マンションの一室で民泊を始められるかどうかは、部屋の広さでも立地でもなく、管理規約に何が書いてあるかで決まります。観光庁は、分譲マンションでの住宅宿泊事業について「マンション管理規約等で禁止することができます」と明言しています。禁止されている物件では、どれだけ条件が揃っていても届出はできません。
そして厄介なのは、規約に「禁止」と書かれていないからといって直ちに進められるわけではない点です。定めがない場合には別の書類が要りますし、「専ら住宅として使用する」といった一般的な条項だけでは判断できません。順番としては、規約を読む、足りなければ管理組合に確認する、そのうえで届出の準備に入る、という流れになります。
この記事では、規約の3つのパターンごとの扱い、一室を届出住宅とするための要件、賃貸の場合に必要な承諾、届出後に規約が変わった場合の扱い、そしてこれから民泊向けにマンションを選ぶ場合に入手しておく資料を、観光庁の民泊制度ポータルサイトの記載にもとづいて整理します。自宅そのものを使う場合は自宅で民泊を始めるにはを参照してください。
管理規約は3つのパターンに分かれる
区分所有の建物では、規約の状態によって必要な対応が変わります。観光庁の説明を整理すると、次の3つになります。
禁止する定めがある場合は、住宅宿泊事業を営めません。ここでいう「禁止する旨の定め」には、住宅宿泊事業を禁止する場合のほか、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」のように住宅宿泊事業を包含する事業を禁止する場合も含まれます。また、一定の態様の住宅宿泊事業のみ可能とする規約の場合は、それ以外の態様は禁止されていると解される、とされています。
規約に定めがない場合は、届出はできますが、管理組合に住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことが確認できる書類が必要です。ここでいう「禁止する意思がない」とは、管理組合の総会や理事会における住宅宿泊事業を営むことを禁止する方針の決議がないことを指します。
規約そのものがない場合は、専有部分の用途は限定されていないものと解されることから、住宅宿泊事業を禁止する旨の定めはないものと考えられ、届出の要件を満たすとされています。この場合、規約がないことについては届出者がその旨を申告することが考えられる、と示されています。
紛らわしいのが、規約に「専ら住宅として使用する」とだけ書かれている場合です。観光庁は、その表記のみでは住宅宿泊事業の可否がわからないため、可否について規約上明確化しておく必要があるとしています。この一文をもって「住宅なのだから大丈夫」と判断しないでください。
一室を届出住宅として扱うための要件
規約の問題がなければ、次はその一室が制度でいう「住宅」に当たるかです。観光庁は、「住宅」は1棟の建物である必要はなく、建物の一部分のみを住宅宿泊事業の用に供する場合には、当該部分が要件を満たしている限りにおいて、その部分を「住宅」として届け出ることができるとしています。
要件は2つあります。設備要件として台所、浴室、便所、洗面設備が設けられていること。居住要件として、現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人・転借人の居住の用に供されている家屋、のいずれかに当たることです。
ここで見落とされやすいのが、投資目的で取得した新築の一室は居住要件を満たさないことがある点です。観光庁は、随時居住の用に供されている家屋について、所有者等が使用の権限を有しており少なくとも年1回以上は使用している家屋であるとし、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションはこれに該当しない、と明示しています。
また、複数の住戸で設備を共有する形も認められません。複数の届出住宅で浴室や便所等を共有することはできず、届出住宅ごとに住宅の要件を満たす必要があり、届出住宅の重複は認められないとされています。一室ごとに台所と浴室と便所と洗面設備が揃っている必要がある、ということです。
届出書には、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎の別を記入します。共同住宅は、一の建物を複数世帯向けの複数の住戸として利用し、共用廊下や共用階段などの共用部分を有するもの(住戸ごとに台所、浴室、便所等の設備を有する)とされています。一般的なマンションはこれに当たります。
賃貸の一室で始める場合に要るもの
借りている部屋で始める場合は、規約に加えて契約の確認が必要です。賃借人であれば賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾していること、転借人であれば賃貸人と転貸人の双方が承諾していることを確かめ、届出書にもその旨を記入します。
添付書類としても、賃借人の場合は賃貸人が承諾したことを証する書類、転借人の場合は賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類が求められます。区分所有の建物の場合は規約の写しを添え、規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類を添えます。
なお観光庁は、「賃借人」には賃借人の親族が賃貸人である場合の賃借人も含まれ、「転借人」には転借人の親族が転貸人である場合の転借人も含まれる、としています。家族名義の物件だから承諾は要らない、とはなりません。
届出をした後に規約が変わったら
一室での民泊で、開業後に起こり得る変化が管理規約の改正です。観光庁は、届出後に管理規約で住宅宿泊事業の実施が禁止された場合は事業を実施できなくなるため、管理組合と調整をしながら自治体に事業廃止の届出を行う必要がある、としています。
つまり、届出が受理された時点の規約がその後も続く保証はありません。設備や備品への支出を回収する計画を立てるときは、この可能性を織り込んでおく必要があります。管理組合の総会の議題を把握しておくことは、実務上の備えになります。
マンションを選ぶ段階で入手しておく資料
すでに住んでいる部屋ではなく、これから民泊向けにマンションを選ぶ場合は、内見より前に集めておく資料があります。資料が揃わないと、その部屋で営業できるかを判定できません。
管理規約の写しが最優先です。区分所有の建物では届出の添付書類にもなるため、いずれ必要になります。売買であれば売主や仲介する不動産会社、賃貸であれば管理会社を通じて入手します。規約に住宅宿泊事業を禁止する定めがあれば、そこで検討は終わります。
管理組合の方針が分かる資料も要ります。規約に住宅宿泊事業について定めがない場合、届出には管理組合に禁止する意思がないことを証する書類が必要です。観光庁は、この「禁止する意思がない」を、管理組合の総会や理事会における禁止の方針の決議がないことと説明しています。総会の議事録や理事会の記録を確認できるか、管理会社に問い合わせられるかを、早い段階で確かめてください。
住宅の登記事項証明書は、届出の添付書類として必要になるほか、不動産番号の確認にも使います。届出書には住宅の不動産番号を記入します。
間取り図は、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積を出すために使います。届出には各設備の位置、間取り、入口、階、これらの床面積を示した図面を添えます。図面が手に入れば、消防への相談にも持ち込めます。
資料が揃った時点で、その部屋が使えるかどうかはほぼ判定できます。内見は、設備の状態と実測を確かめる場と考えると効率的です。物件を比較する段階の観点は民泊物件の選び方、探し方の手順は民泊物件の探し方で扱います。
一室で始めるときの確認の順序
先に規約、次に契約、最後に住宅の要件、の順で確認すると手戻りが少なくなります。規約で禁止されていればその先の検討は不要ですし、賃貸で承諾が得られなければ同じく先に進めません。住宅の要件と面積の算定は、そのあとで十分に間に合います。
営業できる日数は、住宅宿泊事業法では届出住宅ごとに1年間で180日までとされています。一室ごとに届け出るなら、日数の上限も一室ごとに数えることになります。宿泊させられる人数は、居室の面積から宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保できる範囲で決まります。
複数の部屋をまとめて1つの届出住宅として届け出る場合は、日数の数え方が変わります。観光庁は、複数の住戸や複数棟の建物が一つの届出住宅である場合、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、全体で180日までしか人を宿泊させることはできない、としています。部屋数を増やせば営業日数が増える、という関係にはなりません。届け出る単位をどう分けるかは、収入の見込みに直接効いてきます。
届出書の記入事項と添付書類の全体は個人で民泊を始める方法に、開業までの工程は民泊開業の流れにまとめています。物件そのものの選び方は民泊の物件選び、規約や近隣に関する論点はトラブル・法務のカテゴリでも扱います。
管理規約の解釈と、管理組合の意思の確認方法は物件ごとに異なります。最終的な可否は、管理組合と、届出先である都道府県等の窓口に確認してください。
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