分譲マンションで民泊を考えるとき、最初に確かめるのが管理規約です。観光庁は、分譲マンションで住宅宿泊事業を禁止することはできるかという問いに対し、マンション管理規約等で禁止することができると答えています。
つまり、法律の要件を満たしていても、規約で禁止されていれば届け出られません。設備を測る前に、規約を読むのが順序です。
やっかいなのは、規約の書きぶりが4つに分かれ、それぞれで必要になるものが違うことです。この記事では、その4つの型ごとに届出できるかを整理し、届出後に規約が改正されたときの扱いまで扱います。物件そのものの条件は民泊物件の選び方にまとめています。
規約の書きぶりは4つに分かれる
手元の規約がどれに当たるかで、その先が変わります。
1. 住宅宿泊事業を禁止する定めがある。この場合は届け出られません。禁止の定めには、住宅宿泊事業という語を使ったものだけでなく、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」のように住宅宿泊事業を包含する事業を禁止するものも含まれます。
2. 住宅宿泊事業に関する定めがない。観光庁は、管理規約に住宅宿泊事業に関する定めがない場合は、管理組合に住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことが確認できる書類が必要としています。規約に書かれていないから自由、ではありません。
3. 規約そのものがない。観光庁は、規約がないマンションにおいては専有部分の用途は限定されていないものと解されることから、住宅宿泊事業を禁止する旨の定めはないものと考えられるとしています。そのうえで、住宅宿泊事業施行規則第4条第3項第13号に定める「規約に住宅宿泊事業を営むことを禁止する旨の定めがない場合」に該当することから、届出の要件を満たし、届出は可能としています。規約がないことについては、届出者がその旨の申告をすることが考えられる、とされています。
4. 「専ら住宅として使用する」とだけある。もっとも判断に迷う型です。観光庁は、その表記のみでは住宅宿泊事業の可否についてはわからないため、住宅宿泊事業の可否について規約上明確化しておく必要があるとしています。この一文を根拠に「住宅として使うのだから問題ない」と判断することも、「事業だから禁止されている」と判断することもできません。
なお、1つ目には見落としやすい形があります。観光庁は、一定の態様の住宅宿泊事業のみ可能とする規約の場合は、それ以外の態様は禁止されていると解されるとしています。たとえば家主居住型だけを認める規約があるなら、家主不在型は禁止されているという読みになります。「禁止」という語がなくても、条件付きで認める書きぶりは制限として働きます。
規約における禁止規定の書き方については、マンション標準管理規約およびマンション標準管理規約コメントを参照するよう案内されています。自分のマンションの規約がどの型に当たるか判断できないときは、標準管理規約の規定例と照らすのが手がかりになります。
「定めがない」ときに要る書類
4つのうち、実務でいちばん手間がかかるのが2番目です。管理組合に禁止の意思がないことを確認できる書類が要ります。
これは、管理組合の総会や理事会で住宅宿泊事業を禁止する方針の決議がされていないことを指します。組合に問い合わせて、その旨を書面で出してもらうという手順になります。理事会の開催時期によっては、確認に時間がかかることがあります。
書類は届出のときに添付します。届出に必要な書類の全体像は民泊開業の準備にまとめていますが、規約の確認は書類集めの中でも相手の都合で時間が決まる項目です。着手を後回しにすると、他の準備が終わっても届出に進めません。
届出書に何を書き、何を添えるか
規約の確認は、届出の様式にも現れます。観光庁は、届出の前に確認する事項として、届出者が賃借人および転借人の場合は賃貸人および転貸人が住宅宿泊事業を目的とした賃借物および転借物の転貸を承諾しているかどうか、マンションで住宅宿泊事業を営もうとする場合にはマンション管理規約において住宅宿泊事業が禁止されていないかどうか、を挙げています。あわせて、規約で禁止されていない場合でも管理組合において禁止の方針がないかの確認が必要となる、と注記されています。
届出書に記載する事項としては、区分所有の建物の場合に管理規約に禁止する旨の定めがないこと、管理規約に住宅宿泊事業について定めがない場合は管理組合に禁止する意思がない旨が示されています。賃借人の場合は賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨、転借人の場合は賃貸人と転貸人が承諾している旨を記載します。
添付する書類も決まっています。賃借人の場合は賃貸人が承諾したことを証する書類、転借人の場合は賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類です。口頭の了解では届出に使えないのは、様式が書類を求めているためです。
つまり、規約と承諾の確認は「念のため」ではなく、届出書の記載事項そのものです。曖昧なまま進めると、届出の段階で止まります。
届出のあとに規約が改正されたら
見落としやすいのがここです。届出のときに問題がなくても、あとから規約が変わることがあります。
観光庁は、届出後に管理規約で住宅宿泊事業の実施が禁止された場合は事業は実施できなくなるため、管理組合と調整をしながら、自治体に事業廃止の届出を行う必要がある、としています。
つまり、規約の改正は事業の停止に直結します。設備投資を回収する前に改正されれば、その分は戻りません。マンションで民泊を計画するときは、この可能性を前提に投資額を決めてください。管理組合の議論の動きを把握しておくことも、リスクの管理になります。
賃貸の場合は規約に加えて承諾が要る
分譲マンションの一室を借りて民泊を行う場合、規約の確認だけでは足りません。賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているかを確かめる必要があります。転借であれば、賃貸人と転貸人の双方の承諾が要ります。
観光庁は、賃借人には賃借人の親族が賃貸人である場合の賃借人も含まれるとしています。身内の物件でも承諾は必要です。
規約と承諾は別の話です。規約で禁止されていなくても承諾がなければ届け出られませんし、承諾があっても規約で禁止されていれば届け出られません。両方を確かめてください。
確かめる順序
管理規約まわりは、次の順に進めると手戻りが少なくて済みます。
規約の該当箇所を読む。住宅宿泊事業、または宿泊料を受けて人を宿泊させる事業について、禁止する定めがあるかを見ます。ここで禁止されていれば、他を確かめる意味がありません。
定めがなければ、管理組合に確認する。禁止の意思がないことを確認できる書類を出してもらいます。理事会や総会の予定を聞き、いつ入手できるかを把握します。
「専ら住宅として使用する」だけの場合は、規約上の明確化を相談する。この記述だけでは可否が決まらないため、管理組合と話し合うことになります。時間がかかる前提で計画してください。
賃借であれば、転貸の承諾を書面で得る。口頭の了解では届出に使えません。
契約前に、ここまでを終える。規約や承諾は、契約後に判明しても覆せません。区分所有の一室で始める場合の全体像はマンションの一室で民泊を始めるにはで扱っています。
次に読むもの
物件の条件を判定順に確かめたい場合は民泊物件の選び方、届出に必要な書類は民泊開業の準備、区分所有の一室で始める場合はマンションの一室で民泊を始めるにはにあります。
規約の解釈と、管理組合が出す書類の様式は、マンションごとに異なります。この記事は観光庁が公表しているよくあるご質問の内容を整理したものです。判断に迷う書きぶりの場合は、届出先の自治体と管理組合の双方に確認してください。
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