賃貸物件で民泊をすること自体は、制度上禁じられていません。住宅宿泊事業の届出書には、賃借人や転借人が届け出る場合の記入欄が用意されています。ただし前提が1つあり、それが満たせなければ届出そのものができません。賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾していることです。
ここで多いのが、「大家さんに口頭で了解をもらった」で先に進んでしまう例です。届出には承諾したことを証する書類が必要になるため、書面として残らない了解では手続きが止まります。しかも確認のタイミングを誤ると、契約後に承諾が得られないと分かることになります。
この記事では、必要な承諾の範囲、賃貸物件と居住要件の関係、賃貸ならではの注意点、そして契約前に確かめる順序を整理します。物件全般の判定基準は民泊物件の選び方、マンションの場合の規約の扱いはマンションの一室で民泊を始めるにはで扱っています。
必要なのは「住宅宿泊事業を目的とした転貸」の承諾
観光庁は、届出の前に確認しておくべき事項として、届出者が賃借人および転借人の場合は、賃貸人および転貸人が住宅宿泊事業を目的とした賃借物および転借物の転貸を承諾しているかどうかを挙げています。
ポイントは目的が特定されていることです。単に「又貸ししてよい」という一般的な承諾ではなく、住宅宿泊事業のための転貸であることが分かる形の承諾が求められます。届出書にも、賃借人の場合は賃貸人が住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾している旨、転借人の場合は賃貸人と転貸人が承諾している旨を記入する欄があります。
添付書類としても、賃借人の場合は賃貸人が承諾したことを証する書類、転借人の場合は賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類が必要です。届出の段階で書面が要る以上、交渉の段階から書面化を前提に話を進めることになります。
身内の物件でも承諾は要る
見落とされやすいのが、貸主が家族や親族である場合です。観光庁は、「賃借人」には賃借人の親族が賃貸人である場合の賃借人も含まれ、「転借人」には転借人の親族が転貸人である場合の転借人も含まれる、としています。
つまり、親の持ち家を借りている、身内の会社から借りている、といった場合も承諾の書類が必要です。関係が近いほど書面を省きたくなりますが、届出の要件は変わりません。手続きの都合として早めに用意してもらってください。
なお、登記上の所有者が死亡しているなどの事情で承諾を得ることが不可能な場合の扱いも示されています。観光庁は、登記上の所有者と届出者が異なる場合、行政庁においては届出者が賃借(使用借)人であることが推定されるため転貸承諾があることを証する書面の添付が必要となるとしたうえで、登記上の所有者が死亡しているなど承諾を得ることが不可能であり、かつ届出者以外に所有権を主張する者がいないなどの事情が確認される場合などには、規則の規定により行政庁の判断で書面の提出を省略し、届出を受理して差し支えないとしています。特殊な事情がある場合は、窓口に相談してください。
賃貸物件と居住要件の関係
住宅宿泊事業を実施できる「住宅」には居住要件があります。現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人・転借人の居住の用に供されている家屋、のいずれかです。
賃貸物件で問題になるのは2つ目の類型です。観光庁は「入居者の募集が行われている家屋」を、住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)または賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋と説明しています。社員寮として入居希望社員の募集が行われている家屋等、入居対象者を限定した募集がされている家屋もこれに該当するとされています。
ただし例外があります。広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載している等、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」とは認められません。形だけ募集を出して要件を満たそうとする形は認められない、という趣旨です。
自分が借りて住んでいる部屋の一部を使う場合は、1つ目の「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」に当たります。観光庁はこれを、現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋とし、短期的に当該家屋を使用する場合は該当しないとしています。
賃貸ならではの注意点
入居者が決まったあとも標識は必要です。観光庁は、入居者募集を行っている賃貸物件において住宅宿泊事業を行う場合、入居者が決まり届出住宅で賃貸使用している間も、住宅宿泊事業を営んでいる間は標識の掲示が必要としています。募集と住宅宿泊事業を並行させる形を考えているなら、この点を織り込んでください。
契約期間と事業の期間がずれます。賃貸借契約には期間があり、更新の可否は貸主の判断に関わります。一方、住宅宿泊事業には設備や備品への支出が伴います。契約が更新されない可能性は、投じた費用を回収できるかに直結します。承諾を得るときに、契約期間と更新の見込みもあわせて確認しておくのが実務的です。
準備期間中も家賃は出ていきます。契約から届出、営業開始までの間、収入はありません。賃借で始める場合、この期間が長引くほど開業前の支出が増えます。承諾や消防の確認を契約前に済ませておくと、この期間を短くできます。
区分所有なら規約も別に確認が要ります。借りている部屋がマンションの一室であれば、賃貸人の承諾に加えて、管理規約に住宅宿泊事業を禁止する定めがないこと、定めがない場合は管理組合に禁止する意思がないことの確認が必要です。承諾が取れても規約で禁止されていれば営業できません。
契約前に確かめる順序
賃貸で始める場合、承諾の見込みを最初に確かめます。ここが取れなければ、他の条件がどれだけ良くても進みません。物件を仮押さえする前に、住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾してもらえるか、書面にしてもらえるかを打診してください。
承諾の見込みが立ったら、区分所有であれば管理規約と管理組合の方針を確認します。次に、設備要件と居住要件を満たすかを確かめ、図面を持って消防に相談します。ここまでが済んでから契約に進むと、契約後に判明して困ることがほとんど残りません。
営業できる日数の上限も、契約条件を判断する材料になります。住宅宿泊事業法の届出で進む場合、人を宿泊させる日数は1年間で180日を超えられません。家賃は12か月分出ていくのに対し、営業できる日数には上限があるという関係を、契約前に数字として確かめておいてください。
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物件の探し方は民泊物件の探し方、費用の見積もりは民泊の初期費用はいくらかかる、開業までの工程は民泊開業の流れで扱います。
承諾の書式や、行政庁の判断が入る場面の扱いは自治体によって異なることがあります。実際の手続きは、届出先の都道府県等の窓口に確認してください。
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