OTAは Online Travel Agent の略で、宿泊予約をインターネット上で扱う事業者を指す業界用語です。ところが日本の民泊制度には、OTAという区分がありません。住宅宿泊事業法が用意しているのは「住宅宿泊仲介業者」と「旅行業者」という二つの立場で、掲載を任せられる相手はこのどちらかに限られます。よく知られた名前だから大丈夫、という判断はできません。
この記事は、届出を出したところ、あるいはこれから出すところにいる住宅宿泊事業者に向けて、掲載を任せようとしている相手が委託できる相手かどうかを、自分で判定できる状態にすることを目的にしています。扱うのは五つです。制度上の呼び名が二つに分かれていること、観光庁が公表しているリストでの確かめ方、委託できない相手に頼んだときに何が起きるか、委託するときに宿側から渡すもの、そして相手に課されている義務が宿側にどう返ってくるかです。
先に、この記事で扱わないことを書いておきます。どのサイトが得か、どのサイトの手数料が安いかという比較はしません。料率を公表していない事業者があり、同じ条件で並べられないためです。個々のサイトの料金の決まり方はAirbnbの手数料とAgodaに民泊を掲載するで、それぞれの公表資料の範囲で扱っています。掲載を減らしていく側の話はOTA依存を減らす方法にあります。
「OTA」は法律の言葉ではない。制度上は二つに分かれる
観光庁は住宅宿泊仲介業を、「旅行業法第6条の4第1項に規定する旅行業者以外の者が、報酬を得て、住宅宿泊仲介業務を行う事業」と説明しています。読みどころは冒頭です。旅行業者を最初に除いたうえで、それ以外の者を住宅宿泊仲介業者として登録させるという組み立てになっています。つまり二つの登録は並列ではなく、先に旅行業法の網があり、そこから漏れたものを住宅宿泊事業法が拾う関係です。
そのうえで、委託先については観光庁が明確に書いています。住宅宿泊事業者は、届出住宅の仲介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならない、という規定です。宿泊予約サイトという見た目は同じでも、制度の側から見れば入口が二つあり、どちらの入口も通っていない相手には委託できません。
| 比べる項目 | 住宅宿泊仲介業者 | 民泊を取り扱う旅行業者 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 旅行業者以外の者が、報酬を得て住宅宿泊仲介業務を行う事業 | 旅行業法の登録を受けた事業者のうち、民泊を取り扱うもの |
| 登録する相手 | 観光庁長官 | 旅行業法にもとづく登録 |
| 更新 | 5年ごとに更新が必要 | 記載がありません |
| 宿側が確認できる公表資料 | 観光庁「住宅宿泊仲介業者および民泊を取り扱う旅行業者のリスト」 | 同じリストの別区分 |
| リストに載っている数 | 66社(令和8年6月22日時点) | 10社(令和7年3月末時点) |
表の右側の空欄は、埋めなかったのではなく埋められなかった項目です。旅行業者側の登録の有効期間や更新の扱いは、この記事で読んだ民泊制度ポータルサイトのページには記載がありませんでした。旅行業法の側の資料にあたる必要があります。
委託できない相手に頼むと、責めを負うのは宿側です
この判定を飛ばしたときに何が起きるかも、観光庁が書いています。住宅宿泊仲介業者にも旅行業者にも当たらない者へ委託した場合、住宅宿泊事業法違反として業務改善命令等の対象になるとともに、50万円以下の罰金とされています。罰の向く先が相手ではなく、委託した側にも及ぶ点が重要です。掲載先を選ぶ作業は、集客の工夫であると同時に、法令上の判断でもあります。
判定に使うのは相手の説明ではありません。観光庁が公表しているリストです。リストには更新時点が添えられており、この記事を書いた時点では住宅宿泊仲介業者が令和8年6月22日時点、民泊を取り扱う旅行業者が令和7年3月末時点と示されていました。時点が違うものが同じページに並んでいるので、どちらを見ているかを意識してください。また、リストは更新されるため、新しく声をかけられた相手については、そのつど見に行くことになります。
海外に本社のある会社であっても、日本の民泊を扱うのであればこのリストに名前があります。実際、公表されているリストには Airbnb Global Services Limited、Booking.com B.V.、Expedia, Inc.、Agoda Travel Services Pte. Ltd. といった社名のほか、楽天ステイ株式会社や株式会社あなぶきスペースシェアなどが掲載されています。名前を知っているかどうかではなく、そこに載っているかどうかで見てください。
登録の中身を見ると、相手が何を通ってきたかが分かる
住宅宿泊仲介業の登録は、観光庁長官が行い、5年ごとの更新が必要とされています。申請から処分までの標準処理期間は、原則として申請が到達した日の翌日から起算して60日とされています。費用も公表されていて、新規は登録免許税が1件9万円、更新は登録手数料が1件26,500円、電子申請の場合は25,700円です。登録免許税の納付先は麹町税務署と示されています。
| 公表されている項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録する相手 | 観光庁長官 |
| 有効期間 | 5年ごとに更新が必要 |
| 新規登録の費用 | 登録免許税 1件9万円 |
| 更新登録の費用 | 登録手数料 1件26,500円(電子申請の場合は25,700円) |
| 標準処理期間 | 申請が到達した日の翌日から起算して60日 |
| 添付する証明書 | 官公署が発行したものは申請日前3月以内に発行されたもの |
登録を拒む理由も並べられています。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、登録を取り消されてその取消しの日から5年を経過しない者、禁錮以上の刑に処せられるなどして5年を経過しない者、暴力団員等が挙げられています。これは相手の商売の上手さを保証する仕組みではありません。一定の欠格に当たらないことを確かめて名簿に載せる、という性質のものです。手数料が高いか安いか、予約が入るかどうかは、この登録とは別の話として自分で見ることになります。
委託するとき、宿側から渡すのは届出番号です
掲載を依頼する側の作業は、思ったより単純です。観光庁は、仲介業者に委託する際、住宅宿泊事業者は都道府県等から送付された届出番号等の記載されたメールの情報、または標識のコピーに記載されている情報を正確に通知することを求めています。手元で書き写すのではなく、届いたものをそのまま渡す形です。届出が終わって番号が手元にある状態については届出後に営業を開始するまでで扱っています。
渡した番号は、そこで止まりません。仲介業者は新規に物件を掲載するとき、届出番号について適法な物件であることを確認したうえで掲載することとされています。さらに掲載後は、仲介サイトを利用して人を宿泊させた日ごとに、営業日数自動集計システムを通じて観光庁へ報告します。観光庁はこれを、住宅宿泊事業者が人を宿泊させた日数が180日を超過していないか、または定期報告の内容が正しく報告されているかを補完的に確認するためのものだと説明しています。日数の数え方そのものは民泊の180日にまとめています。
相手に課された義務は、宿側にも返ってくる
住宅宿泊仲介業者には、宿泊者に向けた義務がいくつも置かれています。読み流しがちですが、そのうちのいくつかは宿側の作業を直接決めます。
まず約款です。住宅宿泊仲介業約款を定め、変更も含めてその実施前に観光庁長官へ届け出る必要があり、日本語及び英語での策定が必須とされています。営業所での掲示かインターネット上での公開のいずれかで公示することも求められます。料金についても同じで、業務の開始前に国土交通省令で定める基準に従って宿泊者及び住宅宿泊仲介業務に関する料金を定め、公示することとされています。手数料の水準そのものに上限が定められているわけではありませんが、どこかで公示されてはいる、ということです。
禁止行為も並んでいます。「違法行為のあっせん等の禁止」という見出しの下に、宿泊者の判断に影響を及ぼす重要な事項について故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為、法令に違反する行為やサービスの提供をあっせんし、又は便宜を供与すること、特定のサービスの提供を受けることや特定の物品を購入することを強要する行為が挙げられています。そして五つ目が、宿泊のサービスを提供する者と取引を行う際に、当該者が法第3条第1項の届出をしたものであるかどうかの確認を怠る行為です。観光庁は、これを住宅宿泊事業者からの届出番号を確認せずに仲介サイトに掲載することだと説明しています。
| 相手に課されていること | 宿側から見ると |
|---|---|
| 約款を定めて観光庁長官へ届け出る(日本語及び英語) | 契約の条件が文書で用意されている |
| 料金を定めて公示する | 手数料の根拠を掲示か公開のどちらかで確かめられる |
| 届出をした者であるかどうかを確認する | 届出番号を渡さないと掲載が進まない |
| 契約の締結前に宿泊者へ書面を交付する | 事業者の商号・名称・届出番号が宿泊者に開示される |
| 営業所ごとに標識を掲げる | 登録を受けた事業者であることが営業所で示される |
| 違法物件について観光庁の要請に応じて速やかに削除する | 掲載は無条件に続くものではない |
契約前に宿泊者へ渡す書面の記載事項を見ると、この仕組みの向きがはっきりします。書面には仲介業者自身の商号・名称又は氏名と登録年月日・登録番号だけでなく、住宅宿泊事業者の商号・名称と届出番号、宿泊施設の所在地、対価と支払方法、契約の申込方法や変更・解除の条件までが載ります。宿泊者から見れば、予約するときに誰の物件で番号が何番なのかが示される仕立てです。
66という数を、届出住宅の数と並べてみる
観光庁の「住宅宿泊事業法の施行状況」には、令和8年9月15日時点の届出と登録の件数が載っています。住宅宿泊仲介業の登録件数は66件です。同じページの届出住宅数は43,037件、住宅宿泊管理業の登録件数は4,740件と示されています。
数える対象が違うので割り算はしませんが、掲載を預かる側の事業者が二桁しかいないことは、掲載先を探す作業の性質を変えます。無数の選択肢から選ぶのではなく、公表された名簿を上から見ていける規模だということです。裏を返せば、名簿に無い相手から掲載の話が来たときに、それが例外ではなく判定の対象になります。
なお、この66という数は「日本の民泊を扱うサイトが66個ある」という意味ではありません。登録を受けた事業者の件数であり、一つの事業者が複数のサイトを運営している場合も、複数のブランドで掲載している場合も、件数は1です。サイトの名前で探して見つからないときは、運営している会社の名前で照らしてください。
この記事で確認できなかったこと
各サイトの手数料の水準を横並びにすることはできませんでした。料率を公表していない事業者があり、公表しているものどうしでも率が掛かる範囲の定義が違うためです。公表されている範囲での個別の整理は、それぞれのサービスの記事に分けています。
日本の民泊の予約のうち、仲介サイト経由が何割を占めるかという公的な集計も見つけられませんでした。したがって「ほとんどがOTA経由」といった書き方はしていません。同じ理由で、どのサイトからの予約が多いかという順位も扱いません。
旅行業者側については、登録の有効期間、更新の扱い、民泊を取り扱う場合に追加で課される義務が、この記事で読んだ民泊制度ポータルサイトのページには記載がありませんでした。旅行業者へ委託することを検討する場合は、旅行業法の側の公表資料にあたってください。掲載を委託したあとに宿側へ残る業務の範囲は、住宅宿泊事業者とはで扱っています。
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