「運営代行」という言葉は、法令には出てきません。
法令の側にあるのは住宅宿泊管理業者への委託です。「運営代行」も「管理会社」も、指しているのはこの事業者です。そして委託については、頼める範囲も、業者が守るべきことも、契約前に渡される書面の中身も定められています。選ぶ基準は、そこから引き出せます。
この記事は、業者を並べて比べるためのものではありません。契約前に確かめる項目を、法令の側から組み立てるためのものです。委託せずに自分で回す場合は民泊の自主管理にまとめました。
「運営代行」は法令上どう位置づけられるか
まず、相手が何者なのかです。
住宅宿泊管理業とは、住宅宿泊事業者から法第11条第1項に規定する委託を受けて、報酬を得て、住宅宿泊管理業務を行う事業をいいます。そして住宅宿泊管理業務とは、法第5条から第10条までの規定による業務及び住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務をいいます。
住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。 申請の際には、住宅宿泊管理業者登録申請書に必要事項を記載し、欠格要件に該当しないことの誓約書等を添付して提出することとされています。登録は5年ごとにその更新を受ける必要があります。
登録を受けた事業者かどうかは、外からも分かるようになっています。適切な登録を受けた業者であることを外形的に明らかにする必要があるため、登録を受けた営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げる必要があるとされています。契約前に渡される書面にも、登録年月日及び登録番号を記載することになっています。
委託するなら全部。一部だけは頼めない
範囲の話です。ここで形が決まります。
事業者の側から見ると、一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することや、住宅宿泊管理業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められません。清掃だけ、鍵だけ、名簿だけを切り出して頼む形は取れません。
業者の側にも制限があります。住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはいけません。 一方で、管理受託契約に住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、再委託を行うことができます。
再委託先の条件も示されています。再委託先は住宅宿泊管理業者である必要はありませんが、住宅宿泊事業者と管理受託契約を交わした住宅宿泊管理業者が再委託先の住宅宿泊管理業務の実施について責任を負うこととなります。再委託期間中は、住宅宿泊管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要とされ、契約によらずに自らの名義で他者に行わせる場合には、名義貸しに該当する場合があるとも書かれています。
再委託を行う場合は、再委託予定者を事前に明らかにする必要があり、再委託先を変更する度に書面又は電磁的方法により委託者に知らせる必要があります。 誰が実際に現場へ来るのかは、契約前に聞ける項目だということです。
契約前に書面で渡される項目
「見積もりをもらう」より前に、渡されることが決まっている書面があります。
締結時の書面には、これらに加えて住宅宿泊事業者への報告に関する事項が入ります。なお、国土交通省が標準的な管理受託契約書を策定していることも案内されています。
書面の中身については、踏み込んだ説明があります。
業務の内容及び実施方法については、届出住宅の状況等に応じて回数や頻度を明示して可能な限り具体的に説明されることが必要とされ、さらに法第7条から第9条までの規定による業務については、説明等の方法について対面による等、具体的方法を明示する必要があるとされています。緊急時の連絡対応等の方法についても明示することになっています。
報酬については、報酬とは別に要する費用の扱いが示されています。水道光熱費や、届出住宅に設置・配置する備品その他必要な物品等の購入に要した費用についても、負担方法、支払い時期及び支払い方法を明示することとされています。月額いくら、という数字だけでは足りません。
そして重要な一文があります。委託者である住宅宿泊事業者が届出住宅の管理に関する十分な知識や経験を有している場合であっても、当該事項について説明せずに契約することは認められていません。 「分かっているので説明は省略していい」とはならない、ということです。
業者側に禁止されていること
選ぶ材料として、そのまま使えるものがあります。
誇大広告等の禁止。 業務に関する広告で、住宅宿泊管理業者の責任に関する事項、報酬の額に関する事項、管理受託契約の解除に関する事項について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしてはならないとされています。虚偽広告も禁止で、媒体の種類は問いません。
例示が具体的です。責任については、実際は宿泊者によって生じた損害について一切責任を負わない契約なのに、家主に損害の負担が全くないかのように誤認させるもの。報酬については、実際は宿泊数に比例する料金体系なのに、委託報酬が月額制で上限の定まった定額であるかのように誤認させるもの。解除については、実際は契約期間途中の解約が制限されるのに、委託者の求めるときにいつでも解約できるように誤認させるものです。
この3つは、そのまま質問に変えられます。責任はどちらが負うのか。料金は定額か、宿泊数に比例するのか。途中解約に制限はあるのか。
不当な勧誘等の禁止。 不実告知のほか、委託者が迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為、委託者が契約の締結又は更新を行わない意思を示したにもかかわらず執拗に勧誘する行為、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず契約を締結する行為が禁止されています。
「迷惑を覚えさせるような時間」については、一般的には、相手方に承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは該当するとされています。
苦情から現地までは30分が目安
距離の条件を決める記述があります。
苦情への対応について、必要に応じてすみやかに現地へ赴くこととし、苦情があってから現地に赴くまでの時間は、30分以内を目安としますとされています。そのうえで、交通手段の状況等により現地に赴くまでに時間を要することが想定される場合は、60分以内を目安としますと続きます。
勧誘の側にも対応する記述があります。住宅宿泊管理業者が管理受託契約の締結の勧誘をするにあたっては、住宅宿泊管理業務の適切な実施が確保できることを明らかにするため、届出住宅へすみやかに駆けつけることが可能な体制を有していることを委託者に示しながら行ってくださいとされています。
遠方の業者を選べるかどうかは、この目安で決まります。 拠点の場所と、実際に誰が駆けつけるのか(再委託先か、自社か)を聞いてください。
委託後に受け取る報告
契約したあと、何が返ってくるかも決まっています。
管理受託契約を締結した住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊管理業務の実施状況等について、住宅宿泊管理業務報告書を作成し、住宅宿泊事業者の事業年度終了後及び管理受託契約の期間の満了後に報告を行う必要があります。
記載事項は、報告の対象となる期間、住宅宿泊管理業務の実施状況、届出住宅の維持保全の状況、周辺地域の住民からの苦情の発生状況です。
中身の水準も示されています。維持保全の状況については、台所、浴室、便所、洗面設備の状態、水道や電気などのライフラインの状態、ドアやサッシなどの設備の状態について報告することとされています。苦情については、発生した日時、苦情を申し出た者の属性、苦情内容等について、把握可能な限り記録し、報告する必要があり、苦情を伴う問合せについては、記録し、対処状況も含めて報告することとされています。
業者側は帳簿も持ちます。登録を受けた営業所又は事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存する必要があります。
料金の相場は書きません
運営代行の料金について、全国の水準を集計した公的な統計を確認できませんでした。 そのため、この記事に相場の金額は書いていません。費用の記事と同じ扱いです。
代わりに確かめられるのは、料金の体系です。誇大広告の例示にあるとおり、宿泊数に比例する料金体系なのに月額定額であるかのように見せることは禁止されています。定額なのか、宿泊数に連動するのか、上限はあるのかを書面で確かめてください。あわせて、報酬とは別に要する費用(水道光熱費、備品の購入費など)の負担方法も明示される項目です。
確かめる順序
契約前に見る順番を並べます。
登録を受けているかを確かめる。 国土交通大臣の登録で、5年ごとの更新です。営業所には標識が掲げられ、書面には登録年月日と登録番号が記載されます。
駆けつけられる距離かを確かめる。 苦情から現地まで30分以内が目安、事情によっては60分以内が目安とされています。
実際に来るのは誰かを確かめる。 一部の再委託がある場合、再委託予定者を事前に明らかにすることになっています。変更のたびに知らせる決まりもあります。
書面の8項目を受け取る。 業務の内容と実施方法は回数や頻度まで、報酬は別途費用の負担方法まで。説明の省略は認められていません。
料金の体系と解約の条件を確かめる。 定額か連動か。途中解約に制限があるか。誇大広告として例示されている3点です。
報告の形を確かめる。 事業年度終了後と契約満了後に、実施状況・維持保全の状況・苦情の発生状況が報告されます。
次に読むもの
委託せずに回す場合の判定は民泊の自主管理、委託が必要になる条件は民泊の家主居住型と家主不在型、苦情対応とルールの関係は民泊のハウスルールにあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。特定の事業者を評価するものではありません。契約の内容について判断に迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口や、契約の相手方へ直接確認してください。
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