国籍別訪日客数/データ

国籍別の訪日客数はどの統計で見るか|入国者数と宿泊者数の違い

国・地域別の訪日客数を、訪日外客数、宿泊旅行統計調査、住宅宿泊事業法の施行状況という三つの公表資料から読み分けるための記事です。人と人泊という単位の違い、国籍別が参考表にとどまる範囲、届出住宅の宿泊者に占める外国人の比率を、公表値のまま整理します。

国・地域別の訪日客数を調べると、数字の出どころが一つではないことに気づきます。日本政府観光局が毎月発表する訪日外客数、観光庁の宿泊旅行統計調査、観光庁が民泊制度ポータルサイトで公表している住宅宿泊事業法の施行状況は、どれも国籍にかかわる数値を持っていますが、数えている対象も単位も違います。最初に決めるのは、知りたいのが日本に入国した人の数なのか、日本のどこかで泊まられた延べ数なのかです。

先に誤解を一つ外しておきます。訪日外客数が過去最高を更新したという発表は、自分の物件に泊まる人が増えることを意味しません。訪日外客数は入国した人の数であり、その人たちがどの地域のどんな施設に泊まったかは、別の統計を開かなければ分かりません。逆に、宿泊の統計だけを見ていると、まだ宿泊に結びついていない入国の動きは見えません。

この記事では、三つの統計がそれぞれ何を数えているか、単位の違いでどこがずれるか、国・地域別の内訳がどこまで公表されているか、届出住宅に泊まった人の国籍がどう示されているかを、公表資料の表記にそって整理します。公表されていない項目は、推測で埋めずに「掲載されていません」と書きます。

訪日外客数は出入国管理の統計から作られている

日本政府観光局は毎月、訪日外客数の推計値を発表しています。2026年8月19日に公表された2026年7月の値は3,442,100人で、前年同月比0.1%増となり、7月として過去最高を記録しました。同じ発表では、韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなど17市場が7月として過去最高を記録し、台湾は単月として初めて70万人を超えたことが示されています。

この数値がどう作られているかも、発表の中に書かれています。訪日外客数は法務省集計による出入国管理統計にもとづいて算出したもので、訪日外客とは「外国人正規入国者から、日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、これに寄港地上陸、通過上陸、船舶観光上陸の外国人を加えたもの」とされています。駐在員や留学生等の入国者・再入国者も含まれます。

ここから二つのことが分かります。一つは、観光目的の旅行者だけを取り出した数値ではないこと。もう一つは、宿泊したかどうかを問わない数値だということです。乗り継ぎのために上陸した人も、条件に当てはまれば数に入ります。国・地域別の順位をそのまま「自分の宿に来る人の国籍の順位」として読むと、この二点で外れます。

なお、この値は推計値として発表されます。月次の発表を引用するときは、対象月と、推計値である旨をあわせて残してください。宿泊の統計に速報と確定値の段階があるのと同じで、どの段階の数値を転記したのかが後から分からなくなると、差し替えの判断ができなくなります。段階の扱いは宿泊旅行統計調査の見方で詳しく扱っています。

「人」と「人泊」は足し合わせられない

1人の入国から滞在中の宿泊までをたどり、訪日外客数では1人、宿泊旅行統計調査では3人泊、住宅宿泊事業の施行状況では1人泊として数えられることを示した流れ図
入国から宿泊までの一例をたどると、同じ滞在が統計ごとに違う数になります。図中の宿泊の内訳は数え方を示すための仮定で、公表値ではありません。 出典:日本政府観光局「訪日外客統計」観光庁「宿泊旅行統計調査」(確認日 2026-09-03)

宿泊旅行統計調査が公表するのは延べ宿泊者数で、単位は人泊です。1人が3泊すれば3人泊として数え、滞在の途中で施設を移れば、泊まった施設の所在地ごとに分かれて計上されます。一方の訪日外客数の単位は人で、入国のたびに1回数えます。分母も分子もそろわないため、二つを割って1人あたりの泊数を出すような使い方はできません。

水準そのものも比べる意味がありません。2026年7月分の宿泊旅行統計調査(第1次速報)では、全国の延べ宿泊者数が5,467万人泊、うち外国人が1,358万人泊で前年同月比4.6%減、客室稼働率は60.8%と公表されています。同じ月の訪日外客数は前年同月比0.1%増でした。片方が増え、片方が減っているように見えますが、数えている対象が違うので、どちらかが誤っているという話ではありません。月ごとの内訳は2026年7月の宿泊旅行統計調査の記事にまとめています。

社内の資料で二つを同じグラフに重ねたくなる場面がありますが、重ねるなら軸を分け、単位と対象を図の中に書いてください。単位を書かないまま並べた図は、読み手に「入国者の何割が泊まった」という読み方を許してしまいます。

国籍別の内訳は、どこまで公表されているか

統計 数える単位 対象 国籍別の粒度
訪日外客数(日本政府観光局) 出入国管理統計にもとづく入国外国人旅行者 市場別。人数は訪日外客統計のデータファイル
宿泊旅行統計調査(観光庁) 人泊 全国の宿泊施設 参考表で国籍(出身地)別。従業者数10人以上の施設
住宅宿泊事業法の施行状況(観光庁) 人・人泊・日 届出住宅(住宅宿泊事業) 日本国籍と外国人の2区分と、上位5か国・地域の順位

日本政府観光局の月次の報道発表には、国・地域別の人数を並べた表は載っていません。本文に出てくるのは、過去最高を更新した市場や、増加した市場の名称です。国・地域ごとの人数を確認するときは、訪日外客統計のページに用意されている時系列推移表のファイルを開きます。記事や社内資料へ数値を転記するなら、報道発表ではなくこのファイルを出典にしてください。

宿泊旅行統計調査では、国籍別の集計は参考表として提供されています。政府統計の総合窓口には「参考第1表 年、月(12区分)、施設所在地(47区分及び運輸局等)、国籍(出身地)(21区分)別外国人延べ宿泊者数 (従業者数10人以上の施設)」という表が収録されています。表題が示すとおり、この表の対象は従業者数10人以上の施設です。小規模な宿泊施設は含まれないため、民泊や小さな宿に泊まった人の国籍を、この表から読み取ることはできません。

つまり、国籍別に地域まで細かく見られる表と、自分の規模に近い施設の表は、別のものです。都道府県別の外国人延べ宿泊者数を根拠に語るときは、それが従業者数10人以上の施設を集めた数字であることを明記してください。

届出住宅に泊まった人の国籍は別に公表されている

観光庁は、住宅宿泊事業法第14条にもとづく住宅宿泊事業者からの定期報告を集計し、住宅宿泊事業法の施行状況として公表しています。令和8年7月15日時点の公表では、令和8年4月1日から5月31日までの宿泊実績が示されています。

届出住宅の宿泊者数626,765人のうち日本国籍が235,591人で37.6パーセント、外国人が391,174人で62.4パーセントを占め、外国人のうち上位5か国・地域が47.0パーセントを占めることを示した積み上げバー
届出住宅の宿泊者数の国籍別内訳と、外国人宿泊者に占める上位5か国・地域の割合です。国ごとの人数は公表されていません。 出典:観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-03)

この集計では、宿泊者数626,765人の国籍別内訳として、日本国籍が235,591人で37.6%、外国人が391,174人で62.4%と公表されています。外国人の上位5か国・地域は米国、韓国、台湾、中国、オーストラリアの順で、この5つで外国人宿泊者数の47.0%を占めるとされています。国ごとの人数は掲載されていません。

項目 公表されている値
対象期間 令和8年4月1日〜令和8年5月31日
宿泊者数 626,765人(1住宅あたり18.0人)
延べ宿泊者数 1,745,359人泊(前年同期比133.0%)
宿泊日数 624,088日(前年同期比138.6%)
日本国籍の宿泊者 235,591人(37.6%)
外国人の宿泊者 391,174人(62.4%)
外国人の上位5か国・地域 米国、韓国、台湾、中国、オーストラリア(合計47.0%)
報告件数・報告率 34,902件・84.7%

順位に注目してください。届出住宅の外国人宿泊者で最も多いのは米国です。訪日外客数の発表で単月過去最高として名前が挙がった台湾は、ここでは3番目に置かれています。入国した人の数の大きさと、届出住宅に泊まる人の構成は同じではありません。滞在の日数、同行する人数、部屋の広さへの求め方が市場ごとに違えば、選ばれる宿の種類も変わるためです。

この差は、民泊の運営者にとって実務に直結します。入国者数の順位を見て多言語の案内を用意すると、実際に泊まる層とずれる可能性があります。届出住宅全体の構成比は、少なくとも入国者数の順位より近い材料です。ただし、これも全国の合計であり、自分の物件の実績とは別物です。

観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」のページのファーストビュー
引用キャプチャ 届出住宅数と宿泊実績、宿泊者の国籍別内訳が掲載されている公式ページです。 出典:住宅宿泊事業法の施行状況(観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」)(確認日 2026-09-03/表示のファーストビュー)

この数値を自分の物件へ持ち込むときの限界

数えたいのが入国した人の数か泊まられた延べ数かで分岐し、さらに対象が宿泊施設全体か届出住宅だけかで分岐して、訪日外客数、宿泊旅行統計調査、住宅宿泊事業法の施行状況のどれを開くかを決める判断フロー
単位と対象の二つを決めれば、開く統計は一つに絞れます。分岐の条件は各公表ページの記載にもとづいています。 出典:日本政府観光局「訪日外客統計」観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-03)

限界は三つあります。どれも公表資料に書かれていることです。

第一に、施行状況の集計は全数ではありません。報告件数は34,902件、報告率は84.7%と公表されています。届出住宅数42,070件に対して、報告のあった分を集めた数値です。前年同期比を読むときは、報告率もあわせて見てください。

第二に、宿泊旅行統計調査の前年同月比には、集計方法の変更が含まれる可能性があります。観光庁は、2026年1月分調査から宿泊施設の区分け(層化変数)を従業者数から客室数へ変更したことを公表しています。過年度と並べた図を作るなら、この変更を注記に残し、同じ条件で続いてきた連続データのようには見せないことです。

第三に、全国の構成比は、自分の物件が建っている場所の構成比ではありません。国籍別の需要は地域によって偏ります。物件の所在地で判断する材料は、施設所在地別の集計や、地域の受け入れ状況から組み立てるしかありません。立地の考え方は民泊の立地の選び方で扱っています。

目的から統計を選ぶ

三つを使う場面は、はっきり分かれます。市場全体の動きを把握したいなら訪日外客数、地域や施設タイプごとの宿泊の量を見たいなら宿泊旅行統計調査、届出住宅という制度の枠での実績を見たいなら住宅宿泊事業法の施行状況です。どれか一つで全部を語ろうとすると、必ずどこかで単位か対象がずれます。

そして、いずれの統計も、自分の物件の売上を決める数値ではありません。収入の見積もりは、営業できる日数、定員、単価という自分の条件から組み立てたうえで、統計は「その前提が市場の動きから外れていないか」を確かめるために使います。組み立て方は民泊の売上予測、単価の考え方は民泊の客室単価にまとめています。

引用するときは、統計名、対象期間、公表の段階、そして確認日を必ず一緒に残してください。国籍別の数値は月ごとに動き、上位の顔ぶれも入れ替わります。この記事の数値も、上に挙げた公表ページを確認日時点で転記したものです。

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