OTA依存を減らす方法/解説

OTA依存を減らす方法|段階ごとに、何が自分の側へ移るのかを確かめる

OTAへの依存を減らす作業は、集客の工夫ではなく役割の引き取りです。観光庁が示す届出事項20項目と住宅宿泊事業者の業務、個人情報保護法の四つの義務、公正取引委員会の警告から、段階ごとに何が自分の側へ移るのかを整理します。

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OTAへの依存を減らす、という言い方は少し実態からずれています。減っているのは支払う手数料や予約の割合ではなく、他人に渡していた役割です。役割は消えずに移動するので、減らした分だけ自分の側の仕事が増えます。順番を決めずに手をつけると、自社サイトを作った時点で受け取り方が用意できていない、という止まり方をします。

この記事は、依存を下げる作業を四つの段階に分け、各段階で自分の側へ何が移るのかを、観光庁・個人情報保護委員会・公正取引委員会の資料で確認できる範囲だけで整理します。自社予約そのものの位置づけは自社予約とは、増やすための打ち手ごとの決まりは自社予約を増やす方法で扱っているため、ここでは繰り返しません。なお、OTA経由の予約が全体の何割を占めるかという公的な集計は見つけられなかったため、割合や手数料の水準は書いていません。

OTAへ渡しているのは、募集と申込みの受付までです

最初に確かめるのは、いま何を渡しているのかです。宿泊予約サイトを使っていると、宿の仕事の大半をそこに預けているような感覚になりますが、住宅宿泊事業法の側から見ると、渡せている範囲はもっと狭いです。

観光庁は住宅宿泊事業者の業務として六つを挙げています。宿泊者の衛生の確保、宿泊者の安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保、宿泊者名簿の備付け等、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明、苦情等への対応です。名簿については氏名、住所、職業及び宿泊日などを記載し3年間保存すること、苦情については深夜早朝を問わず常時、応答又は電話により対応することが示されています。

この六つはどれも、宿泊者をどこから集めたかを条件にしていません。つまり、OTAを使っていても使っていなくても、最初から事業者の業務です。渡していたのは、掲載して宿泊者を集める部分と、申込みを代理・媒介・取次ぎの形で受ける部分だけです。

宿泊者の募集から苦情への対応までの5工程について、OTA経由の場合と自社の経路の場合で担い手がどう変わるかを2段のレーンで並べ、担い手が移る3工程と経路にかかわらず事業者の業務である2工程を区別した図
左の3列だけが、募集を委託するかどうかで担い手が変わります。右の2列は住宅宿泊事業者の業務として定められており、経路を変えても事業者に残ります。 出典:観光庁「事業者の業務[1]」観光庁「仲介業者への委託について」(確認日 2026-09-11)

この切り分けをしておくと、依存を下げたときに増える仕事を見積もれます。名簿や苦情対応の負担が増えるわけではありません。増えるのは、集める仕事と、申込みを受ける仕組みの運用です。名簿と本人確認の中身は民泊の宿泊者名簿民泊の本人確認で扱っています。

減らす順番は、外側の条件から内側の手続きへ

段階の順番には理由があります。自分で決められないことを先に確かめるからです。契約に書かれた条件は相手との取り決めなので、こちらの準備が進んでも変わりません。逆に、自分の側の手続きは、必要と分かってから整えれば間に合います。

OTAへの依存を減らす作業を、渡している役割の切り分け、価格と部屋数の条件の確認、宿泊者情報を受け取る用意、二つの委託の区別という四段階の階段状に並べ、各段階で確かめる資料を添えた工程図
各段階の右下に、その段階で読む資料を添えています。段階2で契約上の余地が無いと分かった場合、段階3以降の準備を進めても価格は動かせません。 出典:観光庁、個人情報保護委員会、公正取引委員会の各資料(確認日 2026-09-11)

段階1は前の節で済んでいます。ここから先の三つを順に見ます。

価格と部屋数の条件は、契約の側で決まります

依存を下げる打ち手として最初に思いつくのは、自社サイトを安くすることです。ところがこれは、自分の判断だけでは決まりません。宿泊予約サイトとの契約に、掲載する宿泊料金や部屋数を他の販売経路と同等または有利にする条件が置かれている場合があります。

公正取引委員会は、この種の条件を違反の疑いがあるものとして取り上げ、確約手続で処理した事案を公表しています。Booking.com B.V. については、契約において「Booking.comサイトに掲載する宿泊料金及び部屋数について、他の販売経路と同等又は他の販売経路よりも有利なものとする条件」を定め、宿泊施設運営業者に遵守を要請していた行為が、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いとして挙げられ、当該行為を取りやめることなどを内容とする確約計画が認定されました。

ただし、認定は違反があったという判断ではありません。また、認定された計画は認定を受けた事業者の行為についてのものであり、いま自分が結んでいる契約の中身を示すものでもありません。3件の発表の内容と、除外された「宿泊料金のナロー同等性条件」の扱い、さらに自社サイトへ「最も安い」と書く場合の景品表示法上の論点は、最低価格保証を掲げる前にで分けて整理しました。この段階では、手元の契約書に価格と部屋数の条件が置かれているかを読むところまでを済ませてください。

部屋数の条件は、価格ほど話題になりませんが、依存の実体に近い項目です。OTAへ出す部屋数に下限や同等性の条件があると、自社の経路へ残せる在庫がその分だけ狭くなります。自社サイトを整えても、そこで売れる部屋が無ければ予約は移りません。読む順番としては、価格と同時にここを確認します。

宿泊者の連絡先を、自分が直接取得する側になります

段階3で移るのは、宿泊者の個人情報の扱いです。OTA経由では、宿泊者の連絡先は仲介業者の側を経由して届きます。自社の経路にすると、氏名や連絡先を自分が本人から直接取得することになります。ここで個人情報保護法上の位置づけが変わります。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人情報取扱事業者の義務として次の条文を挙げています。第17条第1項は「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。」、第21条第1項は「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」と定めています。第23条は「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。」、第27条第1項は「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」と定めています。

移ってくるもの 何を用意するか 根拠
利用目的の特定 予約の受付、滞在中の連絡、再訪の案内など、使う範囲を先に書き出す 個人情報保護法 第17条第1項
利用目的の通知・公表 取得した時点で本人へ通知するか、取得前に公表しておく 個人情報保護法 第21条第1項
安全管理措置 保管場所、閲覧できる人、持ち出しの扱いを決める 個人情報保護法 第23条
第三者提供の制限 清掃や鍵の受け渡しを外部へ頼む場合の扱いを整理する 個人情報保護法 第27条第1項

宿泊者名簿と本人確認は、住宅宿泊事業法の側の義務です。この二つは、個人情報保護法の義務とは別に、最初から事業者にかかっています。依存を下げると新しく生じるのは、名簿の義務ではなく、自分の手元に置く連絡先の扱いのほうです。予約フォームでどの項目を受けるかは民泊の予約フォームの項目で扱っています。受ける項目を決めるときに、利用目的も同時に決めてください。

「二つの委託」を混同すると、手続きを間違えます

最後の段階は、届出との関係です。ここでよく混ざるのが、住宅宿泊管理業者への委託宿泊者の募集の委託という二つの委託です。名前が似ていますが、届出の扱いが違います。

観光庁は届出事項として20項目を示しています。委託に関わる項目は「委託をする場合は、住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日、登録番号、管理受託契約の内容」で、これは管理業務の委託先についてのものです。この一覧に、宿泊者の募集を委託する仲介業者についての項目は掲載がありません。使っているOTAの社名や登録番号を届け出る欄は、この一覧の中に見当たらないということです。

一方で、募集を委託する相手には制限があります。観光庁は、宿泊者の募集を他人に委託する場合、住宅宿泊事業法上の登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業法上の登録を受けた旅行業者を利用しなければならないとしています。無登録の業者に仲介を委託した場合は、住宅宿泊事業法違反として業務改善命令等の対象になるとともに、50万円以下の罰金等が科されると明記されています。

観光庁の民泊制度ポータルサイト「仲介業者への委託について」のページのファーストビュー
引用キャプチャ 宿泊者の募集を他人に委託する場合の相手が、住宅宿泊仲介業者または旅行業法上の旅行業者に限られることと、無登録の業者へ委託した場合の扱いが示されている公式ページです。 出典:仲介業者への委託について(観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」)(キャプチャ取得日 2026-09-09/本文の確認日 2026-09-11/表示のファーストビュー)
住宅宿泊管理業者への委託 宿泊者の募集の委託
届出事項に挙がるか 挙がる(商号・登録年月日・登録番号・契約の内容) 観光庁が示す届出事項の一覧に記載がありません
委託先の制限 住宅宿泊管理業者 住宅宿泊仲介業者、または旅行業法上の旅行業者
無登録へ委託した場合 - 業務改善命令等の対象、50万円以下の罰金等

読み取れることは二つです。第一に、OTAの使い方を変えること自体は、この一覧に載っている届出事項の変更にはあたりません。第二に、代わりの募集先を探す場合は、相手が登録を受けているかどうかを先に確かめる必要があります。「OTAをやめて別の会社にまとめて任せる」という形にすると、この制限に当たることがあります。運営代行との切り分けは民泊の運営代行で扱っています。

なお、届出事項の変更手続きそのものについては、自治体ごとに案内が置かれています。判断に迷う場合は、届出先の窓口へ確認してください。

同業と足並みをそろえて下げるのは、別の問題になります

依存を下げようとすると、近隣の宿と情報を持ち寄りたくなります。ここに、これまでの段階とは種類の違う注意点があります。

公正取引委員会は令和7年5月8日、ホテルの運営事業者15社に対して警告を行ったことを公表しました。問題とされたのは、15社が「毎月の客室稼働率、客室平均単価、販売可能な客室1室当たりの収益、将来の予約状況、将来の客室単価の設定方針等の情報」を交換していた行為で、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)および第2条第6項に関わるものとして、今後同様の行為を行わないよう警告されました。あわせて、日本ホテル協会および全日本ホテル連盟に対し、会員企業への独占禁止法遵守の周知徹底が要請されています。

OTAへの依存を下げる判断を自分の数字だけで行う場合と、稼働率や客室平均単価や将来の単価の設定方針を同業と交換して足並みをそろえる場合を左右に並べ、後者が独占禁止法第3条の不当な取引制限の問題になることを示した可否の比較図
右側の5項目は、警告の際に交換していた情報として挙げられたものです。販売経路の見直しという目的であっても、交換する内容が同じなら扱いは変わりません。 出典:公正取引委員会「ホテルの運営事業者に対する警告等について」(令和7年5月8日)(確認日 2026-09-11)

この発表が挙げている項目は、稼働率、平均単価、将来の単価の設定方針です。依存を下げる相談は、放っておくとこの内容にそのまま重なります。「OTAへの掲載をどう減らすか」という話は、必ず単価と在庫の話になるためです。同業と話す場では、自分の稼働率や将来の価格の方針を持ち出さないでください。判断の材料は、自分の契約書と自分の集計、公表されている統計に限るのが安全です。

この記事で確認できなかったこと

OTA経由の予約が全体に占める割合、宿泊予約サイトへ支払う手数料の水準、依存を下げた場合の売上や利益の変化について、公的に確認できる集計を見つけられませんでした。そのため、この記事には割合と金額を書いていません。「自社予約のほうが手取りが多い」という説明は広く見かけますが、その差を裏づける公表資料を確認できていないため、数値としては扱いません。

宿泊予約サイト各社が現在どのような契約条項を置いているかも、公表資料からは確認できませんでした。公正取引委員会の発表は各社の発表時点のものです。自分の契約がどうなっているかは、手元の契約書で確認し、読み取れない条項は締結先へ問い合わせて回答を文書で残してください。

届出事項の変更について、どの変更がどの手続きにあたるかを網羅した一覧は、今回参照した観光庁のページからは読み取れませんでした。この記事で示したのは、届出事項として挙げられている20項目の中に、宿泊者の募集を委託する仲介業者についての項目の掲載がないという事実までです。手続きの要否は、届出先の都道府県知事等の窓口で確認してください。

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