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札幌市と名古屋市で民泊の届出と廃止が1年でどう動いたか

株式会社BizPatoが2026年9月15日に公表した二つの発表は、観光庁の資料から札幌市と名古屋市の届出件数と事業廃止件数を引いています。累計と1年間の増加分、発表が「廃業率」と呼ぶ比率の分母を、公表値の表記のまま整理します。

札幌市と名古屋市で民泊の届出と廃止が1年でどう動いたか - myHotelsメディア

株式会社BizPato(代表取締役:高橋拓真)は2026年9月15日、AIを活用した定額制の運営代行サービス「AI民泊代行」について、札幌エリア向けと名古屋エリア向けの提供を2026年9月1日に開始したと、二つの発表で公表しました。同じ日に出されたこの二本は、いずれも背景として観光庁の「住宅宿泊事業の届出住宅の状況」から、市ごとの届出件数と事業廃止件数を引いています。

サービスの案内より先に読めるのは、そこに並んでいる件数のほうです。民泊の公的な件数は都道府県単位で語られることが多く、市の単位まで下りた数字が発表の中に置かれる機会はそれほど多くありません。そして二つを並べると、同じ1年を同じ資料で切り取っているのに、札幌市と名古屋市では届出と廃止の動き方がまるで違うことが見えます。

この記事では、二つの発表に書かれている件数を表記のまま整理し、累計値と1年間の増加分という二つの見方を分けます。そのうえで、発表が「廃業率」と呼んでいる比率が何を何で割った値なのかを確かめ、観光庁のページに実際に載っているものと突き合わせます。当サイトはこのサービスを利用しておらず、その内容や他社との優劣を評価するものではありません。

二つの発表が引いているのは、観光庁の資料の同じ2時点です

まず、発表の骨格を表記のまま並べます。二本は対象エリアが違うだけで、構成はほぼ同じです。

項目 二つの発表の記載
発表者 株式会社BizPato(代表取締役:高橋拓真)
発表日 2026年9月15日
内容 定額運営代行サービス「AI民泊代行」の札幌エリア向け/名古屋エリア向け提供を開始
提供開始日 2026年9月1日
料金 月額30,000円(税別)の定額制
背景に引いた資料 観光庁「住宅宿泊事業の届出住宅の状況」
引いた時点 2025年7月15日時点と2026年7月15日時点
対象の単位 札幌市/名古屋市(発表は市の数値を使用していると注記)

押さえておきたいのは、どちらの発表も同じ資料の同じ2時点から数字を取っているという点です。時点がそろっているので、二つの市を並べて見ることができます。逆に言えば、別の資料や別の時点の数字を持ってきて並べることはできません。民泊の件数は制度ごと、資料ごとに数える単位が違うためです。何を数えた数字なのかを先に確かめる手順は民泊の統計の読み方に整理しています。

もうひとつ、発表が自ら注記しているとおり、ここでの「札幌」「名古屋」は札幌市・名古屋市の数値です。都市圏でも道県でもありません。北海道全体や愛知県全体の数字とは別のものとして読みます。

札幌市と名古屋市では、1年の動き方が違います

発表に載っている累計値を、市ごとにそのまま並べます。

時点 届出件数(累計) 事業廃止件数(累計)
札幌市 2025年7月15日時点 4,710件 2,622件
札幌市 2026年7月15日時点 6,075件 3,034件
名古屋市 2025年7月15日時点 965件 312件
名古屋市 2026年7月15日時点 1,274件 489件
札幌市と名古屋市について、届出件数(累計)と事業廃止件数(累計)を2025年7月15日時点と2026年7月15日時点で横棒に並べた図
白抜きが2025年7月15日時点、塗りつぶしが2026年7月15日時点です。両市の棒は同じ目盛りで描いています。 出典:株式会社BizPato プレスリリース(札幌エリア)同(名古屋エリア)(確認日 2026-09-17)

同じ目盛りで並べると、二つの市の規模がそもそも違うことが分かります。札幌市は届出件数の累計が4桁の後半に達しているのに対し、名古屋市はその一部にとどまります。発表が札幌市について「民泊集積地」という言い方をしているのは、この規模のことを指していると読めます。

ただし、規模の大小は、これから始める人にとっての有利・不利を直接示すものではありません。件数が多い地域は宿泊の需要がある地域でもあり、同時に競合が多い地域でもあります。件数だけで場所を決められないのは、条例による制限や用途地域の条件が地域ごとに違うためでもあります。立地を決めるときに件数以外で確かめる項目は民泊の立地の選び方にまとめています。

「累計」と「その1年の増加分」は別の数字です

上の表の数字は、どちらも制度が始まってからの累計です。2026年7月15日時点の6,075件は、その日に札幌市で営業している民泊の数ではありません。これまでに届け出られた件数の合計です。同じことが事業廃止件数にも当てはまります。

そのため、発表は累計値をそのまま比べるのではなく、2時点の差、つまりその1年間に増えた分を取り出しています。発表に記載されている増加分は次のとおりです。

届出件数の増加分 事業廃止件数の増加分
札幌市 1,365件 412件
名古屋市 309件 177件
2025年7月15日から2026年7月15日までの1年間の増加分を、札幌市は届出件数1,365件・事業廃止件数412件、名古屋市は届出件数309件・事業廃止件数177件として横棒で対比した図
累計から取り出した、その1年の増加分だけを並べています。廃止された住宅がいつ届け出られたものかは、この件数からは分かりません。 出典:株式会社BizPato プレスリリース(札幌エリア)同(名古屋エリア)(確認日 2026-09-17)

増加分で見ると、札幌市は届出も廃止も名古屋市より大きく動いています。一方の名古屋市は、届出の増加分に対して廃止の増加分が占める位置が札幌市とは違います。同じ1年で、入ってくる数と出ていく数のバランスが市ごとに違う。二つの発表を並べて初めて見えるのは、この一点です。

ここで気をつけたいのは、増加分もまた累計の差であって、個々の事業者を追いかけた数字ではないことです。届出件数の累計は減りません。届け出た住宅が廃止されても、届出件数の累計はそのまま残り、事業廃止件数の累計のほうが増えます。いま残っている数を知りたいときは、この二つとは別に公表されている届出住宅数を見ることになります。件数と住宅数の関係は民泊の施設数で扱っています。

発表が「廃業率」と呼んでいる比率は、その1年の新規開業件数を分母にしています

二つの発表は、いずれも増加分から比率を作り、それを「廃業率」と呼んでいます。作り方は本文に書かれており、期間中の新規開業件数に対する廃業件数の比率だと説明されています。つまり分母は、その1年に新しく届け出られた件数です。

対象 発表が示している比率 発表が挙げている件数
札幌市 約30.2% 新規開業1,365件に対し廃業412件
名古屋市 約57.3% 新規開業309件に対し廃業177件
全国 約33.5% 新規開業12,704件・廃業4,252件

分母が「その1年に新しく届け出た件数」である以上、この値は営業している事業者のうち何割がやめたかを示すものではありません。営業中の事業者の総数は分母に入っていないからです。同じ作り方をした値どうしを並べる分には筋が通りますが、別の分母で作られた率と横に並べることはできません。比率の組み立て方そのものは運営代行の料金は率か定額かで分解しています。

名古屋市の発表は、この比率について「全国トップ級の水準」と述べています。ただし同じ本文には、比較の対象が今回確認したエリアであるとも書かれており、全国の市区町村を並べた順位そのものは示されていません。評価の言葉と、その根拠になる公表値は分けて読むことになります。

観光庁のページに出ているのは、全国の件数です

発表が出典として挙げている観光庁「住宅宿泊事業の届出住宅の状況」を実際に開くと、掲載されているのは全国の件数です。当サイトが2026年9月17日に確認した時点で、同ページには令和8年7月15日時点の値として次が示されていました。

項目 観光庁のページの記載(令和8年7月15日時点)
住宅宿泊事業の届出件数 65,837件
事業廃止件数 23,767件
届出住宅数 42,070件
住宅宿泊管理業の登録件数 4,529件
住宅宿泊仲介業の登録件数 66件
観光庁が令和8年7月15日時点として公表している全国の値を帯で示した図。届出件数の累計65,837件のうち、事業廃止件数23,767件と届出住宅数42,070件が並んでいる
累計の届出件数と事業廃止件数、そしていま残っている届出住宅数が、同じページに並んでいます。 出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業の届出住宅の状況」(確認日 2026-09-17)

このページに「廃業率」という指標はありません。載っているのは件数です。集計の方法についても、同じページの宿泊実績の説明に、住宅宿泊事業法第14条に基づく住宅宿泊事業者からの定期報告をもとに観光庁が集計・とりまとめを行ったものだと書かれています。率として示された数字を見たときは、それが誰の計算かを先に確かめることになります。今回の二つの発表は、元にした件数と計算の考え方を本文に載せ、参照した資料へのリンクも置いているため、読む側が分母をたどれる形になっています。

観光庁の民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業の届出住宅の状況」のページのファーストビュー
引用キャプチャ 二つの発表が出典として挙げているページです。届出件数と事業廃止件数、届出住宅数、住宅宿泊管理業と住宅宿泊仲介業の登録件数が、時点つきで同じページに並んでいます。 出典:住宅宿泊事業の届出住宅の状況(観光庁 民泊制度ポータルサイト「minpaku」)(確認日 2026-09-17/表示のファーストビュー)

「1年以内に廃業」と読めるかどうかは、この件数からは決まりません

名古屋市の発表は、冒頭で「開業した10軒のうち6軒近くが1年以内に廃業している計算になります」と述べています。ここは注意して読む場所です。

発表が挙げているのは、2時点の累計値と、その差です。事業廃止件数の増加分は、その1年に廃止が記録された件数であって、その住宅がいつ届け出られたものかは示されていません。前の年に届け出た住宅の廃止も、数年前に届け出た住宅の廃止も、同じ増加分の中に入りえます。したがって、公表されている件数からは、廃止された住宅が開業から1年以内だったかどうかは分かりません。

言い換えると、二つの数字が同じ期間の出来事であることと、同じ住宅の出来事であることは別です。比率そのものは発表の説明どおりに作られていますが、その比率に「1年以内に」という時間の意味を足すには、届出から廃止までの期間を追える別のデータが要ります。この記事が確認した範囲では、そのデータは今回の出典には含まれていません。

数字を事業計画へ引くときは、この区別が効いてきます。市場の入れ替わりが活発だという事実と、自分の物件が1年で立ち行かなくなる確率は、別の話です。売上の枠を先に置いてから条件を振る手順は民泊の売上予測にまとめています。

発表にはサービスの案内も含まれています

二つの発表の後半は、サービスの説明です。料金は月額30,000円(税別)の定額制で、手数料率ではなく金額が固定されているため売上規模にかかわらず運営コストが一定であること、ゲスト対応や価格調整にAIを活用して人件費を抑えていることが挙げられています。含まれる業務として、運営開始前の写真撮影や予約サイトへの掲載、開始後の24時間365日のゲスト対応、清掃手配・管理、宿泊者名簿の保管などが並んでいます。写真撮影は別途追加費用が発生すると注記されています。

定額制と成果報酬型のどちらが自分に合うかは、月商がどのあたりに来るかで変わります。その比べ方と、料金より先に確かめることになる住宅宿泊管理業者の登録については運営代行の料金は率か定額かで扱いました。委託の範囲を業務ごとに書き出す考え方は民泊の運営代行に整理しています。

この二つの発表に記載がないこと

件数から地域の状況を読もうとする立場から知りたくなる項目のうち、発表本文からは埋まらないものを、推測で補わずに並べます。

知りたくなる項目 二つの発表の記載
廃止された住宅が届け出られた時期 記載がありません
廃止の理由や内訳 記載がありません
札幌市・名古屋市以外の市区町村の件数 記載がありません
全国の市区町村を並べた順位 記載がありません(「今回確認したエリアの中で」と書かれています)
各市でいま営業している届出住宅の数 記載がありません
比率を「廃業率」と呼ぶことの定義の出典 記載がありません

埋まらない項目が多いのは、この二つがサービスの提供開始を知らせる発表であり、統計の分析資料ではないためです。件数そのものは公的な資料から引かれていますが、そこから先の読み方は発表者の整理であることを分けて受け取ります。

自分のエリアの数字を確かめる三つの手順

最後に、この二つの発表を読んだあとで自分の側でできることを三つに絞ります。

ひとつめは、出典のページを自分で開くことです。観光庁の民泊制度ポータルサイトには、届出及び登録の状況が時点ごとに掲載されています。発表が引いたのと同じ資料から、自分が見たい時点の値を直接確かめられます。引用するときは、時点を必ず添えます。件数は時点によって変わるため、時点の無い件数は比べられません。

ふたつめは、自分が扱いたい単位に合わせて数字を選ぶことです。今回の発表は市の単位を使っていますが、公表資料には都道府県の単位も並んでいます。事業計画や金融機関向けの資料に書くときは、どの単位の数字なのかを明記します。市の数字と都道府県の数字を同じ表に混ぜると、あとから自分でも追えなくなります。

みっつめは、率を書くときに分母を一緒に書くことです。今回のように、同じ「廃業率」という言葉でも、分母が営業中の事業者数なのか、その期間の新規届出件数なのかで意味が変わります。分母を添えておけば、読み手が別の率と取り違えることを防げます。届出件数・事業廃止件数・届出住宅数という三つの数え方の違いは民泊の統計の読み方に整理してあります。

この記事は、公表された発表の記載と公的資料を整理したものであり、特定のサービスの評価や推奨ではありません。件数は時点によって変わり、料金や提供範囲も変更される可能性があります。制度上の取り扱いと、自分の物件で必要になる手続きの判断は、届出先の窓口に直接確認してください。

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