の生活の本拠にいながら届出住宅で発生する騒音等を認識できないことが明らかである場合には、委託する必要があるとしています。
同じ敷地というだけでは足りません。騒音を認識できる距離にあるかが判断の実質です。
自主管理で自分が行うことになるもの
条件を満たした場合、住宅宿泊管理業務にあたる措置は自分で行います。委託していれば管理業者が担う部分です。
宿泊者の衛生の確保(居室の床面積の確保、定期的な清掃と換気、宿泊者が入れ替わるごとの寝具のシーツ・カバーの交換)。宿泊者の安全の確保(非常用照明器具の設置、避難経路の表示、災害時に安全を確保するための措置)。外国人観光旅客である宿泊者への外国語での案内(設備の使用方法、交通手段の情報、災害時の通報連絡先)。宿泊者名簿の備付け等(本人確認、記載、3年間の保存)。周辺地域への悪影響の防止に関する説明(騒音、ごみ、火災)。苦情等への対応(周辺住民からの苦情および問合せに適切かつ迅速に対応する)。
加えて、委託していても事業者に残るものが2つあります。標識の掲示と定期報告です。自主管理の場合は、当然これらも自分で行います。
維持保全も含まれます。委託の対象になる住宅宿泊管理業務には、届出住宅の維持保全に関する業務が含まれ、そこには台所、浴室、便所、洗面設備が正常に機能すること、水道や電気などのライフラインやドア・サッシ等の設備が正常に機能するよう保全すること、空室時における施錠の確保や、住宅または居室の鍵の管理が含まれるとされています。自主管理なら、これも自分の仕事です。
各業務の中身と頻度は民泊運営の基本に時点ごとに並べています。
清掃だけ外に出すことはできるか
「掃除だけ業者に頼みたい」という発想はよくあります。ここには条件があります。
観光庁は、法第11条に基づかない委託によって常時届出住宅内にいる住宅宿泊事業者が、清掃等の一部の事実行為を住宅宿泊管理業者ではない専門業者に行わせることは可能としています。
ただし2つの注意があります。1つは、この扱いは住宅宿泊管理業者に委託をせずに住宅宿泊管理業務を自ら行う住宅宿泊事業者であって、届出住宅の居室の数の合計が5以下の者に限られること。もう1つは、この場合は法第5条から第10条までの規定が住宅宿泊事業者に適用されるため、住宅宿泊管理業務における違反等があった場合には委託者の責任になることです。
つまり、清掃を外注しても責任は自分に残ります。業者がリネンを替え忘れても、問われるのは事業者です。
なお、委託が義務になる場合の委託は性質が違います。その場合は一の住宅宿泊管理業者に全部を委託しなければならず、複数に分割することも、一部を自ら行うことも認められません。
自主管理を続けられなくなる場面
始めたときに条件を満たしていても、あとから外れることがあります。
居室を増やしたとき。5を超えた時点で委託が必要です。
運営の実態が変わったとき。観光庁は、法第11条に基づく委託をしている間、事業者は必ず不在にしなくてはならないということではなく、事業者が届出住宅にいる間においても「宿泊させる間、不在となるとき」の考え方は適用されるとしています。型は届出のときに一度決めるラベルではなく、日々の実態の問題です。
7日以上の予約が入ったとき。自主管理そのものは続けられますが、長期滞在者には定期的な清掃等の際の確認が求められ、宿泊契約が7日以上の場合には定期的な面会等により確認を行う必要があります。旅行や入院の予定と重なると回りません。
離れた場所から回したいなら、それは自主管理ではなく委託の話になります。民泊の遠隔運営で扱っています。
決める順序
自主管理でいくかどうかは、次の順で決まります。
居室の数を数える。5を超えるなら、ここで委託が確定します。宿泊させる時間帯に在宅できるかを考える。外で働く時間があるなら、一時的な不在の範囲に収まりません。届出住宅に住まないなら、隣接の例外に当たるかを確かめる。同一の建築物・敷地内・隣接で、かつ自ら管理する居室が5以下であることに加え、騒音等を認識できる距離であることが要ります。
そのうえで、上に挙げた業務を自分の時間で回せるかを見ます。委託費が浮く代わりに、清掃、リネンの交換、苦情対応、名簿と報告が自分の仕事になります。費用の比較ではなく、時間の比較で決めてください。
次に読むもの
日々の業務と頻度は民泊運営の基本、離れた場所から回す場合は民泊の遠隔運営、委託義務の判定そのものは家主居住型と家主不在型の違いにあります。
一時的な不在として認められる時間や、隣接の判断は、地域の事情を勘案するとされている部分があります。実際の判定は届出先の都道府県知事等が行うため、境目にあたる場合は届け出る前に窓口へ確認してください。
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