訪日外国人消費額/データ

訪日外国人の消費額はどこで確認するか|総額と単価の読み分け

観光庁のインバウンド消費動向調査で公表されている訪日外国人旅行消費額を、民泊運営者が読み違えずに使うための記事です。総額と1人当たり旅行支出が反対の向きに動くこと、上位5か国・地域が四半期ごとに入れ替わることを、報道発表の表記にそって整理します。

訪日外国人の消費額を調べると、桁の違う数字が同時に出てきます。年の合計としての9兆円台、四半期としての2兆円台、そして1人あたりの20万円台です。桁が離れているので取り違えは起きにくいのですが、この3つは指しているものがまったく違います。前の2つは市場全体を合計した金額で、最後の1つは1人が滞在中に使った金額の平均です。どれを引用するかで、話している内容そのものが変わります。

先に、いちばん誤解されやすい点を出しておきます。総額と1人あたりは、同じ向きに動くとは限りません。直近の四半期では、総額の伸びが縮んでいく一方で、1人あたりは増えています。「インバウンド消費が伸びている」と一言で言ってしまうと、どちらの話をしているのか分からなくなります。

この記事では、消費額を公表している統計はどれか、総額と1人あたりがどう食い違うか、消費額の上位に並ぶ国・地域が四半期ごとにどれだけ入れ替わるか、報道発表に載っていない項目は何か、そして民泊の判断へ持ち込めるところとそうでないところを、観光庁の報道発表の表記にそって整理します。公表されていない項目は、推測で埋めずに記載がないと書きます。

消費額の数字は「インバウンド消費動向調査」から出ている

訪日外国人が日本で使った金額を公表しているのは、観光庁のインバウンド消費動向調査です。統計のページには「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」と示されています。以前の名称のままの資料が検索で出てくることがあるので、古い名称で見つけた資料は対象の期間を確かめてください。名称が変わっただけで、同じ系列の調査です。

公表は四半期ごとです。同じ四半期について、まず1次速報が出て、そのあとに2次速報が出ます。年の分は、年間の集計表と報告書、都道府県別の集計が別に用意されています。統計のページには、四半期ごとの集計表と概要、年間の集計表と報告書、調査の概要や用語の説明が並んでいます。数値を細かく見たいときに開くのは、報道発表ではなくこちらのファイルです。

報道発表のページ側に書かれているのは、訪日外国人旅行消費額、1人当たり旅行支出、消費額上位5か国・地域の3項目です。見出しに出てくるのはこの3つだけで、それ以上の内訳はページ本文にありません。まず報道発表で全体の向きをつかみ、必要になったら統計のページのファイルへ移る、という順で使うことになります。

観光庁「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」のページのファーストビュー
引用キャプチャ 四半期ごとの集計表と概要、年間の集計表と報告書、調査の概要と用語の説明が並んでいる公式ページです。 出典:インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)(観光庁)(確認日 2026-09-04/表示のファーストビュー)

総額が伸びても1人あたりが落ちている四半期がある

報道発表に載っている数値を、公表された順に並べます。年の合計と四半期は別の行に分けています。前年比が付いている相手も、年の合計は前年の年計、四半期は前年の同じ四半期で、それぞれ違います。

対象期間 訪日外国人旅行消費額 前年(同期)比 1人当たり旅行支出 前年(同期)比 公表日
2025年暦年(速報) 9兆4,559億円 +16.4% 22.9万円 +0.9% 2026年1月21日
2025年10-12月期(1次速報) 2兆5,330億円 +10.3% 23.4万円 −0.5% 2026年1月21日
2026年1-3月期(1次速報) 2兆3,378億円 +2.5% 22.1万円 −0.6% 2026年4月15日
2026年4-6月期(1次速報) 2兆5,096億円 +0.2% 24.4万円 +3.3% 2026年7月15日

2025年暦年は過去最高、2025年10-12月期は四半期として過去最高と、それぞれの発表に示されています。一方で、その2025年10-12月期の1人当たり旅行支出には減少が記載されています。総額の過去最高と、1人あたりの増減は別の話です。見出しの強さだけを取り出して社内へ回すと、単価まで上がっているように読まれます。

訪日外国人旅行消費額の総額と1人当たり旅行支出の前年同期比を3四半期分並べた折れ線。総額はプラス10.3パーセント、プラス2.5パーセント、プラス0.2パーセントと縮み、1人当たりはマイナス0.5パーセント、マイナス0.6パーセント、プラス3.3パーセントと反対の向きに動いている
連続する3つの四半期で、総額の前年同期比と1人当たり旅行支出の前年同期比が反対の向きに動いています。 出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について」同2026年1-3月期(1次速報)同2026年4-6月期(1次速報)(確認日 2026-09-04)

図で見ると、2つの線がすれ違っているのが分かります。総額の伸びは+10.3%から+2.5%、+0.2%と縮んでいきます。1人当たり旅行支出は反対に、2四半期の減少から+3.3%の増加へ変わりました。直近の四半期は、総額がほぼ前年並みにとどまる一方で、1人あたりの支出は増えた、という形です。

この2つの数値の間で人数がどう動いたかは、報道発表には記載がありません。人数は入国の側の統計で別に公表されています。数え方や公表の段階は訪日外国人数の推移をどう読むかにまとめてあるので、総額の動きを人数と単価に分けて考えたいときは、そちらの統計を併せて開いてください。消費額の発表だけでは、そこまでは分かりません。

年の合計と四半期を混ぜないことも大切です。2025年暦年は前年比+16.4%ですが、その中に含まれる2025年10-12月期は+10.3%、そのあとの2026年1-3月期は+2.5%、2026年4-6月期は+0.2%です。年計の伸び率をいまの勢いとして引用すると、実際よりずっと強い印象になります。年計は過去1年分をならした値です。直近の動きを語るなら、四半期の数値を使ってください。

上位5か国・地域は3回続けて1位が入れ替わった

報道発表には、消費額上位5か国・地域が順位だけ示されています。3回分を並べると、1位が毎回変わっていることが見て取れます。

消費額上位5か国・地域の順位が3回の報道発表で入れ替わったことを示す図。2025年10-12月期は中国、米国、台湾、韓国、香港の順、2026年1-3月期は台湾、韓国、中国、米国、香港の順、2026年4-6月期は米国、台湾、中国、韓国、香港の順で、香港だけが5位のまま動いていない
3回の報道発表に記載されている上位5か国・地域を、順位ごとにつないだものです。金額は報道発表の本文に記載がありません。 出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について」同2026年1-3月期(1次速報)同2026年4-6月期(1次速報)(確認日 2026-09-04)

2025年10-12月期の1位は中国、2026年1-3月期は台湾、2026年4-6月期は米国です。半年のあいだに1位が二度替わっています。動いていないのは香港で、3回とも5位に並んでいます。なお2025年暦年の順位は、中国、台湾、米国、韓国、香港の順です。年計と四半期でも並びが違います。

ここで読めるのは順位の入れ替わりであって、金額の差ではありません。1位と2位がわずかな差なのか大きく開いているのかは、報道発表の本文からは分かりません。順位が入れ替わったからといって、その市場の消費額が半分になったとも倍になったとも言えないということです。金額まで見たいなら、統計のページの集計表を開くことになります。

運営の側から見ると、この入れ替わりの速さそのものが情報です。案内文の言語、決済の手段、チェックインの説明を、直近の1位に合わせて組み替えると、次の四半期にはもう前提が変わっています。国籍ごとの傾向を運営に反映させたいときは、入国の側の統計と、届出住宅に泊まった人の国籍を扱った国籍別の訪日客数の見方のほうが、宿泊の実態に近い材料になります。

報道発表の本文に書かれていないこと

引用する前に、この発表に載っていない項目をはっきりさせておきます。以下はいずれも、報道発表のページ本文には記載がありません。

  • 費目別の内訳。宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代といった区分ごとの金額と構成比
  • 都道府県別の内訳。どの地域でいくら使われたか
  • 施設タイプ別の内訳。ホテル、旅館、簡易宿所、住宅宿泊事業といった区分
  • 上位5か国・地域それぞれの金額。示されているのは順位だけです

この記事では、これらの数値を転記していません。集計表や概要のファイルにあたる必要があり、確認できていないものを本文へ書くことはしないためです。宿泊費が消費額のうちどれだけを占めるかを知りたい場合は、観光庁のインバウンド消費動向調査のページに置かれている四半期ごとの集計表と概要、および年間の報告書を開いてください。都道府県別の集計も、同じページに別ファイルとして用意されています。

もう一点、公表の段階にも注意が要ります。ここまでに挙げた四半期の数値は、いずれも1次速報です。あとから2次速報が出て、値が置き換わります。社内の資料へ転記するときは、金額と一緒に「1次速報」と書き添えてください。段階を書いておかないと、数か月後に開いた出典と値が合わなくなったときに、誤りなのか更新なのかを判断できません。

同じ四半期の日本人の国内旅行と並べてみる

消費額の大きさを感じ取るには、同じ期間の別の数字と並べるのが早道です。観光庁は、日本人の国内旅行について旅行・観光消費動向調査を別に公表しています。2026年4-6月期の1次速報は2026年8月19日に公表され、国内旅行消費額は7兆5,361億円(前年同期比+11.7%)、国内延べ旅行者数は1億4,958万人(同+3.3%)、国内旅行単価は50,381円/人(同+8.2%)と示されています。

調査 対象 2026年4-6月期の消費額 前年同期比 1人あたりの数値
インバウンド消費動向調査 訪日外国人 2兆5,096億円 +0.2% 1人当たり旅行支出 24.4万円
旅行・観光消費動向調査 日本人の国内旅行 7兆5,361億円 +11.7% 国内旅行単価 50,381円/人

同じ四半期で見ると、金額が大きいのは日本人の国内旅行のほうです。前年同期比も、こちらのほうが伸びています。インバウンドの話題が多く流れてくるぶん、外国語対応や海外向けの掲載を先に増やしたくなりますが、市場の大きさだけを理由にするなら、判断はむしろ逆になります。どちらへ寄せるかは、自分の物件の立地と、実際に入っている予約の内訳から決めるものです。

なお、右端の2つの数値は別々の調査から出ており、算出のしかたも対象も違います。単純に引き算や割り算をしないでください。定義はそれぞれの調査の用語の説明にあります。国内側の統計の読み方は日本人の国内旅行統計の見方、この四半期の発表そのものは国内旅行消費額は7兆5,361億円で扱っています。

民泊の判断へ持ち込めるところ、持ち込めないところ

ここまでの内容を、実際に数字を使う場面の順に並べ直します。

消費額の数字を自分の宿の判断に使えるかを分ける判断フロー。総額は市場全体の合計で自分の宿の売上には対応せず、1人当たり旅行支出は全費目の合計で宿泊費だけの単価ではない。どちらも全国の集計であるため、使えるのは自分が置いた前提が市場の向きから外れていないかの点検までである
見ている数字が総額か1人あたりかで、次に確かめることが変わります。図中の金額は2026年4-6月期(1次速報)の値です。 出典:観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)の結果について」(確認日 2026-09-04)

いちばん起きやすい取り違えは、1人当たり旅行支出を宿泊単価として読むことです。この数値は滞在中の支出を合わせたもので、宿泊費だけを取り出した値ではありません。24.4万円という数字を、1泊あたりの料金を考える材料にはできません。宿泊単価をどう組み立てるかは、民泊の客室単価の考え方で扱っています。

次に、これらはすべて全国を合計した数字です。地域ごとの需要は読めません。自分の物件がある地域の宿泊の動きを見たいなら、施設所在地別の集計を持つ統計へ移る必要があります。公表の段階と集計の区分は宿泊旅行統計調査の見方にまとめました。消費額の統計と宿泊の統計は、数える対象も単位も違うので、同じ図に重ねないでください。

そのうえで、この統計にできることも書いておきます。自分が収支計画に置いた前提、たとえば「客単価は据え置きでよいか」「稼働の前提が市場の向きと逆になっていないか」を点検する用途には向いています。四半期ごとに更新されるので、半年に一度、前提を置き直すときの参照先として使えます。売上そのものの見積もりは、営業できる日数や定員の上限と、自分の予約データから組み立てるものです。その手順は民泊の売上予測はどう立てるにあります。

この記事に載せた数値は、上に挙げた観光庁の報道発表ページを確認日時点で転記したものです。次の四半期の発表が出れば順位も伸び率も変わり、1次速報は2次速報へ置き換わります。数か月後に同じ数字を使うときは、必ず出典のページを開き直してください。

このメディアの運営元について

myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。

サービスの内容を見る オーナー登録に進む