SNSに宿の写真を上げても、そこで予約が終わることはありません。読者は写真を見て、プロフィールへ移り、リンクを踏み、別の画面で日付を選び、名前と連絡先を入力します。予約が成立するのは、この経路のいちばん奥です。SNSからの直接予約は、投稿を増やす話ではなく、経路の受け渡しを設計する話だということになります。
受け渡しには、途中で性質が切り替わる地点があります。手前の区間は、場を持っているのがSNSの側です。何を置けるか、どれだけの期間残るかは、そのサービスの仕様が決めます。奥の区間は自分の場で、申込みをどう受け、何を記録し、誰であることをどう確かめるかは自分の責任になります。手前では仕様に縛られ、奥では法令に縛られる。この組み合わせが、SNSからの直接予約の設計を、検索からの直接予約とは違うものにしています。
そこでこの記事は、経路を四つの持ち場に分けます。持ち場ごとに、決めているのが誰なのか、確認する資料がどれなのかを、観光庁・消費者庁・個人情報保護委員会の資料とInstagramヘルプセンターで確かめられる範囲だけ並べました。先に断っておくと、SNS経由の予約がどれくらいの割合を占めるかを示す公的な集計は見つけられませんでした。そのため、比率や効果の数値は書いていません。自社予約そのものの位置づけは自社予約とは、打ち手を伝え方で分けた全体像は自社予約を増やす方法で扱っています。
SNSの中では、予約が終わらない
まず確かめたいのは、SNSの画面のなかで予約を完結させられるのか、という点です。Instagramには、ビジネスプロフィールへ追加できるアクションボタンがあります。ヘルプセンターは「予約する」「席を予約する」「料理を注文」といったボタンを挙げ、プロフィールで表示できるアクションボタンは一度に1つだとしています。あわせて、すべてのビジネスがこの機能を利用できるものの、現時点で対応しているパートナーの数は限られているとも書かれています。
つまり、SNSの側にいちばん予約らしい仕組みが用意されている場合でも、実際に日付や人数を受け付けるのは提携先のサービスであり、置けるボタンは1つだけです。ここから導かれる前提は単純です。SNSは申込みを受ける場所ではなく、申込みを受ける場所へ渡すための面だと考えておく。そう置くと、やるべきことが「投稿を頑張る」から「受け渡しの四つの持ち場を順に用意する」に変わります。
四つの持ち場は、①SNSに出す表示、②面から外へ出る導線、③申込みの受付、④到着までの確認です。①と②はSNS側の面の上にあり、③と④は自分の側にあります。境目は②と③の間です。この境目をまたぐ瞬間に、確認する資料が、サービスのヘルプから法令と公的機関の資料へ切り替わります。
持ち場①:投稿と、その場を持っている相手
SNSに宿泊者を募る投稿を出すとき、最初に分かれ道があります。募集して契約まで結ぶのが自分なのか、それとも誰かに任せるのかです。SNSでは「任せる」が軽い形で現れます。紹介してもらう、プロフィールに連絡先を出してもらう、日程の希望をまとめてもらう。頼み方によって、単なる紹介から代理や媒介の側へ寄っていきます。
募集を他人へ委託する場合に相手が住宅宿泊仲介業者または旅行業者に限られること、登録を受けていない者へ委託したときの扱いは、自社予約とはで整理しました。SNS側で足しておきたいのは、相手を確かめる材料がすでに公表されているという点です。観光庁の資料は、仲介業者の側の手順として、掲載の前に届出番号などを照合するか、観光庁が提供するデータベースで適法な物件であることを確かめるとしています。頼まれた側がこの確認をしているかどうかは、頼む側からも聞けます。相手が登録を受けているかどうかは、頼む前に確かめてください。あてはまるかどうかの最終的な判断は、届出先の窓口に確認するのが確実です。
もう一点、SNSの表示は現地の掲示の代わりにはなりません。観光庁は、住宅宿泊事業者が届出住宅ごとに公衆の見やすい場所へ標識を掲示する必要があるとし、門扉や玄関など、おおむね地上1.2メートル以上1.8メートル以下で公衆が認識しやすい位置に掲げること、住宅宿泊事業を実施している間は継続して掲示することを示しています。共同住宅では個別の住戸に加えて共用エントランスにも掲示するとされ、風雨に耐えるラミネート加工等を施すことも挙げられています。プロフィール欄に情報を書き足しても、この掲示そのものが不要になるわけではありません。
そしてこの持ち場では、面を持っているのが自分ではない、という前提がずっと効いてきます。アカウントが使えなくなれば、そこに置いた案内も導線も同時に失われます。募集の入口をSNSだけに置かないというのは、規約の話である前に、借りている場所の上に店を組み立てているという事実から出てくる結論です。
持ち場②:導線は、24時間で消えない場所に置く
投稿を見た人が申込みの画面へ移るには、踏めるものがそこに残っている必要があります。ここでの制約は法令ではなく、サービスの仕様です。
Instagramヘルプセンターは、ストーリーズについて「プロフィールやフィード、メッセージで写真や動画を24時間限定でシェアできます」と説明し、ストーリーズハイライトとしてプロフィールに追加した場合を除くとしています。つまり、ストーリーズに載せた案内は、翌日には読者の側から見えなくなります。ハイライトへ追加すればプロフィールに残りますが、それは置き場所を移したということです。アクションボタンについては、前の節のとおり一度に1つだけで、対応しているパートナーが必要です。
置き場所ごとの違いを、確認できた範囲で並べると次のようになります。
| 置き場所 | 表示が続く期間 | 置ける導線 | 確認した資料 |
|---|---|---|---|
| ストーリーズ | 24時間限定 | 投稿ごとに付ける | Instagramヘルプセンター「ストーリーズ」 |
| ストーリーズハイライト | プロフィールに残る | ハイライトに追加したもの | 同上 |
| アクションボタン | プロフィールに常時 | 一度に1つだけ | Instagramヘルプセンター「アクションボタン」 |
| 通常の投稿 | 記載を確認できず | 投稿本文に記載 | ― |
表の右下を「―」にしてあるのは、通常の投稿が表示され続ける期間について、公式ヘルプで記載を見つけられなかったためです。推測で埋めていません。設計としては、消えることが分かっている場所だけに導線を預けない、という方針で足ります。ストーリーズで告知したなら、同じ内容へ戻れる常設の入口をプロフィール側にも用意しておきます。なお、ここで挙げた仕様はサービス側の都合で変わります。この記事も90日ごとに見直す設定にしています。検索からの入口を別に持ちたい場合は、Googleから直接予約につなげる方法が別の面を扱っています。
持ち場③:料金と条件は、書いた時点で表示になる
投稿に料金や設備を書いた瞬間から、それは景品表示法でいう表示として読まれます。消費者庁は、商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示として、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示などを優良誤認表示に挙げ、価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示などを有利誤認表示に挙げています。
SNSの投稿でとくに起きやすいのが、値下げの伝え方です。消費者庁は二重価格表示について、同一の商品で「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格とする場合には不当表示に該当するおそれはないとしています。その期間とはいえない過去の価格を使う場合は、その価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなど、内容を正確に表示しない限り不当表示に該当するおそれがあるとしています。将来の販売価格についても、表示された価格に十分な根拠がないとき、たとえば実際には販売することのない価格であったり、ごく短期間しかその価格で販売しないような場合には、不当表示に該当するおそれがあるとしています。
投稿は文章より写真の比重が大きくなります。写真も、設備や眺望といった内容についての表示として読まれることになります。撮った角度や時期で実際と離れていくため、載せた写真を自分で見返して、届出の内容や現状と合っているかを確かめるのが実務になります。
なお、自分のアカウントからの投稿と、誰かに書いてもらった投稿とでは論点が変わります。消費者庁はステルスマーケティングの規制について、規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者であり、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはならないとしています。依頼する側の設計の話は自社予約を増やす方法にまとめました。
持ち場④:申込みを受けたあとは、SNSの外で確認する
導線をたどった人が申込みの画面に着いたところから、自分の側の持ち場になります。申込みを受けるための表示については、消費者庁の特定商取引法ガイドが通信販売の広告として示す項目が目安になります。入力欄の設計は予約フォームの項目で扱っているため、ここでは繰り返しません。
宿泊の前に済ませる確認は、SNSの中では完結しません。観光庁は宿泊者名簿について、宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日を記載すること、宿泊者が国内に住所を有しない外国人であるときはその国籍及び旅券番号を記載することを示しています。本人確認は、宿泊行為の開始までに宿泊者それぞれについて行う必要があるとされ、対面またはICTを活用した方法で、宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できることが条件として挙げられています。外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いた設備の使用方法の案内、移動のための交通手段に関する情報の提供、火災・地震その他の災害が発生した場合の通報連絡先の案内が挙げられています。記載事項と保存は民泊の宿泊者名簿、確認の方法は民泊の本人確認にまとめています。
申込みをダイレクトメッセージで受ける場合は、作業が増えます。やり取りがSNSの中に閉じるため、名簿に転記する手間と、転記漏れの危険が生まれるからです。取得した連絡先を後日の案内に回したくなる場面もあります。個人情報保護委員会は、利用目的の特定について、本人において自らの個人情報がどのような事業の用に供され、どのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に特定することだと説明し、単に「お客様のサービスの向上」といった抽象的な内容では足りないとしています。再訪の案内へ使う場合の考え方はリピーターの直接予約で整理しました。
| 受け方 | 記録の残り方 | 増える作業 |
|---|---|---|
| 自社サイトのフォーム | 自分の側に項目ごとに残る | 表示項目をそろえる |
| SNSのダイレクトメッセージ | SNSの中に会話として残る | 名簿への転記と取りこぼしの確認 |
どちらで受けるにしても、宿泊者名簿と本人確認は自分の側で済ませます。SNSのやり取りは申込みの入口であって、確認の完了ではありません。
着手の順番
四つの持ち場は、逆の順に用意すると手戻りが出ます。奥から埋めるのが順当です。まず④、宿泊者名簿と本人確認の手順を決めます。次に③、申込みを受ける場所を一つに定め、表示をそろえます。そのうえで②、消えない場所に導線を置きます。最後に①、投稿の内容を作ります。投稿から作り始めると、導線の置き場所が足りないことに後から気づくことになります。
うまくいっているかどうかは、投稿の反応ではなく、受け渡しが切れていないかで見ます。ハイライトからリンクを踏んだ先が古い料金のままになっていないか。プロフィールのボタンが1つの枠を電話に使っていて、予約への入口が本文の中に埋もれていないか。ダイレクトメッセージで受けた申込みが、名簿へ転記されないまま残っていないか。切れやすいのは、面が変わる②と③の間です。
この記事で扱った仕様は、サービス側の変更で入れ替わります。法令の側の記載も、所管の窓口が示す運用で変わることがあります。適用の可否についての最終的な判断は、届出先の窓口や所管の機関に確認してください。この記事は90日ごとに一次情報を見直します。
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