民泊の許可・届出/解説

民泊に必要な許可とは?届出・許可・認定の違いを解説

民泊の手続きは、住宅宿泊事業法の届出、旅館業法の許可、特区民泊の認定の3つに分かれます。どれが必要かの判断基準と、手続きの性質・窓口・営業者の義務の違いを出典つきで整理しました。

「民泊の許可」を探しても見つからないのは、そういう名前の手続きが存在しないからです。日本国内でいわゆる民泊を行う場合、観光庁は旅館業法の許可を得る、国家戦略特区法(特区民泊)の認定を得る、住宅宿泊事業法の届出を行う、といった方法から選択することになると説明しています。必要なのは許可か、認定か、届出かのいずれかで、それぞれ別の法律にもとづく別の手続きです。

そして、この3つは名前が違うだけではありません。手続きの性質、窓口、事業者に課される義務がそれぞれ違います。届出は要件を満たして届け出るもの、許可は行政庁の許可を受けるもの、認定は要件に該当する事業として認定を受けるものです。どれになるかで、開業までの工程も、営業できる日数も変わります。

この記事では、3つの手続きの違いと、自分の場合にどれが必要かの判断を整理します。旅館業法の許可を取る具体的な手順は民泊の許可の取り方、住宅宿泊事業の届出の出し方は民泊開業の手順一覧で扱っています。

そもそも旅館業に当たるかどうか

出発点は、やろうとしていることが旅館業に当たるかです。厚生労働省は、旅館業を「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義し、「宿泊」を「寝具を使用して施設を利用する」ことと説明しています。生活の本拠地となるアパートなどは対象外とされています。

観光庁も、住宅を利用する場合であっても、有償で繰り返し宿泊所として提供する「民泊サービス」を行うことは基本的に旅館業にあたるため、旅館業法に基づく許可を得ることが必要になるとしています。

そのうえで例外の位置づけになるのが住宅宿泊事業法です。同法第3条第1項の届出をした者は、旅館業法第3条第1項の規定にかかわらず住宅宿泊事業を営むことができる、という関係で整理されています。届出は「許可の代わりに出すもの」ではなく、別の法律にもとづいて営業できるようにするものです。

3つの手続きは性質が違う

観光庁は3つの制度を比較して、許認可等の欄に旅館業法(簡易宿所)は「許可」、国家戦略特区法(特区民泊)は「認定」、住宅宿泊事業法は「届出」と示しています。

許可は、都道府県知事(保健所設置市の市長または特別区の区長)が与えるものです。厚生労働省は、営業者は許可が必要であり、構造設備基準に適合し、衛生基準を遵守する必要があるとしています。施設が基準を満たしていることを行政庁が確認したうえで営業が認められる形です。

届出は、住宅宿泊事業を営もうとする者が都道府県知事等に届け出るものです。要件を満たす住宅であることを書類で示して届け出ます。

認定は、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例で、観光庁は特区民泊を、外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約およびこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに、当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業と説明しています。国家戦略特区の区域として指定された地域で取り組まれており、東京都大田区をはじめ、大阪府や大阪市などが例として挙げられています。

住宅宿泊事業法の届出、旅館業法の許可、特区民泊の認定について、手続きの名称と窓口と所管省庁を並べた比較表
名前が違うだけでなく、誰が何を判断するかが違います。窓口も分かれるため、決めてから相談に行きます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」はじめに「民泊」とは(確認日 2026-08-20)

営業できる条件が変わる

手続きの違いは、そのまま営業の条件の違いになります。観光庁の比較によると次のとおりです。

営業日数は、旅館業法(簡易宿所)が制限なし、特区民泊が2泊3日以上の滞在が条件(下限日数は条例で定めるが、年間営業日数の上限は設けていない)、住宅宿泊事業法が年間提供日数180日以内(条例で実施期間の制限が可能)です。

住居専用地域での営業は、旅館業法(簡易宿所)が不可、特区民泊が可能(認定を行う自治体ごとに制限している場合あり)、住宅宿泊事業法が可能(条例により制限されている場合あり)です。

床面積の基準は、旅館業法(簡易宿所)が最低延床面積33㎡(ただし宿泊者数10人未満の場合は3.3㎡/人)、特区民泊が原則25㎡以上/室、住宅宿泊事業法が3.3㎡/人です。

所管省庁も分かれており、旅館業法は厚生労働省、国家戦略特区法は内閣府(厚生労働省)、住宅宿泊事業法は国土交通省・厚生労働省・観光庁とされています。

事業者に課される義務も違う

見落とされやすいのが、営業を始めたあとの義務の違いです。

厚生労働省は、旅館業の営業者について宿泊者名簿の備置が義務づけられているとしたうえで、特定感染症患者等や違法行為をするおそれのある者を除き、原則として宿泊を拒否できないとしています。宿泊拒否の制限は旅館業法に置かれた規定です。

一方、住宅宿泊事業法では、住宅宿泊事業者に対して衛生確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等が義務づけられています。家主不在型の場合は、これらの措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊管理業者に委託することが義務づけられます。

どちらにも宿泊者名簿の義務がある一方、求められる措置の中身と、委託の義務づけの有無が異なります。どの制度で営業するかは、開業後の運営体制にも影響します。

旅館業の営業者に課される義務と、住宅宿泊事業者に課される義務を左右に並べた比較図
どちらにも宿泊者名簿の義務がありますが、求められる措置と委託の義務づけが異なります。開業後の運営体制に効いてきます。 出典:厚生労働省 旅館業法(確認日 2026-08-20)

変更や廃止のときも手続きが要る

3つの手続きは、始めるときだけのものではありません。営業を続けられなくなったときにも、対応が必要になります。

住宅宿泊事業では、届出後に管理規約で住宅宿泊事業の実施が禁止された場合、事業を実施できなくなるため、管理組合と調整をしながら自治体に事業廃止の届出を行う必要があるとされています。届け出た内容が実態と合わなくなったまま放置しない、という考え方です。

観光庁が公表している施行状況にも、この動きが数字として表れています。令和8年7月15日時点で、住宅宿泊事業の届出件数は65,837件、うち事業廃止件数が23,767件と示されています。届け出た件数の累計に対して、廃止された件数が相当数にのぼっていることが分かります。

制度を選ぶときは、始める手続きだけでなく、続けられなくなったときにどうするかまで見ておいてください。

自分の場合にどれが必要かを判断する

判断は、次の順で絞れます。

まず、年間どれだけ営業したいかです。180日を超えて営業したいのであれば、住宅宿泊事業法の届出では足りません。旅館業法の許可を検討することになります。観光庁は、住宅宿泊事業の届出をせずに民泊サービスを行う場合には、簡易宿所営業で許可を取得するのが一般的だと説明しています。

次に、物件の立地です。住居専用地域にある物件では、旅館業法(簡易宿所)の営業ができません。年間を通して営業したい場合、立地の条件と衝突することがあります。

そして、地域が国家戦略特区かどうかです。特区民泊は対象の区域が限られるため、多くの場合は選択肢に入りません。

この3つで、たいていは1つに絞れます。絞れない場合や判断に迷う場合は、観光庁が旅館業法の適用について最寄りの保健所へ問い合わせるよう案内しているとおり、窓口に相談してください。

年間180日を超えて営業するかどうかで、必要な手続きが届出と許可に分かれる分岐図
国家戦略特区の区域であれば特区民泊も選択肢に入りますが、対象の地域が限られます。判断に迷う場合は保健所に相談してください。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」旅館業法について(確認日 2026-08-20)

手続きを省くという選択肢はない

最後に確認しておきます。届出も許可も認定もないまま宿泊料を受け取ることはできません。住宅を使って有償で繰り返し宿泊所として提供することは基本的に旅館業にあたるためです。

なお、旅館業法の適用とならないケースも公表されています。イベント開催時に自治体の要請に基づき自宅等を提供する場合や、移住希望者に対し売買または賃貸を目的とする空き家物件への短期居住で一定の措置が講じられている場合などです。ただし、いずれも条件が細かく定められています。自分のケースが当てはまると自己判断せず、保健所に確認してください。

許可を取る具体的な手順は民泊の許可の取り方、制度選択から開業までの全体像は民泊の始め方にまとめています。制度の運用と条例は自治体によって異なるため、最終的な判断は物件を管轄する窓口で確認してください。

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