宿泊旅行統計/データ

宿泊旅行統計調査の見方|公表段階と集計区分を確かめて使う

観光庁の宿泊旅行統計調査を民泊運営者が読むための記事です。第1次速報・第2次速報・年の確定値という公表段階、施設所在地や宿泊施設タイプの集計区分、住宅宿泊事業の宿泊実績との違い、層化基準の変更が前年比に与える影響を整理します。

宿泊旅行統計調査は、観光庁が全国の宿泊施設を対象に毎月行っている統計です。数値を引用するときに必ず確かめるのは二つで、対象月に加えて第1次速報値・第2次速報値・年の確定値のどの段階かということと、どの集計区分の値かということです。この二つを外すと、同じ月の別の数値と比べることになります。

もう一つ、民泊の運営者にとって前提になることがあります。住宅宿泊事業の届出住宅の実績は、この調査ではなく、住宅宿泊事業法にもとづく定期報告の集計として別に公表されています。自分の物件に近い数字を探すときは、いま見ているのがどちらの統計なのかを先に分けてください。

この記事では、調査が何を集めているか、公表が三段階に分かれること、どこまで細かい区分で見られるか、民泊の実績統計との違い、2026年1月分調査からの層化基準の変更、そして自施設の判断へ持ち込むときの限界を、観光庁と政府統計の総合窓口に掲載されている表記にそって整理します。

何を集めた統計かを先に確かめる

政府統計の総合窓口は、この調査の目的を「我が国における日本人・外国人の宿泊旅行の実態等を把握し、観光行政の基礎資料を得ることを目的」と案内し、得られる結果として「延べ宿泊者数・実宿泊者数、客室稼働率、国籍別の延べ宿泊者数等が分かります」と示しています。調査は月ごとに行われ、全国の宿泊施設が対象です。

観光庁の調査ページには、調査の対象に従業者数9人以下の施設も含まれることが示されています。宿泊施設の側から見ると、この統計は外から観測された数字ではなく、施設が報告した内容の集計です。報告の方法も、政府統計オンライン調査システム、電子メール方式、紙の調査票が案内されています。自分の施設が調査票を受け取る側になることもある、という前提で読むほうが実態に近くなります。

用語の定義は、同じ調査ページに「宿泊旅行統計調査の概要」と「用語の解説」として掲載されています。延べ宿泊者数、実宿泊者数、客室稼働率、定員稼働率の算式はそこに書かれているため、この記事では算式を引き写しません。計算の中身を確かめるときは、必ずその資料を開いてください。指標の名前が同じでも、予約管理システムが画面に出す稼働率と、統計の定義が一致しているとは限らないためです。

同じ月の数値は三段階で置き換わる

観光庁の調査ページは、調査結果を第1次速報、第2次速報、確定値という区分で掲載しています。同じ月の延べ宿泊者数でも、公表の段階が違えば異なる数値になり得ます。社内の資料や記事へ転記するときは、対象月だけでなく段階まで書き残してください。段階を落とすと、あとで数値が更新されたときに差し替えるべきかどうかを判断できなくなります。

第1次速報値、第2次速報値、年の確定値の順に同じ月の数値が置き換わる流れと、各段階の扱い方を並べた図
第1次速報値から年の確定値へ、同じ月の数値が段階的に置き換わります。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(確認日 2026-09-03)

たとえば2026年8月31日に公表された発表では、2026年7月分が第1次速報、2026年6月分が第2次速報として、同じページに並んでいます。両方の月を単純に並べると、確定の度合いが違う数値どうしを比べることになります。並べること自体は問題ありませんが、どちらがどの段階かを表の中に残す必要があります。

項目 2026年7月(第1次速報) 2026年6月(第2次速報)
延べ宿泊者数 5,467万人泊(前年同月比3.5%減) 4,582万人泊(前年同月比8.4%減)
日本人延べ宿泊者数 4,110万人泊(前年同月比3.1%減) 3,360万人泊(前年同月比6.3%減)
外国人延べ宿泊者数 1,358万人泊(前年同月比4.6%減) 1,222万人泊(前年同月比14.0%減)
客室稼働率 60.8% 57.2%

上の表は、観光庁の同じ発表に掲載されている全国の値をそのまま転記したものです(確認日 2026-09-03)。年単位では、1月から12月分をまとめた年の確定値が公表されます。過年度と比べるなら、速報値ではなく確定値どうしをそろえるほうが安全です。個別の月の発表内容は2026年7月の宿泊旅行統計調査の記事でも扱っています。

どこまで細かい区分で見られるか

施設所在地、広域市町村、宿泊施設タイプ、宿泊者の区分という四つの集計の切り口と、それぞれの内訳を並べた図
地域、広域市町村、施設タイプ、宿泊者の別という四つの切り口で集計が公表されています。 出典:政府統計の総合窓口「宿泊旅行統計調査 第8表」(確認日 2026-09-03)

政府統計の総合窓口に収録されている集計表を開くと、施設所在地は全国と47都道府県に加えて、運輸局等の再掲が用意されています。表には「長野県は北陸信越運輸局、福井県は中部運輸局に含まれる」という注記が付いています。地域ブロックで語るときは、この取り決めを確認しないと、同じ「中部」という言葉でも範囲が食い違います。

宿泊施設タイプは、旅館、リゾートホテル、ビジネスホテル、シティホテル、簡易宿所、会社・団体の宿泊所の6区分です。自分の施設に近い区分の値を見るのか、全体の値を見るのかで、読み取れることが変わります。同じ地域でも、区分によって稼働の水準は同じではありません。

観光庁の調査ページには、参考表として広域市町村(130区分)別の集計も掲載されています。都道府県より細かい単位を探すときの入口になります。ただし参考表として位置づけられているため、どの市町村がどの区分に入るかは、表側の定義を確かめてから使ってください。

民泊の実績は別の統計として公表される

宿泊施設タイプの6区分に、住宅宿泊事業の届出住宅だけを取り出した区分はありません。届出住宅の実績は、観光庁が民泊制度ポータルサイトで公表している住宅宿泊事業法の施行状況にまとまっています。こちらは、住宅宿泊事業法第14条にもとづく住宅宿泊事業者からの定期報告を、観光庁が集計・とりまとめたものです。

宿泊旅行統計調査と住宅宿泊事業の宿泊実績を、対象、根拠、公表の周期、見られる粒度の四項目で並べた比較表
対象、根拠、公表の周期、見られる粒度の四項目で、二つの統計を分けて扱います。 出典:観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-03)
項目 公表されている値
届出住宅数(令和8年7月15日時点) 42,070件(届出65,837件から事業廃止23,767件を差し引いた数)
延べ宿泊者数(令和8年4月1日〜5月31日) 1,745,359人泊(前年同期比133.0%)
宿泊日数 624,088日(前年同期比138.6%)
宿泊者数 626,765人(前年同期比130.1%)
報告件数 34,902件(報告率84.7%)

この表も、観光庁の公表ページの表記をそのまま転記しています(確認日 2026-09-03)。報告件数と報告率が併記されている点が、宿泊旅行統計調査との大きな違いです。報告率84.7%という数字は、すべての届出住宅から報告が集まったうえでの集計ではないことを示しています。前年同期比を読むときは、報告率も一緒に見てください。

集計の期間の取り方も違います。宿泊旅行統計調査は月ごとに公表されますが、住宅宿泊事業の宿泊実績は二月分をまとめた期間で公表されます。二つを同じグラフへ並べたくなる場面がありますが、期間の単位も対象施設も違うため、そのまま重ねると読み手に誤解を与えます。並べる場合は、二つの統計であることを図の中に明記してください。

前年同月比には層化基準の変更が含まれる

観光庁は、統計精度をさらに高めるため、2026年(令和8年)1月分調査から層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更したことを公表しています。あわせて、対前年(同月)比と対前年(同月)差については、この見直しの影響が含まれている可能性がある点に留意するよう案内しています。

2026年7月・第1次速報として公表された延べ宿泊者数、日本人と外国人の内訳、客室稼働率を並べた数値カード
前年同月比を含む公表値です。増減の理由は発表本文に書かれていないため、原因を補って読まないようにします。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年7月・第1次速報、2026年6月・第2次速報)」(確認日 2026-09-03)

つまり、前年同月比の増減を、宿泊需要の変化だけで説明することはできません。過年度と並べたグラフを作るなら、2026年1月分調査から基準が変わったことを図の中か注記に書き、同じ条件で続いている連続データのようには見せないことです。原因を断定せず、公表されている範囲にとどめてください。

社内で数値を共有するときも同じです。増減率だけを抜き出した一行の報告は、受け取った人が需要の変化として読みます。基準の変更に関する注意書きは、数値と同じ場所に置いてください。離れた場所へ書いた注記は、転記されるうちに落ちます。

自施設の判断へ持ち込むときの限界

公表されているのは、調査の対象となった施設を集計した値です。特定の物件で期待できる稼働率や単価を示すものではありません。全国の客室稼働率をそのまま自分の物件の前提に置くと、営業できる日数、販売できる客室数、予約経路の違いといった条件が抜け落ちます。

売上の見積もりは、統計値を当てはめるのではなく、自分の物件で確定している条件から積み上げるほうが実態に合います。考え方は民泊の売上予測の立て方で、費用と合わせた組み立ては民泊の収支計画の立て方で整理しています。地域をどう見るかは民泊の立地の選び方で扱っています。

地域別に見るときも、統計の集計区分と、条例による制限の区域は別の枠組みです。統計の上では宿泊が多い地域でも、住宅宿泊事業として営業できる期間や区域が条例で限られていることがあります。統計を見て候補地を絞る前に、物件の所在地を所管する窓口で制度上の条件を確認してください。順序を逆にすると、営業できない地域の需要を調べることになります。

引用するときに残す四項目

数値を社内資料や記事へ持ち出すときは、統計名、対象月、公表段階、集計区分の四つを一緒に残します。加えて、いつ確認したかを添えます。どれか一つでも欠けると、あとから同じ数値へ戻れなくなり、更新されたときに差し替えられません。

たとえば「観光庁『宿泊旅行統計調査』2026年7月・第1次速報、全国の延べ宿泊者数」と書けば、読む側が同じ表へたどり着けます。数値だけを抜き出した表は、時間がたつと出所が分からなくなり、更新もされないまま残ります。図表を作る場合は、図の中にも同じ四項目を入れてください。

更新の周期も決めておきます。観光庁は、旅行・観光消費動向調査、宿泊旅行統計調査、インバウンド消費動向調査の公表予定日を専用のページで案内しています。数値を継続して使う運用にするなら、この予定日を確認の周期へ組み込んでおくと、古い速報値を使い続ける事故を防げます。

この記事で確認できた範囲

この記事に載せた数値は、観光庁の報道発表と民泊制度ポータルサイトの公表ページにある表記を転記したものです。稼働率の算式や標本設計の詳細は、観光庁の「宿泊旅行統計調査の概要」と「用語の解説」に掲載されている資料で確認してください。この記事では、公表ページの本文から確認できることだけを書いています。

自施設の実績と全国値を突き合わせる作業は、この記事の範囲を超えます。まずは、どの統計の、どの段階の、どの区分の数値を見ているのかを固定してください。そこがそろって初めて、前年との比較や地域との比較が意味を持ちます。数値を早く出すことより、あとから同じ数値へ戻れる形で残すことを優先します。

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