民泊の利益率/解説

民泊の利益率|同じ物件でも帳簿の作り方で変わります

民泊の利益率は、分子の所得と分母の売上のどちらも帳簿の作り方で動きます。所得区分で損失と控除の扱いが分かれること、消費税の経理方式で売上金額の中身が変わること、按分と費用化の時期で分子がずれることを、国税庁の公表資料で確かめます。

利益率は、物件の成績を表す数字のように見えます。ところが民泊で実際に出てくる利益率は、帳簿の作り方の結果として現れる数字です。同じ物件、同じ入金、同じ支払いでも、所得をどの区分で申告するか、消費税をどちらの方式で経理するか、自宅と兼用している部分をどう按分するかで、比率の分子と分母が両方とも動きます。

式そのものは単純で、利益を売上で割るだけです。問題は、民泊では分子の「利益」が確定申告上の所得金額として形を与えられ、分母の「売上」も経理の方式によって中身が変わることです。そのためこの記事では、比率を計算する前に固定しておく欄を順に確かめます。扱うのは、所得区分、消費税の経理方式、費用になる年、家事関連費の按分の4つです。投資した金額に対する戻りを見る指標は分母がそもそも違うので民泊の利回りはどう計算する?に分けてあり、受け取った金額が手元に残るまでの段は民泊の収益はどう決まるかにまとめています。

先に、確認できなかったことを書きます。民泊の利益率の相場を集計した公的な統計を確認できませんでした(確認日 2026-10-24)。そのためこの記事に「平均は何パーセント」という数値はありません。ただし、相場が無いこと自体より厄介な事実があります。他人が出した利益率と自分の利益率が、同じ定義で計算されているとは限りません。その理由は最後の2つの節で具体的に並べます。

分子は「所得」で、所得の区分が先に決まります

利益率の分子は、感覚としては「手元に残った額」です。しかし申告の場面では、所得金額という形で定義されます。国税庁は、住宅宿泊事業による所得金額の計算について、住宅宿泊事業に係る収入金額から必要経費を控除して算出すると示しています。つまり分子は、入金額の残りではなく、収入金額から必要経費を引いた結果です。

そして民泊の場合、その所得がどの区分に入るかが先に決まります。国税庁は「自己が居住する住宅を利用して住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業を行うことによる所得は、原則として雑所得に区分されます」としています。例外は2つ示されています。ひとつは、不動産賃貸業を営んでいる方が次の賃貸契約が締結されるまでの間に当該不動産を利用して一時的に住宅宿泊事業を行った場合で、この所得は「雑所得とせず、不動産所得に含めていただいても差し支えありません」とされています。もうひとつは「専ら住宅宿泊事業による所得により生計を立てているなど、その住宅宿泊事業が、所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合」で、このときは「その所得は事業所得に該当します」と書かれています。

ここで押さえておきたいのは、区分は選ぶものではなく、事実をあてはめて決まるという点です。「事業所得にしたほうが有利だから事業所得で出す」という順番では決められません。生計をどう立てているか、事業として行われていることが明らかかどうかという事実の側が先にあります。

住宅宿泊事業による所得の区分を、専らこの所得で生計を立てているなど所得税法上の事業として行われていることが明らかなら事業所得、不動産賃貸業を営んでいて次の賃貸契約までの間に一時的に行った場合は不動産所得に含めて差し支えない、どちらにも当たらなければ原則として雑所得という順序で判定し、区分ごとに損益通算と青色申告特別控除の扱いが分かれることを示した判定図
番号の順に事実をあてはめ、当てはまったところで止めます。右の列は、その区分に入った結果として決まることです。 出典:住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)(国税庁)、No.2072 青色申告特別控除(国税庁 タックスアンサー)(確認日 2026-10-24)

区分が決まると、同じ分子の数字に対して周りの扱いが変わります。次の節はそこを見ます。

雑所得に入ると、損失と控除の扱いが変わります

利益率を見る目的が「続けられるかどうかの判断」なら、比率の値そのものより、赤字になった年にどうなるかのほうが効きます。ここで所得区分が直接かかわってきます。

国税庁のタックスアンサーは、雑所得について「雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません」と示しています。給与所得がある人が民泊で赤字を出しても、その赤字を給与から引くことはできないという意味です。比率が負になるだけで、他の所得との相殺には進めません。開業の年に設備の支出が重なると分子が負になりやすいので、この点は比率を眺める前に知っておく必要があります。

控除の側も区分で分かれます。青色申告特別控除の55万円と65万円は、要件のひとつとして「不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること」が挙げられています。10万円の控除についても、対象は不動産所得の金額、事業所得の金額または山林所得の金額です。要件に雑所得は入っていません。同じ利益率の2人でも、控除を使える区分かどうかで税引後の手残りが変わります。

記録の作り方にも、収入金額の大きさで線が引かれています。令和4年分以後の所得税では、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があるとされています。逆に、前々年分の収入金額が300万円以下の場合には、総収入金額および必要経費に算入すべき金額を、その年において収入した金額および支出した費用の額とすることができる現金主義の特例があります。

公表されている内容 利益率を見るときに効いてくること
雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算できません 赤字の年は比率が負になるだけで、他の所得からは引けません
青色申告特別控除の55万円・65万円は、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいることが要件です 比率が同じでも、控除を使える区分かどうかで税引後の手残りが変わります
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、現金預金取引等関係書類の保存が必要です 規模が上がると、記録の持ち方が義務として決まります
前々年分の収入金額が300万円以下の場合、現金主義の特例を選べます 選ぶと、分子が現金の出入りに近い形になります
前々年分の収入金額が1,000万円を超える人が確定申告書を提出する場合、総収入金額や必要経費の内容を記載した書類の添付が必要です 分子と分母の内訳を、外へ出せる形で持つことになります

表の右の列は、どれも比率の計算式には出てきません。それでも同じ比率の価値を変えてしまうものです。固定費のうち法令にひもづいて止められない費用は民泊の固定費削減で切り分けているので、分子を押し下げている費用の性質はそちらと合わせて見てください。

分母は、消費税の経理方式で変わります

分子の話が続いたので、分母に移ります。利益率の分母は売上ですが、民泊では「いくら入金されたか」と「売上金額としていくら記録するか」が一致しません。消費税の扱い方が2通りあるためです。

国税庁のタックスアンサーは「消費税の課税事業者である事業者は、所得税または法人税の所得金額の計算に当たり、消費税および地方消費税について、税抜経理方式または税込経理方式のどちらを選択してもよいこととされています」と示しています。税抜経理方式では、課税売上げに係る消費税等の額は仮受消費税等とし、課税仕入れに係る消費税等の額は仮払消費税等として経理します。税込経理方式では、課税売上げに係る消費税等の額は売上金額、課税仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて経理し、消費税等の納付税額は租税公課として必要経費に算入します。

ここが利益率に効きます。税込経理方式では、分母になる売上金額に消費税等の額が入ります。税抜経理方式では入りません。同じ入金額でも分母が変わるため、比率はそれだけで動きます。

さらに、方式を選べない立場があります。同じページは「消費税の納税義務が免除されている事業者(免税事業者)は、その行う取引について税抜経理方式で経理をしている場合であっても、税込経理方式を適用して所得税または法人税の所得金額を計算することになります」としています。納税義務の免除については、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には原則として納税義務が免除され、ただし1,000万円以下であっても適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には免除されないと示されています。

税込経理方式では課税売上げに係る消費税等の額を売上金額に含めて経理し納付税額は租税公課として必要経費に算入すること、税抜経理方式では消費税等の額を仮受消費税等とし分母に入らないこと、免税事業者は税抜経理方式で経理をしていても税込経理方式を適用して所得金額を計算することを左右で比べた図
左右の違いは、分母に消費税等の額が入るかどうかです。帯の長さは項目の違いを示すもので、金額ではありません。 出典:No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理(国税庁 タックスアンサー)、No.6501 納税義務の免除(国税庁 タックスアンサー)(確認日 2026-10-24)

免除されている間は税込経理方式で計算することになり、課税事業者になってから方式を選ぶ場面が来ます。そこで方式が変わると、同じ事業の前後の年で分母の定義が変わります。自分の数字の時系列を並べるときは、どの年がどちらの方式かを添えておかないと、推移を読み違えます。宿泊者が支払う合計のうちどこまでが自分の受取かという内訳は民泊の宿泊料金の決め方、掲載先の手数料が乗る金額は民泊のOTA手数料削減で扱っています。

国税庁 タックスアンサー「No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」のページのファーストビュー
引用キャプチャ この節が引いている公式ページです。課税事業者がどちらの方式を選択してもよいこと、税抜経理方式では消費税等の額を仮受消費税等とすること、免税事業者は税込経理方式を適用して所得金額を計算することが、同じページに書かれています。 出典:No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理(国税庁 タックスアンサー)(確認日 2026-10-24/表示のファーストビュー)

支出した年と、必要経費になる年はずれます

分母を固定したら、分子の時期の話が残ります。お金が出た年と、その金額が必要経費になる年は同じではありません。開業の年に利益率が極端に低く出たり、翌年に理由もなく改善したように見えたりするのは、多くの場合この差が原因です。

国税庁は減価償却について、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続だと説明しています。そのうえで、使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とするとしています。取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下で全部または特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を、業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができると示されています。

時期の決まりは、資産以外の費用にもあります。必要経費に算入する時期は、原則としてその年において債務の確定した金額です。債務が確定しているというためには、12月31日までに債務が成立していること、12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、12月31日までに金額が合理的に算定できることの3つが必要とされています。支払った日ではなく、債務が確定した日で見るということです。

使用可能期間が1年未満または取得価額10万円未満のものは業務の用に供した年に全額、取得価額10万円以上20万円未満の一括償却資産は取得価額の合計額の3分の1を3年間の各年分に算入、それ以外の減価償却資産は耐用年数に応じて各年へ配分することを、年ごとのレーンで並べた図
同じ支出でも、取得価額の区分によって必要経費になる年が分かれます。帯は算入する年を示すもので、金額の大きさではありません。 出典:No.2100 減価償却のあらまし(国税庁 タックスアンサー)、No.2210 やさしい必要経費の知識(国税庁 タックスアンサー)(確認日 2026-10-24)

前の節で触れた現金主義の特例を選んだ場合は、収入した金額と支出した費用の額で計算できるため、この時期のずれは小さくなります。どちらで計算しているかによって、同じ年の分子が変わります。開業の前から支出の一覧を作る場面は民泊の収支計画、毎月出ていく費用の区分は民泊のランニングコストにまとめてあります。

自宅と兼用なら、按分の割合が分子を決めます

自己が居住する住宅を使って民泊を行う場合、分子にはもうひとつ変数が入ります。ひとつの支出が業務用と生活用の両方にかかわるときの按分です。

国税庁は、水道光熱費や通信費のように、一つの支出が業務用部分と生活用部分の両方に関わりがある費用を家事関連費と呼び、業務の遂行上直接必要であった部分が明らかに区分できる場合のその部分に相当する金額に限られるとしています。必要経費の一般的な説明でも、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合の、その区分できる金額に限られると書かれています。

按分の方法としては、業務の内容や資産の利用状況などを総合勘案して判断するとされ、例として、住宅宿泊事業における届出書等に記載した事業に利用している部分の床面積が総床面積に占める割合や、実際に宿泊客を宿泊させた日数を基にするなど、合理的な方法により按分して計算する必要があるとされています。

按分の基にできるものとして示されている考え方 自分で用意しておく記録
事業に利用している部分の床面積が総床面積に占める割合 届出書等に記載した床面積と、総床面積
実際に宿泊客を宿泊させた日数 日ごとに宿泊させたかどうかが分かる記録
業務の内容や資産の利用状況などの総合勘案 何を業務用と判断したかを書き残したもの

按分率は、分子を直接動かします。割合を低く置けば必要経費が減って利益率は高く出ますが、口座から出た現金は1円も変わりません。利益率を良く見せる方向に割合を動かす余地がある、という意味ではありません。合理的な方法で按分した結果がその割合であって、比率を整えるために選ぶものではないということです。だからこそ、割合を決めた根拠を残しておく必要があります。委託している業務の範囲は民泊の運営代行にあります。

他人の利益率と比べられない4つの理由

ここまでの4つの欄は、どれも「正しい値が1つに決まる」ものではありません。事実によって区分が決まり、立場によって方式が決まり、資産によって年が分かれ、物件によって割合が変わります。その結果、次の4点がそろわない限り、2つの利益率は同じ土俵に乗りません。

1つ目は所得区分です。雑所得として計算した分子と、事業所得として青色申告特別控除まで含めて考えた手残りは、同じ名前で呼べません。2つ目は経理方式です。税込経理方式の分母には消費税等の額が入り、税抜経理方式の分母には入りません。3つ目は費用になる年です。開業の年に全額を算入した人と、3年間に分けて算入した人では、どの年の分子も一致しません。4つ目は按分の割合です。自宅と兼用している物件と、1棟すべてを事業に使っている物件では、同じ水道光熱費でも分子への入り方が違います。

この4点は、他人の数字について公表されることがほとんどありません。そのため、外から見える「民泊の利益率」は、比べるための数字としてはほぼ使えません。相場の統計が無いことより、この定義のばらつきのほうが実務では厄介です。使えるのは、同じ定義で揃えた自分の数字の推移だけです。稼働の指標も同じ事情があるので、数え方を先に固定する手順は民泊の稼働率にまとめました。

自分の利益率を出す前に、4つの欄を埋めます

最後に、計算に入る前の作業をまとめます。比率を出すことが目的ではなく、比率が何を測っているかを言える状態にすることが目的です。

確定させる欄 材料になるもの 確定していないときの扱い
所得区分 生計をどう立てているか。事業として行われていることが明らかかどうかという事実 原則の区分で出し、区分が変わる条件を書き添えます
経理方式 課税事業者か免税事業者か。課税事業者ならどちらの方式を選んだか 免除されている間は税込で出し、方式が変わった年で断面を分けます
費用になる年 取得価額と使用可能期間。債務が確定した日 支出の一覧と、必要経費になる年を別の列に持ちます
按分の割合 床面積の割合、宿泊客を宿泊させた日数、利用状況 割合を決めた根拠を残し、変えた年をまたいで比べません

4つが埋まると、利益率は「良い・悪い」を言う数字ではなく、どこを動かせば何が動くかを示す数字になります。分母を動かすなら料金と稼働、分子を動かすなら費用の発生条件と按分、という具合に、打ち手の置き場所も分かれます。公表されている資料で確かめられるのはここまでで、金額の目安は出てきませんが、自分の帳簿の中にある材料であれば、どの欄も今日のうちに埋められます。

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