結論から書きます。届出も許可もない状態で宿泊料を受け取ることはできません。厚生労働省は、旅館業法第10条について、許可を受けないで旅館業を経営した者は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとされている、と説明しています。罰則が定められている行為であり、手続きを省くという選択肢は制度上ありません。
前提として、住宅を使う場合も旅館業の範囲に入ります。観光庁は、住宅を利用する場合であっても、有償で繰り返し宿泊所として提供する「民泊サービス」を行うことは基本的に旅館業にあたるため、旅館業法に基づく許可を得ることが必要になるとしています。そのうえで、住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をした者は、旅館業法第3条第1項の規定にかかわらず住宅宿泊事業を営むことができる、という関係で整理されています。
この記事では、罰則として何が定められているか、届出をしていても罰則の対象になる場合、そして実務上も無届では営業が成り立たない仕組みを整理します。どの手続きが必要かの判断は民泊に必要な許可とはで扱っています。
届出をしても、義務を守らなければ罰則がある
見落とされやすいのが、罰則は無許可営業だけの話ではないという点です。観光庁は、住宅宿泊事業者にかかる罰則を一覧で公表しています。
6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、またはこれの併科とされているのは、虚偽の届出をした者と、業務廃止命令に違反した者です。
50万円以下の罰金とされているのは、住宅宿泊管理業者および住宅宿泊仲介業者への委託義務に違反した者です。人を宿泊させる間に不在等となる場合や、一の届出住宅の居室の数が5を超える場合に委託しないまま営業することが、これに当たります。
30万円以下の罰金とされているのは、変更の届出をしていない者または虚偽の変更の届出をした者、宿泊者名簿の備付け義務や標識の掲示義務に違反した者、定期報告をしていない者または虚偽の報告をした者、業務改善命令に違反した者、報告徴収に応じない者または虚偽の報告をした者、立入検査を拒み・妨げ・忌避した者、質問に対して答弁しない者または虚偽の答弁をした者です。
20万円以下の過料とされているのは、事業廃止の届出をしていない者または虚偽の事業廃止の届出をした者です。
つまり、届出を済ませたあとも、名簿、標識、定期報告、変更や廃止の届出を怠れば罰則の対象になり得ます。開業の手続きより、続けるための手続きのほうが項目が多いという構造です。
仲介サイトに掲載できない仕組みがある
法令の話とは別に、実務の側でも無届の営業は成り立ちにくくなっています。宿泊者を集める経路が閉じているためです。
観光庁は、住宅宿泊仲介業者に対して、掲載前に住宅宿泊事業者から通知される商号、名称または氏名、届出住宅の所在地および届出番号を確認する必要があるとし、確認ができない物件は民泊仲介サイトへ掲載してはいけないとしています。掲載する物件には届出番号などを表示し、利用者に適法性を周知することも求められています。
さらに、民泊仲介サイトに掲載の届出物件を6か月ごとに観光庁へ報告する必要があるとされ、違法物件や情報の相違が判明した場合は、観光庁の求めに応じて速やかに削除する義務があるとされています。
届出番号がなければ掲載されず、掲載されなければ仲介経由の予約は入りません。手続きを飛ばして始めても、宿泊者を集める手段が残らないということです。
旅館業法が適用されないケースはある
例外がまったくないわけではありません。ただし条件は細かく定められており、当てはまる範囲は限られます。
厚生労働省は、いわゆるイベントホームステイ(イベント民泊)について、年数回程度(1回当たり2〜3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、イベント開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いものについては、旅館業法の営業許可を受けずに宿泊サービスが提供できるとしています。ガイドラインも作成されています。
観光庁も、旅館業法の適用とならないケースとして、イベント開催時に自治体の要請に基づき自宅等を提供する場合のほか、移住希望者に対し売買または賃貸を目的とする空き家物件への短期居住で一定の措置が講じられている場合、地方公共団体から依頼を受けた地域協議会等が宿泊料に相当する対価を受けず体験学習の指導の対価のみを受ける場合などを挙げています。
いずれも自治体の関与や、対価の性質といった条件が前提になっています。自分のケースが当てはまると自己判断しないでください。観光庁は、旅館業法が適用されるか否かは最寄りの保健所へ問い合わせるよう案内しています。
「知らなかった」では済まない項目がある
無届で始めてしまう典型的な経路は、悪意ではなく認識の食い違いです。次の3つは特に取り違えが起きやすいところです。
友人や知人に貸すだけなら大丈夫、という理解は正しくありません。旅館業は宿泊料を受けて人を宿泊させる営業と定義されており、相手が誰かではなく、宿泊料を受けて反復継続して提供するかどうかで判断されます。
短期間だけ試す、という進め方も同じです。有償で繰り返し宿泊所として提供する時点で旅館業にあたるとされており、期間の長短で適用が外れるわけではありません。
届出を出したから終わり、という理解も危険です。上に挙げたとおり、名簿、標識、定期報告、変更や廃止の届出には、それぞれ罰則が定められています。
違法な民泊は利用者側にも周知されている
観光庁は事業者向けだけでなく、利用者に向けても違法な民泊を利用しないよう呼びかけています。仲介サイトに届出番号が表示される仕組みも、利用者が適法かどうかを確かめられるようにするためのものです。
つまり、無届で営業した場合、宿泊者からも近隣からも見分けがつく状態に置かれます。届出住宅には見やすい場所への標識の掲示が義務づけられており、標識がないこと自体が外から分かります。近隣からの苦情が自治体に寄せられれば、報告徴収や立入検査の対象になり得ます。報告徴収に応じない者、立入検査を拒み・妨げ・忌避した者には30万円以下の罰金が定められています。
隠して続けられる性質の事業ではない、という前提で計画してください。
始める前に確認する先
判断に迷うなら、営業を始める前に窓口へ確認してください。旅館業法の適用については保健所、住宅宿泊事業の届出については物件の所在地を管轄する都道府県知事等が相手になります。都道府県知事に代わり、保健所設置市の長(政令市、中核市等)や特別区の長(東京23区)が届出の受理・監督等を処理することができるとされています。
なお観光庁は、届出にあたって行うことが望ましい事項として、届出者から周辺住民に対し住宅宿泊事業を営む旨を事前に説明すること、事業を取り巻くリスクを勘案して火災保険や第三者に対する賠償責任保険等の適切な保険に加入することを挙げています。義務ではありませんが、近隣とのトラブルを避けるうえでは実務的な備えになります。
手続きの選び方は民泊に必要な許可とは、旅館業法の許可で進む場合は民泊の許可の取り方、届出で進む場合の手順は民泊開業の手順一覧にまとめています。
罰則の内容と制度の運用は改定されることがあります。実際の判断は、厚生労働省と観光庁のページ、そして所管の窓口で確認してください。
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