ホテル稼働率/データ

ホテルの客室稼働率は何%か|施設タイプ別の公表値と読むときの前提

全国のホテル・旅館の客室稼働率を観光庁の公表値で確かめます。2025年の年間確定値は全体61.6%、ビジネスホテル75.3%、旅館38.2%と施設タイプで大きく開きます。速報段階による振れ幅と、民泊の実績値を稼働率へ換算できない理由も整理します。

自分の施設の稼働率が出たあと、次に知りたくなるのは「よそはどれくらいなのか」です。事業計画に前提を置くときも、金融機関へ出す資料をまとめるときも、まず全国の水準を探すことになります。

先に結論を三つ書きます。ひとつ目、全国の客室稼働率は観光庁が毎月公表しており、2025年(令和7年)の年間確定値は全体で61.6%です。ふたつ目、この一つの数字を自分の施設の物差しにはできません。同じ資料の施設タイプ別の内訳は29.6%から75.3%まで開いていて、全体の値はその上に乗った平均でしかないからです。三つ目、住宅宿泊事業の届出住宅について、客室稼働率にあたる値は公表されていません。民泊側にあるのは別の単位で数えた実績で、割り算で稼働率に直せるものではありません。

この記事では、全体の値がいくつか、施設タイプでどこまで開くか、月ごとにどう動くか、同じ月でも公表の段階で数字が変わること、民泊の実績値を稼働率に換算してはいけない理由、そして自分の施設の数字と比べる前に確かめることを、公表資料の表記にそって整理します。資料に載っていない項目は、推測で埋めずに掲載がないと書きます。

全体の値は61.6%。年間の確定値であることを先に見る

客室稼働率を公表しているのは、観光庁の宿泊旅行統計調査です。毎月の報道発表で、延べ宿泊者数とあわせて示されます。

いちばん落ち着いた数字を使いたいなら、年の確定値を見てください。2025年(令和7年)年間値(確定値)を伝える報道発表は、「客室稼働率は全体で61.6%であり」と書いています。同じ発表で、2025年の延べ宿泊者数は全体6億6,111万人泊、前年比+0.3%とされています。

観光庁の報道発表「宿泊旅行統計調査(2026年4月・第2次速報、2026年5月・第1次速報及び2025年年間値(確定値))」のファーストビュー
引用キャプチャ 2025年の年間確定値として、客室稼働率の全体値と施設タイプ別の内訳が本文に示されている報道発表です。 出典:宿泊旅行統計調査(2026年(令和8年)4月・第2次速報、2026年(令和8年)5月・第1次速報及び2025年(令和7年)年間値(確定値))(観光庁)(確認日 2026-09-07/表示のファーストビュー)

ここで押さえておきたいのは、61.6%が年間をならした値だということです。あとで見るように、月ごとの値はこの前後を大きく上下します。年の値と月の値を同じ表に並べると、季節の差が施設の差に見えてしまいます。

もう一点、この数字は外から観測されたものではありません。調査の対象になった宿泊施設が報告した内容の集計です。算式そのものは観光庁の調査ページに置かれた資料に載っているので、この記事では引き写しません。手もとの予約管理システムが画面に出す「稼働率」と定義が一致しているとは限らないので、比べる前にそちらを開いて確かめてください。調査の全体像と、どの段階のどの区分を引くべきかは宿泊旅行統計調査の見方にまとめています。

施設タイプ別では29.6%から75.3%まで開く

同じ報道発表は、2025年の年間確定値について施設タイプ別の内訳も示しています。「旅館38.2% 、リゾートホテル56.9% 、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、簡易宿所29.6%であった」という表記です。

宿泊施設タイプ 客室稼働率
ビジネスホテル 75.3%
シティホテル 74.1%
リゾートホテル 56.9%
旅館 38.2%
簡易宿所 29.6%
全体 61.6%
2025年の年間確定値における施設タイプ別の客室稼働率の横棒グラフ。ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%を並べ、全体の61.6%を破線で示している
全体の61.6%を上回るのはビジネスホテルとシティホテルの二つだけで、旅館と簡易宿所は大きく下に離れています。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年4月・第2次速報、2026年5月・第1次速報及び2025年年間値(確定値))」(確認日 2026-09-07)

上と下でほぼ倍の開きがあります。ビジネスホテルとシティホテルが全体を押し上げ、旅館と簡易宿所が下に離れている、という形です。だから「全国平均は61.6%なのに、うちはそこまで届かない」という比べ方は成り立ちません。比べるなら、自分の施設がどのタイプに近いかを先に決めてください。

小規模な宿を運営している人にとっては、いちばん下の簡易宿所29.6%が気になるところだと思います。ただし、この区分に入るのは旅館業法の簡易宿所営業として許可を受けた施設です。住宅宿泊事業の届出住宅は旅館業の許可施設ではないので、ここには入りません。制度の分かれ方は簡易宿所と民泊の違いで扱っています。

そして、この報道発表に並んでいる施設タイプは五つです。住宅宿泊事業の届出住宅という区分は、この内訳にありません。民泊の稼働率を探してこの表にたどり着いた場合、探しているものはここには無い、というのが答えになります。

月ごとの値は、年の値の前後をかなり上下する

年の確定値だけを見ていると、その年の中でどれだけ動いていたかが分かりません。月ごとの発表を並べると、動きの幅が見えてきます。

2026年1月から7月までの全体の客室稼働率の折れ線グラフ。1月52.7%、2月59.6%、3月59.4%、4月59.1%、5月61.0%、6月57.2%、7月60.8%で、7月だけ第1次速報値であることを破線と白抜きの点で示している
2026年1月から6月は第2次速報値、7月は第1次速報値です。段階が違うため、7月へつなぐ区間は破線にしています。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」の各月の報道発表(確認日 2026-09-07)

いちばん低いのは1月の52.7%、いちばん高いのは5月の61.0%です。年の確定値61.6%は、この振れ幅の上のほうに位置していることになります。「全国平均は61.6%」という一文だけを事業計画へ持ち込むと、冬の資金繰りを見誤ります。月別の季節性を自分の物件で見積もる考え方は民泊の売上予測に書きました。

なお、この折れ線は全国・全施設タイプの合計です。施設タイプごとの月別の値は報道発表の本文に書かれていないため、この記事では扱いません。必要なときは、観光庁の調査ページから統計表を開いてください。

同じ月でも、第1次速報値と第2次速報値で数字が変わる

もうひとつ、引用するときに事故になりやすいところがあります。宿泊旅行統計調査は同じ月の数字を二度発表します。先に第1次速報値が出て、翌月に第2次速報値が出ます。同じ月なのに、公表されている値が違います

対象月 第1次速報値 第2次速報値
2026年2月 59.0% 59.6%
2026年3月 60.3% 59.4%
2026年4月 59.7% 59.1%
2026年6月 56.2% 57.2%

上がることも下がることもあります。ですから、資料に書くときは「2026年4月の客室稼働率」ではなく「2026年4月の第2次速報値」と、段階まで書いてください。段階を書かずに並べると、あとから見た人がどちらの数字か判断できなくなります。年をまたいで比べるなら、確定値どうしで比べるのがいちばん安全です。

いま公表されている中でいちばん新しいのは、2026年8月31日付の発表にある2026年7月の第1次速報値60.8%です。同じ発表で、2026年7月の延べ宿泊者数は全体5,467万人泊、前年同月比-3.5%とされています。稼働率と延べ宿泊者数は別々に動くので、片方だけを見て需要を判断しないでください。

民泊の「届出住宅あたりの宿泊日数」を稼働率に換算しない

民泊の運営者がいちばん知りたいのは、届出住宅の稼働率だと思います。しかし、住宅宿泊事業法の施行状況として観光庁が公表しているのは、稼働率ではありません。

確認した時点の公表は、令和8年4月1日から令和8年5月31日までの実績で、宿泊日数624,088日、届出住宅あたりの宿泊日数17.9日です。前提として、対象になった届出住宅数41,207に対して報告件数34,902、報告率84.7%と記されています。公表値どうしを割ってみると、624,088を34,902で割った値が17.9になります。つまり「届出住宅あたり」の分母は、届出住宅の数ではなく、報告のあった件数です。この数字の作られ方は民泊の統計はどこで確認するかで詳しく扱いました。

客室稼働率と届出住宅あたりの宿泊日数を、数える単位・集計のもと・公表の間隔・直近の公表値の4軸で左右に並べた比較図。単位も母集団も対象期間も一致しないため換算できないことを示している
左右は別々の調査です。数える単位も、集計のもとになる母集団も、公表の間隔も一致しません。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」の報道発表観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-07)

この17.9日を対象期間の日数で割って「稼働率」として示している資料を見かけますが、その計算はしないでください。理由が三つあります。

第一に、数える単位が違います。客室稼働率は客室を単位に数えますが、宿泊日数は届出住宅を単位に数えています。届出住宅は一戸の住宅がまるごと一件になることもあれば、共同住宅の一室が一件になることもあり、その中の居室数はそろっていません。第二に、母集団が違います。報告率84.7%という注記のとおり、報告のなかった住宅はこの実績にいっさい含まれていません。第三に、期間の扱いが違います。宿泊実績は2か月ぶんが一括で公表され、宿泊旅行統計調査は月ごとです。

さらに、住宅宿泊事業には制度上の上限があります。観光庁は住宅宿泊事業法について「年間提供日数の上限は180日」と説明しており、1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午までと数えます。分母を暦のうえでの1年として稼働率を出すと、制度上そもそも到達できない上限を基準にすることになります。数え方は民泊の180日ルールにまとめました。

自分の施設の数字と比べる前に確かめる四つのこと

ここまでの内容を、実際に比べるときの手順に直します。

施設タイプをそろえる。全体の61.6%ではなく、自分の施設がどのタイプに近いかで比べます。旅館業の許可を取って運営しているなら、その営業種別に対応する区分を選びます。住宅宿泊事業の届出住宅なら、対応する区分がそもそも公表されていないことを前提にします。

時点をそろえる。年の確定値と自分の月次の数字を並べないでください。比べるなら、同じ月の第2次速報値と、自分のその月の数字です。

段階をそろえる。引用元が第1次速報値なのか第2次速報値なのかを確かめます。分からないまま並べると、上下どちらにもずれます。

分母の定義をそろえる。自分の稼働率の分母が、休業日を含んでいるのか、清掃で止めた日を含んでいるのか、部屋単位なのか棟単位なのかを確かめます。ここが合っていなければ、他の三つをそろえても意味がありません。分子と分母の決め方は民泊の客室単価はどこで調べるかでも同じ論点を扱っています。

資料や事業計画に引くときの書き方

最後に、そのまま使える書き方を示します。統計の名称、対象、段階、値、確認日をひとまとめにするのが基本です。

「観光庁『宿泊旅行統計調査』2025年(令和7年)年間値(確定値)によれば、客室稼働率は全体で61.6%、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%(確認日 2026-09-07)」。この形であれば、読んだ人が同じ資料にたどり着けます。

避けたいのは、次のような書き方です。値だけを書いて出典と段階を落とすこと。全体値だけを引いて自分の施設タイプの数字を出さないこと。そして、届出住宅あたりの宿泊日数から作った独自の「民泊稼働率」を、公的統計の稼働率と同じ表に並べることです。公表されていない値は、資料の上でも空欄のままにしてください。空欄は不備ではなく、確認できなかったことを正確に伝える書き方です。

収支の枠組みへ落とし込むときの手順は民泊の収支計画にまとめています。この記事の数字は、その枠に置く前提を選ぶための材料として使ってください。稼働率は月次で更新されるため、引用する前に観光庁の最新の報道発表を開き、対象月と段階を確かめ直すことをおすすめします。

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