民泊開業費用/解説

民泊のランニングコストとは?開業後に続く固定費と変動費

民泊のランニングコストは、稼働にかかわらず出る固定費と、宿泊ごとに出る変動費に分かれます。制度が生む継続的な負担や、民泊が消費税の非課税とならない点まで出典つきで整理しました。

ランニングコストを見るときに大切なのは、総額よりも稼働との関係です。宿泊が入っても入らなくても出ていく費用と、宿泊が入るたびに出ていく費用では、収支への効き方がまったく違います。前者が重い構造だと、稼働が落ちた月にそのまま赤字になります。

民泊の場合、この区別に制度が絡みます。営業できる日数に上限がある一方で、委託が義務になる場合の費用は稼働と関係なく発生するためです。上限があるのに固定費があるという組み合わせは、収支を見るうえで見落とせません。

このページでも金額の相場は示しません。委託費も仲介手数料も各社が条件を定めており、光熱費は物件と稼働で変わるうえ、全国の水準を集計した公的な統計を確認できなかったためです。扱うのは費用の構造と、制度から生じる継続的な負担です。

固定費と変動費に分ける

まず、稼働との関係で2つに分けます。

固定費は、宿泊の有無にかかわらず発生します。賃借であれば家賃、通信費、保険料、そして委託が必要な場合の住宅宿泊管理業者への委託費がここに入ります。予約を受け付ける仕組みの利用料も、契約の形によっては固定費になります。

変動費は、宿泊が入るたびに発生します。清掃、リネン、消耗品、宿泊者が使う分の光熱費、そして住宅宿泊仲介業者や旅行業者へ支払う手数料です。仲介手数料は宿泊料に対して発生するため、売上が伸びれば額も伸びます。

分けておくと、稼働がどこまで落ちると赤字になるかを自分で計算できます。固定費の合計を先に出し、1泊あたりの粗利(宿泊料から変動費を引いた額)で割れば、必要な宿泊数が出ます。金額は自分の契約条件から入れてください。ここで他の施設の数字を借りると、計算そのものが意味を失います。

固定費と変動費を左右に並べ、稼働との関係で分類した比較図
固定費の合計を、1泊あたりの粗利で割ると必要な宿泊数が出ます。金額は自分の契約条件から入れてください。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

制度が生む継続的な負担

法令や制度で求められている業務にも、続く費用があります。金額は小さくても、やめられない点が特徴です。

宿泊者名簿は、本人確認を行ったうえで作成し、作成の日から三年間保存します。記載するのは宿泊者の氏名、住所、職業および宿泊日で、日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍および旅券番号も記載します。保管の手段と、その維持にかかる手間が続きます。

定期報告は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、それぞれの月の前2月分の宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を都道府県知事等へ報告します。年6回の作業が固定で入ります。民泊制度運営システムで報告できます。

設備の維持も続きます。非常用照明器具を設けること、避難経路を表示すること、清掃および換気を行うことは、開業時に整えて終わりではありません。届出住宅ごとに掲げる標識も、掲示を続ける必要があります。観光庁は、入居者募集を行っている賃貸物件で住宅宿泊事業を行う場合、入居者が決まって賃貸使用している間も、住宅宿泊事業を営んでいる間は標識の掲示が必要としています。

苦情への対応も、発生の有無にかかわらず体制として持ち続ける必要があります。住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問合せについて、適切かつ迅速に対応しなければならないとされています。

宿泊者名簿の保存、年6回の定期報告、設備の維持、標識の掲示、苦情対応を並べた確認リスト
金額は小さくても、営業を続ける限り止められない業務です。手間の分だけ人件費か委託費に現れます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

営業日数の上限が固定費の重みを変える

住宅宿泊事業法の届出で営業する場合、人を宿泊させる日数は1年間で180日を超えられません。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までとして、届出住宅ごとに算定します。

この上限は、変動費より固定費に効きます。変動費は宿泊が減れば一緒に減りますが、家賃や委託費は営業していない期間にも出ていくためです。営業できない期間があることを前提に、その間の固定費をどう吸収するかを決めておく必要があります。

複数の住戸をまとめて1つの届出住宅として届け出ている場合は、さらに注意が要ります。観光庁は、複数の住戸や複数棟の建物が一つの届出住宅である場合、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、全体で180日までしか人を宿泊させることはできないとしています。部屋数を増やしても、日数の上限は増えません。

なお、年の途中で住宅宿泊事業者が代わっても、180日のカウントは引き継がれるとされています。物件を引き継ぐ形で始める場合、その年の残り日数が少なければ、固定費だけが先に走ることになります。

消費税の扱いは住宅の賃貸と違う

継続的な負担として見落とされやすいのが、消費税です。住宅を貸す場合との違いをはっきりさせておく必要があります。

国税庁は、住宅の貸付けは非課税とされるとしたうえで、旅館、ホテル、貸別荘、リゾートマンション、ウィークリーマンション等は、その利用期間が1か月以上となる場合であっても非課税とはならないとしています。そして、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる民泊)も、旅館業法に規定する旅館業に該当するため、非課税の対象となりませんと明示しています。住宅として貸していたときの感覚のままでいると、扱いを取り違えます。

ただし、事業者すべてが直ちに納税義務を負うわけではありません。国税庁は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として消費税の納税義務が免除されるとしています。基準期間は、個人事業者ではその年の前々年、事業年度が1年の法人ではその事業年度の前々事業年度です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は免除されません。特定期間は、個人事業者ではその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人では原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間とされています。

判定は事業の規模と時期で変わります。実際の取り扱いは、所轄の税務署または税理士に確認してください。

基準期間の課税売上高が1000万円を超えるかどうかで納税義務の免除が分かれる分岐図
基準期間は個人事業者ならその年の前々年、法人なら前々事業年度です。判定は事業の規模と時期で変わるため、所轄の税務署に確認してください。 出典:国税庁 No.6501 納税義務の免除(確認日 2026-08-20)

委託する場合としない場合で構造が変わる

同じ物件でも、運営を自分で回すか委託するかで、費用の構造そのものが変わります。金額の大小ではなく、固定費と変動費のどちらに寄るかが変わる、という意味です。

自分で運営する場合、清掃や連絡にかかるのは主に自分の時間です。会計上の支出としては変動費に寄り、宿泊が入らなければ出ていく金額は小さくなります。ただし、宿泊者がいる間に在宅していられることと、一の届出住宅の居室の数が5を超えないことが前提になります。観光庁は、業務等により継続的に長時間不在となる場合は住宅宿泊管理業者への委託が必要としています。

委託する場合、委託費が固定費に加わります。稼働が落ちても出ていくため、営業できない期間の負担が増えます。一方で、衛生の確保、安全の確保、外国人観光旅客への案内、宿泊者名簿の備付け、周辺地域への悪影響の防止、苦情等への対応といった措置は委託先が担います。委託は業務の全てについて行う必要があり、一部を委託せずに自ら行うことはできないとされています。

どちらが有利かは、稼働の見込みと自分が使える時間で変わります。制度上、委託が義務になる条件に当たるなら選択の余地はありません。まず条件を確かめてから、費用の構造を組み立ててください。

ランニングコストの把握で先にやること

順序としては、固定費の合計を先に確定します。家賃、委託費、通信費、保険料は契約時点で分かるため、開業前に出せます。次に、1泊あたりの変動費を出します。清掃とリネンは外注先の条件、仲介手数料は委託先の条件から確定できます。

この2つが出れば、必要な宿泊数が計算できます。そこに営業できる日数の上限を重ねると、制度上どこまで積み上げられるかも見えます。稼働の想定は仮定にしかなりませんが、必要な宿泊数は確定した数字から出せます。仮定と確定を分けて持つことが、収支を読むうえで一番効きます。

費用の項目そのものは民泊の開業費用はいくら、資金の準備は民泊開業に必要な資金はいくら、収益の構造は民泊経営の始め方で扱います。委託先の選び方は清掃業者・運営代行のカテゴリで扱う予定です。

税と制度の取り扱いは改定されることがあります。最新の内容は国税庁のページと、届出先の都道府県等の窓口で確認してください。

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