物件を2つ、3つと増やすとき、いちばん効いてくるのは作業量ではありません。何が「届出住宅ごと」に増え、何が事業者側でまとめられるのかという区別です。
ここを取り違えると、委託が要らないつもりでいたのに要ることになったり、標識の掲示が漏れたりします。単位の違いから整理します。
自主管理できる条件そのものは民泊の自主管理、委託先の選び方は民泊の運営代行にまとめました。
届出住宅ごとに増えるもの
まず、物件の数だけ増えるものです。
標識。 観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、見やすい場所に、標識を掲げなければいけませんとしています。物件が増えれば、そのぶん掲示する場所も増えます。
定期報告。 届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月の内容について都道府県知事等に報告しなければいけません。 報告するのは、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳です。物件ごとに数え、物件ごとに出します。
届出そのもの。 よくあるご質問は、届出住宅ごとに、住宅の要件を満たす必要があり、届出住宅の重複は認められませんとしています。あわせて、複数の届出住宅で浴室や便所等を共有することはできないと示されています。1つの建物を分けて2件として届け出るなら、それぞれが台所・浴室・便所・洗面設備の要件を満たす必要がある、ということです。
委託が要るかどうかは「合計」で決まる
ここが複数物件で最も間違えやすい点です。
委託が必要になるのは、届出住宅の居室の数が5を超える場合、または人を宿泊させる間、事業者が不在等となる場合です。
そして委託が不要となる側の条件は、届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が5以下であるときとされています。
「合計」です。 1件あたり2居室の物件を3件持てば、合計6居室になります。1件ずつ見れば5以下でも、合計で5を超えた時点で委託が必要になります。物件を増やすときは、まずこの合計を数えてください。
不在にならない形で複数持てるか
もう一方の条件、不在についてです。
よくあるご質問は、別荘や共同住宅の住戸等を活用した届出住宅で事業者が滞在する場合について、同一の住宅宿泊事業者が複数の別荘や共同住宅の住戸等を不在とならないものとして届出することは可能としています。
ただし、条件が付いています。届出者が日常の居住のために使用していない住宅を不在とならないものとして届出する場合、届出者が当該住宅に滞在できる日にのみ宿泊者を募集するなど、宿泊させる間に確実に届出者がその住宅に滞在することが必要不可欠であり、届出受付主体においてそのことがいかに担保されるかを確認する必要があります。 そのうえで、特に、複数の住宅を不在とならないものとして届出する場合は注意が必要ですと念を押されています。
同じ日に2か所へ滞在することはできません。複数物件を不在にならない形で回すなら、募集する日を物件ごとにずらすことになります。稼働の上限がその分下がる点は、収支の見込みに直接効きます。
一つの届出住宅として届け出る場合
共同住宅の複数住戸や、同一敷地内の母屋と離れをまとめて届け出る形もあります。
この場合、共同住宅や長屋の場合は住戸ごとに、同一敷地内の複数棟の場合は棟ごとに届出事項を記載する必要があります。まとめて1件として届け出ても、中身は住戸ごと・棟ごとに書き分けます。
安全確保の措置と不在の判断も同じです。よくあるご質問は、届出者の不在の判断も含め、共同住宅や長屋の場合は住戸ごと、同一敷地内の複数棟の場合は棟ごとでそれぞれ適用を判断しますとしています。
まとめて届け出ても、判断の単位はまとまりません。
まとめられるもの
一方で、事業者の側でまとめられるものもあります。
宿泊者名簿の置き場所。 名簿を備え付ける場所は、届出住宅または住宅宿泊事業者の営業所又は事務所のいずれかです。ここでいう営業所または事務所とは、住宅宿泊事業者の住宅宿泊管理業務の拠点等を指すとされています。物件ごとに置く必要はなく、拠点へまとめられます。保存期間は3年間です。詳しくは民泊の宿泊者名簿にあります。
届出の添付書類。 よくあるご質問は、一の事業者が複数の届出を行う場合等において、当該届出を受ける行政庁が当該事業者及びその役員等に関して既存の届出書等により取得している情報については、行政庁の判断で関係する書類の提出を省略して差し支えありませんとしています。行政庁の判断であって、こちらの都合で省けるものではありませんが、同じ書類を毎回そろえ直すとは限らない、ということです。
届出の手続き。 住宅宿泊事業の届出は、原則として民泊制度運営システムを利用して行うこととしています。 定期報告についても、電子システムを利用して行うことができますと案内されています。
委託するときも「一の業者へ全部」
物件が増えて委託することになった場合の形です。
委託は、一の住宅宿泊管理業者に委託しなくてはならず、複数の者に分割して委託することや、住宅宿泊管理業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められません。物件Aは自分で、物件Bは業者に、という分け方はできます(届出住宅ごとに判断するため)が、同じ届出住宅の中で業務を分けることはできません。
委託先を選ぶときは、苦情があってから現地に赴くまでの時間は30分以内を目安、事情により60分以内を目安という記述が効いてきます。物件が地理的に散らばるほど、1社で全部を受けられる相手は限られます。選び方は民泊の運営代行にまとめました。
増やす前に確かめる順序
物件を増やすときは、次の順で確かめます。
自ら管理する居室の合計を数える。 5を超えると委託が必要です。物件ごとではなく合計です。
不在にならない形を維持できるか確かめる。 複数物件を不在にならないものとして届け出るなら、滞在できる日にのみ募集することが求められます。
新しい物件が単独で住宅の要件を満たすか確かめる。 届出住宅の重複は認められず、浴室や便所等の共有もできません。
標識と定期報告が増えることを見込む。 どちらも届出住宅ごとです。報告は年6回、前2月分をまとめて出します。
名簿の置き場所を決める。 拠点へまとめるなら、営業所または事務所に備えます。
委託するなら、全物件を1社で受けられるかを確かめる。 駆けつけの目安が距離の条件になります。
次に読むもの
委託が要るかどうかの判定は民泊の自主管理、委託先の選び方は民泊の運営代行、名簿の備付けと保存は民泊の宿泊者名簿にあります。
この記事は観光庁の民泊制度ポータルサイトが公表しているページを整理したものです。届出の単位や不在の判断について迷う場合は、届出先の都道府県知事等の窓口へ確認してください。条例で実施期間が制限されている区域もあるため、物件ごとに所在地のルールも確かめてください。
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