民泊の清掃は、やり方が自由な部分と、決まっている部分に分かれます。決まっているほうを先に押さえると、確認リストも作業時間の見積もりも組み立てられます。
法令が求めているのは、宿泊者の衛生の確保です。観光庁は、住宅宿泊事業者は宿泊者の衛生の確保を図るため、届出住宅について各居室の床面積を宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上確保するとともに、定期的な清掃、換気およびその他の必要な措置を講じる必要があるとしています。
この記事では、その「必要な措置」を頻度ごとに分け、確認リストの形に整理します。「チェックリストが欲しい」「時間の目安を知りたい」「どのくらいの頻度でやるのか」「自分でできるのか」という探し方をしている場合も、この記事が対象です。日々の業務全体は民泊運営の基本にまとめました。
宿泊者が入れ替わるごとに必ず行うもの
頻度が明確に決まっている作業が2つあります。
寝具のシーツ、カバー等直接人に接触するものについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える必要があります。「洗って戻す」ではなく「洗濯したものと取り替える」です。予備を持たないと、次の予約までに間に合いません。
循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24時間風呂など)や加湿器を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯は抜き、加湿器の水は交換し、汚れやぬめりが生じないよう定期的に洗浄等を行うなど、取扱説明書に従って維持管理する必要があります。
この2つは、置いている設備によって作業量が変わります。追い炊き機能付きの風呂を残すかどうかは、毎回の作業時間を決める選択です。設備の考え方は民泊に必要な設備で扱っています。
定期的に行うもの
もう1つの区分が、頻度を事業者が決める作業です。
観光庁は、届出住宅の設備や備品等については清潔に保ち、ダニやカビ等が発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う必要があるとしています。
「定期的に」の間隔は示されていません。物件の状態と稼働の状況から決めることになります。稼働が続けば宿泊者ごとの清掃で足りる部分もありますし、空室が続けば換気と除湿のために入る必要が出ます。
判断の材料として、観光庁は住宅宿泊事業の規模や実態に応じて「旅館業における衛生等管理要領」を参考に、適切な衛生措置を講じるよう案内しています。あわせて、衛生管理のための講習会を受講する等、最低限の衛生管理に関する知識の習得に努めることも求めています。
起きたときに行うもの
頻度が決まっていないが、起きたら必ず行うものがあります。
宿泊者が人から人に感染し、重篤な症状を引き起こすおそれのある感染症に罹患し、またはその疑いがあるときは、保健所に通報するとともに、その指示を受け、その使用した居室、寝具および器具等を消毒・廃棄する等の必要な措置を講じる必要があります。
その他、公衆衛生上の問題を引き起こす事態が発生し、またはそのおそれがあるときも、保健所に通報する必要があります。
普段の清掃とは判断の主体が変わります。自分で処理を決めるのではなく、保健所の指示を受けます。通報先を先に調べておいてください。
清掃は「管理業務」に含まれる
清掃を誰が行うかは、委託しているかどうかで変わります。
観光庁は、委託の対象になる住宅宿泊管理業務には、法第5条から第10条までの規定による業務と、住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務が含まれるとしています。維持保全には、台所、浴室、便所、洗面設備が正常に機能すること、水道や電気などのライフラインやドア・サッシ等の設備が正常に機能するよう保全すること、空室時における施錠の確保や、住宅または居室の鍵の管理が含まれます。
清掃だけを外に出せるかについても示されています。観光庁は、法第11条に基づかない委託によって常時届出住宅内にいる住宅宿泊事業者が、清掃等の一部の事実行為を住宅宿泊管理業者ではない専門業者に行わせることは可能としています。
ただし条件が2つあります。この扱いは住宅宿泊管理業者に委託をせずに自ら管理業務を行う事業者であって、届出住宅の居室の数の合計が5以下の者に限られること。そして、この場合は法第5条から第10条までの規定が事業者に適用されるため、違反等があった場合には委託者の責任になることです。
清掃を外注しても、責任は自分に残ります。業者がリネンを替え忘れても、問われるのは事業者です。誰に頼むかを決めるときは、この点を前提にしてください。
清掃を自分で行えるか
「清掃くらい自分でやりたい」という判断は、できる場合とできない場合に分かれます。
自ら住宅宿泊管理業務を行えるのは、届出住宅の居室の数が5以下で、かつ宿泊させる間に不在とならない場合です。どちらかに外れると、住宅宿泊管理業務を一の住宅宿泊管理業者へ全部委託することになり、そのときは清掃も委託先の業務になります。複数に分割することも、一部を自ら行うことも認められません。条件の細かいところは民泊の自主管理で扱っています。
自分で行える場合でも、負担の見積もりは要ります。宿泊者が入れ替わるごとに必ず入る作業があり、そこには寝具の取り替えと、循環式浴槽や加湿器を置いているならその維持管理が含まれます。前の宿泊者が出てから次の宿泊者が入るまでの間に、この時間が必要です。
さらに、清掃は維持保全とセットで見ることになります。委託の対象になる住宅宿泊管理業務には維持保全が含まれ、台所・浴室・便所・洗面設備が正常に機能すること、水道や電気などのライフラインやドア・サッシ等が正常に機能するよう保全すること、空室時における施錠の確保と鍵の管理が挙げられています。清掃のたびに、これらも見ることになります。
判断は費用ではなく時間で行ってください。委託費が浮く代わりに、入れ替わりのたびの時間が自分の予定を縛ります。稼働がいちばん詰まる週で回せるかを想定すると、現実的な答えが出ます。
法令から作れる確認リスト
上の内容を、退室後に見るリストの形に並べ直します。汎用の清掃チェックリストではなく、法令で求められている項目を並べたものです。物件ごとの項目は、ここに足してください。
宿泊者が入れ替わるごと。シーツ、カバー等、直接人に接触する寝具を洗濯したものと取り替えたか。循環式浴槽があるなら、湯を抜いたか。加湿器があるなら、水を交換したか。ぬめりや汚れが生じていないか。
毎回の清掃で。設備や備品を清潔に保てているか。換気を行ったか。除湿を心がけたか。ダニやカビの兆候がないか。
あわせて確認。台所、浴室、便所、洗面設備が正常に機能するか。水道や電気が正常か。ドアやサッシが正常に機能するか。空室になったあと、施錠が確保されているか。
ごみ。宿泊者が出したごみを、事業活動に伴って生じた廃棄物として処理したか。観光庁は、住宅宿泊事業に起因して発生したごみの取扱いは廃棄物の処理及び清掃に関する法律に従い、事業活動に伴って生じた廃棄物として住宅宿泊事業者が責任をもって処理しなければならないとしています。家庭ごみとして出す運用にはできません。
清掃時間の目安は書きません
「1件あたり何分か」を裏づける公的な資料は確認できませんでした。そのため、この記事に時間の目安は書いていません。
広さ、居室の数、設備の構成、前の宿泊者の使い方で変わります。一般的な分数を載せると、確認した事実のように読まれます。
代わりに、時間を決める要因は挙げられます。寝具の枚数(宿泊者が入れ替わるごとに全部を取り替えます)。循環式浴槽と加湿器の有無(あれば毎回、湯抜きと水の交換が加わります)。居室の数(床面積の確保が求められる居室の数だけ作業が増えます)。設備の点検(台所・浴室・便所・洗面設備とライフラインの確認が維持保全に含まれます)。
自分の物件でこれらを一度測れば、以後の見積もりに使えます。他所の平均値より、自分の実測のほうが役に立ちます。
決める順序
清掃の体制は、次の順に決まります。
設備を確定する。循環式浴槽や加湿器を置くかどうかで、毎回の作業が変わります。寝具の枚数を決める。入れ替わるごとに全部を取り替えるため、予備がないと回りません。誰が行うかを決める。委託が義務なら管理業者、自主管理なら自分か、条件を満たす範囲での外注です。
自分の物件で一度実測する。そのうえで、前後の予約の間にどれだけ時間を空けるかを決めます。早い入室や遅い退室に応じられるかも、ここから決まります。時間の前後については民泊のアーリーチェックインとレイトチェックアウトで扱っています。
保健所の連絡先を控える。感染症が疑われる場面では、自分で判断せず指示を受けます。
次に読むもの
日々の業務と頻度は民泊運営の基本、退室のあとに行うことは民泊のチェックイン方法、設備の要件は民泊に必要な設備にあります。
衛生管理の具体的な基準は、自治体の条例で定められている部分があります。この記事は観光庁が公表しているページの内容を整理したものです。ごみの扱いを含め、実際の運用は届出住宅の所在する自治体に確認してください。
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