訪日外国人統計/データ

訪日外国人数の推移をどう読むか|過去最高と推計値の改定

日本政府観光局が毎月発表する訪日外客数の推移を、民泊運営者が読み違えずに使うための記事です。推計値から確定値までの三段階、過去最高という言葉の三つの意味、入国者数と宿泊統計のずれを、公表資料の表記にそって整理します。

訪日外国人の数の推移を追いかけると、月ごとの発表と年間の値が別々に出てきます。しかも、いちど発表された月の数値は、そのあと二度書き換わります。推移を読むときに最初に決めるのは、いま見ている数値がどの段階のもので、何を数えたものかということです。ここが決まらないまま前年比や増加率を並べると、比べているつもりのない相手と比べることになります。

先に誤解を一つ外しておきます。発表の見出しに出てくる「過去最高」は、三通りの意味で使われています。すべての月の中で最も多かったのか、同じ月どうしで比べて最も多かったのか、年の合計として最も多かったのかで、比べている相手がまったく違います。どれなのかを確かめずに自分の宿の見通しへ持ち込むと、伸びの大きさを取り違えます。

この記事では、訪日外客数がいつ、誰から、どの単位で出るのか、推計値から確定値までの三段階、過去最高という言葉の三つの意味、入国と宿泊の動きがずれる場面、そして推移を自分の物件の判断に使うときの限界を、日本政府観光局と観光庁の公表資料の表記にそって整理します。公表されていない項目は、推測で埋めずに掲載されていないと書きます。

訪日外客数は毎月、翌月に推計値として発表される

訪日外客数を月ごとに発表しているのは日本政府観光局です。2026年7月分は2026年8月19日に発表され、3,442,100人で前年同月比0.1%増、7月として過去最高を記録したと示されています。発表は毎月あり、対象月の翌月に出ます。推移を自分で追うなら、この月次の発表が起点になります。

数え方も発表の中に書かれています。訪日外客数は法務省集計による出入国管理統計にもとづいて算出したもので、訪日外客とは「外国人正規入国者から、日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、これに寄港地上陸、通過上陸、船舶観光上陸の外国人を加えたもの」とされています。駐在員や留学生等の入国者・再入国者も含まれます。

ここから二つのことが決まります。観光目的の旅行者だけを取り出した数値ではないこと、そして宿泊したかどうかを問わない数値だということです。乗り継ぎのために上陸した人も、条件に当てはまれば数に入ります。推移の折れ線が右上がりでも、その分だけ宿泊が増えたとは読めません。

なお、月次の報道発表の本文には、国・地域ごとの人数を並べた表は載っていません。本文に出てくるのは、過去最高を更新した市場や、増加した市場の名前です。国別の人数を転記したいときは、訪日外客統計のページに用意されている時系列のファイルを開きます。どの統計から国籍別を読むかは国籍別の訪日客数の見方にまとめています。

日本政府観光局「訪日外客統計」のページのファーストビュー
引用キャプチャ 月次の推計値と、国籍別・月別の時系列データファイルが並んでいる公式ページです。 出典:訪日外客統計(日本政府観光局)(確認日 2026-09-04/表示のファーストビュー)

同じ月の数値は三段階で書き換わる

日本政府観光局は、数値の段階を三つに分けて説明しています。よくあるご質問には、推計値は「当該月の翌月にJNTOが発表する概算値で、100の位まで算出しています」、暫定値は「推計値発表の2ヶ月後に発表する確定に近い数値で、1の位まで算出しています」、確定値は「該当年の翌年7月以降に、法務省の年計確定をもってJNTOが算出する最終値で、暫定値と同様に1の位まで算出します」と書かれています。

訪日外客数が推計値、暫定値、確定値の順に書き換わる工程図。推計値は当該月の翌月に100の位まで、暫定値は推計値発表の2か月後に1の位まで、確定値は該当年の翌年7月以降に1の位まで算出されることを示している
同じ対象月の数値が、発表の時期とともに三段階で置き換わります。図中の日付は2026年7月分を例にしたものです。 出典:日本政府観光局「統計・データに関するよくあるご質問」日本政府観光局「訪日外客数(2026年7月推計値)」(確認日 2026-09-04)

実務でこれが効いてくるのは、転記した数値を後から見直すときです。社内の資料に月次の推移をまとめておくと、半年後に同じ出典を開いたときに、100の位までだった数値が1の位まで細かくなり、値そのものも動いていることがあります。誤りではなく、段階が進んだ結果です。転記の時点で段階を書き添えておけば、差し替えるべきかどうかをその場で判断できます。

段階が進むと分かることも増えます。暫定値からは国籍別や目的別が1の位まで示されるため、市場ごとの動きを細かく見るなら、直近の推計値ではなく暫定値のそろっている月まで戻るほうが確実です。速さと細かさは両立しません。どちらが要るのかを先に決めてください。

年計を比べるときは、段階のそろい方を確かめる

年の合計は、12月分の発表と同時に出ます。2026年1月21日に発表された2025年12月推計値の資料には、2025年の年間累計が42,683,600人で前年比15.8%増となり、過去最高であった2024年の36,870,148人を580万人以上上回ったことが示されています。2025年12月単月は3,617,700人で前年同月比3.7%増、12月として過去最高でした。

年間の訪日外客数を比べた棒グラフ。2024年は36,870,148人で1の位までの値、2025年は42,683,600人で100の位までの推計値、前年比15.8パーセント増で580万人以上の増加であることを示している
2025年の年計と、比較対象として資料に併記されている2024年の値です。二つは示されている桁の細かさが違います。 出典:日本政府観光局「訪日外客数(2025年12月推計値)」(確認日 2026-09-04)

二つの数値を並べると、桁の細かさが違うことに気づきます。2025年の年計は100の位までで終わっており、2024年の値は1の位まで示されています。前に挙げた説明にあてはめると、1の位まで算出されるのは暫定値と確定値です。ただし2024年の値がそのどちらなのかは、この報道発表には書かれていません。分からないことは分からないまま扱い、増加率は自分で割り戻さず、発表がそのまま示している15.8%を引用してください。

対象期間 公表されている値 前年比 桁の細かさ 発表日
2026年7月 3,442,100人 0.1%増 100の位まで(推計値) 2026年8月19日
2025年12月 3,617,700人 3.7%増 100の位まで(推計値) 2026年1月21日
2025年(年計) 42,683,600人 15.8%増 100の位まで 2026年1月21日
2024年(年計) 36,870,148人 記載がありません 1の位まで 2026年1月21日の資料に比較対象として記載

表にすると、同じ資料の中でも段階がそろっていないことが見て取れます。推移のグラフを社内で作るなら、点ごとに段階を持たせ、後から段階が進んだ点だけを差し替えられる形にしておくと、作り直しが要りません。年をまたいで並べるときほど、この手当てが効いてきます。

「過去最高」には三つの意味がある

発表文を読むと、過去最高という言葉が三つの使われ方をしています。2026年7月の発表では、台湾が単月過去最高を記録し、初めて70万人を超えたと示されています。同じ発表で、全体の3,442,100人は7月として過去最高であり、韓国、台湾、シンガポールなど17市場が7月として過去最高を記録したとされています。2025年12月の発表では、20市場が年間累計で過去最高を記録し、豪州が初めて累計100万人を突破して7市場目になったと示されています。

過去最高の三つの意味を比べたマトリクス。単月として過去最高はこれまでのすべての月と、その月として過去最高は過去の同じ月だけと、年間累計で過去最高は過去のすべての年計と比べたものであることを、発表にあった例とともに並べている
三つの言い方は、比べている相手が違います。例は2026年7月分と2025年12月分の発表に記載されている内容です。 出典:日本政府観光局「訪日外客数(2026年7月推計値)」日本政府観光局「訪日外客数(2025年12月推計値)」(確認日 2026-09-04)

注意したいのは、その月として過去最高であることと、大きく伸びていることは別だという点です。2026年7月の全体は前年同月比0.1%増でありながら、7月として過去最高になっています。水準の高さを示す言葉と、伸びの大きさを示す数値は、それぞれ別に読んでください。見出しの強さに合わせて、翌年の予約が同じ勢いで伸びると考える理由にはなりません。

市場ごとの記録も同じです。ある市場が単月過去最高を記録したという記述は、その市場の入国者数が過去のどの月より多かったという意味であり、その人たちがどの地域のどんな施設に泊まったかは、この統計からは分かりません。記録の更新が並んでいる月ほど、後ろにある単位と対象を確かめてください。

入国が過去最高でも、宿泊の統計は減っていることがある

同じ月について、宿泊の側の統計も見てみます。観光庁が2026年8月31日に公表した宿泊旅行統計調査では、2026年7月の外国人延べ宿泊者数が1,358万人泊で前年同月比4.6%減(第1次速報)、2026年6月が1,222万人泊で前年同月比14.0%減(第2次速報)と示されています。

統計 対象月 公表されている値 前年同月比 段階
訪日外客数(日本政府観光局) 2026年7月 3,442,100人 0.1%増 推計値
宿泊旅行統計調査(観光庁) 2026年7月 外国人延べ宿泊者数1,358万人泊 4.6%減 第1次速報
宿泊旅行統計調査(観光庁) 2026年6月 外国人延べ宿泊者数1,222万人泊 14.0%減 第2次速報

同じ2026年7月について、入国は増え、宿泊は減っています。どちらかが誤っているわけではありません。数える単位が人と人泊で違い、対象も違うためです。単位の違いをどう扱うかは国籍別の訪日客数の見方で、宿泊側の公表段階と集計区分は宿泊旅行統計調査の見方で扱っています。

推移を語る資料を作るときは、入国の推移と宿泊の推移を同じ図に重ねないでください。重ねるなら軸を分け、単位と対象と段階を図の中に書きます。単位を書かないまま並べた図は、片方の伸びをもう片方の伸びとして読ませてしまいます。

推移を自分の物件の判断に持ち込むときの限界

限界は四つあります。どれも公表資料の記載から導けることです。

第一に、訪日外客数は全国どころか国境での数値です。地域別の内訳も、施設タイプ別の内訳もありません。自分の物件が建っている地域の需要を、この推移から読むことはできません。地域まで見たいなら、施設所在地別の集計を持つ別の統計へ移る必要があります。

第二に、入国者数には観光以外の目的や、上陸の形が含まれます。宿泊需要そのものを測った数値ではないため、増加分がそのまま宿泊の増加になるとは限りません。前の節で見たとおり、実際に増減の向きが分かれた月があります。

第三に、月次の数値は暦の並びで動きます。曜日の配置、連休の位置、前年の同じ月に何があったかによって、前年同月比は大きく振れます。単月の増減だけで料金や運営の方針を変えると、翌月に戻す判断を繰り返すことになります。数か月分を並べて、向きが続いているかどうかで見てください。

第四に、そもそも自分の物件の予約データのほうが、需要の判断材料としては近い位置にあります。統計は、自分が置いた前提が市場の動きから外れていないかを点検するために使うものです。収入の組み立て方は民泊の売上予測、単価の考え方は民泊の客室単価にまとめています。日本人の国内旅行の動きは別の調査で公表されており、日本人の国内旅行統計の見方で扱っています。

引用するときに残す四項目

推移の数値を資料や記事へ持ち込むときは、統計名、対象期間、公表段階、そして出典URLと確認日の四つを必ず一緒に残してください。四つのうち一つでも欠けると、後から差し替えの判断ができなくなります。とくに公表段階は、月次の数値が二度書き換わることを知らない人が読むと、値の食い違いを誤りとして扱ってしまいます。

あわせて、推計値には後日書き換わる可能性があることを注記に残します。これは統計の弱点ではなく、速さを優先した段階の値だからです。速報として使うのか、確定した記録として使うのかを、使う側が決める必要があります。両方を同じ表に載せるなら、段階の列を作って区別してください。

この記事に載せた数値も、上に挙げた公表ページを確認日時点で転記したものです。月次の発表は毎月更新され、年計は年明けに出ます。数か月後に同じ数字を使うときは、必ず出典のページを開き直してください。

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