認定特定非営利活動法人SET(岩手県陸前高田市、理事長:三井俊介)は2026年9月24日、2026年7月26日から9月20日にかけて、岩手県陸前高田市の受入家庭17軒が中学生から大学生まで4団体・計59名を民泊で迎えたと発表しました。同法人が「グループ民泊」と呼ぶ取り組みで、学校行事や研修、大学のゼミ合宿などで訪れる団体が地域の家庭に泊まり、暮らしをともにするものだと説明しています。
一棟貸しや届出住宅を運営している人から見ると、この発表が扱っているのは自分の現場とは別の世界のように見えます。泊まるのは学校や大学の団体で、泊まる先は地域の家庭です。それでも読む値打ちがあるのは、「民泊」という同じ言葉が、制度の上ではいくつもの入口に分かれていることが、この発表からはっきり見えるからです。発表は受け入れの日程と人数を具体的に書いていますが、受入家庭がどの制度に基づいて宿泊させているかについては触れていません。
そこでこの記事では、発表に書かれている事実を日程と団体ごとに整理したうえで、団体を家庭に泊める形を制度へ当てはめるときに何を先に見るのかを、厚生労働省・観光庁・農林水産省の公開資料で確かめます。SETの受け入れがどの制度に当たるかを判定する記事ではありません。判定は発表の記載だけでは行えず、当サイトが確認できる範囲を超えます。
発表が示しているのは、今夏の受け入れの実績です
まず、何が発表されたのかを取り違えないようにします。発表しているのは、新しい事業や施設ではなく、今年の夏に済んだ受け入れの記録です。期間、団体の数、人数、受入家庭の数、そして団体ごとの日程が挙げられています。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 発表者 | 認定特定非営利活動法人SET(所在地:岩手県陸前高田市広田町、理事長:三井俊介) |
| 発表日 | 2026年9月24日 |
| 受け入れの期間 | 2026年7月26日から9月20日にかけて |
| 受け入れた側 | 岩手県陸前高田市の受入家庭17軒 |
| 受け入れた団体 | 中学生から大学生まで4団体・計59名 |
| 取り組みの名称 | 「グループ民泊」 |
| 取り組みの内容 | 学校行事や研修、大学のゼミ合宿などで訪れる団体が地域の家庭に泊まり、暮らしをともにする |
| 目的として挙げているもの | 東日本大震災を経験した地域の学びや教訓を、人との関わりを通して次の世代へ伝えていくこと |
| 宿泊料の有無・金額 | 記載がありません |
| 受入家庭が宿泊させている制度上の区分 | 記載がありません |
見出しにある「リピート」は、今夏の4団体がいずれも毎年続けて陸前高田を訪れている学校・団体だという説明に対応しています。発表は郁文館中学校が4年連続、玉川大学太田ゼミが4年連続、岐阜県本巣市の「ホープ防災リーダーズ」が3年連続であると書いています。一度の滞在で終わらない関係が生まれている、という書き方です。
募集をどう行っているか、受入家庭をどうやって増やしたか、家庭側にどのような研修や取り決めがあるかについては、この発表に書かれていません。運営の仕組みを知りたい立場からすると気になる部分ですが、公表されていないものを推し量ることはしません。
4回の滞在は、日程も泊数も別々に書かれている
団体ごとの記載を並べると、同じ「団体の受け入れ」でも、日程の長さと人数が回ごとに違うことが分かります。夏休みに1回だけ集中しているのではなく、7月末から9月下旬まで散らばっています。
最初は7月26日から28日の2泊で、東京都内の中学校・高校から14名。毎年夏に訪れている学校だと書かれています。2泊の受け入れが初めてとなる家庭もあり、最終日のお別れ式でも滞在の振り返りが盛り上がったとしています。
次が7月31日から8月1日の1泊で、郁文館中学校の2年生20名。今年で4年連続です。受入家庭で餃子や盛岡冷麺などの調理体験を行い、家業を営む家庭では生徒が自ら仕事を手伝う場面もあったと書かれています。雨の夜に生徒たちの笑い声が近所まで響き、近隣の方が「聞いているだけで幸せだった」と話していたという記載もあります。
3回目が8月18日から20日の2泊で、岐阜県本巣市の防災人材育成事業「ホープ防災リーダーズ」の東北研修として中学生12名。3年連続です。2日目は震災学習の研修に臨み、朝と夜は受入家庭で過ごしたとしています。宿泊と研修が別に組まれていることが読み取れる書き方です。
4回目が9月18日から20日の2泊で、玉川大学リベラルアーツ学部・太田ゼミの学生12名と教員1名、計13名。太田ゼミは震災直後から訪れており、SETとしての受け入れは今年で4年連続、ゼミ側の希望で前年と同じ家庭が学生を迎えたとしています。滞在中は受入家庭と一緒に東日本大震災津波伝承館を訪れ、最終日のお別れ式「ほんでまんず会」は学生が司会・運営をすべて担ったと書かれています。
同法人の民泊事業部の担当者は、お別れの場面で受入家庭と生徒が本当の家族のように別れを惜しむこと、民泊には震災を経験した地域の学びや教訓を後世へ伝える役割もあることを、発表の中でコメントとして述べています。ここまでが発表の記載です。
「宿泊料を受けて人を宿泊させる」かどうかが、最初の分かれ目
ここから先は、自分が同じような受け入れを考えるとしたら何を先に確かめるのか、という読み方に切り替えます。手がかりは、施設の形や泊まる人の属性ではなく、宿泊料です。
厚生労働省の「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」は、旅館業を宿泊料を受けて人を宿泊させる営業とし、「宿泊」を寝具を使用して施設を利用することだと説明しています。アパートなどの貸室との違いとして、施設の衛生上の維持管理の責任が営業者にあること、そして宿泊者がその部屋に生活の本拠を有していないことを挙げています。
同じQ&Aは、宿泊料が名目だけで判断されるものではないことにも触れています。実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるもの、たとえば光熱水道費や室内清掃費なども含まれるという説明です。無償だと考えていた受け入れが、実費の名目で金銭を受け取っていた場合に、どう扱われるかが変わってくる部分です。
さらに、営業に当たるかどうかは社会性をもって継続反復して行われるかで見るとされ、日数や曜日をあらかじめ限定していても、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為が反復継続して行われ得る状態であれば許可が必要になるとしています。年に数回だから当たらない、という整理にはならないということです。
今回の発表には、宿泊料を受けているかどうかも、その額も書かれていません。したがって、外から読んでこの受け入れがどの制度に当たるかを言い当てることはできません。書けるのは、同じ形を自分で考えるなら、この3点から入ることになるという順番だけです。
旅館業の許可は3つの種別に分かれている
旅館業に当たるとなった場合、次に見るのは許可の種類です。厚生労働省のQ&Aは、旅館業の許可を旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3つとしています。住宅の全部または一部を活用した宿泊サービスは、一般的には簡易宿所営業として許可を取得して実施するという説明も同じQ&Aに置かれています。
| 許可の種類 | Q&Aでの扱い |
|---|---|
| 旅館・ホテル営業 | 旅館業の許可の種類のひとつとして挙げられています |
| 簡易宿所営業 | 住宅を活用した宿泊サービスは、一般的にこの種別で許可を取得して実施するとされています |
| 下宿営業 | 旅館業の許可の種類のひとつとして挙げられています |
簡易宿所営業には客室の延床面積の基準があり、平成28年4月の改正で、一度に宿泊させる宿泊者数を10人未満とする施設の場合には、宿泊者1人当たり3.3平方メートルに宿泊者数を乗じた面積以上で許可を受けられることになったとQ&Aは説明しています。人数の少ない受け入れでは、この区分がどう当てはまるかを保健所に確かめる場面が出てきます。
団体を家庭ごとに分けて泊める形は、1軒あたりの人数が小さくなります。基準が人数で変わることを知っておくと、確認する順番を組み立てやすくなります。旅館業に当たる場合の手続きは民泊の許可の取り方と簡易宿所と民泊の違いに整理しています。
届出で行う住宅宿泊事業は、日数が180日を超えないもの
もうひとつの入口が住宅宿泊事業です。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業を、旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が180日を超えないものだとしています。行うには都道府県知事等への届出が必要です。
同じページは、年間提供日数の上限を180日とし、地域の実情を反映する仕組みが設けられていることにも触れています。条例で日数が絞られる地域があるということで、日数の上限だけを見て判断できるわけではありません。
家主が居住しているかどうかで求められる措置が分かれることも示されています。家主居住型では住宅宿泊事業者に適正な遂行のための措置が義務付けられ、家主不在型では住宅宿泊管理業者への委託が義務付けられます。住宅宿泊管理業は国土交通大臣の登録、住宅宿泊仲介業は観光庁長官の登録を受けることとされています。
家庭に泊まってもらう形は、家主が在宅していることが多いという点で家主居住型に近く見えます。ただし、居住しているかどうかだけで決まる話でもありません。日数の数え方は民泊の180日、届出と許可と認定という手続きの違いは民泊の許可で扱っています。
体験を伴う受け入れには、農山漁村余暇法の登録制度がある
もう1つ、地域での受け入れに関わる制度があります。農林水産省が所管する農山漁村余暇法です。同省のページは、ゆとりある国民生活の実現と農山漁村地域の活性化を図るための法律だと説明しています。
この法律には農林漁業体験民宿業の登録制度があり、平成17年の改正で登録の仕組みが見直され、登録基準を満たせば誰でも登録実施機関の登録を受けられるようになったとされています。登録実施機関は株式会社百戦錬磨だと同ページに明記されています。
登録は、旅館業法の許可や住宅宿泊事業法の届出に代わるものではありません。農林漁業や農山漁村の文化に触れる体験を提供する宿として位置づけられる仕組みで、宿泊そのものの手続きとは層が違います。今回の発表に、受入家庭や同法人がこの登録を受けているかどうかについての記載はありません。
| 区分 | 根拠となる法律 | 手続きの呼び方 |
|---|---|---|
| 旅館業 | 旅館業法 | 許可(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業/下宿営業) |
| 住宅宿泊事業 | 住宅宿泊事業法 | 都道府県知事等への届出 |
| 農林漁業体験民宿業 | 農山漁村余暇法 | 登録実施機関による登録 |
同じ「民泊」という言葉で語られる受け入れが、根拠となる法律から違うことが分かります。記事や発表を読むときは、どの言葉がどの制度を指しているのかを分けて読む必要があります。
この発表で分からないこと
団体の受け入れを自分でも考えるとき、知りたくなる項目のうち、この発表からは読み取れないものを並べます。
| 知りたくなる項目 | この発表での扱い |
|---|---|
| 宿泊料を受けているか、金額はいくらか | 記載がありません |
| 受入家庭がどの制度で宿泊させているか | 記載がありません |
| 1軒あたりの受け入れ人数 | 記載がありません |
| 受入家庭の募集・研修・取り決めの仕組み | 記載がありません |
| 団体側が負担する費用と、家庭に渡る金額 | 記載がありません |
| 受け入れの申し込み方法と受付の期間 | 記載がありません |
| 今後の受け入れ予定 | 記載がありません |
| 食事の提供をどう扱っているか | 調理体験を行ったという記載はありますが、提供の形についての記載はありません |
なお同法人については、2011年の東日本大震災以降、岩手県を中心とした地域で若者と住民がともに学び合う仕組みをつくってきたこと、修学旅行民泊や大学生・社会人向けプログラム、地域コミュニティづくりに取り組んでいること、2024年度は年間5,000人以上が参加したことが発表に書かれています。設立は2011年3月12日、法人化は2013年6月18日とされています。
団体の受け入れを考えるときの順番
このニュースから持ち帰れるのは、次の順番です。
先に、金銭のやり取りを書き出します。宿泊料という名前を付けていなくても、寝具や部屋の使用料に当たるものを受け取っていないかを確かめます。光熱水道費や清掃費の実費という形も含めて洗い出すと、旅館業に当たるかどうかの入口が見えます。
次に、受け入れの回数と続き方を数えます。年に数回でも、反復継続して行われ得る状態かどうかで扱いが変わります。学校行事の受け入れは毎年同じ時期に戻ってくるので、1回ごとの出来事として数えないほうが実態に合います。
そのうえで、どの制度で行うかを窓口に相談します。旅館業なら保健所、住宅宿泊事業なら都道府県知事等の窓口です。体験の提供を前に出すなら、農林漁業体験民宿業の登録が別の層として関わってきます。制度上の取り扱いや必要な手続きは地域の運用によって違うため、最終的な判断は所管の窓口に確認してください。
この記事は公表された発表の記載と公開資料を整理したもので、特定の取り組みやサービスの推奨・評価ではありません。法令の解釈を断定するものでもありません。
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