スマートロックを入れると、鍵を手渡す作業は無くなります。ただし、法令が求めていることは何も減りません。
住宅または居室の鍵の管理と、空室時における施錠の確保は、届出住宅の維持保全に含まれます。スマートロックはその鍵にあたり、同時に扉に付く設備でもあるため、管理する対象が増えるという言い方のほうが実態に近いところがあります。
この記事では「民泊 スマートロック 比較」で探される内容も扱いますが、機種の推奨や比較表は載せません。製品の優劣を示した公的な資料を確認できなかったためです。代わりに、法令の側から出てくる確認の観点を並べます。鍵をどう渡すかという手順は民泊の鍵の受け渡しにまとめました。
鍵の管理は届出住宅の維持保全に含まれる
出発点はここです。
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全について、人が居住し日常生活を営むために必要な機能を維持する必要があるとしています。
具体的に挙げられているのは、次のものです。
届出住宅に設ける必要がある台所、浴室、便所、洗面設備が正常に機能すること。人が日常生活を営む上で最低限必要な水道や電気などのライフライン。そしてドアやサッシ等の届出住宅の設備が正常に機能するよう保全すること。
さらに、空室時における施錠の確保と、住宅又は居室の鍵の管理も維持保全に含まれる、と明記されています。
スマートロックは扉に取り付ける設備です。したがって、ドア等の設備として正常に機能するよう保全する対象であり、同時に鍵そのものとして管理する対象でもあります。どちらか一方ではなく、両方にかかります。
委託義務があるなら、鍵の管理は管理業者の業務
自分で管理するのか、住宅宿泊管理業者に委託するのかで、鍵まわりの扱いが変わります。
委託が必要になるのは、届出住宅に人を宿泊させる間、事業者が不在となる場合などです。逆に、事業者が自ら管理業務を行う居室の数の合計が5以下であるときや、生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が同一の建物内などにあり、そこから発生する騒音その他の事象を認識できる場合には、委託しなくてもよいとされています。判定の詳細は民泊の家主居住型と家主不在型にあります。
委託する場合に効いてくるのが、分けて頼めないという決まりです。
同ポータルサイトは、住宅宿泊管理業務を委託する場合は一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することや、住宅宿泊管理業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められないとしています。ただし、委託を受けた住宅宿泊管理業者が、他の者に住宅宿泊管理業務を一部に限り再委託することは可能です。
つまり、委託義務がある事業者が「スマートロックの暗証番号の発行と変更だけは自分でやる」という形を取ることはできません。暗証番号を誰が発行し、誰が変更し、動かなくなったときに誰が現地へ行くのか。これらは管理業者の業務として整理することになります。
あわせて、届出住宅の維持保全に係る業務については、管理受託契約においてその対象範囲を明確に定める必要があるとされています。鍵と扉の扱いを契約書に書けるかどうかは、導入を決める前に確かめておく点です。
入れても残る義務と、入れるとかかる保全
スマートロックの導入で片づくものと、片づかないものを分けておきます。
左側は、鍵の方式を変えても内容が変わらないものです。本人確認、宿泊者名簿、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明、外国語での設備の使用方法の案内は、いずれも住宅宿泊事業者の業務として定められています。
右側は、スマートロックを入れたことでかかってくるものです。扉に付く設備が増えるため、維持保全の対象も増えます。
暗証番号を送ることは本人確認ではない
ここが最も誤解されやすいところです。
宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要があるとされています。
この措置は、対面または対面と同等の手段として、次のいずれも満たすICTを活用した方法等により行われる必要があります。
A 宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること。
B 当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること。
方法の例としては、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法が挙げられています。
スマートロックは扉を開ける手段であって、顔と旅券を鮮明に確認する手段ではありません。暗証番号をメッセージで送ったことをもって本人確認とすることはできない、という関係になります。
宿泊者のスマートフォンで解錠する方式を考えている場合は、もう一つ注意点があります。よくあるご質問では、宿泊者所有の機器による本人確認は、レンズ等の破損、充電不足など住宅宿泊管理業者の管理の及ばない要因により、適切な業務に支障を及ぼすおそれがあるため、適切な代替措置を予め用意せずに宿泊者所有の機器で行うことは認められないとされています。住宅宿泊管理業者は、遠隔で本人確認を行う場合には、自ら必要な機器を必ず用意し、確実に機能維持を行うことが必要です。
解錠を宿泊者の端末で行うこと自体を禁じたものではありませんが、本人確認の側を宿泊者の端末に寄せることはできないと読めます。非対面の運営全体の考え方は民泊のチェックイン方法にまとめました。
鍵にかかる決まりを層で見る
導入の可否は、次の層をすべて満たせるかで決まります。
上から順に確かめて、どこかで止まるようなら、その部分を埋めてから導入します。
機種の比較は載せません
「民泊向けのスマートロックはどれがよいか」を裏づける公的な資料は確認できませんでした。特定の製品を推奨した省庁の資料も、機種ごとの比較を公表した公的統計もありません。そのため、この記事に製品名と比較表は書いていません。
代わりに、法令の側から出てくる確認の観点を挙げます。これは製品を並べるためのものではなく、自分の物件で維持保全を守れるかを確かめるためのものです。
動かなくなったときに、空室時の施錠を確保できるか。 電池が切れた、通信が途絶えた、機器が故障したという場面で、扉が施錠された状態を保てるか。保てないなら、保つための手段を別に用意します。
扉が正常に機能する状態を保てるか。 ドア等の設備が正常に機能するよう保全することが求められています。取り付けによって既存の錠や扉の動作に影響が出ないか、原状に戻せるかを、賃貸物件では特に確かめます。
暗証番号や解錠の権限を、誰が発行し、誰が変更するか。 委託義務があるなら、これは管理業者の業務です。管理受託契約でその対象範囲を明確に定める必要があります。
宿泊者の機器に依存する部分はどこか。 解錠に使うのか、本人確認にも使うのか。本人確認を宿泊者の機器で行うことは、原則として認められていません。
設備の使用方法を外国語で案内できるか。 外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて届出住宅の設備の使用方法に関する案内をする必要があります。操作の手順が複雑になるほど、案内の分量が増えます。
取り付ける場所は自分の判断で決められるか。 分譲マンションで共用部分に関わる取り付けを行う場合は、建物の決まりが関係します。届出との関係は民泊と管理規約にあります。
次に読むもの
鍵をどの順序で渡すかは民泊の鍵の受け渡し、非対面のチェックイン全体は民泊のチェックイン方法、不在で運営する場合に残る義務は民泊の遠隔運営にあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。維持保全の範囲や本人確認の方法の解釈に迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口へ確認してください。
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