民泊開業費用/解説

民泊の初期費用はいくらかかる?支払う時期ごとに整理

民泊の初期費用は、契約時・工事時・届出時・開業直前の4つの時点に分かれて出ていきます。一度だけの支出と毎月続く支出の見分け方、資金が不足しやすい時期を出典つきで整理しました。

初期費用でつまずくのは、総額を読み違えたときよりも、出ていく時期を読み違えたときです。総額が同じでも、契約時に大きく出るのか、開業直前に集中するのかで、用意しておくべき現金は変わります。民泊の場合、入金が始まるのは営業を開始してからなので、その手前の支出はすべて手元の資金でまかなうことになります。

ここでも金額の相場は示しません。物件と工事の範囲で桁が変わり、全国の初期費用を集計した公的な統計を確認できなかったためです。この記事では、支払いが発生する時点で費用を並べ替え、どの段階で資金が必要になるかを整理します。項目そのものの洗い出し方は民泊の開業費用はいくらで扱っています。

支払いは4つの時点に分かれる

初期費用は、開業までの工程に沿って4つの時点に集まります。物件を契約する時点工事と設備を入れる時点届出をする時点開業の直前です。

物件を契約する時点では、購入なら代金と諸費用、賃借なら敷金・礼金・仲介手数料・前家賃が出ます。ここが最も金額の大きい山になることが多く、しかも最初に来ます。工事と設備を入れる時点では、住宅の要件を満たすための工事と、非常用照明器具の設置や避難経路の表示など安全の確保のための費用が出ます。

届出をする時点では、添付書類の取得費用が出ます。開業の直前では、備品と消耗品、外国語の案内資料、標識の作成費が出ます。加えて、営業開始から最初の入金までの運転資金が必要になります。

この並びで見ると、資金が薄くなりやすいのは3番目と4番目です。物件と工事で手元が減ったあとに、細かい支出が続くためです。

物件契約時、工事と設備、届出時、開業直前の順に初期費用が発生する流れを示した時系列図
総額が同じでも、山が来る時期で用意すべき現金は変わります。入金が始まるのは営業を開始してからです。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

契約の前に確定できない支出がある

工事費は、物件が決まらなければ見積もれません。しかし、物件を契約したあとで「工事が必要だった」と分かるのは避けたい事態です。順序としては、契約の前に確認を終わらせておくことになります。

住宅宿泊事業を実施できる住宅には、台所、浴室、便所、洗面設備の4つが設けられている必要があります。これらの設備は必ずしも独立している必要はなく、一つの設備に複数の機能があるユニットバス等も認められ、浴室は浴槽が無くてもシャワーがあれば足り、便所は和式・洋式を問わないとされています。一方で、届出の対象に含まれていない近隣の公衆浴場等で代替することはできません。既存の設備で足りるかどうかは、この基準で判断できます。

消防については、必要な設備が建物の使い方と規模で変わり、判断は消防部局が行います。観光庁は、事業者が誤った判断をした場合は消防法違反になる可能性があるため、消防部局に事前相談するよう勧めるとしています。工事費の見込みを立てたいなら、この相談を契約前に済ませておくのが確実です。

届出の時点で出る費用は事前に分かる

4つの時点のうち、金額を事前に確かめられるのが届出の時点です。添付書類には住宅の登記事項証明書が含まれ、その手数料は公表されています。

法務省は、登記事項証明書(謄抄本)の手数料について、令和7年4月1日からの区分として、書面請求は600円、オンライン請求で送付を選ぶ場合は520円、オンライン請求で窓口交付を選ぶ場合は490円としています。

ここで注意したいのが有効期間です。官公署が証明する書類は届出日前3月以内に発行されたものとされ、写し等は認められません。準備が長引いて期限を過ぎると、同じ書類をもう一度取ることになり、手数料も交通費もかかり直します。証明書の取得は、届出の目処が立ってから行ってください。

複数の住宅を届け出る場合は、書類が重なることがあります。観光庁は、一の事業者が複数の届出を行う場合等において、当該届出を受ける行政庁が既存の届出書等により取得している情報については、行政庁の判断で関係する書類の提出を省略して差し支えないとしています。省略できるかどうかは窓口の判断になるため、事前に相談しておくと無駄な取得を減らせます。

賃借で始める場合と所有で始める場合の違い

同じ物件でも、借りて始めるか、持っている物件で始めるかで、初期費用の出方が変わります。

賃借で始める場合は、契約時の支出が敷金・礼金・仲介手数料・前家賃に分かれ、開業前から毎月の家賃が発生します。届出をするまでの準備期間にも家賃が出ていくため、準備が長引くほど開業前の支出が増えます。加えて、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾していることを確かめ、承諾したことを証する書類を添付する必要があります。承諾が得られなければ、それまでにかけた費用は戻りません。契約より先に承諾の見込みを確かめてください。

所有物件で始める場合は、契約時の大きな支出がない代わりに、工事と備品の比重が上がります。ふだん住んでいない物件を使う場合は、居住要件を満たすかどうかの確認が先に必要です。観光庁は、随時居住の用に供されている家屋について、所有者等が使用の権限を有しており少なくとも年1回以上は使用している家屋とし、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは該当しないとしています。要件を満たさなければ、住宅宿泊事業の届出そのものができません。

賃借と所有について、契約時の支出、準備期間中の支出、確認する要件、届出に必要な書類を並べた比較表
賃借は準備が長引くほど開業前の家賃が増えます。所有はふだん住んでいない物件だと居住要件の確認が先に必要です。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」対象となる住宅(確認日 2026-08-20)

一度きりの支出と、続く支出を分ける

初期費用として扱うべきなのは、開業までに一度だけ発生するものです。ここに毎月続く支出を混ぜると、必要な資金を読み違えます。

一度きりに近いものは、物件の取得または賃借の初期費用、工事費、家具・家電・寝具などの備品、標識の作成、外国語の案内資料の作成、書類の取得費用です。開業後も続くものは、清掃、リネン、消耗品、光熱費、通信費、住宅宿泊管理業者への委託費、住宅宿泊仲介業者への手数料です。

紛らわしいのが、開業前に発生するけれども継続もする費用です。委託が必要な場合、管理受託契約は届出より前に結ぶことになるため、契約の時点から費用が発生することがあります。人を宿泊させる間に不在等となる場合や、一の届出住宅の居室の数が5を超える場合は委託が義務になるため、この費用は選べるものではありません。契約条件を確かめて、いつから発生するのかを確認してください。

開業までに一度だけ発生する支出と、開業後も継続する支出を左右に並べた比較図
委託費は契約の時点から発生することがあります。不在等となる場合や居室数が5を超える場合は委託が義務のため、選べる費用ではありません。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

支出の一部はその年の経費にならない

資金の話と税の話は別に扱う必要があります。支払った金額がそのままその年の必要経費になるとは限らないためです。

国税庁は、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は一般的には時の経過等によってその価値が減っていくとして減価償却資産に位置づけ、使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とするとしています。取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、一括して3年間で必要経費に算入する一括償却資産の扱いが示されています。

つまり、備品にまとまった金額を使っても、その全額がその年の経費になるとは限りません。手元の資金の計画と、申告上の計算は別に持ってください。実際の判定は所轄の税務署または税理士に確認してください。

資金の準備で確かめること

用意する金額を決めるときは、4つの時点それぞれで最大いくら必要になるかを出します。総額だけを見ていると、山が来る時期に足りなくなります。あわせて、営業開始から最初の入金までの期間に出ていく費用も、運転資金として別枠にしておきます。

見積もりが埋まらない項目は、空欄のままで残してください。相場らしい数字で埋めると、確認していない金額が計画の前提になります。工事は施工業者、備品は販売店、委託費は住宅宿泊管理業者に、それぞれ自分の条件で見積もりを取ってください。

費用の項目を洗い出す方法は民泊の開業費用はいくら、支出が発生する順序は民泊開業の流れ、収支としての組み立ては民泊経営の始め方を参照してください。手数料と税の取り扱いは改定されることがあるため、実際の金額は法務局と国税庁で確認してください。

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