民泊の収支計画/解説

民泊の売上予測はどう立てる?上限から逆算する計算手順

民泊の売上は、宿泊単価・定員・営業できる日数で上限が決まります。制度で確定する数字と自分で置く仮定を分け、予測が外れる要因まで含めて計算する手順を出典つきで解説します。

売上予測でやってはいけないのは、先に希望する売上を置いて、そこから逆算した稼働率を当てはめることです。順序としては、制度で決まっている上限を先に出し、その範囲のなかで仮定を置きます。上限を超える予測は、どれだけ緻密に見えても実現しません。

民泊の売上は、宿泊単価、1回に泊まれる人数、そして営業できる日数の3つで枠が決まります。このうち後ろの2つは、調べれば確定します。確定する部分を先に固めれば、仮定を置くのは実質的に単価と稼働だけになります。

このページでは、地域や物件ごとの売上の目安を示しません。それを示す公的な統計を確認できなかったためです。示すのは計算の手順と、仮定の置き方、そして外れる要因です。収支全体の組み立ては民泊の収支計画の作り方で扱います。

売上の上限は3つの数字で決まる

まず、理論上の最大値を出します。ここには仮定が入りません。

営業できる日数は、住宅宿泊事業法の届出で営業する場合、1年間で180日を超えられません。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までとして、届出住宅ごとに算定します。観光庁は、1泊を1日としてカウントして算定するとしています。所在地の条例で実施期間が制限されていれば、上限はさらに下がります。

泊まれる人数は面積から決まります。居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保することとされているため、間取りが決まれば定員の上限が出ます。観光庁は、宿泊者の人数を直接制限してはいないものの、宿泊させることができる人数は住宅の規模によって異なるとしています。

宿泊単価だけが、自分で決める数字です。ただし決めるとはいえ、相場から離れた金額では予約が入りません。ここが唯一、外部の条件に左右される変数になります。

理論上の最大値は、単価に定員と営業できる日数を掛けたものです。この数字を超える売上は制度上あり得ません。まずここを出して、自分の計画がどのくらいの位置にあるかを確かめてください。

宿泊単価、定員、営業できる日数の3つから売上の上限が決まることを示した階層図
この3つを掛けた金額を超える売上は、制度上あり得ません。まずここを出してから計画の位置を確かめます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」よくあるご質問(確認日 2026-08-20)

稼働の仮定は「確定値ではない」と明示する

次に、実際にどれだけ埋まるかを置きます。ここが仮定です。

注意したいのは、稼働率という言葉が指すものが場面によって違うことです。営業できる日数に対して何日埋まったかを指すこともあれば、暦の日数に対する割合を指すこともあります。統計で使われる客室稼働率は、また別の定義で集計されています。自分の計画で使うときは、分母を何にしたのかを必ず書き添えてください。書いていないと、あとから見返したときに意味が取れなくなります。

そして、他所の稼働率を自分の物件に当てはめないでください。地域ごと、物件ごとの稼働を示す公的な統計を確認できませんでした。参考にできる数字が手元にないのであれば、仮定であることを明示したまま複数の水準で試算するほうが誠実です。

観光庁が公表している届出状況は、供給側の数字です。令和8年7月15日時点で住宅宿泊事業の届出件数は65,837件、うち事業廃止件数が23,767件、届出住宅数は42,070件と示されていますが、これは何件が届け出られているかであって、それぞれがどれだけ稼働しているかを示すものではありません。始めた数と続いた数の差は読めますが、稼働は読めません。

制度が定義している数量を使う

予測を立てるときも、実績を管理するときも、制度が定義している数量に合わせておくと手間が減ります。住宅宿泊事業者は定期報告として、届出住宅ごとに、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を報告することになっています。

この4つは定義が決まっているため、予測の単位もこれに揃えておくと、開業後に予測と実績を突き合わせられます。特に宿泊者数と延べ宿泊者数は別の数量である点に注意してください。観光庁は、1人が報告月の間の月またぎで宿泊した場合は当該期間の報告月に1人と数え、報告月をまたぐ場合はそれぞれの報告月でそれぞれ1人として報告するとしています。

報告は毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、それぞれの月の前2月分について行います。年6回、予測と実績を比べる機会が制度上あらかじめ用意されている、という見方もできます。

宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳を並べた確認リスト
定義が決まっているため、予測の単位もこれに揃えると、開業後に予測と実績を突き合わせられます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

宿泊料と、手元に残る額は違う

予測を立てるときにもう一点そろえておきたいのが、何を「売上」と呼んでいるかです。宿泊者が支払う金額と、事業者の手元に入る金額は一致しません。

宿泊サービス提供契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者に委託しなければならないとされています。仲介を通すのであれば、その手数料が宿泊料から引かれます。手数料の水準は各社が定めているため、実際に使う予定の委託先の公表条件で確認してください。なお、仲介業者を通さずに事業者が自ら予約を受け付けることも可能とされています。

そのため、売上の欄には「宿泊者が支払う金額」と「手数料を引いたあとの金額」のどちらを入れているのかを明示してください。両方を並べて持っておくと、経路ごとの手数料の違いを比べるときにも使えます。清掃費を宿泊料に含めるのか別に受け取るのかも、同じ理由で先に決めておきます。

予測が外れる要因を先に挙げておく

売上予測は外れます。問題は外れることではなく、なぜ外れたのか分からなくなることです。要因を先に挙げておけば、実績が出たときに原因を切り分けられます。

営業日数の側の要因としては、条例による実施期間の制限、届出が受理されるまでの期間、設備工事の遅れがあります。また、年の途中で住宅宿泊事業者が代わっても180日のカウントは引き継がれるとされているため、物件を引き継ぐ形で始める場合は、その年に使える日数がすでに減っていることがあります。

定員の側の要因としては、実測した居室の面積が想定と違ったという単純なものがあります。届出書に記入する居室の面積は内寸面積で算定するため、募集資料の専有面積から想定していた定員が取れないことがあります。

単価と稼働の側の要因は、外部の条件です。ここは自分で確定できないため、幅を持たせるしかありません。

売上予測を中心に、営業日数・定員・単価と稼働・届出単位の4つの要因を結んだ関係図
要因を先に挙げておけば、実績が出たときに原因を切り分けられます。外れること自体は避けられません。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」よくあるご質問(確認日 2026-08-20)

複数の部屋を持つ場合の注意

部屋数を増やせば売上も比例して増える、とは限りません。届け出る単位によって、日数の上限の効き方が変わるためです。

観光庁は、複数の住戸や複数棟の建物が一つの届出住宅である場合、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、複数の住戸や複数棟の建物全体で180日までしか人を宿泊させることはできないとしています。まとめて1つの届出住宅とすると、部屋を増やしても営業できる日数は増えません。

一方、住戸ごとに届け出るのであれば、日数は届出住宅ごとに算定されます。どちらの形にするかで売上の上限が変わるため、予測を立てる前に届け出る単位を決めてください。届出をする単位は、台所、浴室、便所、洗面設備が設けられている単位が最小単位になるとされています。

売上予測を立てる順序

順序は、営業できる日数を確定する → 定員を確定する → 単価を置く → 理論上の最大値を出す → 稼働の仮定を複数置く、です。最後の仮定だけが動かせる数字だと分かっていれば、予測に対する過信を避けられます。

そして、出した予測は必ず費用と突き合わせてください。売上の予測だけでは、事業として成り立つかは判断できません。必要な宿泊数の出し方は民泊の収支計画の作り方、費用の構造は民泊のランニングコストで扱っています。

条例による制限と届出状況は更新されます。計算に使う前に、観光庁のページと所在地の自治体で最新の内容を確認してください。

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