外国人向けの施設ページに最初に書くべきなのは、部屋の魅力より先に、予約したあとで必ず出てくる話です。到着したときに旅券の呈示を求めること、最寄りの駅等からどう来るのか、騒音やごみについてどんな決まりがあるのか。住宅宿泊事業法の仕組みでは、これらはすべて予約の後の場面で求められます。予約前のページに書いておかないと、宿泊者は現地で初めて知ることになります。そしてもう一つ、ページをどの言語で出すかという選択が、到着後に用意する案内の言語まで決めてしまいます。
ただし、施設ページの書き方そのものを外国人向けに定めた法令は、今回の確認では見つかりませんでした。この記事で行うのは、観光庁の民泊制度ポータルサイトと住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が別の場面について定めていることを、予約前のページへ前倒しして書くという整理です。義務の置き場所は元の場面に残ります。ページに書いたからといって、居室に置く案内や現地の標識が要らなくなるわけではありません。
この記事では、ページの言語が何を決めるのかを確かめたうえで、予約から滞在までの5つの時点に分けて先に伝える事項を並べ、仲介サイトなら仲介業者が説明してくれる項目を自分のページでどう扱うか、届出番号をページに載せる意味、公開前の点検表までを扱います。料金の書き方や特定商取引法に基づく表記のように、外国人に限らずかかる表示は自社予約サイトの作り方で整理しているため、ここでは重ねません。
ページの言語は、到着後に用意する案内の言語を決める
外国人向けのページを作るとき、多くの人は「英語版を足す」「中国語版も足す」と、集客の話として言語を選びます。ところが住宅宿泊事業法の側では、この選択に別の意味が付いています。観光庁は、外国人観光旅客である宿泊者に対して外国語で行う案内について、ここでいう外国語とは宿泊予約の時点で日本語以外の言語として提示したものをいうと説明しています。施行要領も同じ定義を置いています。
外国語で行う案内は三つです。届出住宅の設備の使用方法、移動のための交通手段に関する情報、そして火災・地震その他の災害が発生した場合の通報連絡先です。さらに、周辺地域の生活環境への悪影響を防ぐための説明として、騒音、ごみの処理、火災の防止について、外国人には外国語で説明することも求められています。つまり、施設ページに言語を一つ足すと、その言語でこれらの案内と説明を用意する側に回るということです。
観光庁は続けて、その時点で外国人宿泊者が日本語を指定した場合は、外国語で案内等を行う必要はないとしています。分かれ目は予約の時点にあり、チェックインの場で相手の語学力を見て決めるものではありません。
判断に迷いやすいのが、ブラウザや翻訳機能でページ全体を自動的に外国語へ切り替えられるようにする作りです。これが「宿泊予約の時点で提示した」言語にあたるのかどうかを示した記述は、今回参照した観光庁のページと施行要領には見当たりませんでした。この記事では、あたるともあたらないとも書きません。自動翻訳を入口に置くつもりなら、届出先の自治体の窓口で扱いを確かめてから公開してください。何語を用意するかという判断そのものは、民泊の英語対応はどこまで必要かで詳しく扱っています。
予約から滞在までを5つの時点に分け、先に伝えることを決める
施設ページに載せる事項を選ぶとき、ページの中だけを見ていると手がかりがありません。そこで、宿泊者が予約前から滞在中までに通る時点を並べ、それぞれの時点で法令や観光庁の資料が何を求めているかを先に置きます。そのうえで、予約前に知っていれば困らずに済むものを施設ページへ前倒しします。
図の中で、宿泊者の側から見て予想しにくいのは4番目の到着時です。施行要領は、日本国内に住所を有しない外国人宿泊者について、宿泊者名簿の国籍及び旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとしています。名簿には宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日を記載し、外国人の場合は国籍と旅券番号も記載します。名簿は3年間保存します。
本人確認の方法にも条件があります。観光庁は、本人確認は対面か、対面と同等の手段として二つの条件をいずれも満たすICT(情報通信技術)を活用した方法で行う必要があるとしています。条件は、宿泊者の顔と旅券が画像で鮮明に確認できること、そしてその画像が届出住宅内またはその近傍から発信されていることが確認できることです。非対面のチェックインを採る施設では、到着した宿泊者が端末の前で旅券を手元に出す場面が必ず生じます。旅券を荷物の奥にしまったまま来るか、手元に用意して来るかで、その場の時間は変わります。これを予約前のページで知らせておくのが、この時点の前倒しです。方法ごとの要件は民泊の本人確認にまとめています。
3番目の到着前も、ページで先回りしやすい時点です。観光庁は、移動のための交通手段に関する情報を最寄りの駅等の利便施設への経路と利用可能な交通機関に関する情報と定義しています。居室に置く案内として求められているものですが、宿泊者がこの情報をいちばん必要とするのは、居室に着く前です。同じ内容を施設ページにも載せておくと、到着前の問い合わせが経路の話で埋まりにくくなります。ただし居室側の案内は、観光庁が示すとおり、書面を居室に備え付けるほか、タブレット端末への表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間必要に応じて閲覧できる方法で用意します。ページに載せたことで、居室の案内を省くことはできません。
5番目の滞在中の決まりは、予約の判断に関わるため前倒しの意味が大きい項目です。深夜の騒音やごみの出し方の決まりは、宿泊者が旅の過ごし方を決めるときの条件になります。説明そのものは滞在中の義務として残り、観光庁は、書面等の備付けにあたっては宿泊者の目につきやすい場所に掲示する等により、注意喚起を図るうえで効果的な方法で行う必要があるとしています。施設ページで予告し、居室で説明する、という二段構えになります。何を決まりとして定めるかは民泊のハウスルールで扱っています。
仲介サイトで説明されている項目を、自分のページでどう扱うか
仲介サイト(OTA)に掲載している場合、宿泊者は予約までにいくつかの説明を受けています。観光庁は住宅宿泊仲介業者の業務として、宿泊者と契約を締結するまでに書面を交付して説明すべき事項を挙げています。自社の外国語ページで直接予約を受ける場合、この説明を担っていた仲介業者がいません。自分で予約を受けるだけなら仲介業者の義務を負う立場にはなりませんが、宿泊者が普段どんな項目を受け取っているかを知る一覧としては、そのまま点検に使えます。
| 仲介業者が契約前に書面で説明する事項 | 自社の外国語ページで扱う場所(本記事の整理) |
|---|---|
| 住宅宿泊仲介業者の商号・名称又は氏名、登録年月日及び登録番号 | 直接予約では該当しない |
| 住宅宿泊事業者の商号、名称又は氏名及び届出番号 | 施設ページの概要欄、または事業者の表記ページ |
| 宿泊者が宿泊する届出住宅の位置を確認できる情報 | 所在地とアクセスの欄 |
| 宿泊者が住宅宿泊仲介業者に支払うべき対価及び報酬 | 直接予約では、料金の欄に税込の総額で示す |
| 提供を受けることができる宿泊サービスの内容 | 客室と設備の欄 |
| 契約の申込み・成立に関する事項 | 予約の流れの欄 |
| 責任・免責に関する事項 | 利用条件のページ |
| 契約の変更・解除に関する事項 | キャンセルの条件のページ |
| 宿泊者の資格に定めがある場合はその内容 | 予約前に読める利用条件の欄 |
| 安全及び衛生に関する情報 | 設備と滞在中の決まりの欄 |
右の列は、外国語ページの構成を考えるための本記事の割り当てで、どこに置くべきかを公的に定めたものではありません。それでも、仲介サイトで予約していれば受け取れた項目が、自社ページでは抜けているという状態は、この表を上から見るだけで見つけられます。
料金の欄については、言語に関係なく表示の決まりがかかります。国税庁は、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額を含めた価格を表示する総額表示が義務付けられていると説明しており、表示の媒体は問わないとしています。外国語ページに料金を出すときも、日本語ページと同じ書き方にそろえるのが安全です。どの書き方が認められるかは、先に挙げた自社予約サイトの記事で具体例を並べています。
もう一つ、仲介業者には、住宅宿泊仲介業約款を日本語及び英語で定めることが求められています。仲介サイト経由の宿泊者は、少なくとも英語で条件を読める状態で予約していることになります。自社ページを外国語でも出すなら、利用条件やキャンセルの条件のページまでその言語で読めるかどうかを確かめてください。紹介の欄だけが外国語で、条件のページが日本語のままという状態は、比べる側から見ると大きな差になります。
届出番号は、宿泊者が確かめるための手がかりになる
表の2行目にある届出番号は、外国人向けのページで扱い方を考えておきたい項目です。届出番号は、その宿泊施設が住宅宿泊事業法の届出を済ませているかを確かめるための番号で、確かめる経路はいくつか用意されています。
一つは現地の標識です。施行要領は、標識を届出住宅の門扉、玄関等の、概ね地上1.2メートル以上1.8メートル以下で、公衆が認識しやすい位置に掲示することが望ましいとしています。二つめは仲介サイトです。観光庁は、住宅宿泊事業者からの届出番号を確認せずに仲介サイトに掲載することを、届出をした者であるかどうかの確認を怠る行為としています。届出、旅館業法の許可、特区民泊の認定等を受けていない物件を仲介サイトに掲載する行為も禁止されています。三つめが自治体の公表です。施行要領は、宿泊者、近隣住民等が届出の有無を確認できるよう、都道府県知事等が届出番号と住所を公表することが望ましいとしています。
実際の公表の例として、東京都産業労働局のページを見ておきます。東京都は、届出情報は個人情報にもあたることから、個人情報保護法等を踏まえて届出者の同意に基づき公表しているとし、公表する項目を届出日、届出番号及び届出住宅の所在地としています。一覧は所在地順と届出番号順の2種類のPDFで掲載されています。公表の範囲や方法は自治体ごとに違うため、自分の届出先がどう公表しているかは、その自治体のページで確かめてください。
では、自分の施設ページに届出番号を載せる義務はあるのか。今回参照した観光庁のページと施行要領には、ページへの掲載を定めた記述は見当たりませんでした。載せてはいけないという意味ではなく、確認できなかったということです。そのうえで、外国人向けのページに載せる意味は考えられます。海外から予約する人は、予約前に現地の標識を見ることができません。ページに番号があれば、仲介サイトの掲載や自治体の公表と突き合わせる材料になります。載せる場合は、番号だけを置くのではなく、それが住宅宿泊事業法の届出番号であることを、ページの言語で一言添えておくと伝わりやすくなります。
公開する前に、ページを一枚ずつ点検する
最後に、外国語のページを公開する前に見る一覧を置きます。左の列が施設ページで伝えること、中央がその根拠、右の列がページに書いても別に残る義務です。右の列を一緒に見るのは、ページを作り込んだことで現地側の準備が済んだと思い込むのを防ぐためです。
| 施設ページで伝えること | 根拠にした資料 | ページとは別に残ること |
|---|---|---|
| 予約を受け付ける言語 | 観光庁「事業者の業務[1]」、施行要領 | その言語で設備の使用方法・交通手段・通報連絡先を案内する |
| 旅券の呈示と写しの保存、ICTで確認する場合は顔と旅券の画像が要ること | 施行要領、観光庁「事業者の業務[1]」 | 名簿への記載と旅券の写しの保存、名簿の3年間の保存 |
| 最寄りの駅等への経路と利用できる交通機関 | 観光庁「事業者の業務[1]」 | 居室の書面や端末で、宿泊中に閲覧できるようにする |
| 騒音・ごみ・火災についての決まり | 観光庁「事業者の業務[1]」 | 外国語で説明し、目につきやすい場所に掲示する等 |
| 事業者の名称と届出番号 | 観光庁「住宅宿泊仲介業者の業務」、施行要領 | 現地の標識の掲示 |
| 税込の総額による料金 | 国税庁 タックスアンサー No.6902 | なし(表示の決まり) |
| 利用条件とキャンセルの条件を、ページと同じ言語で読めること | 観光庁「住宅宿泊仲介業者の業務」(約款は日本語及び英語) | なし(自社予約では自分で定める) |
この表は、ページが魅力的かどうかを測るものではありません。写真の選び方や文章の書きぶりは、表の外で自分が決める部分です。表に載っているのは、予約の後で必ず出てくる話のうち、予約前に知らせておけるものだけです。ここが外国語でそろっていれば、到着後に説明し直す場面は減ります。
外国人宿泊者を受け入れる準備の全体の順番はインバウンド民泊の準備に、居室に置く案内を多言語にするときの原稿の分け方は民泊の多言語対応にまとめています。ここで扱った内容のうち、自分の物件で扱いが分からない点は、届出先の自治体の窓口に確認するのが確実です。
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