民泊開業の流れ/解説

民泊開業の手順一覧|届出・消防・保健所など窓口別にやること

民泊開業では、都道府県知事等への届出、消防への相談、保健所への申請、管理業者との契約と相手ごとにやることが違います。窓口別の整理に加え、届出の出し方と着手順の一覧をまとめました。

民泊開業でやることを「手順」として並べると、実は相手が5つに分かれます。都道府県知事等、消防、保健所、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者です。それぞれ求められるものが違い、こちらが出すものと受け取るものも違います。

つまずきやすいのは、これらを1本の作業リストにしてしまうことです。相手が違えば進むスピードも違い、同時に進められるものと待つしかないものが混ざります。窓口ごとに「何を出すか」「何を受け取るか」「いつまでに終わらせるか」を分けて持つほうが、抜けが起きません。

この記事では、窓口ごとにやることを整理し、届出の出し方だけを追える節と、開業でやることの着手順の一覧をあわせて置きます。時間の流れとして全体を追いたい場合は民泊開業の流れ、揃えるものの一覧は民泊開業で必要な準備を参照してください。

窓口は制度の選択で変わる

まず前提として、どの制度で営業するかによって主たる窓口が変わります。住宅宿泊事業法の届出で進むなら、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等です。ここには、都道府県知事に代わって届出の受理・監督・条例制定事務を処理する保健所設置市の長(政令市、中核市等)や特別区の長(東京23区)が含まれます。

旅館業法の許可で進むなら、窓口は保健所です。観光庁は、許可を得るためには民泊サービスを行う予定の施設(住宅)の所在する都道府県(保健所を設置する市、特別区を含む)の保健所に申請する必要がある、と説明しています。許可の取得にあたっては、使用する施設の構造設備が基準を満たす必要があるとされています。

どちらの制度でも、消防への相談は必要です。制度の違いは、消防に行くかどうかではなく、主たる申請先がどこかに現れます。

住宅宿泊事業法の届出と旅館業法の許可について、窓口・手続き・営業日数・立地・施設の基準を並べた比較表
消防への相談はどちらの制度でも必要です。制度の違いは、主たる申請先がどこかに現れます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」旅館業法について(確認日 2026-08-20)

都道府県知事等にすること

住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととされています。届出書に必要事項を記入し、必要な添付書類とあわせて提出します。

記入する事項には、氏名または商号・名称と住所、住宅の所在地、連絡先、住宅の不動産番号、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎の別、住宅の規模、住宅に人を宿泊させる間不在とならない場合はその旨、賃借人・転借人の場合の承諾に関する事項、区分所有の建物の場合の規約に関する事項などがあります。委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号・名称または氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容も記入します。

届出が受理された後、この窓口とのやり取りは定期報告に移ります。届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、それぞれの月の前2月分の宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を報告します。報告は民泊制度運営システムで行えます。

住宅の所在地、不動産番号、建物の別、住宅の規模、不在とならない場合、承諾と規約、委託先を並べた確認リスト
委託をする場合は管理業者の登録番号と管理受託契約の内容まで書くため、契約は届出より前に済ませておく必要があります。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」届出に必要な情報、手続きについて(確認日 2026-08-20)

消防にすること

やることは、相談と、消防法令適合通知書の入手です。観光庁は、届出住宅を管轄する消防に相談したうえで消防法令適合通知書を入手することとし、詳細は消防庁の「民泊における消防法令上の取扱い等」を参照するよう案内しています。

この通知書は、住宅宿泊事業法で定められた必須事項ではありませんが、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)において都道府県知事は提出を求めることとされています。交付申請があった場合の消防法令適合状況の調査方法等の運用については、消防部局と連携を図り各自治体で判断する、とも示されています。自治体によって進め方に差があるということです。

判断そのものを事業者が行うことはできません。観光庁は、施設の実態に応じた判断は消防部局が行うものであり、事業者が誤った判断をした場合は消防法違反になる可能性があるため、消防部局に事前相談するよう勧めるとしています。相談は早い段階で始めてください。

保健所にすること

旅館業法の許可で進む場合の申請先です。観光庁は、旅館業を経営する場合は旅館業法に基づく営業許可を得なければならないとし、住宅宿泊事業の届出をせずに民泊サービスを行う場合には簡易宿所営業で許可を取得するのが一般的だと説明しています。

簡易宿所営業は、宿泊する場所を多数人で共用する構造および設備を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業とされています。許可の取得にあたっては構造設備が基準を満たす必要があり、基準は自治体の条例にも関わります。

なお、旅館業法の適用とならないケースもあります。イベント開催時に自治体の要請に基づき自宅等を提供する場合や、移住希望者に対し売買または賃貸を目的とする空き家物件への短期居住などです。観光庁は、旅館業法が適用されるか否かは最寄りの保健所へ問い合わせるよう案内しています。

住宅宿泊管理業者とすること

委託が必要かどうかは、条件で決まります。一の届出住宅の居室の数が5を超える場合、または人を宿泊させる間に不在等となる場合は、衛生の確保、安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性および利便性の確保、宿泊者名簿の備付け、周辺地域への悪影響の防止、苦情等への対応の措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。

やることは、委託先を選び、管理受託契約を結ぶことです。契約時に住宅宿泊管理業者から交付される書面に記載されている事項を届け出る必要があり、当該事項が契約書面に記載されている場合には、その契約書面の写しを提出することで届出を行ったものとみなされます。契約は届出より前に済んでいる必要がある、という順序になります。

委託する場合は業務の全てを委託する必要があり、一部を委託せずに自ら行うことはできないとされています。ただし、住宅宿泊管理業者に委託をしたうえで、その責任のもとで事業者が自ら行うことまでを否定するものではない、とも示されています。

委託先を選ぶときの手がかりも公表されています。観光庁は、届出住宅に住宅宿泊管理業者が常駐しない場合の苦情対応について、必要に応じて速やかに現地へ赴く必要があり、苦情があってから30分以内が目安、交通手段の状況等により現地に赴くまでに時間を要することが想定される場合は60分以内が目安と示しています。委託先の所在地と物件の距離は、契約前に確かめておく項目です。

また、住宅宿泊管理業者は事業年度終了後および契約期間満了後に、報告の対象期間、管理業務の実施状況、住宅の維持保全状況、周辺地域住民からの苦情の発生状況を記載した報告書を作成・交付して説明することとされています。委託して終わりではなく、報告を受けて確認する側の作業が事業者に残ります。

住宅宿泊事業者を中心に、都道府県知事等・消防・住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者との関係を結んだ関係図
委託しても定期報告と標識は事業者に残ります。相手ごとに出すものと受け取るものが違うため、作業も分けて管理します。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」住宅宿泊事業者編(確認日 2026-08-20)

住宅宿泊仲介業者とすること

宿泊サービス提供契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者に委託しなければなりません。やることは、委託先が登録を受けているかを確かめ、契約することです。観光庁は登録業者のリストを公表しています。

なお、仲介業者を通さずに事業者が自ら予約を受け付けることも可能とされています。第1種、第2種、第3種、地域限定旅行業の登録を受けている事業者であれば、あらためて住宅宿泊仲介業者の登録は不要とも示されています。

開業までにやることを一覧で確認する

窓口ごとに整理したものを、着手する順に並べ直すと次のようになります。「開業でやること」を1本のリストで確認したいときは、ここを見てください。

物件が決まる前にやることは3つです。賃貸なら賃貸人・転貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているかを確かめること、区分所有なら管理規約の定めと管理組合の意思を確かめること、その家屋が設備要件と居住要件を満たすかを確かめることです。ここが済むまで、その物件で営業できるかどうかは決まりません。

物件が決まったらやることは、消防への事前相談と、委託先の選定です。消防には図面を持って相談し、消防法令適合通知書の交付につなげます。人を宿泊させる間に不在等となる場合や居室の数が5を超える場合は、住宅宿泊管理業者と管理受託契約を結びます。仲介を委託するなら、登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者を選びます。

届出のためにやることは、届出書の記入と添付書類の取得です。委託する場合は管理業者の登録年月日・登録番号・管理受託契約の内容まで記入するため、契約が先に済んでいる必要があります。届出は原則として民泊制度運営システムを利用して行います。

営業を始める前にやることは、設備と案内の整備です。居室の床面積を宿泊者1人当たり3.3㎡以上確保し、清掃と換気の体制を作り、非常用照明器具を設けて避難経路を表示し、外国語で設備の使用方法・交通手段・災害時の通報連絡先を案内できるようにします。宿泊者名簿を備え付け、届出住宅ごとに標識を掲げます。

予約の受付についてやることは、経路を決めることです。登録を受けた住宅宿泊仲介業者や旅行業者に委託する方法と、事業者が自ら受け付ける方法があり、観光庁は仲介業者を通さずに事業者が自ら予約を受け付けることも可能としています。どちらか一方に決める必要はありません。

営業開始後にやることとして、定期報告が続きます。届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の15日までに、前2月分の宿泊日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を報告します。

届出はどこへ、どう出すのか

「民泊の届出」を一連の手続きとしてまとめると、次のようになります。窓口ごとの説明と重なる部分もありますが、届出だけを追いたいときはここを見てください。

出す相手は、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等です。都道府県知事に代わり、保健所設置市の長(政令市、中核市等)や特別区の長(東京23区)が届出の受理・監督・条例制定事務を処理することができるとされているため、実際の提出先は物件の所在地によって変わります。

出す方法は、原則として民泊制度運営システムを利用します。観光庁は、住宅宿泊事業の届出は原則としてこのシステムを利用して行うこととしていると説明しています。

出す内容は、住宅宿泊事業届出書と添付書類です。届出書には氏名または商号・名称と住所、住宅の所在地、連絡先、住宅の不動産番号、建物の種別、住宅の規模、不在とならない場合はその旨、承諾や規約に関する事項などを記入します。委託する場合は住宅宿泊管理業者の登録年月日・登録番号・管理受託契約の内容も記入するため、契約は届出より前に済ませておく必要があります。添付書類には、住宅の登記事項証明書、住宅の図面、居住要件を証する書類、承諾を証する書類、区分所有なら規約の写しなどが含まれます。官公署が証明する書類は届出日前3月以内に発行されたものに限られ、写し等は認められません。

出したあとは、住宅宿泊事業者としての義務が始まります。衛生と安全の確保、外国語での案内、宿泊者名簿の備付け、周辺地域への悪影響の防止、苦情等への対応、標識の掲示、そして年6回の定期報告です。

やめるときにも手続きがあります。観光庁は、届出後に管理規約で住宅宿泊事業の実施が禁止された場合は事業を実施できなくなるため、管理組合と調整をしながら自治体に事業廃止の届出を行う必要があるとしています。事業を続けられなくなったときは、放置せず自治体へ届け出ます。

なお、届出が必要なのは住宅宿泊事業法で営業する場合です。旅館業法で営業するなら手続きは届出ではなく許可になり、窓口も保健所に変わります。どちらに当たるかは民泊に必要な許可とはで整理しています。

手順を組むときの優先順位

先に着手すべきなのは、消防への相談と、委託先の選定です。どちらも相手の都合で日数がかかり、しかも届出の内容に影響します。届出書の記入と添付書類の取得は、この2つに目処が立ってからで間に合います。

揃える書類の一覧は民泊開業で必要な準備、個人として届け出る場合の記入事項は個人で民泊を始める方法にまとめています。届出後の運営そのものは民泊運営のカテゴリで扱います。

窓口ごとの受付方法、必要書類の様式、相談の予約方法は自治体によって異なります。着手前に、物件を管轄する都道府県等と消防、保健所のそれぞれに確認してください。

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