民泊運営の基本/解説

民泊の遠隔運営|現地に行かずに回すとき、何が義務になるか

遠隔で民泊を運営するなら、宿泊させる間は不在にあたるため管理業者への委託が義務になります。委託の決まり、非対面での本人確認に求められる2つの条件、7日以上の滞在で必要な面会、委託しても自分に残る業務を出典つきで整理しました。

遠隔運営という言葉は、制度の側から見ると「宿泊させる間、不在となる」運営を指します。そして不在となる場合は、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。

つまり、遠隔で回したいなら、まず委託が前提になります。道具を揃えて自分で遠隔から管理する、という形は制度上想定されていません。

この記事では、遠隔にすると何が義務になるのか、非対面で本人確認をするための条件、そして委託しても自分に残る業務を整理します。委託せずに済む条件は民泊の自主管理で扱っています。

遠隔にすると委託が義務になる

観光庁は、住宅宿泊事業者が次のいずれかに該当する場合は住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があるとしています。届出住宅の居室の数が5を超える場合、そして届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合です。

不在の範囲は狭く定められています。生活必需品の購入等は一時的な不在に該当しますが、業務等により継続的に長時間不在とするものは該当しないとされ、認められる時間は原則1時間、事情により2時間程度までの範囲とされています。

遠方に住んでいる、日中は別の仕事をしている、といった形はこの範囲に収まりません。その時点で委託が要る、と考えるのが正確です。

例外は2つだけです。事業者自身が住宅宿泊管理業者であって自ら管理業務を行う場合と、生活の本拠が届出住宅と同一の建築物・敷地内・隣接にあり、かつ自ら管理する居室が5以下で、騒音等を認識できる場合です。後者は「遠隔」とは呼べません。

委託の要否、本人確認、標識、定期報告について現地にいる場合と離れている場合を並べた比較表
遠隔運営とは、制度の側から見れば「宿泊させる間、不在となる」運営です。委託が前提になります。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」管理業務の委託について(確認日 2026-08-21)

委託するときの決まり

任せ方にも決まりがあります。

観光庁は、届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を委託する場合は一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することや、住宅宿泊管理業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められないとしています。

「清掃だけ自分で行く」「名簿だけ自分で管理する」という分け方はできません。一方で、委託を受けた管理業者が他の者に業務を一部に限り再委託することは可能とされています。分割できないのは事業者と管理業者の間です。

手続きの順序もあります。委託しようとする管理業者に対し、あらかじめ届出書および添付書類の内容を通知する必要があります。通知する内容は委託による届出事項の変更を反映する必要はなく、委託以前の内容を通知することで足ります。通知の方法は電磁的な手段によることもできます。

委託は、管理受託契約で定める実施期間の始期においてなされたものとみなされます。委託の実施により契約締結時の書面の内容が変更となる場合には、その始期までの間に都道府県知事等へ変更内容を届け出る必要があります。

非対面の本人確認には条件がある

遠隔運営でいちばん設計が要るのが本人確認です。

観光庁は、宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、宿泊行為の開始までに宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要があるとし、その方法は対面または対面と同等の手段として次のいずれも満たすICTを活用した方法等による必要があるとしています。

宿泊者の顔および旅券が画像により鮮明に確認できること。 当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内または届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること。

方法の例として、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法が考えられる、とされています。

2つ目の条件が設計を決めます。宿泊者が自分のスマートフォンから任意の場所で送る画像では足りません。発信元が届出住宅内か近傍か、事業者や管理業者の営業所等であることが確認できる必要があります。遠隔運営でも、届出住宅の側に機器を置くことになります。

外国人宿泊者については、国籍および旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存します。呈示を拒否された場合は、国の指導によるものであることを説明して再度求め、さらに拒否される場合は旅券不携帯の可能性があるものとして最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行う、とされています。遠隔でこの場面をどう扱うかは、あらかじめ決めておく必要があります。

顔と旅券が鮮明に確認できること、画像の発信元が確認できることなどを並べた確認リスト
宿泊者が自分のスマートフォンから任意の場所で送る画像では足りません。届出住宅の側に機器を置くことになります。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」事業者の業務[1](確認日 2026-08-21)

完全に無人にはできない

遠隔運営を「一度も現地に行かない運営」と考えていると、無理が出ます。

観光庁は、長期滞在者には定期的な清掃等の際に、チェックイン時に本人確認を行っていない者が届出住宅に宿泊するようなことがないよう、不審な者が滞在していないか、滞在者が所在不明になっていないか等について確認するよう求めています。特に宿泊契約が7日以上の場合には、定期的な面会等により確認を行う必要があります

委託していれば管理業者が行いますが、誰かが現地で会う前提であることは変わりません。7日以上の予約を受けるなら、その体制が要ります。

苦情対応も同じです。届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問合せについては適切かつ迅速に対応しなければならないとされています。遠方から電話だけで足りるかは、起きた事象によります。

災害時の案内についても、緊急時にすみやかに確認することが可能なものを備え付けておく必要があるとされています。端末の中だけに置くと、停電や通信断のときに参照できません。

委託しても自分に残るもの

委託すればすべて手を離れる、ではありません。

観光庁の説明では、家主不在型で委託が義務付けられる措置から標識の掲示は除かれています。標識は事業者自身が掲げます。

定期報告も事業者が行います。届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、それぞれの月の前2月について、人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を都道府県知事等へ報告します。遠隔でも、この4項目を把握できる状態にしておく必要があります。

責任の所在にも注意が要ります。法第11条に基づかない委託によって常時届出住宅内にいる事業者が清掃等の一部の事実行為を専門業者に行わせる形の場合、法第5条から第10条までの規定は事業者に適用され、違反等があった場合には委託者の責任になるとされています。この扱いは自ら管理業務を行う事業者で居室数5以下の者に限られます。

委託先が行う措置と、事業者に残る業務を左右に並べた図
委託すればすべて手を離れる、ではありません。標識と定期報告は事業者の義務として残ります。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-21)

体制を決める順序

遠隔で回すなら、次の順に決めると抜けが出ません。

委託先を1社決める。分割できないため、清掃も名簿も苦情対応もまとめて任せられる相手を選びます。契約前に届出書と添付書類の内容を通知します。

本人確認の機器を届出住宅に置く。顔と旅券が鮮明に確認でき、画像の発信元が届出住宅内・近傍・営業所等であると確認できる形にします。

7日以上の予約を受けるかを決める。受けるなら、定期的な面会等を誰がどう行うかを決めます。受けないなら、予約の設定で制限します。

災害時の案内を紙でも置く。通信が使えない場面で参照できるようにします。

定期報告の数字を集める仕組みを作る。日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳の4項目です。名簿の記載が正確でないと作れません。

標識を掲げる。委託していても自分の義務です。

次に読むもの

自分で回せる条件は民泊の自主管理、日々の業務と頻度は民泊運営の基本、委託義務の判定は家主居住型と家主不在型の違いにあります。

管理業者の選び方や料金は、事業者ごとに条件が異なります。この記事は観光庁が公表しているページの内容を整理したもので、特定の事業者を評価するものではありません。委託先を決める前に、登録を受けた住宅宿泊管理業者かどうかを確認してください。

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