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豊島区が一部屋旅館の規制を強化 フロント設置と従事者の常駐を義務化

豊島区は2026年9月16日、旅館業法施行条例の改正を可決しました。施設内へのフロント設置と営業従事者の常駐、事前周知の義務化が二段階で施行されます。発表の記載と、区が構造設備の基準を決められる法令上の根拠を整理します。

豊島区が一部屋旅館の規制を強化 フロント設置と従事者の常駐を義務化 - myHotelsメディア

東京都豊島区は2026年9月17日、「豊島区旅館業法施行条例の一部を改正する条例」を第3回豊島区議会定例会で9月16日に可決したと発表しました。発表の副題は「一部屋旅館への規制を強化し、周辺地域の生活環境への悪影響を防止」で、施設内へのフロント設置、営業従事者の常駐、新規開業時における周辺地域への事前周知が義務化されると書かれています。

この発表を宿泊の側から読むときに、最初に切り分けておきたいことがあります。今回動いたのは民泊新法の届出ではなく、旅館業法の許可の側だという点です。年間の提供日数の上限を避けるために簡易宿所営業や旅館・ホテル営業の許可を選ぶ、という組み立ては広く使われています。その許可を出すときの条件が、区の条例で変わります。届出と許可の違いそのものは簡易宿所と民泊の違いに整理しました。

この記事では、発表に書かれている改正の柱と二つの施行日を表記のまま整理します。そのうえで、なぜ区が構造設備の基準を決められるのかを、政令と厚生労働省令の条文までたどります。豊島区以外で営んでいる人にも関係するのは、同じ委任の仕組みが全国の保健所を設置する市と特別区に置かれているためです。発表に書かれていない項目は埋めずに、記載が無いことをそのまま書きます。

可決したのは、旅館業の「上乗せ条例」です

発表から読み取れる骨格を、表記のまま並べます。

項目 発表の記載
発表者 東京都豊島区
発表日 2026年9月17日
可決した条例 豊島区旅館業法施行条例の一部を改正する条例
可決した場 第3回豊島区議会定例会
可決した日 9月16日
改正の目的 一部屋旅館への規制を強化し、周辺地域の生活環境への悪影響を防止
義務化されるもの 施設内へのフロント設置、営業従事者の常駐、新規開業時における周辺地域への事前周知
あわせて定めたもの 区による助言、指導、勧告及び公表に関する規定

背景については、発表に次のように書かれています。平成30年の旅館営業に関する規制緩和により、一室での営業やフロント設置の代替基準が規定されたことで、区内では一部屋旅館の許可申請件数が増加している。こうした一部屋旅館に対し、住宅宿泊事業と同様に「ゴミ、騒音、タバコのポイ捨て」など、区民から寄せられる苦情が令和7年度には117件と前年度比6倍に急増している。

ここで注意しておきたいのは、「一部屋旅館」が法令上の区分ではないことです。旅館業法の営業種別は旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3種で、部屋数で区分する枠は法令の側にありません。発表にもこの語の定義は書かれていません。区が実務で見ているのは、マンションなどの一室を単位として許可を取る形のことだと読めますが、条例の条文がどんな言葉で対象を書いているかは、この発表からは確かめられません。

もうひとつ、増えたと書かれているのが許可申請の件数であって、許可を受けた施設数でも、苦情を出した施設の数でもない点も押さえておきます。苦情の117件は令和7年度の件数で、1件が1施設を指すとは書かれていません。数を引用するときは、この二つを混ぜないようにします。

東京都豊島区のプレスリリース「「豊島区旅館業法施行条例の一部を改正する条例」を第3回豊島区議会定例会にて9月16日に可決!」のページのファーストビュー
引用キャプチャ この記事が扱っている発表そのもののページです。一部屋旅館への規制を強化するという副題と、義務化される三つの内容、二つの施行日が同じページに置かれています。 出典:「豊島区旅館業法施行条例の一部を改正する条例」を第3回豊島区議会定例会にて9月16日に可決!(東京都豊島区)(確認日 2026-09-18/表示のファーストビュー)

施行日が9月17日と12月16日に分かれています

発表は、施行日を次のように説明しています。周辺地域への事前周知や指導・公表に関する規定等は、令和8年9月17日に施行する。また、営業者の責務に関する規定や施設の構造設備基準等は、令和8年12月16日に施行する「豊島区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」における区域及び期間の制限と同時に施行する。

改正条例が二段階で施行されることを示した図。9月16日の可決、9月17日施行分として営業許可申請の添付書類の変更・事業計画の周知・指導又は助言、勧告及び公表の規定、12月16日施行分として営業者の責務等と施設の構造設備基準が並び、12月16日は住宅宿泊事業の条例の区域及び期間の制限と同じ施行日であることを示している
可決の翌日から動く部分と、3か月後から動く部分に分かれています。施設に手を入れる必要が出るのは後者です。 出典:東京都豊島区「「豊島区旅館業法施行条例の一部を改正する条例」を第3回豊島区議会定例会にて9月16日に可決!」(確認日 2026-09-18)

発表が施行日ごとに挙げている規定は、次のとおりです。

施行日 主な規定として挙げられているもの
令和8年9月17日 営業許可申請の添付書類の変更/事業計画の周知/指導又は助言、勧告及び公表の規定
令和8年12月16日 営業者の責務等/旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の施設の構造設備基準

分け方には筋が通っています。9月17日から動くのは手続きと運用の側です。申請のときに出す書類が変わり、申請の前に事業計画を周りへ知らせることが求められ、区が助言・指導・勧告・公表を行える根拠が置かれます。書類と段取りの話なので、条例が成立した翌日から動かせます。

12月16日から動くのは施設そのものの側です。フロントを施設の中に置く、営業に従事する人が常駐する。これは図面と人の配置に関わるため、間を置いて施行されています。すでに営業している施設が改修を求められるのか、既存の許可はそのまま有効なのかは、経過措置の有無で決まります。この発表には、既存の営業者への適用や経過措置についての記載がありません。ここは推測で埋められないので、条文で確かめることになります。

二つめの日付にもう一つ意味があるのは、同じ12月16日が民泊の側の条例の施行日でもあるからです。発表は、住宅宿泊事業の条例における区域及び期間の制限と同時に施行すると書いています。旅館業の許可で営む宿と、届出で営む民泊が、同じ日に別々の制限を受け始める形になります。

区が構造設備の基準を決められるのは、政令がそう書いているからです

ここからは発表を離れ、区がこうした基準を条例で定められる根拠を確かめます。順番は、法律、政令、厚生労働省令、条例の四つです。

厚生労働省の「旅館業法の概要」は、旅館業には旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業の3種があるとし、旅館業を経営するものは都道府県知事の許可を受ける必要があると書いています。そして、旅館業の許可は旅館業法施行令で定める構造設備基準に従わなければならないとしています。許可を出すかどうかの物差しが、政令にあるわけです。

旅館業の構造設備の基準が四つの段で決まることを示した図。旅館業法、旅館業法施行令第一条、旅館業法施行規則第四条の三、条例の順に並び、最下段の条例が施行令第一条第一項第八号と第二項第七号の委任を受けていること、豊島区が改正したのはその段であることを示している
いちばん下の段は、政令が「条例で定める」と書いて自治体に委ねている部分です。ここが自治体ごとに違います。 出典:厚生労働省「旅館業法の概要」旅館業法施行令 第一条(確認日 2026-09-18)

その政令、旅館業法施行令第一条を開くと、営業種別ごとに号が並んでいます。読むうえで効いてくるのは最後の号です。

営業種別 施行令第一条が挙げている基準(一部) 条例に委ねている号
旅館・ホテル営業(第1項) 一客室の床面積は七平方メートル(寝台を置く客室にあつては九平方メートル)以上/宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること/適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備/入浴設備/洗面設備/適当な数の便所 第八号「その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること」
簡易宿所営業(第2項) 客室の延床面積は三十三平方メートル(宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上/階層式寝台の上段と下段の間隔はおおむね一メートル以上/適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備/入浴設備/洗面設備/適当な数の便所 第七号「その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること」

政令は自分で全部を決めきらず、最後の号で条例へ渡しています。しかも旅館・ホテル営業の第八号は、保健所を設置する市または特別区については市または特別区が条例を定めると明記しています。豊島区は保健所を置く特別区ですから、この号に基づいて条例を作る側です。今回の改正は、国の基準を書き換えたのではなく、国が最初から自治体へ渡していた枠を使ったものだと読めます。

この表でもう一つ見えるのが、簡易宿所営業の号には玄関帳場が出てこないことです。玄関帳場の号があるのは旅館・ホテル営業だけです。つまり簡易宿所営業でフロントが要るかどうかは、政令の段では決まっておらず、条例の段に落ちています。だから同じ簡易宿所営業でも、自治体によって求められるものが変わります。立地を決める前に地域ごとの条例を見に行く理由はここにあり、考え方は民泊の立地の選び方に整理しました。

なお、厚生労働省の同じページは、旅館業の運営は都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従わなければならないとも書いています。構造設備の側と運営の衛生の側、どちらにも条例の入り口があります。

フロントを置かずに済ませてきた根拠は、省令の二つの基準です

発表が背景として挙げている「フロント設置の代替基準」は、旅館業法施行規則第四条の三にあります。施行令第一条第一項第二号が「厚生労働省令で定める基準」と書いている、その基準です。条文は二号だけで、次の内容です。

一号は、事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。二号は、宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。

短い条文ですが、無人での受け入れが成り立つかどうかはここで決まります。玄関帳場という物理的なカウンターを置く代わりに、この二つを満たす設備で確認と対応を担保する、という組み立てです。観光庁の「旅館業法について」には、平成30年6月15日よりホテル営業と旅館営業が「旅館・ホテル営業」として統合されたことが示されており、この時期に営業種別と設備の要件がまとめて見直されています。非対面での受け入れをどこまで置けるかの整理は民泊のチェックイン方法、確認の主体と機器の分担は民泊の本人確認で扱っています。

豊島区の発表は、施設内へのフロント設置と営業従事者の常駐が義務化されると書いています。省令の代替基準に乗って設備だけで済ませる形が、区内では取りにくくなる方向です。ただし発表には条文が載っていません。代替の扱いがどう書き換わったのか、常駐の時間帯や人数がどう定められているのかは、発表の文面からは読み取れません。条文の詳細は区が公表する新旧対照表で確かめることになります。

民泊の側では、条例改正と業務停止命令が先に進んでいました

発表は、区がこれまで進めてきた対策にも触れています。本区では、令和7年12月に「豊島区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」を改正し、令和8年7月には区内で住宅宿泊事業を行う事業者のうち、違反した15事業者に対して業務停止命令を発出するなど対策を進めてきた、という記載です。

この順番が、今回の改正の性格を示しています。まず届出で営む民泊の側を締め、そこで生活環境の問題が残ったため、許可で営む一部屋旅館の側にも同じ方向の義務を置いた、という流れです。片方だけを規制すると、もう片方に移るだけだという判断が読み取れます。日数の上限を理由に旅館業の許可へ切り替える動き自体は、届出と許可を比べれば自然に出てきます。住宅宿泊事業法は年間提供日数の上限を180日とし、あわせて地域の実情を反映する仕組みを設けていると観光庁が説明しており、この上限の数え方は民泊の180日にまとめました。

豊島区の住宅宿泊事業の条例については、区が「住宅宿泊事業法の条例を改正しました」というページを公開しており、令和7年12月15日施行として条例と施行細則の新旧対照表、概要、届出時説明書、検討会の会議録と配布資料が掲載されています。ただし、今回の発表が同時施行の相手として挙げている「区域及び期間の制限」の具体的な内容は、この発表にも、ページの本文にも書かれていません。中身はPDFの資料側にあります。自治体が届出の扱いを変える動きは各地で出ており、届出の廃止が集計に現れた例は札幌市と名古屋市の届出廃止で扱いました。

発表には、条文そのものが載っていません

営業する側が知りたくなる項目のうち、この発表からは埋まらないものを、推測で補わずに並べます。

知りたくなる項目 発表の記載
改正後の条文と新旧対照表 記載がありません(区の窓口と区議会の資料で確認することになります)
「一部屋旅館」の定義 記載がありません
既存の営業者への適用と経過措置 記載がありません
営業従事者の常駐の時間帯・人数 記載がありません
フロントの構造や位置の具体的な要件 記載がありません
事前周知の範囲・方法・期間 記載がありません
公表の対象になる行為と手順 助言、指導、勧告及び公表の規定を定めたとあります。要件と手順の記載はありません
一部屋旅館の許可申請件数と許可件数 増加しているという記述のみで、件数の記載はありません
住宅宿泊事業の条例の区域及び期間の制限の内容 記載がありません(同時施行であることだけが示されています)

埋まらない項目が多いのは、これが条例の可決を知らせる発表であり、条文や運用の手引きではないためです。旅館業の許可は、そもそも構造設備と立地の制約が民泊の届出より重くなります。許可を取る側の手順は民泊の許可の取り方、営業種別を旅館・ホテル営業にしたときの違いは小規模ホテルの開業に整理しました。

豊島区で宿を営む人が、日付で区切って確かめること

最後に、この発表を読んだあとで手元でできることを、施行日に合わせて三つに絞ります。

ひとつめは、9月17日から動いている部分です。これから許可を申請するなら、添付書類が変わっています。申請の前に事業計画を周りへ知らせることも求められます。申請書類の様式と周知の方法は区が示すものに従うことになるため、申請の準備を始める前に窓口へ確認する順番になります。すでに図面や書類をそろえていた場合でも、9月17日より後の申請には新しい扱いがかかると読めます。

ふたつめは、12月16日に向けた部分です。フロントの設置と営業従事者の常駐は、間取りと人の配置の話です。自分の施設で、宿泊者が最初に通る場所に帳場として使える区画があるか。常駐させるなら誰がどの時間帯に入るか。人件費は月々の固定費として効いてくるため、省令の代替基準で無人運営を前提に組んだ収支は、前提から組み替えることになります。経過措置の記載が発表に無いため、既存の許可がどう扱われるかは区に確認する項目です。

みっつめは、豊島区以外で営んでいる人が確かめることです。今回の改正は特定の区の条例ですが、根拠になっている施行令の号は全国共通です。自分の施設がある自治体の旅館業法施行条例を開き、政令が条例に渡している号について何が書かれているかを見る。これは今日できます。同じ号を使って別の自治体が別の基準を置いている可能性があり、簡易宿所営業についてはフロントの扱いがそもそも条例の段にあります。許可なしで営業した場合の扱いは民泊の無許可、旅館業に当たるかどうかの判定は民泊と旅館業法にまとめています。

この記事は、公表された発表と法令、公的資料の記載を整理したものです。条例の条文、施行細則、運用の詳細はこの記事では確かめられません。自分の施設への適用と必要な手続きの判断は、許可の窓口である豊島区保健所に直接確認してください。

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