民泊の収支計画/解説

民泊の収支計画の作り方|確定できる数字から順に埋める

民泊の収支計画は制度で決まる数字から先に埋めると精度が上がります。費用の置き方、何泊で黒字になるかという損益分岐点の出し方、条件を変えて試算する手順を出典つきで解説します。

収支計画を作るときに最初に決めるべきなのは、金額ではなくどの数字が確定していて、どの数字が仮定かです。民泊の場合、制度によって上限が決まっている項目がいくつかあり、そこは調べれば確定します。一方で稼働の見込みは誰にも確定できません。この2つを混ぜて1枚の表にすると、確定した数字も仮定に見え、計画全体の信頼性が落ちます。

このページでは金額の相場を示しません。物件と契約先で変わるうえ、開業後の収支を集計した公的な統計を確認できなかったためです。示すのは、確定できる数字の見つけ方と、何泊で黒字になるかという損益分岐点の出し方、そして仮定を置いて試算する手順です。

費用の項目そのものは民泊のランニングコスト、売上側の計算は民泊の売上予測はどう立てるで扱います。ここでは全体の組み立てに絞ります。

制度で上限が決まっている数字から埋める

先に確定させられるのは、上限が制度で決まっている項目です。

営業できる日数は、住宅宿泊事業法の届出で営業する場合、1年間で180日を超えられません。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までとして、届出住宅ごとに算定します。旅館業法の許可で進むのであれば営業日数の制限はありません。どちらで営業するかを決めれば、この欄は確定します。

さらに、都道府県等は条例で区域を定めて実施期間を制限できます。所在地の条例で制限があれば、上限はそこまで下がります。自治体に問い合わせれば確定する数字です。

泊められる人数の上限も確定できます。居室の床面積は宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保することとされているため、間取りが決まれば定員の上限が決まります。観光庁は、宿泊者の人数を直接制限してはいないものの、宿泊させることができる人数は住宅の規模によって異なるとしています。

委託が必要かどうかも確定できます。人を宿泊させる間に不在等となる場合、または一の届出住宅の居室の数が5を超える場合は、住宅宿泊管理業者への委託が義務です。自分の運営の形が決まれば、委託費が計画に入るかどうかが決まります。

この4つを先に埋めると、収入の天井と、避けられない費用の存在が確定します。ここから外れる計画は、そもそも成り立ちません。

営業できる日数、条例による制限、定員の上限、委託の要否を並べた確認リスト
いずれも問い合わせれば確定します。ここから外れる計画は、稼働の想定を変えても成り立ちません。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

費用は稼働との関係で分けて置く

費用は金額を調べる前に、稼働と連動するかどうかで分けます。連動しない費用が重いほど、稼働が落ちたときの影響が大きくなるためです。

稼働と連動しないのは、賃借であれば家賃、住宅宿泊管理業者への委託費、通信費、保険料です。稼働と連動するのは、清掃、リネン、消耗品、宿泊者が使う分の光熱費、そして住宅宿泊仲介業者や旅行業者へ支払う手数料です。

金額は、必ず自分の契約先から取ります。工事は施工業者、備品は販売店、委託費は住宅宿泊管理業者、仲介手数料は委託先の公表条件です。他の施設の事例や平均値を当てはめないでください。立地も部屋数も違う数字で計画を作ることになります。

見積もりが取れていない項目は、空欄のまま残します。埋めてしまうと、確認していない数字が計画の前提として残り、あとから検証できなくなります。

損益が成り立つ宿泊数を出す

売上を予測する前にできる計算があります。何泊すれば費用を回収できるかです。これは仮定を含まないため、先に出しておけます。

計算は単純です。稼働と連動しない費用の合計を、1泊あたりの粗利(1泊の宿泊料から、その宿泊で発生する変動費を引いた額)で割ります。出てくるのが、費用を回収するために必要な宿泊数です。

ここに、制度で決まる上限を重ねます。必要な宿泊数が、営業できる日数の上限を超えているなら、その計画は制度上どうやっても成り立ちません。料金を上げるか、固定費を下げるか、制度そのものを変えるかしかありません。この判定は、稼働の予測をまったく使わずにできます。

複数の住戸をまとめて1つの届出住宅として届け出る場合は注意が要ります。観光庁は、複数の住戸や複数棟の建物が一つの届出住宅である場合、これらのうち1室にでも人を宿泊させた場合は1日と算出され、全体で180日までしか人を宿泊させることはできないとしています。部屋数を増やしても営業日数の上限は増えないため、必要な宿泊数の計算に効いてきます。

固定費の合計を1泊あたりの粗利で割り、必要な宿泊数を営業日数の上限と比べる手順を示した図
この判定に稼働の予測は使いません。必要な宿泊数が上限を超えるなら、料金か固定費か制度を変えるしかありません。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業法とは(確認日 2026-08-20)

損益分岐点として扱うときの注意

この「必要な宿泊数」が、いわゆる損益分岐点にあたります。ただし計算に入れる範囲を決めておかないと、同じ物件でも数字が変わってしまいます。決めておく点は3つです。

1つ目は、自分の労働を費用に入れるかどうかです。清掃や連絡を自分で行う場合、支出は発生しませんが時間は使います。入れなければ分岐点は低く出ますし、入れれば高く出ます。どちらでもかまいませんが、入れたか入れていないかを表に書き添えてください。委託した場合と比べるときに、前提が違うと比較になりません。

2つ目は、期間の単位です。月単位で見るのか、年単位で見るのかで意味が変わります。民泊の場合、営業できる日数の上限は1年間で数えられ、住宅宿泊事業法の届出では180日以内、しかも毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までが1年間とされています。月ごとに分岐点を出すなら、年間の上限をどう月へ割り振ったのかも書いておきます。

3つ目は、開業費用を含めるかどうかです。分岐点の計算に開業費用を入れると、それは「毎月の収支が成り立つ点」ではなく「投資を回収し終える点」になります。この2つは別の問いです。毎月回るかどうかを見たいなら、分岐点には継続的に発生する費用だけを入れ、開業費用の回収は回収期間として別に計算してください。

3つとも、正解があるわけではありません。決めて、書き残すことが計算を使える形にします。

条件を変えて試算する

ここまで来て初めて、稼働の仮定を置きます。仮定は当たりませんが、当たらないことを前提に幅を持たせることはできます。

試算のやり方は、1つの数字を1つずつ動かすことです。宿泊単価を下げたらどうなるか、稼働が想定の半分だったらどうなるか、委託費が上振れしたらどうなるか。同時に複数を動かすと、どれが効いたのか分からなくなります。

見るべきなのは、収支がどこで反転するかです。単価がいくらを下回ると成り立たないのか、稼働が何泊を下回ると赤字になるのか。この境目が分かっていれば、開業後に実績を見ながら早めに手を打てます。楽観と悲観の2通りだけ作って安心しないでください。知りたいのは平均ではなく、成立しなくなる条件です。

試算に使う数字も、確定値と仮定を色や欄で分けておきます。あとで見返したときに、どこを疑えばよいかがすぐ分かります。

収支計画のうち調べれば確定する項目と、仮定として置くしかない項目を左右に並べた比較図
表の上で色や欄を分けておくと、あとで見返したときにどこを疑えばよいかが分かります。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

税の扱いは資金の計画と分けて持つ

収支計画でよく混同されるのが、手元の資金の動きと、申告上の計算です。この2つは一致しません。

国税庁は、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は時の経過等によって価値が減っていくとして減価償却資産に位置づけ、使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とするとしています。取得価額が10万円以上20万円未満のものは、一括して3年間で必要経費に算入する扱いが示されています。つまり、備品にまとまった支出をしても、その全額がその年の経費になるとは限りません。

消費税の扱いにも注意が要ります。国税庁は、住宅の貸付けは非課税とされるとしたうえで、住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる民泊)も旅館業法に規定する旅館業に該当するため、非課税の対象とならないとしています。住宅として貸す場合と同じ感覚で計画を立てると、扱いを取り違えます。

実際の判定は事業の規模と時期で変わります。所轄の税務署または税理士に確認してください。

収支計画を作る順序

まとめると、制度で決まる上限を確定させる → 費用を稼働との関係で分けて置く → 必要な宿泊数を出す → 仮定を置いて条件を振る、の順です。最後まで進んで初めて、その物件で事業として成り立つかどうかが見えます。

逆に、売上の予測から始めると、望む結論に合う稼働率を置いてしまいがちです。確定できる数字から埋めれば、その余地が減ります。

売上側の計算方法は民泊の売上予測はどう立てる、開業後に続く費用は民泊のランニングコスト、資金の準備は民泊開業に必要な資金はいくらで扱います。

制度と税の取り扱いは改定されることがあります。計画に使う前に、観光庁と国税庁のページ、そして所在地の自治体で最新の内容を確認してください。

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