民泊の運営で「どこまで自動化できるか」は、道具の性能では決まりません。法令が電子と非対面を認めている範囲で決まります。
認められている部分は、はっきり書かれています。認められていない部分も同じくらいはっきりしています。境界を知っておけば、仕組みを作る場所とそうでない場所を分けられます。
この記事では「民泊 予約管理 効率化」で探される内容も扱います。ただし、予約システムやツールの比較は載せません。製品を評価した公的な資料を確認できなかったためです。代わりに、法令の側から仕組みに載せてよい業務と人が残る業務を分けます。日々の業務の全体像は民泊の運営にまとめました。
電子と非対面が認められているもの
まず、仕組みに載せられる側です。
届出と定期報告。 観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととしていますとしています。定期報告についても、電子システムを利用して行うことができますと案内されています。報告は届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、前2月分をまとめて出します。
宿泊者名簿。 宿泊者名簿を電子データで作成、保管する場合、紙で出力可能な状態にする必要があります。 電子で持つこと自体は認められていて、条件は出力できる状態を保つことです。備え付ける場所は届出住宅または営業所・事務所で、保存は3年間です。
周辺への配慮事項の説明。 「書面の備付けその他の適切な方法」とは、書面を居室に備え付けるほか、タブレット端末での表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間に必要に応じて説明事項を確認できるようにするためのものとされています。そして、必ずしも対面による説明が求められるものではありません。
外国人宿泊者への案内。 こちらも、必要な事項が記載された書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末への表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間必要に応じて閲覧できる方法によるようにしてくださいとされています。ただし、災害時等の通報連絡先においては、緊急時にすみやかに確認することが可能なものを備え付けておく必要がありますという条件が付いています。
本人確認。 対面のほか、顔及び旅券が画像により鮮明に確認できることと、当該画像が営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できることのいずれも満たすICTを活用した方法等が認められています。
再委託先の変更の通知。 管理業者が一部を再委託する場合、再委託先を変更する度に書面又は電磁的方法により委託者に知らせることとされています。紙に限られていません。
仕組みに載せられないもの
次に、人が残る側です。ここを見落とすと、運営が回らなくなります。
苦情への対応。 深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応する必要があります。 さらに、宿泊者が滞在していない間も、苦情及び問合せについては対応する必要があります。自動応答だけで完結する形は想定されていません。
改善しない宿泊者への対応。 注意等を行っても改善がなされないような場合には、現場に急行して退室を求める等、必要な対応を講じることとされています。緊急のときは、警察署、消防署、医療機関等の然るべき機関に連絡したのち、自らも現場に急行して対応することが必要です。
7日以上の滞在の確認。 宿泊契約が7日以上の場合には、定期的な面会等により、本人確認を行っていない者が宿泊していないかを確認する必要があります。長期の予約は、非対面で完結しません。
本人確認に使う機器の用意と維持。 よくあるご質問は、住宅宿泊管理業者は、遠隔で本人確認を行う場合には、自ら必要な機器を必ず用意し、確実に機能維持を行うことが必要としています。宿泊者所有の機器で行うことは、適切な代替措置を予め用意していない限り認められません。詳しくは民泊の本人確認にあります。
説明の中身を作ること。 騒音についても火災についても、届出住宅及びその周辺地域の生活環境に応じ適切な内容を説明することが必要とされています。ごみについては、当該市町村における廃棄物の分別方法等に沿って説明する必要があります。表示の手段は電子でよくても、中身は物件ごとに作ります。
委託しても、消えるわけではない
「効率化」の最終形として委託を考える場合の注意です。
委託すると業務は移りますが、やることの総量は減りません。委託を受けた住宅宿泊管理業者には、苦情があってから現地に赴くまでの時間は30分以内を目安、事情により60分以内を目安という水準が示されています。この体制を持つ相手を選ぶことになります。
委託は一の住宅宿泊管理業者へ全部で、分割も一部の自己実施もできません。「面倒な部分だけ外す」という形は取れない、ということです。委託先の選び方は民泊の運営代行にまとめました。
予約管理のツールは挙げません
予約サイトの一元管理や自動返信の道具について、公的な資料で評価や推奨を確認できたものはありません。 そのため、この記事に製品名と比較は書いていません。費用の相場を書かないのと同じ理由です。
ただし、道具を選ぶときに法令から出てくる条件はあります。
名簿の項目を満たせるか。 氏名、住所、職業、宿泊日。国内に住所を有しない外国人は国籍と旅券番号。宿泊者全員で、代表者のみの記載は認められません。予約サイトの情報をそのまま写すだけでは足りません。
紙で出力できるか。 電子で持つなら、この条件が付きます。
3年間、取り出せるか。 保存期間です。サービスを乗り換えるときに、過去分を引き継げるかを確かめてください。
本人確認と切り離されているか。 予約情報の取り込みは本人確認ではありません。宿泊行為の開始までに、別途行う必要があります。
手を入れる順序
減らせるところから順に並べます。
まず届出と報告を電子にする。 民泊制度運営システムが原則で、定期報告も電子で行えます。年6回の締切は固定です。
次に案内を端末へ移す。 説明も外国語の案内も、タブレット端末での表示等が認められています。災害時等の通報連絡先だけは、すみやかに確認できるものを備え付けます。
名簿を電子に移す。 紙で出力可能な状態を保つことが条件です。3年間の取り出しやすさも一緒に設計します。
本人確認をICTにする。 機器は自分たちで用意し、機能を維持する担当を決めます。ここは手間が減るというより、形が変わる部分です。
苦情の受け口には人を置く。 常時、応答または電話。ここを削ると、他の効率化が全部無駄になります。
長期予約を受けるかを決める。 7日以上は定期的な面会等が要ります。受けないという選択も含めて決めます。
次に読むもの
日々の業務の全体像は民泊の運営、非対面で回す場合の体制は民泊の遠隔運営、本人確認の主体と機器は民泊の本人確認にあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。特定のサービスや道具を評価するものではありません。運用の形について判断に迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口へ確認してください。
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