副業として民泊を始められるかどうかは、資金や物件よりも先に、宿泊者がいる間に届出住宅にいられるかで決まります。住宅宿泊事業者は、人を宿泊させる間に不在等となる場合、衛生や安全の確保といった措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされているためです。平日に勤務先へ通う働き方であれば、この条件に当たる可能性が高くなります。
これは制度上の義務であり、費用を惜しんで自分でやる、という選択ができません。副業として検討する場合、委託費が固定的にかかる前提で採算を見ることになります。「空いている部屋を貸すだけだから元手はかからない」という見立てのままだと、開業後に計算が合わなくなります。
この記事では、委託が義務になる条件と自分に残る作業、年間提供日数の上限が副業にどう効くか、そして給与所得者が確定申告を必要とする場合の考え方を、観光庁と国税庁の公開資料にもとづいて整理します。個人としての届出そのものの手順は個人で民泊を始める方法で扱います。
副業で最初にぶつかるのは「不在」の条件
住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者への委託を義務づけられるのは、次の場合とされています。一つは、一の届出住宅の居室の数が5を超える場合。もう一つは、人を宿泊させる間、不在等となる場合です。ここでいう不在からは、日常生活を営むうえで通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除かれます。
買い物や短時間の外出まで委託の対象になるわけではありませんが、勤務のために日中いないという状態は、日常生活を営むうえで通常行われる行為の範囲とは性質が異なります。線引きの運用は自治体によって差があるため、勤務時間帯を具体的に示したうえで、届出先の窓口に確認してください。
観光庁は、家主居住型の場合は事業者自身に適正な遂行のための措置が義務づけられ、家主不在型の場合はその措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊管理業者に委託することが義務づけられる、と整理しています。標識の掲示だけは委託の対象から外れており、事業者自身が行います。
委託しても自分に残る作業がある
委託が義務になる措置は、衛生の確保、安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性および利便性の確保、宿泊者名簿の備付け、周辺地域への悪影響の防止、苦情等への対応です。清掃や換気、非常用照明器具の設置と避難経路の表示、外国語での案内、名簿の作成、騒音やごみに関する説明、近隣からの苦情対応が、ここに含まれます。
一方で、委託しても事業者の手元に残るものがあります。届出住宅ごとに見やすい場所へ標識を掲げること、そして届出住宅ごとに毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、それぞれの月の前2月分の宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を都道府県知事等へ報告することです。定期報告は電子システムを利用して行うことができます。
また、宿泊サービス提供契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者に委託しなければなりません。誰に頼むかを選ぶ判断そのものは、事業者に残ります。
年間提供日数の上限を副業の視点で見る
住宅宿泊事業は、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと定義されています。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午までとして、届出住宅ごとに算定します。
副業として見ると、この上限には二つの意味があります。一つは、収入に天井があること。もう一つは、上限があるからといって手間が半分になるわけではないことです。宿泊のたびに清掃と受け渡しと連絡が発生するため、稼働する日数が少なくても、発生する作業の種類は変わりません。委託費のような固定的な費用は、稼働の多寡に関わらず負担が続きます。
なお、都道府県等は条例で区域を定めて住宅宿泊事業を実施する期間を制限できます。上限が180日であっても、地域によってはさらに短い期間しか営業できない場合があるため、物件の所在地の条例を先に確認してください。
確定申告が必要になるかどうか
副業で収入を得ると、税の手続きが発生する場合があります。国税庁は、給与所得者で確定申告が必要な人として、給与を1か所から受けていて、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人を挙げています。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超える人が対象です。
例外もあります。給与の収入金額の合計額から所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告は不要とされています。ただし、この所得控除の合計額からは一部の控除が除かれるなど条件が付いているため、判断する前に国税庁のページで原文を確認してください。
所得の区分や必要経費の範囲は、物件の使い方や規模によって異なります。ここでは金額の目安を示しません。実際の申告の要否と区分は、所轄の税務署または税理士に確認してください。
届出の準備は本業と並行して進むことになる
副業だからといって、届出の準備が軽くなることはありません。住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととされています。届出書には、住宅の所在地、住宅の不動産番号、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎の別、住宅の規模、連絡先などを記入し、住宅宿泊管理業者に委託をする場合は、その商号・名称または氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容も記入します。委託を前提にするなら、届出の時点で委託先が決まっている必要がある、ということです。
添付する書類としては、住宅が居住要件を満たしていることを証明するための書類(入居者の募集の広告等)や住宅の図面などが求められます。また、届出住宅を管轄する消防に相談し、消防法令適合通知書を入手しておく必要があります。消防への相談は相手の都合に合わせて日程を取ることになるため、勤務の合間に進めるなら早めに動き出したほうが確実です。
住まいと勤務先の条件も先に確かめる
制度の条件を満たしても、契約や規則で止まることがあります。賃借している物件であれば、賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているかを確認します。マンションであれば、管理規約で住宅宿泊事業が禁止されていないか、規約に定めがない場合は管理組合に禁止の方針がないかを確認します。届出書にも、これらについて記入する欄があります。
勤務先の就業規則についても、副業に関する定めがあるかを事前に確かめておいてください。届出をすると、住宅宿泊事業者として標識を掲示し、定期報告を行う立場になります。あとから説明する事態を避けるため、始める前に確認しておくほうが安全です。
副業として始める前に決める3つのこと
一つ目は、宿泊者がいる間に在宅できるかです。できないなら委託が義務になり、その費用が採算の前提に入ります。二つ目は、委託先を含めた費用をいくらで見積もるかです。管理業者や仲介業者の条件は各社が公表しているため、実際に依頼する先の公表条件で計算してください。三つ目は、年に6回の定期報告を含む事務を、本業と並行して回せるかです。
この3つに答えが出れば、副業として続けられるかどうかはおおむね判断できます。採算の組み立て方は民泊経営の始め方、制度の全体像は民泊の始め方を参照してください。運営の手間を減らす方法は運営効率化、委託先の選び方は清掃業者・運営代行のカテゴリで扱います。
制度の適用や条例の有無は自治体ごとに異なり、税の取り扱いは個々の事情で変わります。最終的な判断は、物件を管轄する都道府県等の窓口と、所轄の税務署に確認してください。
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