アメニティを置くこと自体を義務づける規定は、確認できませんでした。歯ブラシもシャンプーも、置かなくても届出はできます。
ただし、置くと別の決まりがかかります。使い捨てのプラスチック製アメニティは、宿泊業において法律上の対象製品に指定されており、削減に向けた取組が求められます。あわせて、備品を置けば衛生の確保と外国語での案内の対象にもなります。
この記事では、置いた場合に何がかかるのかを整理します。「どこまで用意すべきか」を決める材料として使ってください。リネンの扱いは民泊のリネン管理にまとめました。
使い捨ての5品目は、宿泊業で法律の対象
いちばん見落とされやすいのがここです。
環境省は、商品の販売または役務の提供に付随して消費者に無償で提供される主としてプラスチック製の12製品を特定プラスチック使用製品として指定し、対象製品ごとに業種を定めています。
このうち、宿泊業だけが対象業種に指定されているのが次の5品目です。
ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ。
さらに、フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストローの5品目も、対象業種に宿泊業が含まれています。合わせて10品目が、民泊の運営で関わり得る範囲です。
主たる事業が対象業種に該当しなくても、事業活動の一部で対象業種に属する事業を行っている場合には、その事業の範囲で対象となります。副業として民泊を行っている場合も、その部分は宿泊業として扱われることになります。
求められるのは削減の取組
対象になると何をするのか。環境省は、特定プラスチック使用製品提供事業者に、所定の省令に従い、特定プラスチック使用製品の削減に向けて目標を設定し、使用の合理化に取り組んでいただきますとしています。
判断基準の概要として、次が挙げられています。
目標の設定。特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する目標を定め、これを達成するための取組を計画的に行うこと。
使用の合理化。使用の合理化のための取組を行うことにより、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること。
情報の提供。店頭で排出の抑制に資する事項を掲示する、使用の合理化の取組内容をインターネット等で公表する、提供する特定プラスチック使用製品に排出の抑制の重要性に関する表示を付すといった、消費者による排出の抑制を促進するための情報を提供すること。
取組の例も示されています。環境省は、宿泊施設で、アメニティを部屋には置かず、必要な方はフロントに声をかけたりアメニティコーナーで受け取ることができるようにするという形を挙げています。
規模で扱いが変わる
すべての事業者が同じ扱いではありません。
環境省は、前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上である事業者を特定プラスチック使用製品多量提供事業者としています。
そのうえで、主務大臣は、必要があると認めるときはすべての特定プラスチック使用製品提供事業者に必要な指導および助言を行い、多量提供事業者に対しては、取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令等を行うことがあるとしています。
小規模な民泊が5トンに達することは考えにくく、勧告や命令の対象になる可能性は高くありません。ただし、指導および助言の対象は「すべての提供事業者」です。規模にかかわらず、目標を定めて取り組む立場にはあります。
「置かない」を選んだときにやること
環境省が取組の例として挙げているのは、宿泊施設で、アメニティを部屋には置かず、必要な方はフロントに声をかけたりアメニティコーナーで受け取ることができるようにするという形です。
民泊にそのまま当てはめると、非対面で運営している場合はフロントがありません。受け取れる場所と方法を、案内の中で伝えることになります。外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて届出住宅の設備の使用方法に関する案内をする必要があるため、置き場所の案内もその一部として用意します。
情報の提供も求められています。判断基準では、店頭で排出の抑制に資する事項を掲示する、使用の合理化の取組内容をインターネット等で公表する、提供する製品に排出の抑制の重要性に関する表示を付す、といった方法が挙げられています。掲載ページや自社サイトに取組を書いておく形が、民泊では現実的です。
体制の整備等も判断基準に含まれています。目標を定めて終わりではなく、続けられる形にすることが想定されています。
置くと、他の義務にもつながる
プラスチック以外にも、備品を置くことで生じるものがあります。
加湿器を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、宿泊者が入れ替わるごとに水を交換し、汚れやぬめりが生じないよう定期的に洗浄等を行うなど、取扱説明書に従って維持管理する必要があります。循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24時間風呂など)も同様で、宿泊者が入れ替わるごとに湯を抜きます。
設備や備品等については、清潔に保ち、ダニやカビ等が発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う必要があるとされています。置いたものはすべて、この対象です。
外国語での案内も増えます。外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて届出住宅の設備の使用方法に関する案内をする必要があります。操作が要る機器を置くほど、案内の分量が増えます。
つまり、アメニティや備品を増やすことは、毎回の作業と案内の手間を増やす選択でもあります。
一覧は載せません
「最低限これだけは必要」という一覧を裏づける公的な資料は、確認できませんでした。そのため、この記事に品目の一覧は書いていません。
住宅として備えるべき設備は、台所、浴室、便所、洗面設備の4つと定められています。これは設備の話で、アメニティとは別です。設備の要件は民泊に必要な設備にまとめました。
アメニティについて言えるのは、置く義務が無く、置けば決まりがかかるという構造です。何を置くかは事業者の判断ですが、判断の材料としては次が使えます。
その品目は特定プラスチック使用製品の12品目に入るか。入るなら、削減の取組の対象です。維持管理が要る機器か。加湿器や循環式浴槽は、入れ替わるごとの作業が加わります。操作の説明が要るか。要るなら、外国語での案内に足す必要があります。清潔に保てるか。置いたものはすべて衛生確保の対象です。
決める順序
置く範囲は、次の順に考えると決まります。
まず、置かない前提から始める。義務ではないため、置かないという選択があります。
使い捨てのプラスチック製品を出すかを決める。歯ブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、ヘアブラシは宿泊業が対象業種です。出すなら、削減の目標を定め、取組の内容を公表するなどの情報提供が求められます。部屋に置かず、必要な人が受け取る形にする取組例が示されています。
維持管理が要る機器を置くかを決める。加湿器や追い炊き機能付きの風呂は、毎回の作業が増えます。
置いたものの使用方法を、外国語で案内できるかを確かめる。
清掃の手順に組み込む。置いたものはすべて、清潔に保つ対象です。清掃全体の考え方は民泊の清掃にあります。
次に読むもの
リネンの枚数と交換は民泊のリネン管理、設備の要件は民泊に必要な設備、清掃の頻度は民泊の清掃にあります。
特定プラスチック使用製品の制度は、対象製品や判断基準が見直されることがあります。この記事は環境省と観光庁が公表しているページの内容を整理したものです。自分の提供量や取組の内容について判断に迷う場合は、環境省の窓口へ確認してください。
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