特区民泊は、民泊の3つ目の制度です。観光庁は、いわゆる民泊を行う場合には旅館業法の許可を得る、国家戦略特区法(平成25年法律第107号)の認定を得る、住宅宿泊事業法の届出を行う、などの方法から選択することとなるとしています。そのうちの2番目にあたります。
正式には国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業といい、旅館業法の特例として位置づけられています。名前に「外国人」と入っていることから利用者を外国人に限る制度だと受け取られがちですが、それは誤りです。この記事では、制度の中身、認定を受けるための条件、住宅宿泊事業法の届出との違いを整理します。
どの制度が自分に必要かという判断そのものは民泊に必要な許可とはで扱っています。
制度の位置づけと根拠
観光庁は特区民泊について、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例であるとし、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約およびこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに、当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業、と説明しています。
内閣府も同じ定義を国家戦略特別区域法第13条の条文として示しています。条文では、国家戦略特別区域会議が特定事業として外国人滞在施設経営事業を定めた区域計画について内閣総理大臣の認定を受けたときは、その日以後、事業を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行おうとする事業が政令で定める要件に該当している旨の都道府県知事(保健所を設置する市または特別区にあっては市長または区長)の認定を受けることができる、とされています。この認定を特定認定といいます。
押さえておきたいのは、手続きが2段構えになっていることです。まず自治体の側で区域計画が認定されている必要があり、そのうえで事業者が特定認定を受けます。事業者が単独で始められる制度ではありません。
「外国人しか泊められない」は誤解
制度の名前から生じている誤解について、内閣府が明確に注意喚起しています。
内閣府は、本特例の対象施設は制度上、日本人でも外国人でも利用できるものであるとしたうえで、対象施設の利用者が外国人に制限されているかのような誤解が広がっており、制度の正確な理解の確保と本制度の円滑な活用促進に支障が生じることとならないか懸念している、としています。
根拠も示されています。国家戦略特別区域法第13条は、外国人旅客の滞在に適した「施設」を一定期間以上使用させる事業と規定しており、事業で用いる「施設」が外国人旅客の滞在に適したものであることを求めているものの、施設の「利用者」については何ら規定を設けていない、というものです。
つまり、求められているのは施設と役務の性質であって、泊まる人の国籍ではありません。外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供することは要件ですが、日本人が泊まっても制度から外れるわけではないということです。
使えるのは指定された区域だけ
特区民泊のいちばん強い制約は、場所です。観光庁は、東京都大田区をはじめとして、大阪府や大阪市など国家戦略特区の区域として指定された地域で取り組まれている、としています。
内閣府は経緯として、国家戦略特別区域法にもとづく旅館業法の特例について平成25年12月に法が制定され、平成28年1月に全国で初めて東京都大田区が取組を開始し、現在では各方面の関心も高まっている、としています。
区域として指定されていない場所では、そもそも選択肢に入りません。物件を先に決めてから特区民泊を検討すると、その地域では使えないと分かることがあります。検討の順序としては、区域の確認が最初です。取組の状況は自治体ごとに異なるため、所在地の自治体に確認してください。
認定を受けるための条件
政令で定める要件の細目は内閣府の資料に示されていますが、観光庁が公表している3つの制度の比較から、運営に効いてくる条件を読み取れます。
滞在期間に下限があります。観光庁の比較では、国家戦略特区法(特区民泊に係る部分)の営業日数の制限について、2泊3日以上の滞在が条件とされ、下限日数は条例により定めるが年間営業日数の上限は設けていない、とされています。1泊の利用を中心に考えている計画とは噛み合いません。
年間の営業日数に上限はありません。住宅宿泊事業法が年間提供日数180日以内とされているのに対し、特区民泊には上限がありません。ここが選ばれる主な理由です。
床面積の基準は部屋単位です。観光庁の比較では、特区民泊は原則25平方メートル以上毎室とされています。住宅宿泊事業法が宿泊者1人当たりの面積で定員を決めるのに対し、部屋そのものの広さが問われます。
住居専用地域でも営業できます。観光庁の比較では、住専地域での営業について、特区民泊は可能(認定を行う自治体ごとに制限している場合あり)とされています。旅館業法(簡易宿所)が不可とされているのと対照的です。
このほか、宿泊者名簿の作成・保存義務はあり、玄関帳場の設置義務(構造基準)はなし、衛生措置は換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置に加えて使用の開始時に清潔な居室の提供、とされています。近隣住民とのトラブル防止措置も必要とされ、近隣住民への適切な説明、苦情および問合せに適切に対応するための体制および周知方法、その連絡先の確保が挙げられています。
非常用照明等の安全確保の措置義務はありとされたうえで、6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要という条件が付いています。消防用設備等の設置は必要です。
住宅宿泊事業法との違い
同じ「民泊」でも、特区民泊と届出による民泊は性質がかなり違います。日数の考え方が逆向きになっているのが分かりやすい対比です。
住宅宿泊事業法は上限を定めます。年間提供日数180日以内で、条例で実施期間の制限が可能とされています。一方の特区民泊は下限を定めます。2泊3日以上の滞在が条件で、年間営業日数の上限は設けられていません。短い滞在を数多く回す運営は特区民泊に向かず、長めの滞在を通年で受ける運営に向いた設計だということです。
面積の考え方も違います。住宅宿泊事業法は最低床面積が3.3平方メートル毎人で、住宅の広さから定員が決まります。特区民泊は原則25平方メートル以上毎室で、部屋の広さそのものが基準です。
運営体制の要求も違います。観光庁の比較では、不在時の管理業者への委託業務について、住宅宿泊事業法は規定ありとされているのに対し、特区民泊は規定なしとされています。住宅宿泊事業では居室の数が5を超える場合や不在となる場合に住宅宿泊管理業者への委託が義務になりますが、特区民泊にはこの規定がありません。
手続きの性質も、届出と認定で異なります。所管省庁も、住宅宿泊事業法が国土交通省・厚生労働省・観光庁であるのに対し、特区民泊は内閣府(厚生労働省)とされています。
検討するときの順序
特区民泊を検討する場合、次の順に確かめると早く決まります。
物件の所在地が国家戦略特区の区域として指定され、特区民泊に取り組んでいるか。ここが満たせなければ、他の条件を見る意味がありません。自治体ごとに取組の状況が違うため、所在地の窓口に確認します。
2泊3日以上という滞在期間の下限に、想定する客層が合うか。下限日数は条例で定められるため、地域によってはさらに長い可能性があります。1泊中心の計画なら、この時点で別の制度を検討することになります。
部屋が原則25平方メートル以上を満たすか。住宅宿泊事業の面積基準とは考え方が違うため、届出の前提で見ていた物件がそのまま使えるとは限りません。
近隣への説明と苦情対応の体制を用意できるか。必要とされている措置であり、運営を始めたあとも続きます。
これらを満たせないなら、年間180日以内で足りるかを見て住宅宿泊事業法の届出を、日数が足りないなら旅館業法の許可を検討する、という順序になります。
次に読むもの
3つの制度のどれが必要かの判断は民泊に必要な許可とは、旅館業に当たるかどうかの判定は民泊と旅館業法の関係、届出で進む場合の日数管理は民泊の180日ルールとはにあります。
政令で定める要件の細目と、区域計画の認定状況は、内閣府と各自治体の資料で更新されます。この記事は観光庁と内閣府が公表しているページの内容を整理したものです。下限日数など条例で定められる部分は地域によって違うため、実際の可否は物件の所在地を管轄する自治体に確認してください。
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