民泊の収支計画/解説

民泊の利回りはどう計算する?分母と分子の決め方から解説

民泊の利回りは、分母に何を入れるかで数字が大きく変わります。表面利回りと実質利回りの違い、賃借で始める場合に利回りが使えない理由、計算前に確定させる数字を整理しました。

利回りは便利な数字ですが、同じ物件でも計算のしかたで倍近く変わります。分子に何を入れるか、分母に何を入れるかが決まっていないためです。他人が出した利回りと自分の利回りを比べても、前提が違えば意味がありません。

この記事では、利回りの相場を示しません。物件の取得価格も稼働も条件次第で、民泊の利回りを集計した公的な統計を確認できなかったためです。示すのは、分子と分母の決め方と、民泊で計算するときに特有の注意点です。

収支そのものの組み立ては民泊の収支計画の作り方、売上側の計算は民泊の売上予測はどう立てるで扱っています。

表面利回りと実質利回りは別の数字

一般に、利回りには2つの計算があります。

表面利回りは、年間の収入を投資額で割ったものです。収入から費用を引かないため、計算は簡単ですが、費用の重い物件ほど実態から離れます。実質利回りは、年間の収入から年間の費用を引いた額を投資額で割ったものです。費用を反映するぶん実態に近づきますが、どの費用まで引くかで数字が変わります。

民泊では、この差が大きく出ます。住宅を貸す場合と違い、清掃、リネン、消耗品、光熱費、仲介手数料といった費用が宿泊のたびに発生するためです。委託が必要な場合は管理委託費も加わります。表面利回りだけで判断すると、費用の構造がまったく見えません。

どちらを使ってもかまいませんが、どちらを出したのかを必ず書き添えてください。書いていない利回りは、比較にも判断にも使えません。

分子に何を入れるか

分子は「年間の収入」ですが、ここにも段階があります。

宿泊者が支払う金額の合計を入れるのか、仲介手数料を引いたあとの金額を入れるのか、すべての費用を引いた手残りを入れるのかで、出てくる数字は別物になります。宿泊サービス提供契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者に委託しなければならないとされており、仲介を通す以上その手数料が発生します。

年間の収入を出すときは、営業できる日数の上限を必ず反映させてください。住宅宿泊事業法の届出で営業する場合、人を宿泊させる日数は1年間で180日を超えられません。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までとして、届出住宅ごとに算定します。12か月分の収入を前提にした利回りは、この制度では成り立ちません。

複数の住戸をまとめて1つの届出住宅として届け出ている場合は、さらに注意が要ります。観光庁は、複数の住戸や複数棟の建物が一つの届出住宅である場合、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、全体で180日までしか人を宿泊させることはできないとしています。部屋数に比例して収入が増える前提は置けません。

分母に何を入れるか

分母は「投資額」ですが、ここが最も揺れます。

物件の取得価格だけを入れるのか、開業までの支出をすべて入れるのかで、数字は大きく変わります。開業までの支出には、住宅の要件を満たすための工事、非常用照明器具の設置、避難経路の表示、寝具や家具や家電、外国語の案内資料、標識の作成、添付書類の取得費用などが含まれます。これらを除外すれば利回りは高く見えますが、実際には支払っています。

運転資金を入れるかどうかも決めておきます。営業を始めてから最初の入金までの間に出ていく費用は、手元から先に出す資金です。投資額に含めるという考え方も、含めないという考え方もあります。どちらでもよいので、決めて書き残してください。

分母の定義が違う利回りを並べて比較しないでください。片方が取得価格だけ、もう片方が開業費用込みなら、比べているのは物件の優劣ではなく計算方法の違いです。

表面利回りと実質利回りについて、分子と分母に何を入れるかを並べた比較表
同じ物件でも、この置き方が違えば数字は別物になります。比べるときは前提を揃えてください。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

賃借で始める場合、利回りは使いにくい

見落とされやすいのが、借りて始める場合は利回りが機能しにくいという点です。分母にあたる投資額が小さくなるためです。

賃借では物件の取得価格が発生しません。分母は工事費と備品費が中心になり、金額としては小さくなります。すると利回りの数字は大きく出ますが、その裏で家賃が毎月出ていきます。家賃は分母ではなく分子側の費用として扱われるため、利回りが高くても手元に残る金額は小さいということが起こります。

賃借で始めるなら、利回りより「毎月の収支が回るか」と「何泊で費用を回収できるか」で見たほうが実態をつかめます。必要な宿泊数の出し方は民泊の収支計画の作り方にまとめています。

所有物件で始める場合と賃借で始める場合で、利回りが判断に使えるかどうかが分かれる分岐図
賃借では利回りが高く出ても手元に残る金額は小さいことがあります。数字の大小だけで比べないでください。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

稼働の仮定が利回りを決めてしまう

利回りの計算で最も影響が大きいのは、実は分母でも分子の定義でもなく、稼働をいくつと置いたかです。稼働が2倍になれば収入も概ね2倍になり、利回りもほぼ倍になります。つまり、利回りという数字の大半は仮定でできています。

そのため、単一の利回りを出して終わりにしないでください。稼働を複数の水準で置き、それぞれの利回りを並べて示すほうが、判断の材料になります。特に見ておきたいのは、利回りが実質的に成り立たなくなる稼働の水準です。そこが分かっていれば、開業後に実績を見ながら早めに手を打てます。

なお、他所の施設の稼働をそのまま自分の物件に当てはめないでください。地域ごと、物件ごとの稼働を示す公的な統計を確認できませんでした。参考にできる数字が手元にないのであれば、幅を持たせたまま示すほうが誠実です。

税の扱いは利回りの計算と分けて持つ

利回りの計算に使う「費用」と、申告上の必要経費は一致しません。ここを混ぜると、どちらの数字も意味を失います。

国税庁は、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は時の経過等によって価値が減っていくとして減価償却資産に位置づけ、使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とするとしています。取得価額が10万円以上20万円未満のものは、一括して3年間で必要経費に算入する扱いが示されています。支払った年に全額が経費になるとは限りません。

消費税の扱いも住宅の賃貸とは異なります。国税庁は、住宅の貸付けは非課税とされるとしたうえで、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる民泊)も旅館業法に規定する旅館業に該当するため、非課税の対象とならないとしています。住宅として貸した場合の利回りと単純に比べると、扱いを取り違えます。

実際の判定は所轄の税務署または税理士に確認してください。

計算の前に確定させること

利回りを出す前に、次の4つを確定させてください。いずれも問い合わせれば分かります。

営業できる日数の上限は、制度と条例で決まります。泊まれる人数の上限は、居室の床面積から宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保できる人数として決まります。委託が必要かどうかは、人を宿泊させる間に不在等となるか、一の届出住宅の居室の数が5を超えるかで決まります。開業までの支出は、施工業者や販売店から見積もりを取れば確定します。

ここまで確定させれば、仮定は宿泊単価と稼働だけになります。利回りの数字が動くとしたら、その2つが原因だと分かる状態にしておくことが、計算を判断に使うための条件です。

営業日数の上限、定員の上限、委託の要否、開業までの支出を並べた確認リスト
ここまで確定させれば、残る仮定は宿泊単価と稼働だけになります。数字が動く原因を切り分けられます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」よくあるご質問(確認日 2026-08-20)

利回りを使う場面と、使わない場面

利回りは、同じ前提で複数の選択肢を比べるときに役立つ道具です。単独の数字の大小で良し悪しを決める使い方には向きません。前提を書き残し、比べる相手と揃えてから使ってください。

費用の項目は民泊の開業費用はいくら、開業後に続く費用は民泊のランニングコストで扱います。制度と税の取り扱いは改定されることがあるため、計算に使う前に観光庁と国税庁のページで最新の内容を確認してください。

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