民泊施設数/データ

民泊の施設数は何軒か|届出住宅数と旅館業の施設数を並べて読む

民泊が日本に何軒あるのかを制度ごとの公表値で確かめます。住宅宿泊事業の届出住宅数42,070件と旅館業の営業許可施設数9万3,475施設は、所管も単位も基準日も違います。足し算ができない理由と資料への書き方を整理します。

「日本に民泊は何軒あるのか」。事業計画書の冒頭にも、自治体や金融機関へ出す説明資料にも、この一文はよく登場します。ところが公表資料を開くと、答えが一つの数字になりません。

先に結論を三つ書きます。まず、確認した範囲では、民泊の施設数を一つの数字で示した公的統計はありません。数を出しているのは三つの制度で、それぞれ所管も、数える単位も違います。住宅宿泊事業は「届出住宅」を件で数え、旅館業は「営業許可施設」を施設で数えます。国家戦略特区法にもとづく特区民泊の数は、内閣府の資料に置かれています。

二つ目に、単位が違うので足し算ができません。1件の届出住宅と1施設の簡易宿所は、同じ大きさのものを指していません。そして三つ目が、いちばん見落とされやすい基準日のずれです。届出住宅数は令和8年7月15日時点、旅館業の施設数は令和6年3月末現在。2年以上離れた数字を、同じ表に並べて合計することはできません。

この記事では、制度ごとに何を単位に数えているか、公表されている値がいくつなのか、なぜ合計できないのか、更新の周期がどう違うのか、地域別にどこまで分かるのか、そして資料へ引くときにどう書けばよいのかを、公表資料の表記にそって整理します。掲載がない項目は、推測で埋めずに掲載がないと書きます。

「民泊」と呼ばれる営業は、三つの制度に分かれている

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、民泊という言葉を「住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指して、「民泊」ということが一般的です」と説明しています。営業の種類を指す法律用語ではなく、住宅を使って泊めるという使い方につけられた呼び名です。だから、根拠になる法律も一つに決まりません。

同じページは、宿泊サービスを提供するための制度として三つを並べています。厚生労働省が所管し許可が要る旅館業法、内閣府が所管し認定が要る国家戦略特区法、そして国土交通省・厚生労働省・観光庁が所管し届出で始められる住宅宿泊事業法です。手続の名前が許可・認定・届出と分かれていることに注目してください。数える単位が制度ごとに違うのは、ここから来ています。許可は営業の施設に対して出され、届出は住宅について行われるためです。

民泊の施設数を数える三つの系統を示した分岐図。住宅宿泊事業法は届出住宅を件で数え観光庁が42,070件を令和8年7月15日時点として公表、旅館業法は営業許可施設を施設で数え厚生労働省が9万3,475施設を令和6年3月末現在として公表、国家戦略特区法は認定と居室を単位とし内閣府の資料に掲載されている
手続の違いが、そのまま数える単位の違いになっています。値はそれぞれの公表資料の表記のままで、基準日も揃っていません。 出典:観光庁「はじめに「民泊」とは」厚生労働省「旅館業の概要」(確認日 2026-09-07)

制度そのものの中身は、当サイトの民泊と旅館業法の関係簡易宿所と民泊の違い特区民泊とは何かにまとめています。この記事で見るのは、それぞれの制度が公表している「数」のほうです。

住宅宿泊事業の施設数は「届出住宅数」で数える

観光庁は民泊制度ポータルサイトで「住宅宿泊事業法の施行状況」を公表しています。令和8年7月15日時点として、次の値が並んでいます。

項目 公表されている件数
住宅宿泊事業の届出件数 65,837件
うち事業廃止 23,767件
届出住宅数 42,070件

いま届出が残っているものを数えたいのなら、いちばん下の42,070件です。上の65,837件は制度が始まってからの累計で、すでにやめたものまで含みます。累計と事業廃止を突き合わせると、届出された住宅の3分の1以上が、すでに事業廃止として差し引かれていることが分かります。この比較はページに書かれているものではなく、公表値どうしを並べて確かめたものです。

ここで押さえておきたいのが単位です。数えているのは棟でも室でもなく、届出住宅です。1件の届出は1つの届出住宅に対応します。共同住宅の1棟の中に届出住宅がいくつも入ることもあれば、戸建て住宅がまるごと1件になることもあります。だから届出住宅数から、客室の数や受け入れられる人数を出すことはできません。後で見る旅館業の統計が客室数を持っているのと、はっきり違うところです。

件数と宿泊実績の読み分け、届出住宅あたりの値の分母については、民泊の統計はどこで確認するかで扱っています。この記事では施設の数そのものに絞ります。

旅館業の施設数は、営業種別ごとに数える

厚生労働省は「旅館業の概要」で、旅館業法にもとづく営業許可施設数を示しています。「令和6年3月末現在の旅館業の営業許可施設数は、9万3,475施設であり、前年度より2,725施設の増加となっている。」「うち、旅館・ホテル営業数は5万1,038施設、簡易宿所数は4万1,909施設となっている。」という書き方で、出典は衛生行政報告例とされています。

区分 施設数(令和6年3月末現在)
旅館業の営業許可施設 合計 9万3,475施設
うち旅館・ホテル営業 5万1,038施設
うち簡易宿所営業 4万1,909施設

合計は、内訳として示されている二つを足した数より少しだけ大きくなります。その差にあたる営業種別の内訳は、このページには記載がありません。旅館業法は営業種別を三つ定めており、旅館・ホテル営業と簡易宿所営業のほかに下宿営業があります。厚生労働省の「旅館業法の概要」は、下宿営業を「施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義しています。1か月以上を単位とする営業なので、旅行者向けの宿泊とは性格が違います。

簡易宿所営業の定義は「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの」です。旅館業法の許可を受けて民泊を営む場合、その施設はこの営業種別ごとの施設数のどこかに数えられます。ただし、そのうち何件が民泊として運営されているかという区分は、確認した範囲では公表されていません。簡易宿所営業の施設数から、民泊の分だけを取り出すことはできません。

厚生労働省「旅館業の概要」のページのファーストビュー。旅館業の営業許可施設数が示されている
引用キャプチャ 令和6年3月末現在の旅館業の営業許可施設数と、旅館・ホテル営業と簡易宿所の内訳が、衛生行政報告例を出典として示されているページです。 出典:旅館業の概要(厚生労働省)(確認日 2026-09-07/表示のファーストビュー)

特区民泊の件数は、内閣府の資料に置かれている

三つ目が、国家戦略特区法にもとづく外国人滞在施設経営事業、いわゆる特区民泊です。内閣府地方創生推進事務局の「旅館業法の特例(特区民泊)について」というページには、「国家戦略特区 特区民泊の実績(令和8年7月9日更新)」という資料へのリンクが置かれています。

ただし、ページの本文には認定件数や居室数の数値が書かれていません。数値はリンク先のPDF資料の中にあります。この記事で確認できたのは資料の所在と更新日までなので、件数はここに書きません。数が必要な場合は、そのPDFを直接開いて、何を単位に数えた値なのか、いつ時点のものなのかを確かめてから引用してください。

もう一つ、特区民泊には範囲の制約があります。区域を指定して使う制度なので、全国どこでも選べるわけではありません。制度の中身は特区民泊とは何かにまとめました。件数を全国の民泊の数へ足したくなったときは、それが指定区域の中だけの数だと分かる形にしておく必要があります。

三つの数字は、足し算ができない

ここまでの数字を、同じ目盛りに並べてみます。並べること自体は構いません。合計を出したり、比を取ったりができない、というのがこの節の話です。

旅館・ホテル営業5万1,038施設と簡易宿所営業4万1,909施設(いずれも令和6年3月末現在)、住宅宿泊事業の届出住宅42,070件(令和8年7月15日時点)を同じ目盛りの横棒で並べた図。基準日が2年3か月以上離れ、単位も施設と届出住宅で違うため合計や比の計算ができないことを注記している
棒の長さは公表値をそのまま反映していますが、基準日も単位も揃っていません。同じ図に置いたのは、合計できないことを見えるようにするためです。 出典:厚生労働省「旅館業の概要」観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-07)

理由は三つあります。一つ目が単位です。届出住宅、営業許可施設、認定と居室。それぞれ数えている対象の粒度が違うので、1を足しても意味が揃いません。

二つ目が基準日です。届出住宅数は令和8年7月15日時点、旅館業の施設数は令和6年3月末現在で、2年3か月以上離れています。簡易宿所営業と届出住宅数は桁も近く、つい「ほぼ同数」と書きたくなりますが、比べている時点が違うので、その一文は成り立ちません。

三つ目が範囲の重なりです。旅館業の許可を受けて民泊を営んでいる施設は、旅館業の施設数の中に入っています。前の節で見たとおり、その内訳は公表されていません。つまり、足し算ができないだけでなく、引き算で民泊の分を取り出すこともできません。合算した全国値をどうしても示したいなら、制度ごとに出典・単位・基準日を並べて書き、読んだ相手が同じ確認をやり直せる形にしてください。

更新の周期が制度ごとに違う

基準日がずれるのは、担当している役所の仕事の周期が違うからです。時点を並べると、その差がはっきりします。

施設数の基準日と公表日を縦の時系列で並べた図。2024年3月末が旅館業の営業許可施設数の基準日、2025年10月21日に令和6年度の衛生行政報告例の概況が公表、2026年7月9日に特区民泊の実績資料が更新、2026年7月15日が届出住宅数の基準日、2026年9月7日が記事の確認日
数字が確定する時点と、それが世に出る時点は別です。同じ日に三つのページを開いても、手に入る値の新しさは揃いません。 出典:厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」内閣府「旅館業法の特例(特区民泊)について」(確認日 2026-09-07)

旅館業の施設数のもとになっている衛生行政報告例は、年度を単位に集計されます。令和6年度分の概況が厚生労働省のページに公表されたのは令和7年10月21日です。年度末に確定した値が世に出るまで、1年半ほどかかります。最新の年度の数字がまだ無いのは、更新が止まっているからではなく、この周期のためです。

住宅宿泊事業の側は、届出の状況が随時更新されていく形で、確認した時点では令和8年7月15日時点の値が載っていました。特区民泊の資料は令和8年7月9日更新と記されています。周期が三者三様なので、資料に書くときは「いつ確認したか」だけでなく「いつ時点の値か」を必ず分けて添えてください。確認日だけを書くと、読んだ相手はその日の状況を表した数字だと受け取ります。

施設の数と、事業者の数を混ぜない

施行状況のページには、施設ではないものの件数も並んでいます。住宅宿泊管理業の登録件数が4,529件、住宅宿泊仲介業の登録件数が66件です。

これは事業者の登録の数で、施設の数ではありません。届出住宅42,070件に対して管理業者4,529者という並びを見ると、1件の届出住宅に1者が対応しているように読めてしまいますが、1者が多数の届出住宅の管理を受託します。二つの数を割っても、意味のある値は出ません

家主不在型の届出住宅では、管理業務を住宅宿泊管理業者へ委託することが必要になります。委託が要る条件と、委託しても事業者に残る義務は住宅宿泊事業者とは何かにまとめています。登録件数は、委託先の選択肢がどれくらいあるかの目安にはなりますが、地域ごとの分布はこのページには記載がありません。

地域別の施設数はどこまで分かるか

自分が営業する地域に何軒あるかを知りたい、というのが施設数を調べる動機として多いところだと思います。ここには制約があります。

施行状況のページのHTML本文には、都道府県別の届出住宅数の表がありません。同じページから「都道府県別届出状況マップ」「都道府県別届出状況一覧」「住宅宿泊事業届出住宅数推移」という資料へリンクが張られており、地域別の数はそちらに置かれています。HTML本文で都道府県別に並んでいるのは、届出住宅数ではなく宿泊実績のほう(宿泊日数・宿泊者数・延べ宿泊者数)です。ページを開いて最初に目に入る都道府県別の数字は、施設の数ではありません。ここは取り違えやすいので注意してください。

旅館業のほうは、衛生行政報告例の統計表が都道府県・指定都市・中核市の別に作られています。ただし年度末の値なので、届出住宅数と時点を揃えることはできません。市区町村より細かい単位の施設数は、どちらの資料にも記載がありません。届出先の自治体が独自に公表している場合は、そちらを探すことになります。

そして、これらの数を「競合の数」として使うことはできません。届出住宅数には、実際に稼働していないものも、年間の提供日数の上限に達して営業していない時期のものも同じように含まれます。上限の数え方は民泊の180日をどう数えるかにまとめました。立地の判断に何を見るかは民泊の立地の選び方で扱っています。

資料に書くときは、三つを並べて書く

最後に、事業計画書や説明資料へ書くときの形を示します。一つの数字にまとめようとせず、制度ごとに分けて、それぞれ単位と基準日を添えます。

  • 住宅宿泊事業の届出住宅数:42,070件(観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」令和8年7月15日時点。届出件数65,837件から事業廃止23,767件を差し引いた数)
  • 旅館業の営業許可施設数:9万3,475施設(厚生労働省「旅館業の概要」令和6年3月末現在。うち旅館・ホテル営業5万1,038施設、簡易宿所4万1,909施設)
  • 特区民泊:認定の件数は内閣府「旅館業法の特例(特区民泊)について」からたどれる資料(令和8年7月9日更新)に掲載

この三行なら、読んだ相手が同じページを開いて同じ数字にたどり着けます。合計を書かないことに違和感があるかもしれませんが、合計できない数字を足した一つの数より、根拠をたどれる三つの数のほうが資料としては強くなります。市場の大きさを金額で示したい場合の制約は民泊の市場規模は金額で出せるかに、利用の実績として何人泊まっているかは民泊の宿泊者数は何を数えた数字かにまとめてあります。

この記事の数値は、すべて2026年9月7日に各ページで確認したものです。更新の周期が制度ごとに違うので、次に使うときは記憶や手元のメモではなく、出典のページを開き直してください。旅館業の施設数については、確認した時点のページに前年度より2,725施設の増加と記されており、年度が変われば値も変わります。

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