株式会社hacomono(東京都渋谷区、代表取締役CEO:蓮田健一)は2026年9月24日、民泊の開業・運営を支援するサービス「hacomono 民泊チェックイン」の公式サイトを公開したと発表しました。発表は、多言語と複数人の予約に対応したスマートチェックイン、地方での民泊運営で蓄積したノウハウ、開業前から開業後までの一気通貫の支援という3つを特徴として挙げています。
新しい支援サービスの発表を、運営している側が自分の現場に置き換えて読むとき、手がかりになるのは機能の名前ではありません。この発表でいえば、「代表者だけでなく宿泊者一人ひとりの情報管理や本人確認」という一文です。宿泊者一人ひとり、という単位は、サービスの設計方針である前に、住宅宿泊事業者に求められている記録の単位そのものだからです。
そこでこの記事では、発表に書かれている内容を表記のまま整理したうえで、観光庁の民泊制度ポータルサイトに書かれている名簿と本人確認の条件を並べ、仕組みに載せられる部分と、導入しても自分に残る部分を切り分けます。発表の見出しにある「高収益拠点」という言い方は同社の説明であって、当サイトが確かめた評価ではありません。当サイトはこのサービスを利用しておらず、性能や他社との優劣を評価するものでもありません。
公開されたのは公式サイトで、提供条件は発表に出ていない
まず、何が発表されたのかを取り違えないようにします。発表が公開したと述べているのは、サービスの公式サイトです。提供開始日、料金、契約の期間、対応できる物件の条件といった導入の判断に直結する項目は、この発表には書かれていません。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 発表者 | 株式会社hacomono(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:蓮田健一) |
| 発表日 | 2026年9月24日 |
| 内容 | 民泊事業を立ち上げる支援サービス「hacomono 民泊チェックイン」の公式サイトを公開 |
| 特徴1 | 多言語対応・複数人予約に対応したスマートチェックインによる地方運営の軽減 |
| 特徴2 | 愛媛県、長崎県、広島県などにおける民泊の開業・運営を通じて蓄積したノウハウの提供 |
| 特徴3 | 物件診断・収支シミュレーションから行政手続き、システム導入、運営オペレーションの設計、開業後の稼働率改善まで一気通貫で支援 |
| サイトで発信する内容 | 民泊の開業・運営に関するブログ記事、オーナー向けの定期セミナーや説明会の情報 |
| 料金・提供開始日・契約条件 | 記載がありません |
同社は、ウェルネスや運動施設向けのマネジメントシステム「hacomono」を提供しており、2019年3月のサービス提供開始以来、全国13,000店舗以上に導入されていると説明しています。無人施設の運営支援で培ったノウハウを民泊向けに応用した、というのが発表の説明の組み立てです。
スマートチェックインの中身として発表が挙げているのは、宿泊者一人ひとりの情報管理と本人確認のオンライン化、多言語対応、物理鍵との併用、パスポート情報を安全に管理するための設計です。ここから先は、それぞれが制度のどの部分に当たるのかを見ていきます。
「宿泊者一人ひとり」という単位は、名簿の記載事項から来ている
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者が行う業務として、宿泊者名簿に「宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日」を記載すること、国内に住所を有しない外国人であるときは「その国籍及び旅券番号」も記載することを挙げています。名簿は届出住宅か、住宅宿泊事業者の営業所または事務所に備え、3年間保存し、都道府県知事から求められたときに提出することとされています。
記載の単位は宿泊者です。予約は代表者1人の名前で入っていても、実際に泊まる人が4人いれば、名簿に残るのは4人分の情報になります。グループや家族での滞在が中心の物件ほど、この差は大きくなります。発表が「代表者だけでなく宿泊者一人ひとり」と書いているのは、この単位に合わせて画面を作ったという説明として読めます。
仕組みを入れるかどうかを考えるときは、機能の一覧を眺める前に、自分の物件で1組あたり何人の情報を集める必要があるかを数えてみるのが早い方法です。1組あたりの人数に月の組数を掛ければ、その月に集めて保存する記録の量が出ます。手で書き写しているなら、どこで滞っているかも見えます。名簿そのものの書き方と保存の考え方は民泊の宿泊者名簿に整理しています。
なお、この発表には、名簿の保存を同社の仕組みのどこで行うのか、保存期間をどう扱うのかについての記載はありません。オンライン化の対象として挙げられているのは、情報管理と本人確認という言い方までです。
非対面で確認するなら、2つの条件を同時に満たす必要がある
本人確認について、観光庁の民泊制度ポータルサイトは、対面によるほか、対面と同等の手段としてICTを活用した方法を挙げ、その方法が満たすべき条件を2つ示しています。1つは「宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること」、もう1つは「当該画像が住宅宿泊事業者等の営業所等、届出住宅内又は近傍から発信されていることが確認できること」です。
2つめの条件は、画像がどこから送られてきたのかに関わるものです。予約の前日に自宅から旅券を撮って送ってもらう形と、到着した宿泊者が届出住宅の中で画面に向かう形とでは、同じ「オンラインの本人確認」でも意味が変わります。非対面の仕組みを選ぶときに、機能の名前ではなく、どの場面で、どこから画像が送られる設計になっているかを確かめる必要があるのはこのためです。
今回の発表は、本人確認をオンライン化すると述べていますが、どの方式でこの2つの条件を満たすのかは書いていません。導入を検討する場合は、公開されているサイトや問い合わせで確認し、届出先の窓口の運用にも照らすことになります。考え方の整理は民泊の本人確認と民泊のチェックイン方法にまとめています。
物理鍵との併用は、鍵の受け渡しの話であって確認の代わりではない
発表は、インバウンド利用を想定して多言語対応と物理鍵との併用に対応した設計だと説明しています。鍵をどう渡すかと、誰が泊まるのかを確かめることは、現場では続けて起きますが、制度の上では別の話です。鍵の受け渡しを無人にしても、本人確認の条件がなくなるわけではありません。
逆に、スマートロックを入れた物件でも、電池切れや通信の不調に備えて物理鍵を併用する運用はよく行われます。併用そのものは珍しい選択ではなく、むしろ確かめたいのは、鍵を渡す順番です。確認が終わる前に解錠の情報が渡る設計になっていないかを見ます。鍵の渡し方と順序の考え方は民泊の鍵の受け渡しに書いています。
外国語での案内が求められている項目は、チェックイン画面の外にもある
多言語対応という言葉は、画面が何か国語で表示されるかという話に見えます。ただ、住宅宿泊事業者に求められている外国語での対応は、画面の中だけで終わりません。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、外国人観光旅客である宿泊者に対して、外国語を用いて次の案内を行うことを挙げています。
| 外国語で案内する項目 | 何についての案内か |
|---|---|
| 設備の使用方法に関する案内 | 届出住宅にある設備をどう使うか |
| 移動のための交通手段に関する情報 | 届出住宅からの移動の手段 |
| 火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内 | 災害時にどこへ連絡するか |
これとは別に、宿泊者に対して、騒音の防止のために配慮すべき事項、ごみの処理に関し配慮すべき事項、火災の防止のために配慮すべき事項を説明することも求められています。チェックインの画面で言語を切り替えられることと、これらの案内が用意できていることは、別々に確かめる必要があります。案内に載せる項目の整理は民泊のチェックイン案内にあります。
仕組みを入れても、義務の名あて人は住宅宿泊事業者のまま
発表は、手続きをオンライン化することで「オーナー・運営者の法令に準拠した業務負荷軽減を支援します」と説明しています。負荷が減ることと、義務の相手が変わることは別です。名簿の備付けも本人確認も、住宅宿泊事業者が行う業務として示されています。
委託についても条件があります。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、届出住宅の居室の数が5を超える場合と、人を宿泊させる間に不在となる場合には、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要があるとしています。委託するときは一の住宅宿泊管理業者に委託することとされ、複数の者に分割して委託することや、業務の一部を住宅宿泊事業者が自ら行うことは認められません。委託の対象となるのは、法第5条から第10条までの規定による業務と、届出住宅の維持保全に関する業務です。
つまり、システムの導入と、住宅宿泊管理業務の委託は、同じ「任せる」でも制度上の位置づけが違います。今回の発表には、同社が住宅宿泊管理業者の登録を受けているかどうかについての記載はありません。開業支援や運営オペレーションの設計をどこまで担うのかという範囲も、発表の書き方からは読み取れません。委託の要否と範囲の考え方は民泊の運営代行で扱っています。
発表に挙げられた3つの事例は、どこまで読めるか
発表は、空き家や社員寮などを宿泊施設として再生した事例を3つ挙げています。数値は同社が発表資料に記載しているもので、当サイトが確かめたものではありません。
| 事例 | 発表の記載 |
|---|---|
| CocoPaku長崎(長崎県長崎市) | 約200平方メートル、最大10名が宿泊できる一棟貸し。開業から4か月で累計売上800万円を達成し、リフォーム費用は開業初月で回収したとしています |
| エデンの海ヒルズ(広島県竹原市) | 使われなくなった社員寮を団体向けの一棟貸し施設として再生。開業から3日で13件の予約を獲得し、最高稼働率90%を記録したとしています |
| 40番たっきゅうミニホテル(愛媛県愛南町) | 従業員向けの宿泊施設だった物件を活用し、家具・家電や防火設備など必要な設備を絞って導入して開業したとしています |
この3つから、自分の物件の見込みを引き出すことはできません。物件の取得費や賃料、リフォーム費用の金額、売上の内訳、稼働率をどの期間のどの母数で計算したのかが、いずれも書かれていないためです。「最高稼働率」という言い方も、月の平均なのか特定の期間の値なのかが示されていません。
事例として読めるのは、数字ではなく物件の出どころのほうです。空き家、社員寮、従業員向けの宿泊施設という、もともと宿泊用に作られていない建物が使われている点は共通しています。自分の周りに同じ性格の建物があるかどうかを考える材料にはなります。一方で、収益の見込みは、自分の物件の条件で組み立てるほかありません。組み立て方は民泊の収支計画に置いています。
この発表で分からないこと
導入を判断するときに知りたくなる項目のうち、この発表からは分からないものを並べます。
| 知りたくなる項目 | この発表での扱い |
|---|---|
| 料金・最低契約期間・初期費用 | 記載がありません |
| 提供開始日(サイト公開日以外) | 記載がありません |
| 本人確認をどの方式で行うか | 「オンライン化」とだけ記載されています |
| 名簿の保存場所と保存期間の扱い | 記載がありません |
| 対応言語の数と種類 | 「多言語対応」とだけ記載されています |
| 住宅宿泊管理業者の登録の有無 | 記載がありません |
| 支援できる地域の範囲 | 愛媛県、長崎県、広島県などの実績が挙げられています。対応範囲の限定についての記載はありません |
| 予約サイトや既存システムとの連携 | 記載がありません |
導入を検討するときに確かめる順番
このニュースから持ち帰れるのは、次の順番です。
先に自分の記録の量を数えます。1組あたりの平均人数と、月の組数を掛ければ、名簿として残す情報の量が出ます。外国人の宿泊者が多ければ、国籍と旅券番号まで含めた項目が増えます。量が分かってから、どこを仕組みに載せるかを考える順番になります。
次に、非対面の本人確認をどの方式で行うかを確かめます。顔と旅券が画像で鮮明に確認できること、その画像がどこから送られているかを確認できること。この2つを、導入を検討している仕組みがどう満たすのかを、機能の名前ではなく手順で説明してもらいます。
最後に、仕組みに載らない部分を書き出します。外国語での案内、周辺への配慮の説明、災害時の連絡先の案内、そして委託が必要な場合の相手の選び方です。ここまで整理してから、料金や契約の条件を問い合わせると、比べる軸がぶれません。
制度上の取り扱いや、自分の物件で必要な手続きについては、届出先である都道府県知事等の窓口に確認してください。この記事は公表された発表の記載を整理したもので、サービスの推奨や評価ではありません。
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