民泊の始め方/解説

個人で民泊を始める方法|開業前に必要な準備と手続きを解説

個人で民泊を始めるときは、届出書に生年月日や性別の記入が求められるなど法人と扱いが異なります。届出前に入手する書類、記入事項、自分で運営できる条件、届出後に続く報告までを順に解説します。

個人で民泊を始めることはできます。住宅宿泊事業の届出は法人に限られておらず、届出書の記載事項にも【個人】として記入する欄が用意されています。会社を作らなければ始められない、ということはありません。

ただし、個人だからといって手続きが簡略になるわけでもありません。届出の内容と、届出後に続く義務は法人と同じです。違うのは書く項目の一部と、書類をそろえる作業をすべて自分で担う点です。会社であれば分担できる確認作業を、一人で順番にこなしていくことになります。

この記事では、個人が届出をするときの記入事項、届出前に入手・確認しておく書類、自分だけで運営できる条件、そして届出後に毎年続く報告を扱います。制度そのものの選び方は民泊の始め方で扱っているため、ここでは住宅宿泊事業法の届出で始める場合に絞ります。

個人と法人で違う届出事項

住宅宿泊事業を営もうとする者は、住宅宿泊事業届出書に必要事項を記入し、必要な添付書類とあわせて、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に届け出ます。届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととされています。

届出書に記入が必要な事項として定められているもののうち、個人と法人で異なるのは次の点です。個人の場合は、商号・名称または氏名と住所に加えて、生年月日と性別を記入します。法人の場合は、役員の氏名、役員の生年月日と性別、そして法人番号が必要になります。届出者が未成年の場合は、法定代理人の氏名と住所、生年月日と性別を記入し、法定代理人が法人であるときは、その商号または名称、住所、役員の氏名を記入します。

共通する事項も多くあります。住宅の所在地、営業所または事務所を設ける場合はその名称と所在地、連絡先、住宅の不動産番号、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎の別、住宅の規模、そして住宅宿泊管理業者に委託をする場合はその商号・名称または氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容などです。届出書は日本語で作成する必要がありますが、名称や住所等の固有名詞については外国語でも記載できるとされています。

個人で届け出る場合と法人で届け出る場合について、届出書に記入する事項を左右に並べた比較図
住宅の所在地や不動産番号、住宅の規模など、これ以外の記入事項は個人と法人で共通です。届出書は日本語で作成します。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」届出に必要な情報、手続きについて(確認日 2026-08-20)

届出の前に入手・確認しておくもの

観光庁は、届出の前に確認しておくべき事項を示しています。個人で進める場合、この段階が最も時間を要します。相手のあることばかりだからです。

賃借している物件で始める場合は、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているかを確認します。転借している場合は、賃貸人と転貸人の双方が承諾しているかを確認します。届出書にも、賃借人であれば賃貸人が承諾している旨、転借人であれば賃貸人と転貸人が承諾している旨を記入する欄があります。口頭のやり取りではなく、記入できる形で確認しておく必要があります。

マンションなど区分所有の建物では、管理規約で住宅宿泊事業が禁止されていないかを確認します。規約で禁止されていない場合でも、管理組合において禁止の方針がないかの確認が必要とされています。届出書には、管理規約に禁止する旨の定めがないこと、規約に定めがない場合は管理組合に禁止する意思がない旨を記入します。

消防については、届出住宅を管轄する消防に相談したうえで、消防法令適合通知書を入手します。総務省消防庁は、民泊における消防法令上の取扱い等について、リーフレットや通知、届出の様式を公開しています。設備の要否は建物の規模や使い方で変わるため、図面を持って早めに相談したほうが手戻りが少なくなります。

添付書類としては、住宅が居住要件を満たしていることを証明するための書類(入居者の募集の広告等)や、住宅の図面などを添えることとされています。

承諾の確認、管理規約の確認、消防法令適合通知書の入手、居住要件の証明書類、住宅の図面を並べた確認リスト
上の3つは相手の都合で日数が読めないため先に着手します。下の2つは届出書に添える書類です。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」届出に必要な情報、手続きについて(確認日 2026-08-20)

届出をする単位を間違えない

個人で始める場合、対象が自宅の一部であることも珍しくありません。ここで迷いやすいのが、どの範囲を1件として届け出るのかという点です。

観光庁は、「住宅宿泊事業を営もうとする住宅ごと」について、住宅宿泊事業法施行規則第1条に規定する「台所、浴室、便所、洗面設備」が設けられている単位が最小単位になると示しています。つまり、この4つの設備が一そろい備わっている範囲が、届出の1単位です。同じ建物の中に該当する単位が複数あるなら、それぞれについて考えることになります。

年間提供日数も届出住宅ごとに算定されます。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午までとして数え、人を宿泊させる日数が180日を超えないこととされています。

自分だけで運営できるかどうかの分かれ目

個人で始める人が最も気にするのは、管理を外部に頼まずに済むかどうかでしょう。ここは好みではなく条件で決まります。

住宅宿泊事業者は、衛生の確保、安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性および利便性の確保、宿泊者名簿の備付け、周辺地域への悪影響の防止、苦情等への対応という措置をとる必要があります。そのうえで、一の届出住宅の居室の数が5を超える場合、または人を宿泊させる間に不在等となる場合には、これらの措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされています。日常生活を営むうえで通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除かれます。

したがって、自宅の空き部屋を使い、居室の数が5を超えず、宿泊者がいる間は在宅していられるのであれば、委託せずに自分で運営する形が制度上は可能です。逆に、遠方の物件を使う、あるいは日中は勤務先にいるという運営を考えているなら、委託が前提になります。ここは開業前に決めておく必要があります。委託が前提になる働き方の場合は副業で民泊を始めるにはもあわせて読んでください。

届出後に毎年続く手続き

届出は出発点であって、終着点ではありません。個人で運営する場合、次の作業も自分で回すことになります。

宿泊者名簿は、本人確認を行ったうえで作成し、作成の日から三年間保存します。記載するのは宿泊者の氏名、住所、職業および宿泊日で、日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍および旅券番号も記載します。届出住宅ごとに、見やすい場所へ標識を掲げる必要もあります。

定期報告は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに行います。報告する内容は、それぞれの月の前2月について、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳です。定期報告は電子システムを利用して行うことができます。

年に6回の締切が固定で入る、と考えておくと予定を立てやすくなります。宿泊のたびに記録を残しておかないと、締切前にまとめて思い出す作業が発生します。

毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日を期限として、それぞれ前2か月分を報告する年間の時系列図
報告するのは宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳です。届出住宅ごとに、電子システムを利用して行えます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

個人で始めるときの進め方

順序としては、物件で住宅宿泊事業ができるかどうか(賃貸借契約と管理規約)を先に確かめ、次に消防に相談し、そのうえで届出書の記入事項をそろえる、という流れが手戻りが少なくなります。届出書の記入自体は最後です。

税金の扱いや本業との両立については副業で民泊を始めるには、事業としての採算の考え方は民泊経営の始め方で扱います。届出そのものの手順をさらに追う場合は民泊の許可・届出のページも用意しています。

この記事の内容は制度の枠組みです。添付書類の様式や運用は自治体ごとに異なることがあるため、実際の手続きは物件を管轄する都道府県等の窓口と、管轄の消防に確認してください。

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