チェックインの時刻を過ぎても誰も来ない。メッセージにも返信がない。この状態で最初に決めることは、請求をどうするかではありません。その日を「人を宿泊させた日」として扱うかどうかです。ここが決まらないと、宿泊者名簿にも、偶数月に出す定期報告にも何も書けません。
結論を先に書きます。住宅宿泊事業法施行規則第3条は、人を宿泊させる日数を「毎年四月一日正午から翌年四月一日正午までの期間において人を宿泊させた日数」とし、「正午から翌日の正午までの期間を一日とする」と定めています。そして住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)は、この算定について「宿泊者を募集した日数ではなく、実際に人を宿泊させた日数で算定する」としています。予約が入っていても誰も宿泊していないなら、その日は年間提供日数の上限である180日を減らしません。
誤解を防ぐための補足を一つ置きます。日数の枠が減らないことは、何もしなくてよいという意味ではありません。来なかったのか、それとも予約した人ではない誰かが入ったのかを確かめられるかどうかは、鍵と本人確認をどの順序で置いているかで決まります。確かめられない運用になっていると、日数よりも先に、宿泊者名簿の正確さという別の義務が問題になります。
この記事は、ノーショーを記録と報告の側から扱います。キャンセル料や返金で相手と話がつかなくなったときの進め方は民泊のキャンセルでもめたときにあり、ここでは金額の話をしません。名簿の記載事項そのものは民泊の宿泊者名簿、日数の数え方の全体像は民泊の180日にあります。
書けないことも断っておきます。ノーショーがどのくらいの割合で起きているか、いくらの損失になるかを集計した公的な資料は確認できませんでした(確認日 2026-10-31)。そのためこの記事に発生率と金額はありません。あるのは、条文が決めている扱いと、自分の運用で確かめられるようにする手立てだけです。
まず「宿泊が行われたか」で判定する
判定の軸は一つだけです。宿泊が行われたか。予約が入っていたかどうか、連絡があったかどうかは、この判定を動かしません。
同じ「来なかった」という報告の中に、制度上は別に扱う三つの状態が混ざっています。誰も入っていない状態、予約した人ではない誰かが泊まっていた状態、そして予約した人が遅れて深夜に着いた状態です。手元の予約画面を見ているだけでは、この三つは区別できません。
左の状態は、日数も名簿も空のままで正しい形です。施行要領が「実際に人を宿泊させた日数で算定する」としているので、算入しない根拠がはっきりしています。宿泊者名簿についても、住宅宿泊事業法第8条第1項が記載を求めているのは宿泊者の氏名、住所、職業その他の省令で定める事項で、施行規則第7条第3項はこれに宿泊日を加えています。宿泊が行われていなければ、記載する宿泊日が生じません。なお、宿泊に至らなかった予約について名簿への記載を求める規定は、この記事で確認した条文と公的資料の範囲では見つかりませんでした(確認日 2026-10-31)。
右の状態は、そもそもノーショーではありません。深夜に着いたのであれば宿泊は行われています。施行規則第3条が正午から翌日の正午までを一日と区切っているため、到着が21時でも翌2時でも、区切りそのものは動きません。
連絡の有無では、制度上の扱いは変わらない
連絡をもらって取り消したのか、連絡なしに来なかったのかは、気持ちの上では大きな違いです。しかし日数の算定と名簿の記載には、この差が出てきません。どちらも宿泊が行われていないので、同じ扱いになります。
差が出るのは手元に残る記録のほうです。取消しの連絡があれば、その通知そのものが「宿泊が行われなかったこと」の裏づけになります。連絡が無いノーショーでは、同じ役割を果たすものを自分で用意しておかないと、何も残りません。
| 起きたこと | 人を宿泊させた日数 | 宿泊者名簿 | 手元に残る記録 |
|---|---|---|---|
| 連絡のある取消し | 算入しない | 記載する宿泊日が生じない | 取消しの通知が残る |
| ノーショー(連絡がなく入室もない) | 算入しない | 記載する宿泊日が生じない | 解錠の記録と現地の状況だけ |
| 予約者ではない人が泊まっていた | 宿泊が行われているので算入する | 宿泊者全員の記載が必要 | 解錠の記録はあるが、誰かは分からない |
| 予約した人が深夜に到着した | 正午区切りの一日として算入する | 宿泊日を記載する | 本人確認の記録が残る |
表の右の列を縦に読むと、ノーショーの行だけが他人の行為の記録に頼っていないことが分かります。相手からの連絡も、本人確認の記録もありません。だからこの行だけは、鍵の解錠記録と現地の確認を自分で残す必要があります。
正午の区切りが、1日の終わりを決める
ノーショーの判断を急ぐ必要はありません。施行規則第3条の区切りに合わせれば、その日の扱いが確定するのは翌日の正午です。深夜に到着する可能性が残っている時点で「来なかった」と決めてしまうと、あとで宿泊が行われていたことが分かり、日数と名簿を直すことになります。
確定させる期限は、その先の定期報告にあります。住宅宿泊事業法第14条は、届出住宅に人を宿泊させた日数その他の省令で定める事項について、定期的に都道府県知事に報告しなければならないと定めています。施行規則第12条は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の十五日までに、それぞれの月の前二月における事項を報告するとしています。観光庁の民泊制度ポータルサイトも、事業者の業務の説明でこの期限を同じ形で案内しています。
名簿のほうには、もっと長い期限が付いています。施行規則第7条第1項は、宿泊者名簿を正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し、その作成の日から三年間保存するとしています。観光庁のポータルサイトも、三年間保存し、都道府県知事から要求があったときは提出しなければならないと案内しています。つまり、来なかった日の判断は二か月後の報告で外に出て、その判断を支える名簿はさらに三年残ります。
定期報告は実績で書く。入力項目から逆算する
報告で何を書くことになるのかは、提出する画面の項目を見ると具体的になります。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、民泊制度運営システムで作る宿泊実績定期報告の記録項目として、届出番号、報告対象期間、宿泊日数、宿泊者数、延べ人数、国籍別の宿泊者数、宿泊日を挙げています。提出の方法は、システムへのログイン後に直接入力するか、定期報告データをアップロードするかの二つです。
項目を並べると、ノーショーの日に書くことがはっきりします。宿泊日数には数えません。宿泊者数も延べ人数も増えません。国籍別の内訳にも乗りません。報告の上では、予約が入っていなかった日と区別がつかない形になります。これは不正確な報告ではなく、実際に人を宿泊させた日数で算定するという施行要領の考え方に沿った結果です。
逆に言えば、報告の数値だけを見ている限り、ノーショーが起きたことは誰にも伝わりません。発生した件数を自分で把握したいなら、報告とは別に自分の記録として残すことになります。公的な様式はありません。
本人確認と鍵の順序が、確かめられる範囲を決める
ここが、セルフチェックインを使っている場合にいちばん効いてくる部分です。本人確認の位置づけを、観光庁のポータルサイトは宿泊行為の開始までに実施するものとして案内しています。方法は対面か、対面と同等の手段としてのICTを活用した方法で、後者は宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること、その画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できることの両方を満たす必要があるとされています。
この要件は、鍵をいつ渡すかを直接指定していません。そのため、鍵を先に取り出せる状態にしておく形も、本人確認を終えてから渡す形も作れます。ノーショーのときに違いが出るのは、手元に何が残るかです。
左の形を採るなら、来なかったことは本人確認が未了のまま終わったという事実で説明できます。右の形を採るなら、解錠の記録を取れる設備であることが前提になります。記録が取れない鍵の渡し方をしている場合、誰も入らなかったことを示す材料が手元に一つも残りません。鍵の渡し方の選択肢は民泊の鍵の受け渡し、本人確認の進め方は民泊の本人確認で扱っています。
なお、特定の機種や製品を挙げることはしません。解錠の記録をどこまで残せるかを示した公的な資料を確認できていないためです。手元の設備で何が記録されるのかは、自分で確かめる必要があります。
予約者以外が泊まっていたら、名簿の義務が前に出る
いちばん面倒なのは、ノーショーだと思っていた部屋に人が入っていた場合です。この場合、宿泊は行われているので日数には算入します。それに加えて、名簿の義務が前に出てきます。
住宅宿泊事業法施行要領は、宿泊者名簿について宿泊者全員を記載する必要があり、代表者のみの記載は認められないとしています。予約した人が来ず、別の人が泊まっていたのなら、記載すべき相手はその泊まった人です。ところが本人確認を済ませていなければ、氏名も住所も職業も分かりません。施行規則第7条第1項が求める「正確な記載を確保するための措置」を講じた状態とは言えなくなります。
この順番は覚えておく価値があります。先に問題になるのは日数ではなく名簿です。日数は一日多いか少ないかの話ですが、名簿は記載そのものができていない状態になります。都道府県知事から要求があったときに提出する義務が付いている書類なので、空欄のまま三年保存することになってしまいます。
誰が入ったのか分からないまま終わってしまった場合、取れる手立ては限られます。できることは、同じ形を繰り返さないように本人確認と鍵の順序を変えることと、起きた経緯を自分の記録に残しておくことです。相手を推測して名簿を埋めるのは、正確な記載を確保する措置の正反対になります。
委託しているなら、確認の手順を契約の中に置く
住宅宿泊管理業者へ委託している場合、到着の確認も名簿の作成も委託先の手の中にあります。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊管理業者に委託される業務として、宿泊者の衛生の確保、宿泊者の安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保、宿泊者名簿の備付け等、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明、苦情等への対応を挙げ、届出住宅の維持保全に関する業務も含めて住宅宿泊管理業者の責任の下で住宅宿泊管理業務を行うとしています。
名簿の備付けが委託の範囲に入っているということは、来なかった日をどう記録するかも委託先の仕事になるということです。そこで確かめておきたいのが、契約前に交付される書面です。同じポータルサイトは、管理受託契約の締結前に交付する書面の記載事項として、住宅宿泊管理業者の商号・名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号、住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅、住宅宿泊管理業務の内容及び実施方法、報酬並びにその支払の時期及び方法、責任及び免責に関する事項、契約期間に関する事項、契約の更新及び解除に関する事項を挙げています。
ノーショーの確認手順が書かれているとすれば、それは「内容及び実施方法」の欄です。到着が無いときに現地を見に行くのか、解錠の記録だけを確認するのか、どちらもしないのかが、ここで決まります。委託の範囲を自分で切り出すことはできないため、契約の書面に無い手順は、起きたあとに頼めるものではありません。委託先の選び方と確認の観点は民泊の運営代行にまとめています。
減らすためにできること、確認できなかったこと
最後に、減らす方向の話を条文の裏が取れる範囲で書きます。ノーショーそのものを止める規定はありません。宿泊者が来るかどうかは、こちらが決められることではないためです。できるのは、起きたときに確かめられる状態を先に作っておくことだけです。
具体的には三つあります。一つめは、本人確認を宿泊行為の開始までに行うという要件を、鍵が渡る前の位置に置くこと。二つめは、解錠の記録が残る設備にして、来なかったことを自分の手元で確かめられるようにすること。三つめは、委託しているなら到着が無いときの手順を管理受託契約の内容及び実施方法に書いておくことです。いずれも、ノーショーの件数を減らす施策ではなく、起きたあとに判断できるようにするための準備です。
確認できなかったことを並べておきます。ノーショーの発生率、連絡が入る割合、損失額の相場を集計した公的な統計は見つかりませんでした(確認日 2026-10-31)。到着予定時刻を事前に確かめることでどの程度減るのかを示した公的資料もありません。そのため、この記事には効果の数値がありません。数字の裏が取れていないものを「目安」として書くことはしません。
なお、来なかったはずの部屋から音がすると近隣から連絡が入った場合は、別の義務が先に立ちます。住宅宿泊事業法第10条は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならないと定めています。対応そのものが義務なので、宿泊の有無を確かめる前に、まず連絡を受けることになります。民泊で起きるトラブルを相手別に俯瞰したい場合は民泊のトラブルが入口です。
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