民泊の集客にSNSを使うと決めたあと、たいてい次に止まるのは「どれを使うか」です。投稿のネタや頻度から考えはじめると、どのサービスでも同じ結論にたどり着いてしまい、結局どれも中途半端に触ることになります。先に絞るなら、投稿の中身ではなく各サービスが公式ヘルプに書いている条件から入るほうが早く済みます。
条件は四つあります。アカウントを作れる状態か、公開のアカウントにしてよいか、数字が出はじめるまでの下限を待てるか、そして費用がどこで発生するか。この四つは、どれも各社の公式ヘルプに文章で書かれていて、始める前に読めます。投稿の反応と違って、試してみないと分からないものではありません。
先に断っておきます。どのSNSが民泊の予約につながりやすいかを示す公的な集計も、各社が公表している数値も、今回の調査では見つけられませんでした。そのため、この記事では順位やおすすめの形を取りません。並べるのは、公式ヘルプに書かれていること、そして確認できなかったことだけです。投稿してよい素材かどうかの判定は民泊のInstagram集客、SNSから予約画面までの受け渡しはSNSから直接予約につなげる、集客の経路全体の見取り図は民泊の集客方法にあります。
| サービス | 公式ヘルプで確認できた条件 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| Facebookページ | Facebookアカウントがあれば誰でも作成・管理できる(ページのアクセス権があることが前提) | Facebookヘルプセンター「Facebookページを作成する」 |
| 個人用アカウントが非公開のとき、プロアカウントへ切り替えると公開になる | Instagramヘルプセンター「プロアカウントへの切り替えについて」 | |
| Instagram(分析) | 利用者層のデータはリーチ100件超、合計フォロワーは100名以上で表示。期間は過去90日以内のカスタム期間から選ぶ | Instagramヘルプセンター「Instagramインサイトについて」 |
| YouTube(分析) | 概要・リーチ・エンゲージメント・視聴者のタブごとに指標が分かれる。一部のデータは制限される場合がある | YouTube ヘルプ「YouTube アナリティクスの概要」 |
| LINE公式アカウント | 月額固定費と無料メッセージ通数がプランごとに決まっている | LINEヤフー for Business「LINE公式アカウント 料金プラン」 |
| X(旧Twitter)・TikTok | 公式ヘルプの自動取得が拒否され、記載を確認できませんでした | ー |
SNSでの募集は「自分で行う」経路に置く
サービスの条件を見る前に、置き場所をはっきりさせておきます。SNSで宿泊者を募ることは、集客の経路としては自分で募集する側に入ります。ここを曖昧にしたまま人に手伝ってもらうと、法令の側の話に変わることがあります。
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者が民泊サービスの仲介を他人に委託する場合、住宅宿泊事業法上の登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業法上の登録を受けた旅行業者を利用しなければならないとしています。そのうえで、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者以外の者に仲介を委託した場合、住宅宿泊事業法違反として業務改善命令等の対象になるとともに、50万円以下の罰金が科されることがあると書いています。
SNSでは、この「委託」が軽い形で現れます。知り合いのアカウントに宿の紹介を出してもらう、空室の日程をまとめて告知してもらう、申込みの希望を代わりに受けてもらう。頼み方が深くなるほど、単なる紹介から代理や媒介の側へ寄っていきます。自分のアカウントで自分が募集する形にしておけば、この論点はそもそも立ちません。人に頼む形を考えるときだけ、相手が登録を受けているかを先に確かめてください。あてはまるかどうかの最終的な判断は、届出先の窓口に確認するのが確実です。
前提が決まったところで、四つの条件を順に見ていきます。順番には理由があります。アカウントを作れなければ公開の可否は問題になりませんし、公開にできても数字が出るまで続けられなければ、費用の話まで進みません。上から順に落としていくと、候補は自然に絞られます。
開設の条件は、サービスごとに違う
まずアカウントです。ここは各社のヘルプに手順まで書かれているので、迷う余地がほとんどありません。
Facebookヘルプセンターは、Facebookアカウントを持っている人なら誰でもページを作成したり管理したりすることができるとし、ページのアクセス権があることが前提になると添えています。作成の手順は11の段階で示され、ページ名とカテゴリを追加する、自己紹介を追加する、連絡先情報・所在地・営業時間を追加する、プロフィール写真とカバー写真を追加する、といった項目が並びます。民泊で目に留めておきたいのは、所在地と営業時間が入力項目として挙がっている点です。届出住宅の住所をどこまで出すかは、入力欄があるから埋めるのではなく、自分で決める必要があります。
Instagramは、個人用のアカウントからプロアカウントへ切り替える形です。ヘルプセンターは、プロフィールの設定から「アカウントの種類とツール」を開き、「プロアカウントに切り替える」を選び、クリエイターかビジネスを選んでカテゴリを設定する、という順序を示しています。切り替えると、アカウントの成長、収益化、広告の作成、成長の把握、メッセージの管理に役立つ機能を利用できるようになると書かれ、プロフェッショナルダッシュボードからインサイトを確認できるとしています。
ここでひとつ、後から戻しにくい条件があります。ヘルプセンターは、個人用アカウントが非公開になっている場合、プロアカウントに切り替えると公開になりますと明記しています。つまり、分析を見るために切り替えると、そのアカウントは公開になります。もともと友人だけに見せていた個人のアカウントをそのまま宿の告知に使おうとすると、この一行に当たります。宿用のアカウントを別に作るかどうかは、投稿を始める前に決めておいたほうが手戻りがありません。載せる写真そのものの扱いは民泊の写真掲載で整理しています。
数字が出はじめるまでに、下限がある
三つめの条件が、いちばん見落とされます。分析の画面は、アカウントを作った日から全部の数字を出してくれるわけではありません。
Instagramヘルプセンターは、公開アカウントを持っている場合は無料のインサイトを利用できるとし、プロアカウントではさらに機能が使えると説明しています。そのうえで、指標ごとに表示の条件を書いています。利用者層のデータを見るにはリーチしたアカウントが100件を超えることが必要で、アクションを実行したアカウント数はアクションを実行したアカウントが100件を超えている場合に、合計フォロワーはフォロワー数が100名以上の場合に閲覧できるとされています。閲覧数は「コンテンツが再生または表示された回数」と定義されつつ、段階的にリリース中のため利用できない場合があると添えられています。期間については、過去90日以内のカスタム期間から選べると書かれています。
この下限は、運用の判断にそのまま効いてきます。始めた直後は、投稿が届いた相手がどんな人かも、フォロワーの内訳も表示されません。そこで「反応が無い」と判断するのは、数字が出ていないことを反応が無いことと取り違えています。逆に言えば、100という数に届くまでは、分析を見て投稿の作り方を変えるという進め方ができません。その期間をどう過ごすかを先に決めておくほうが現実的です。たとえば、最初の数週間は投稿の型を変えずに続け、下限を超えてから内訳を見て判断する、といった置き方になります。
さかのぼれる範囲にも限りがあります。過去90日以内という記載は、去年の同じ時期と比べるような使い方ができないことを意味します。季節で動く宿泊の需要を、この画面だけで追うのは難しいということです。手元に控えを残すかどうかは、ここで決まります。
分析で見えるのは、SNSの画面の中で起きたことだけ
四つめに進む前に、分析の性質をもう一段はっきりさせておきます。SNSの公式分析は、そのサービスの画面の中で起きたことを数えています。
YouTube ヘルプは、アナリティクスの画面をタブで分けて説明しています。概要タブではチャンネルや動画のパフォーマンスの概要を確認でき、リーチタブの主要指標カードにはインプレッション、インプレッションのクリック率、視聴回数、ユニーク視聴者数が表示されるとしています。エンゲージメントタブには総再生時間と平均視聴時間、視聴者タブには月間視聴者数とチャンネル登録者数が表示されるとされ、収益タブの推定収益はYouTube パートナー プログラムの参加者向けだと書かれています。あわせて、地域、トラフィック ソース、性別など一部のデータは制限される場合があること、モバイルデバイスでは一部のレポートを使用できない場合があることも注記されています。
両方の指標一覧を並べて分かるのは、予約が何件入ったかを示す項目が、どちらにも見当たらないということです。見えているのは表示された回数、見た人の数、反応の数、登録者の数までで、そこから先は別の場所の話になります。投稿の反応と申込みの増減を突き合わせたいなら、申込みの側の記録を自分で残すしかありません。どの経路から申し込まれたかを受付の段階で控えておく、という地味な作業がそれにあたります。受け渡しの設計そのものはSNSから直接予約につなげるで扱いました。
もうひとつ、投稿への反応の中には、集客とは別の対応が要るものが混ざります。感想や苦情の形で届いたものにどう返すかは、民泊の口コミへの返信で整理しています。分析の数字だけを見ていると、この種の対応が抜け落ちます。
費用がかかるのは、配信の通数で決まる
四つめの条件が費用です。ここで性質が大きく違うのがLINE公式アカウントで、送るメッセージの通数でプランが決まります。
LINEヤフー for Business の料金プランのページは、三つのプランを挙げています。コミュニケーションプランは月額固定費が0円で無料メッセージが200通、追加メッセージは不可。ライトプランは月額固定費5,000円(税別)で無料メッセージ5,000通、追加メッセージは不可。スタンダードプランは月額固定費15,000円(税別)で無料メッセージ30,000通、追加メッセージは〜3円/通(税別)とされています。
| プラン | 月額固定費 | 無料メッセージ | 追加メッセージ |
|---|---|---|---|
| コミュニケーションプラン | 0円 | 200通 | 不可 |
| ライトプラン | 5,000円(税別) | 5,000通 | 不可 |
| スタンダードプラン | 15,000円(税別) | 30,000通 | 〜3円/通(税別) |
追加メッセージが使えるのはスタンダードプランだけで、単価は配信数に応じて段階的に下がる形が示されています。ページには「200,000通配信の場合、(50,000通×3円)+(50,000通×2.8円)+(100,000通×2.6円)=550,000円」という計算例が置かれています。桁が大きく見えますが、ここで読み取っておきたいのは金額そのものではなく、費用が「何人に送るか」ではなく「何通送るか」で増えるという決まり方です。登録してくれた人が増えるほど、1回の一斉配信で減る通数も増えます。
無料メッセージが200通というのは、一斉配信の回数に直すとかなり少ない枠です。登録者が50人なら、全員に送って4回で使い切ります。登録者を増やすことが、そのまま費用の話になる点が、他のサービスと違うところです。始める前に、月に何回送るつもりかを決めておくと、プランの判断がぶれません。
なお、Instagram・Facebookページ・YouTubeについては、今回参照したページに、アカウントやページを持つこと自体に月額の固定費がかかるという記載は見当たりませんでした。広告を出す場合の費用は別の話で、今回は確認していません。
確認できなかったこと
推測で埋めないために、確認できなかったものをそのまま書いておきます。
X(旧Twitter)とTikTokは、公式ヘルプのページを自動で取得しようとしたところ拒否されました。迂回して取りに行くことはしていないため、両サービスの条件はこの記事の表に載せていません。載っていないことは、使えないという意味ではありません。こちらで記載を確認できていない、という意味です。検討する場合は、それぞれの公式ヘルプを直接ご確認ください。
どのSNSが民泊の予約につながりやすいかを示す公的な集計は見つけられませんでした。投稿の頻度や時間帯と予約の関係、ハッシュタグの使い方と表示回数の関係についても同じです。フォロワーが何人になれば予約が入るかを示す資料もありません。この記事に目標値を書いていないのは、そのためです。
Instagramインサイトのデータが何日ぶん保存されるのかも、確認できませんでした。ヘルプには過去90日以内のカスタム期間を選べるという記載があるだけで、保存期間そのものは明記されていません。
続けるかどうかを、何で決めるか
最後に、始めたあとの判断の置き方をまとめます。
第一に、下限に届くまでは反応の有無で判断しないことです。利用者層もフォロワーの内訳も、100という数を超えるまで表示されません。数字が出ていない期間に出した結論は、材料のない結論です。どれくらい続けてから見直すかを、始める前に決めておきます。
第二に、判断の材料は自分の側に用意することです。SNSの分析には予約件数が出てきません。申込みを受けた件数と、その人がどこから来たかを受付の段階で控えておけば、分析の画面を待たずに判断できます。これはSNSの仕様が変わっても残る記録です。
第三に、増やす前に減らせるかを見ることです。SNSを一つ増やすと、投稿の材料も、問い合わせへの返信も、規約の確認も増えます。LINE公式アカウントのように通数で費用が動くものなら、金額も増えます。四つの条件のうち一つでも通らないサービスは、始めない判断で構いません。
そして、ここで挙げた条件は各社の都合で変わります。料金プランも、分析の指標も、切り替えの手順もそうです。この記事は60日ごとに一次情報を見直します。法令の側については、あてはまるかどうかの最終的な判断を、届出先の窓口や所管の機関へご確認ください。
このメディアの運営元について
myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。