民泊の物件選び/解説

民泊物件の選び方|立地・間取り・規約で確認したいポイント

民泊できる物件は、設備要件と居住要件を満たす「住宅」に限られます。住居専用地域での営業可否、間取りから決まる定員、管理規約と契約の確認に加え、届出できない物件の条件までを判定順に並べました。

民泊物件を選ぶとき、駅からの距離や間取りより先に確かめるべきことがあります。その物件で、選んだ制度の営業ができるかです。制度によって使える立地が変わるため、同じ物件でも「旅館業法では不可、住宅宿泊事業法では可」という状態が起こります。

順序としては、どの制度で営業するかを決め、その制度で使える立地かを確かめ、間取りと設備が要件を満たすかを見て、最後に規約と契約を確認します。この順序を逆にすると、気に入った物件に制度を合わせようとして、無理のある計画になります。

この記事では、立地・間取り・規約の3つについて契約前に確かめる項目を整理し、民泊に向いている物件の条件を判定できる順序で並べ直したうえで、最後にそもそも届出できない物件を挙げます。「民泊できる物件はどれか」「できない物件は何か」という形で探している場合も、この記事が対象です。マンションの一室に絞った論点はマンションの一室で民泊を始めるには、開業までの工程は民泊開業の流れで扱っています。

立地は制度によって制約が変わる

観光庁は3つの制度を比較して、住居専用地域での営業について次のように示しています。旅館業法(簡易宿所)では不可国家戦略特区法(特区民泊)では可能(認定を行う自治体ごとに制限している場合あり)、住宅宿泊事業法では可能(条例により制限されている場合あり)です。

この違いは物件探しの範囲を大きく変えます。住居専用地域にある物件を検討しているなら、旅館業法の許可で年間を通して営業する計画は成り立ちません。逆に、年間の営業日数に制限がない形で運営したいなら、住居専用地域以外の物件を探すことになります。

床面積の基準も制度で異なります。旅館業法(簡易宿所)は最低延床面積33㎡(ただし宿泊者数10人未満の場合は3.3㎡/人)、特区民泊は原則25㎡以上/室、住宅宿泊事業法は3.3㎡/人とされています。同じ広さの物件でも、選ぶ制度で使えるかどうかが変わります。

加えて、住宅宿泊事業法で進む場合は条例の確認が必要です。都道府県等は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するために必要があるときは、区域を定めて住宅宿泊事業を実施する期間を制限できるとされています。営業できる時期そのものが地域で変わるため、候補地が絞れた段階で自治体に確認してください。

候補の物件が住居専用地域にあるかどうかで、選べる制度が分かれる分岐図
特区民泊は住居専用地域でも可能とされていますが、認定を行う自治体ごとに制限している場合があります。対象は国家戦略特区の区域に限られます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」はじめに「民泊」とは(確認日 2026-08-20)

間取りで決まるのは定員と、委託の要否

間取りを見るときは、部屋数と広さから2つのことが決まると考えてください。泊められる人数と、運営を委託しなければならないかです。

泊められる人数は面積から決まります。居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保することとされており、観光庁は宿泊者の人数を直接制限してはいないものの、宿泊させることができる人数は住宅の規模によって異なるとしています。ここでいう居室は宿泊者が占有する部分を指し、宿泊者の占有ではない台所、浴室、便所、洗面所、廊下のほか、押入れや床の間は含みません。算定は内寸面積で行います。

委託の要否は部屋数に関わります。一の届出住宅の居室の数が5を超える場合は、衛生の確保などの措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。自分で運営するつもりなら、居室の数が5を超えない物件を選ぶという判断があり得ます。人を宿泊させる間に不在等となる場合も委託の対象になるため、部屋数と運営の形はあわせて考えます。

設備も間取りと同時に見ます。住宅宿泊事業を実施できる住宅には、台所、浴室、便所、洗面設備の4つが設けられている必要があります。これらは必ずしも独立している必要はなく、一つの設備に複数の機能があるユニットバス等も認められ、浴室は浴槽が無くてもシャワーがあれば足り、便所は和式・洋式を問いません。ただし、届出の対象に含まれていない近隣の公衆浴場等で代替することはできません。

建物の種別と、設備の共用

届出書には、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎の別を記入します。観光庁はそれぞれを次のように説明しています。一戸建ての住宅は、いわゆる一戸建ての住宅で、屋内で行き来できる2世帯住宅も含みます。長屋は、一の建物を複数世帯向けの複数の住戸として利用し、共用廊下や共用階段などの共用部分を有しないもの(住戸ごとに台所、浴室、便所等の設備を有する)です。共同住宅は同じく複数の住戸として利用し、共用部分を有するものです。寄宿舎は、複数住戸で台所、浴室、便所等の設備を共用するものとされています。

ここで注意が要るのが設備の共用です。観光庁は、複数の届出住宅で浴室や便所等を共有することはできないとし、届出住宅ごとに住宅の要件を満たす必要があり、届出住宅の重複は認められないとしています。設備を共用する構造の物件で、複数の部屋をそれぞれ届け出ることはできません。

一方、設備の設置場所には柔軟さもあります。必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はなく、同一の敷地内の建物について一体的に使用する権限があり、各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能な状態であれば、複数棟の建物を一の「住宅」として届け出ることが可能とされています。

居住要件を満たすかどうか

投資用に取得した物件で失敗しやすいのがここです。住宅宿泊事業を実施できる「住宅」は、設備要件だけでなく居住要件も満たす必要があります。

居住要件は、現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人・転借人の居住の用に供されている家屋、のいずれかです。3つ目について観光庁は、所有者等が使用の権限を有しており少なくとも年1回以上は使用している家屋であるとし、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションはこれに該当しないと明示しています。

具体例として、別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋、休日のみ生活しているセカンドハウス、転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの将来的に再度居住するために所有している空き家、相続により所有しているが将来的に居住することを予定している空き家、別宅として使用している古民家が挙げられています。手持ちの物件がどれに当たるかは、使用の履歴から判断します。

住宅宿泊事業の居住要件を満たす家屋の例と、満たさない例を左右に並べたOK・NGの比較図
左の後半4つは、観光庁が随時居住の用に供されている家屋の具体例として挙げているものです。少なくとも年1回以上の使用が目安とされています。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」対象となる住宅(確認日 2026-08-20)

規約と契約は契約前に確かめる

区分所有の建物では、管理規約の確認が必須です。観光庁は、分譲マンションでの住宅宿泊事業について、マンション管理規約等で禁止することができるとしています。禁止する旨の定めには、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」のように住宅宿泊事業を包含する事業を禁止する場合も含まれます。

規約に定めがない場合は、管理組合に住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことが確認できる書類が必要です。これは管理組合の総会や理事会における禁止の方針の決議がないことを指します。規約そのものがないマンションでは、専有部分の用途は限定されていないものと解され、届出の要件を満たすとされています。なお、「専ら住宅として使用する」という表記のみでは可否がわからないため、規約上の明確化が必要とされています。

賃借する場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているかを確かめます。転借であれば賃貸人と転貸人の双方の承諾が必要です。観光庁は、賃借人には賃借人の親族が賃貸人である場合の賃借人も含まれるとしており、身内の物件でも承諾は要ります。

管理規約の定め、管理組合の意思、転貸の承諾、消防への相談、条例の制限を並べた確認リスト
いずれも契約後に判明すると取り返しがつかない項目です。規約で禁止されていれば、設備を測る意味もありません。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」よくあるご質問(確認日 2026-08-20)

民泊に向いている物件の条件を一覧で確認する

ここまでの内容を、物件を1件ずつ判定するための条件として並べ直します。「この物件は民泊に向いているか」を確かめたいときは、次の順に見てください。上から順に、満たさなければ先へ進めない条件になっています。

1. 制度が使える立地か。住居専用地域にある物件は、旅館業法(簡易宿所)では営業できません。住宅宿泊事業法であれば可能ですが、都道府県等が条例で区域を定めて実施期間を制限している場合があります。

2. 規約と契約で禁止されていないか。区分所有であれば管理規約に住宅宿泊事業を禁止する定めがないこと、定めがない場合は管理組合に禁止の意思がないことを確認できること。賃借であれば賃貸人が、転借であれば賃貸人と転貸人が、住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾していることです。

3. 設備要件を満たすか。台所、浴室、便所、洗面設備の4つが設けられていること。独立している必要はなくユニットバス等も認められ、浴室は浴槽が無くてもシャワーがあれば足り、便所は和式・洋式を問いません。ただし近隣の公衆浴場等での代替はできず、他の届出住宅と浴室や便所を共有することもできません。

4. 居住要件を満たすか。現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人・転借人の居住の用に供されている家屋、のいずれかに当たること。居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは該当しません。

5. 面積と部屋数が想定に合うか。居室の床面積から、宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保できる人数が定員の上限になります。一の届出住宅の居室の数が5を超えると、住宅宿泊管理業者への委託が義務になります。

この5つを満たしたうえで、はじめて立地の良し悪しや間取りの使いやすさといった比較が意味を持ちます。逆に、1つでも満たさない物件は、他の条件がどれだけ良くても選べません。

そもそも届出できない物件

条件を1つずつ確かめるより先に、この形なら届け出られないと分かるものがあります。当てはまる物件は、他の条件を見る必要がありません。

民泊専用の新築投資用マンション。観光庁は、随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋について、所有者等が使用の権限を有しており少なくとも年1回以上は使用している家屋であるとしたうえで、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションはこれに該当しない、と明示しています。

宿泊以外の事業に使っている家屋。観光庁は、住宅宿泊事業として人を宿泊させている期間以外の期間において他の事業の用に供されているものは法律の趣旨と整合しないため、住宅の対象から除外していると説明しています。国土交通省令・厚生労働省令では、人の居住の用に供されていると認められる家屋として定めるものは、事業(人を宿泊させるものまたは人を入居させるものを除く)の用に供されていないものとする、とされています。平日はレンタルスペースやオフィスとして貸し、週末だけ民泊にする、といった使い方は想定されていません。

入居者募集の意図がないことが明らかな家屋。入居者の募集が行われている家屋として届け出る場合でも、観光庁は、広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載している等、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は「入居者の募集が行われている家屋」とは認められない、としています。募集の形だけを整えても要件は満たしません。

設備を近隣の施設で代替している物件。台所、浴室、便所、洗面設備の4つは届出住宅に設けられている必要があり、観光庁は、届出の対象に含まれていない近隣の公衆浴場等を浴室等として代替することはできない、としています。

管理規約で禁止されている区分所有建物、および転貸の承諾が得られない賃借物件。これらは前の節のとおりです。規約や契約は、あとから設備を整えても覆せません。

民泊専用の新築投資用マンション、他の事業に使っている家屋、募集の意図がない家屋などを並べた確認リスト
当てはまる物件は、設備を整えても届け出られません。他の条件を確かめる前に、ここを先に見てください。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」対象となる住宅(確認日 2026-08-20)

建物の一部や複数棟でも届け出られる

逆に、届け出られないと思われがちだが可能な形もあります。

建物の一部分だけを使う場合。観光庁は、「住宅」とは1棟の建物である必要はなく、建物の一部分のみを住宅宿泊事業の用に供する場合には、当該部分が法第2条第1項に規定する「住宅」の要件を満たしている限りにおいて、当該部分を「住宅」として届け出ることができる、としています。

設備が1棟に収まっていない場合。設備は必ずしも1棟の建物内に設けられている必要はなく、同一の敷地内の建物について一体的に使用する権限があり、各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能な状態であれば、これら複数棟の建物を一の「住宅」として届け出ることが可能とされています。

社宅・寮・保養所。観光庁は、一般的に社宅、寮、保養所と称される家屋についても、その使用実態に応じて「住宅」の定義に該当するかを判断する、としています。名称で決まるのではなく、実態で判断されます。

設備の機能についても幅があります。4つの設備は必ずしも独立している必要はなくユニットバス等も認められ、一般的に求められる機能を有していれば足りるとされています。浴室は浴槽が無くてもシャワーがあれば足り、便所は和式・洋式を問いません。設備が古いことを理由に諦める前に、この基準に照らして確かめてください。

内見と契約の前に確かめる順序

物件を見るときは、制度 → 立地 → 設備と間取り → 規約と契約の順で確かめると手戻りが減ります。制度が決まらないと立地の可否が判定できず、規約で禁止されていれば設備を測る意味がありません。

内見では、台所・浴室・便所・洗面設備の有無と状態、居室として使える部分の内寸、居室の数、そして消防設備の状況を見ます。消防については必要な設備が建物の使い方と規模で変わり、判断は消防部局が行うため、図面が手に入った段階で相談してください。契約前に相談できれば、工事の要否を見込んだうえで判断できます。

費用の見積もり方は民泊の開業費用はいくら、物件が決まってからの工程は民泊開業の流れ、営業できる物件の条件をさらに追う場合は民泊可能物件のページで扱います。

条例による制限や規約の解釈は地域と物件で異なります。最終的な可否は、物件を管轄する都道府県等の窓口と、管理組合に確認してください。

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