鍵の渡し方を先に決めようとすると、たいてい行き詰まります。手段そのものを定めた規定が無いからです。
代わりに決まっているのは、渡す前に終わっていなければならないことと、渡したあとも続くこと、そして誰が渡せるのかの3つです。この順序で組み立てると、対面にするかキーボックスにするかスマートロックにするかは、あとから決まります。
この記事では「民泊 キーボックス」で探される内容も扱います。スマートロックそのものの選び方は民泊のスマートロックにまとめました。
渡す前に本人確認が終わっている必要がある
順序が固定されているのはここです。
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要があるとしています。代表者のみの記載は認められません。
本人確認は、対面または対面と同等の手段として、次のいずれも満たすICTを活用した方法等により行う必要があります。
A 宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること。
B 当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること。
方法の例として、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法が挙げられています。
日本国内に住所を有しない外国人宿泊者については、宿泊者名簿の国籍及び旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとされています。旅券の写しの保存により、氏名、国籍及び旅券番号の欄への記載を代替することもできます。
呈示を拒まれた場合の対応も示されています。当該措置が国の指導によるものであることを説明して呈示を求め、さらに拒否する場合には、旅券不携帯の可能性があるものとして、最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行うこととされています。
鍵の受け渡しは、この時間軸の中では本人確認より後にあります。手段を変えても、この前後関係は動きません。
手段は法令で決まっていない
では、対面・キーボックス・スマートロックのどれを選べばよいのか。
どれを選んでも、満たすべき要件は同じです。手段ごとに基準が変わるわけではありません。
表を横に読むと分かるとおり、行が違っても列の中身は変わりません。選ぶ基準は法令の側ではなく、その要件を自分の物件と体制で確実に満たせるかどうかにあります。
対面なら本人確認と鍵の受け渡しを同じ場面でまとめられますが、到着時刻に人を合わせる必要があります。キーボックスとスマートロックは人を合わせずに済みますが、本人確認を別に用意することになります。
キーボックスを使うとき
キーボックスは仕組みが単純なぶん、扱いを間違えやすい面があります。
暗証番号は鍵そのものです。 住宅または居室の鍵の管理は届出住宅の維持保全に含まれる、とされています。番号を紙に書いて掲示したままにする、宿泊者が入れ替わっても番号を変えないといった運用は、鍵を配ったままにしているのと同じ状態になります。
空室時における施錠の確保も維持保全です。 誰も泊まっていない期間に、扉が施錠された状態を保てているか。前の宿泊者が持ち出した番号で開けられる状態のまま空室になっていないかを、退室後の作業に組み込みます。
箱そのものも設備です。 ドアやサッシ等の届出住宅の設備が正常に機能するよう保全することが求められています。ダイヤルが回らない、固定が緩んでいるといった状態を放置できません。
取り付ける場所は、建物の決まりに従います。 分譲マンションで共用部分に関わる取り付けを行う場合、判断は建物側にあります。管理規約と届出の関係は民泊と管理規約にまとめました。
そして、キーボックスは本人確認の手段ではありません。 番号を伝えたことは、顔と旅券を鮮明に確認したことにはなりません。非対面で運営するなら、本人確認の仕組みを別に用意します。
なお、キーボックスの機種や設置場所を推奨した公的な資料は確認できませんでした。そのため、この記事に製品名と設置位置の目安は書いていません。
鍵の受け渡しだけを誰かに頼むことはできない
「近所の知人に鍵の受け渡しだけ頼む」という形を考える人がいますが、委託義務がある場合には取れません。
委託が必要な場合、住宅宿泊管理業務は一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することや、住宅宿泊管理業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められないとされています。鍵の管理は維持保全に含まれるため、その一部だけを切り出して別の人に頼むことはできないという関係になります。
一方で、委託を受けた住宅宿泊管理業者が、他の者に住宅宿泊管理業務を一部に限り再委託することは可能です。現地の作業を別の会社が行うこと自体は、管理業者を通す形なら成り立ちます。
委託義務がない場合、つまり自ら管理する居室数の合計が5以下であるときなどは、事業者自身が鍵の管理を行います。判定と、そのとき自分に来る業務は民泊の自主管理にまとめました。
契約に落とすときの注意点もあります。届出住宅の維持保全に係る業務については、管理受託契約においてその対象範囲を明確に定める必要があるとされています。鍵の受け渡し、番号の変更、緊急時の対応が契約のどこに入っているかを、委託前に確かめてください。
渡したあとにも確認が要る
鍵を渡して終わりではありません。
長期の滞在について、定期的な清掃等の際に、チェックイン時に本人確認を行っていない者が届出住宅に宿泊するようなことがないよう、不審な者が滞在していないか、滞在者が所在不明になっていないか等について確認するようにされています。
さらに、宿泊契約が7日以上の場合には、定期的な面会等により上記の確認を行う必要があると明記されています。非対面で鍵を渡した場合でも、7日以上の予約では会いに行く前提になる、と読めるところです。
長期の予約を受けるかどうかは、この作業を組み込めるかで決まります。
退室後は空室時の施錠の確保に戻る
宿泊者が出たあとは、鍵の状態が空室時の扱いに戻ります。
空室時における施錠の確保と住宅又は居室の鍵の管理が維持保全に含まれる以上、退室後に確かめることは決まってきます。扉が施錠されているか。前の宿泊者が知っている番号や権限が残っていないか。次の宿泊者に渡す前に、鍵として機能する状態にあるか。
清掃の作業と同じ回転で回るため、民泊の清掃の手順に並べて組み込むのが現実的です。
次に読むもの
スマートロックを選ぶときの観点は民泊のスマートロック、非対面のチェックイン全体は民泊のチェックイン方法、委託せずに運営する場合は民泊の自主管理にあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。本人確認の方法や委託の範囲について判断に迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口へ確認してください。
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