ハウスルールを作ろうとすると、「何を書くか」より先に「書いたものに効力があるのか」で止まります。
止まる理由ははっきりしています。ハウスルールには性質の違う2つの層が混ざっているからです。片方は法令が説明を求めている事項で、説明しないこと自体が問題になります。もう片方は事業者が任意で決める決まりで、法令の裏づけはありません。
この記事では「民泊 ハウスルール 例」「民泊 禁止事項」で探される内容も扱います。ただし文例は載せません。届出住宅とその周辺地域の生活環境に応じた内容を説明することが求められており、汎用の文例はその物件で成り立たないためです。項目の並びと言語・置き方は民泊のチェックイン案内にまとめました。
ハウスルールには2つの層がある
まず、混ざっているものを分けます。
上の3層が中身、下の2層が扱い方です。説明が求められている事項と、任意の決まりでは、守らせ方が変わります。法令が説明を求めている事項は、説明しないこと自体が事業者の落ち度になります。任意の決まりは、そうではありません。
説明しないこと自体が問題になる
法令の側から見ると、ハウスルールは「掲示物」ではなく「説明」です。
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者は次の事項を宿泊者に対し、外国人に対しては外国語を用いて、書面の備付けその他の適切な方法により説明する必要があるとしています。騒音の防止のために配慮すべき事項、ごみの処理に関し配慮すべき事項、火災の防止のために配慮すべき事項、そしてその他届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項です。
そのうえで、強い記述があります。苦情が多発しているにもかかわらず法第9条の説明において何ら対応を講じない場合には、業務改善命令等の対象となる、とされています。
読み替えると、ハウスルールは一度作って貼れば終わりではないということです。苦情が出ているのに内容を変えないことが、行政の対応につながり得ます。
禁止事項は、思いつきではなく苦情から作る
任意で決める禁止事項は、どう決めればよいのか。実は、法令の側にその作り方が書かれています。
「届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項」とは、性風俗サービスを届出住宅内で利用しないことなど、過去の苦情内容を踏まえ、届出住宅の利用にあたって特に注意すべき事項のことである、とされています。
過去の苦情内容を踏まえ、という順序がここにあります。禁止事項は開業前にすべて出し切るものではなく、運営しながら足していくものです。
その前提として、苦情への対応が定められています。深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応する必要があるとされ、宿泊者が滞在していない間も、苦情及び問合せについては対応する必要があるとされています。誠実に対応することが必要とされ、回答を一時的に保留する場合であっても、相手方に回答期日を明示した上で後日回答する等の配慮が必要です。
苦情の受け口が動いていないと、禁止事項を増やす材料が入ってきません。連絡先の整備が先で、ルールの整備が後という順番になります。
守らせる手段は契約の側にある
書いたルールが守られなかったとき、何ができるのか。
滞在中の宿泊者の行為により苦情が発生している場合において、当該宿泊者に対して注意等を行っても改善がなされないような場合には、現場に急行して退室を求める等、必要な対応を講じることとされています。
ここで委託している場合の注意点があります。住宅宿泊管理業務の委託を受けた住宅宿泊管理業者が退室を求める場合には、宿泊契約の解除の権限を予め委託者から得ておくことが必要とされています。
つまり、ハウスルールを守らせる力は、掲示ではなく宿泊契約の側にあります。管理業者に委託しているなら、解除の権限を渡してあるかを確認してください。渡していなければ、現場へ行っても退室を求められません。委託の範囲の決まりは民泊の鍵の受け渡しでも触れています。
緊急のときの手順も示されています。苦情及び問合せが、緊急の対応を要する場合には、必要に応じて、警察署、消防署、医療機関等の然るべき機関に連絡したのち、自らも現場に急行して対応することが必要とされています。
伝え方にも条件がある
置き方が悪ければ、説明したことになりません。
「書面の備付けその他の適切な方法」とは、必要な事項が記載された書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末での表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間に必要に応じて説明事項を確認できるようにするためのものとされています。必ずしも対面による説明が求められるものではありません。
置き方については、宿泊者の目につきやすい場所に掲示する等により、宿泊者の注意喚起を図る上で効果的な方法で行う必要があるとされています。
さらに、当該説明が確実になされるよう、居室内に電話を備え付けること等により、事前説明に応じない宿泊者に対し注意喚起できるようにする必要があるとされています。ルールを読まない宿泊者がいることは前提に置かれていて、そのときに声を届ける手段を用意しておくよう求められている、という構造です。
文例は載せません
「そのまま使えるハウスルールの例」は、この記事には書いていません。
理由は法令の書きぶりにあります。騒音についても火災についても、想定される内容が挙げられたうえで、届出住宅及びその周辺地域の生活環境に応じ適切な内容を説明することが必要とされています。ごみについては、当該市町村における廃棄物の分別方法等に沿って、住宅宿泊事業者の指定した方法により捨てるべきであること等を説明する必要があるとされています。分別の方法は市町村ごとに違います。
汎用の文例は、この条件をどこかで満たしません。 写して貼れば説明したことになる、という性質のものではないため、載せない判断をしています。
代わりに、書く前に確かめることを挙げます。その物件で実際に起きている苦情は何か。 所在地の市町村の分別方法はどうなっているか。 ガスコンロの元栓、消火器、避難経路は自分の物件ではどこにあるか。 建物側の決まりで宿泊者に及ぶものはあるか(分譲マンションの場合は民泊と管理規約にまとめました)。
決める順序
作る順番を並べておきます。
苦情の受け口を先に用意する。 深夜早朝を問わず常時、応答または電話で対応できる体制が要ります。ここが動いていないと、禁止事項の材料が入りません。
法令が説明を求める4事項を、自分の物件の言葉で書く。 騒音・ごみ・火災・その他。示されているのは想定される内容であって、そのまま写すためのものではありません。
任意の禁止事項は、起きた苦情から足す。 開業前に思いつく範囲で網羅しようとしないほうが、結果として実態に合います。
守らせる手段を契約側に用意する。 委託しているなら、宿泊契約の解除の権限を管理業者へ渡してあるかを確認します。
置き方の条件を満たす。 目につきやすい場所への掲示と、事前説明に応じない宿泊者へ注意喚起できる手段。外国人宿泊者には外国語で。
苦情が出たら書き直す。 対応を講じないままでいることが、業務改善命令等につながり得ます。
次に読むもの
案内に載せる項目と置き方は民泊のチェックイン案内、運営で回す業務の全体像は民泊の運営、建物側の決まりは民泊と管理規約にあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。苦情対応の体制や説明の内容について判断に迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口へ確認してください。
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