韓国からの予約が入ったとき、何か特別な手続きが要るのか。結論から書くと、住宅宿泊事業法の側に「韓国からの宿泊者」という区分はありません。宿泊者名簿の記載事項が増えるかどうかを分けているのは国籍ではなく、その宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人かどうかです。韓国籍でも日本に住所があれば、名簿に国籍と旅券番号を書く義務は生じず、旅券の写しを保存する話にもなりません。
この線引きは、韓国について特によく効きます。出入国在留管理庁が公表した令和7年末現在の在留外国人数では、韓国が407,341人で国籍・地域別の第3位です。日本に住んでいる韓国籍の人が40万人規模でいる以上、名前の表記や話す言語だけを手がかりに「外国人だから旅券の写しをもらう」と運用すると、法令が求めていない書類を求めることになります。
一方で、届出住宅に泊まった外国人の国籍別で韓国は第2位です(令和8年4月1日から5月31日までの集計)。数として大きいからこそ、判定の線を最初に引いておく値打ちがあります。この記事では、公表値がどこまでを示しているか、名簿の判定をどの順序で行うか、国籍では変わらない手続きは何か、そして名簿と定期報告で区分の軸が違うことを、条文と公表資料で確かめられる範囲だけ並べます。国籍別順位の内訳と定期報告を使った自己分析は民泊で中国からの旅行者を受け入れる準備で扱っているため、ここでは重ねません。
公表されている韓国の位置は第2位。人数は載っていない
観光庁が民泊制度ポータルサイトで公表している宿泊実績は、令和8年4月1日から5月31日までが対象です。全国における宿泊者数の合計は626,765人(前年同期比130.1%)で、このうち日本国籍を有する者が235,591人(37.6%)、外国人が391,174人(62.4%)でした。届出住宅に泊まった人の6割以上が外国人、という構成です。
その外国人391,174人を国籍別に見ると、第1位が米国、第2位が韓国、第3位が台湾、第4位が中国、第5位がオーストラリアであったと書かれています。あわせて、上位5カ国・地域で外国人宿泊者数の47.0%を占めるとされています。ここで止まらずに確かめておきたいのは、この資料に載っているのが順位と合計の割合だけだという点です。韓国からの宿泊者が何人だったかを、この公表値から取り出すことはできません。
地域別の内訳も出ています。東アジアが最も多く全体の31.5%、次いで北米が18.2%、欧州が14.7%です。東アジアには韓国のほかに台湾・香港・中国が含まれるため、31.5%を韓国の数字として読むことはできません。国籍別の順位では、韓国の上に米国が、下に台湾と中国が並んでいます。
集計の前提も押さえておきます。この宿泊実績は届出住宅からの報告を足し上げたもので、対象期間の届出住宅数は41,207、報告件数は34,902、報告率は84.7%です。報告のなかった住宅の宿泊者は、合計にも国籍別の内訳にも入っていません。なお同じページには、令和8年7月15日時点の届出件数が65,837件、うち事業廃止件数が23,767件と記載されています。公表値が何を数えたものかは民泊の宿泊者数は何を数えた数字かで詳しく扱っています。
名簿の項目を分けるのは、国籍ではなく住所
ここからが本題です。住宅宿泊事業法施行規則の第七条は、宿泊者名簿の記載事項を「宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日のほか、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号」と定めています。条文に国名は出てきません。項目が増える条件として書かれているのは、住所です。
観光庁の案内も同じ線で書かれています。日本国内に住所を有しない外国人宿泊者については、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとされ、続けて「旅券の写しの保存により、当該宿泊者に関する宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の欄への記載を代替することもできます」と書かれています。写しを保存するか、名簿へ書き写すかを選べる形です。どちらの運用にするかを先に決めておかないと、繁忙期に二つのやり方が混ざります。
判定そのものは二つの問いで終わります。まず、その宿泊者は外国人か。日本国籍ならここで終わりで、記載するのは氏名・住所・職業・宿泊日です。次に、日本国内に住所を有するか。有していれば、外国人であっても記載事項は同じ四つです。有していない場合にだけ、国籍と旅券番号、そして旅券の写しが加わります。
保存と備付けの決まりは、区分によって変わりません。名簿は正確な記載を確保するための措置を講じたうえで作成し、作成の日から三年間保存します。備え付ける場所は届出住宅、または住宅宿泊事業者の営業所もしくは事務所です。電子計算機に備えられたファイルや電磁的記録媒体に記録され、必要に応じて明確に紙面へ表示されるときは、その記録をもって名簿への記載に代えることができます。名簿そのものの作り方は民泊の宿泊者名簿に整理しました。
実務で気をつけたいのは、住所を予約の時点で確かめる導線を持っておくことです。氏名・住所・職業・宿泊日はすべての宿泊者について記載する項目なので、住所はどのみち必要になります。住所を先に取れば、国籍と旅券番号が要るかどうかも同時に決まります。逆に、到着してから国籍だけを尋ねると、判定には使えない情報を集めたことになります。
日本に住んでいる韓国籍の人は40万人を超えている
住所で分かれると聞いても、現場では「外国人なら日本に住所は無いはずだ」と考えてしまいがちです。韓国については、その前提が特に崩れます。
出入国在留管理庁が公表した令和7年末現在の在留外国人数は412万5,395人で、前年末比35万6,418人、9.5%増でした。過去最高を更新するとともに、初めて400万人を超えたと書かれています。この統計が数えているのは、中長期在留者数と特別永住者数を合わせた在留外国人数です。国籍・地域別では中国が930,428人、ベトナムが681,100人、そして韓国が407,341人で第3位です。上位10か国・地域のうち前年末に比べて減ったのは韓国とブラジルだけで、韓国は1,897人の減少と示されています。
内訳は、中長期在留者数が385万8,499人、特別永住者数が26万6,896人です。在留資格別でいちばん多いのは永住者で、947,125人(前年末比29,009人増)でした。この発表からは特別永住者の国籍別内訳を確認できません。そのため、26万6,896人を韓国の人数として読むことはできません。ここから確かめられるのは、日本に住んでいる韓国籍の人が40万人規模でいるという一点です。
この数字を、民泊の受け入れに引き戻すとこうなります。韓国籍の宿泊者から予約が入ったとき、その人が日本国内に住所を有しない外国人であるとは限りません。名前の表記や言語を手がかりに旅券の写しを求める運用は、根拠の面でも接客の面でも成り立たないということです。尋ねるべきなのは国籍ではなく住所です。
なお、この在留外国人統計は日本に住んでいる人を数えたものであり、旅行で日本を訪れた人の数ではありません。来訪者の規模を見るための統計は別にあります。国籍別の訪日客数の見方は国籍別の訪日客数はどの統計で見るかで扱っています。
国籍で変わるもの、変わらないものを並べる
受け入れの場面を並べて、宿泊者の国籍で扱いが変わるかどうかを一つずつ確かめます。
| 受け入れの場面 | 国籍で変わるか | 根拠として書かれていること |
|---|---|---|
| 宿泊開始までの本人確認 | 変わらない | 宿泊者それぞれについて行う |
| 氏名・住所・職業・宿泊日の記載 | 変わらない | すべての宿泊者の記載事項 |
| 国籍と旅券番号の記載 | 国籍ではなく住所で変わる | 日本国内に住所を有しない外国人であるとき |
| 旅券の写しの保存 | 国籍ではなく住所で変わる | 同じ区分。名簿の記載を代替できる |
| 外国語を用いた案内 | 変わらない(言語の指定なし) | 外国人観光旅客である宿泊者に対して行う |
| 名簿の備付けと3年間の保存 | 変わらない | 届出住宅または営業所・事務所に備え付ける |
| 定期報告の国籍別内訳 | 国籍で変わる | 報告の区分に韓国が置かれている |
本人確認は、宿泊行為の開始までに宿泊者それぞれについて行う必要があります。方法は対面のほか、対面と同等の手段としてICT(情報通信技術)を活用した方法も挙げられています。その場合は、宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること、当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内または届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること、のいずれも満たす必要があります。画面ごしに確認する運用にするなら、映像の解像度と照明がそのまま要件に関わります。確認の方法は民泊の本人確認で扱っています。
外国語を用いた案内についても、どの言語を用意すべきかを指定した記述は、今回参照したページでは確認できませんでした。韓国語を用意しなければならない、という決まりはありません。何語を用意するかをどう決めるかは民泊の英語対応はどこまで必要かで整理しています。
名簿は住所、定期報告は国籍。二つの区分は別のもの
最後に、混ざりやすい点を一つ挙げます。同じ制度の中に、性質の違う区分が二つあります。
都道府県知事等への定期報告は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに行います。報告する事項は、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、そして国籍別の宿泊者数の内訳です。報告は民泊制度運営システムにログイン後、直接入力するか、定期報告データ(CSVファイル)をアップロードすることにより行います。
この国籍の区分は、日本、韓国、台湾、香港、中国、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ロシア、米国、カナダ、オーストラリア、その他の22区分です。韓国は独立した区分として置かれています。自分の届出住宅に韓国からの宿泊者がどれだけ来ているかは、全国の順位を眺めなくても、過去に出した報告に残っているということです。
ここで二つの軸が交差します。名簿の追加記載は住所で分かれ、定期報告は国籍で分かれます。したがって、韓国籍で日本国内に住所がある宿泊者は、名簿では追加記載の対象にならないのに、報告では韓国として数える対象になり得ます。この場合に報告の国籍をどのように把握するかについて、明示した記述は今回参照した資料では見つけられませんでした。名簿に国籍の記載義務が生じない相手だからです。判断に迷う場面が出たら、届出先の都道府県・保健所設置市の窓口に確認してください。このサイトでは、法令の解釈を断定せずに残します。
出典が取れず、この記事で書かなかったこと
書かなかったことを残しておきます。いずれも、裏づけになる一次情報を確認できなかったためです。
韓国からの旅行者の平均泊数、好まれる設備、予約の経路、決済の手段については、民泊に限って集計した公的な資料を見つけられませんでした。観光庁のインバウンド消費動向調査には国籍・地域別の集計がありますが、公表されている形式の都合で今回は数値を確認できていないため、この記事では扱っていません。確認できた時点で追記します。
韓国国内の休日の日程と、それが予約に与える影響も書いていません。日程そのものが公表されていても、それは自分の届出住宅の予約が増えることの根拠にはならないためです。同じ理由で、特定の時期に料金や最低宿泊日数を動かすことも勧めていません。
入国や査証の手続きは宿泊事業者が行うものではないため、この記事では扱っていません。日韓の観光当局の動きについては観光庁が第40回日韓観光振興協議会を開催で取り上げています。
「韓国からの宿泊者」という区分は、法令の中にない
条文にも観光庁の案内にも、韓国からの宿泊者を名指しした区分はありません。あるのは、その宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人かどうか、という線だけです。韓国が届出住宅の外国人宿泊者で第2位であることと、名簿に何を書くかは、別の話として扱ってください。
受け入れの準備としてやることは三つです。宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて本人確認を行うこと。記載事項の判定を、国籍ではなく住所で行うこと。該当する宿泊者については旅券の呈示を求めて写しを名簿とともに保存し、作成の日から三年間残すこと。ここまでは、宿泊者の国籍を問わず共通の作業です。
そのうえで、自分の届出住宅に韓国からの宿泊者がどれだけ来ているかは、偶数月に出している定期報告の国籍別内訳に残っています。全国の順位ではなく、その数字を見てから案内や設備に手を入れる。順序を逆にすると、自分の物件では起きていない前提に合わせて手を入れることになります。
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