民泊の集客経路は、大きく3つに分かれます。観光庁に登録した住宅宿泊仲介業者のサイトに載せる、旅行業者に販売を任せる、そして自分で募集するの3つです。どれを選ぶにしても、最初に手を付けるところは同じです。届出をして受け取った届出番号を、掲載先へ正しく伝えられる状態にすること。そこから、委託先の確認、料金や口コミの表示、日数と報告の管理へと順に進みます。
先に断っておくと、「どの経路がいちばん予約につながるか」を示す公的な集計は、今回参照した観光庁の資料には見当たりませんでした。経路別の予約の割合や、掲載から最初の予約までの期間も同じです。そのため、この記事では集客のコツや効果の大小は扱いません。扱うのは、経路ごとに法令と公的資料で決まっていることと、それを踏まえた手を付ける順番です。
この記事では、3つの経路の分け目、仲介を任せられる相手の制限、手を付ける4つの段、どの経路でもかかる料金と口コミ依頼の表示、経路を増やしても1つのまま残る日数と報告を、順に見ていきます。
集客の経路は3つ。分け目は「誰が契約の間に立つか」
集客の経路を分けるいちばん確かな線は、宿泊者と自分とのあいだに第三者が立つかどうかです。住宅宿泊事業法第12条は、届出住宅の仲介を他人に委託する場合の相手を定めています。観光庁の説明では、委託先は「住宅宿泊事業法上の登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業法上の登録を受けた旅行業者」です。ここから、第三者が立つ経路は2つ、立たない経路が1つ、という形になります。
1つめの住宅宿泊仲介業者は、観光庁の民泊制度ポータルサイトに一覧があります。「住宅宿泊仲介業者のリスト(令和8年6月22日時点)」には66の事業者が登録番号順に並んでいます。国内の会社のほか、Airbnb Global Services Limited や Booking.com B.V. のように海外に拠点を置く法人も含まれています。一般にOTA(オンライン旅行会社)や民泊の予約サイトと呼ばれている事業者に民泊の物件を載せるとき、その相手がこの一覧にあるかどうかが、最初に見る点になります。
2つめの旅行業者について、同じページには民泊を取り扱う旅行業者のリストも載っています。ただしこちらは令和7年3月末時点の、民泊物件の取り扱いを報告した旅行業者の一覧です。観光庁は「本リストに名前のない旅行業者においても、民泊物件を取り扱うことは可能です」と注記しています。一覧に無いことは、取り扱えないことを意味しません。
3つめが、自分で募集する経路です。観光庁のよくあるご質問は、「仲介業者を通さずに事業者が自ら予約を受け付けてもいいのですか?」という問いに「可能です。」と答えています。自社サイト、電話、メール、SNSからの問い合わせなど、受け方は問われていません。自身の届出住宅を仲介する場合は仲介業者の登録は不要とされています。一方で、他人の届出住宅を仲介し、仲介行為の宣伝を行い、報酬を得ている場合には住宅宿泊仲介業者としての登録が必要です。知り合いの物件の予約もまとめて受ける、という広げ方をすると、自分が仲介する側に回ります。
| 集客の経路 | 宿泊者とのあいだに立つ者 | 事業者の側で先に確かめること | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 住宅宿泊仲介業者のサイトに載せる | 登録を受けた住宅宿泊仲介業者 | 相手が観光庁のリストにあるか。届出番号を正確に通知したか | 法第12条、観光庁「仲介業者への委託」 |
| 旅行業者に販売を任せる | 旅行業法上の登録を受けた旅行業者 | 旅行業の登録を受けているか。民泊のリストに名前が無くても取り扱える | 観光庁「住宅宿泊仲介業者および民泊を取り扱う旅行業者のリスト」 |
| 自分で募集する(自社サイト・電話・SNSからの問い合わせなど) | いない | 自身の届出住宅なら仲介業の登録は不要。予約の条件の示し方は自分で決める | 観光庁「よくあるご質問」 |
| 他人の届出住宅もまとめて募集し、報酬を得る | 自分が仲介する側になる | 宣伝を行い報酬を得るなら、住宅宿泊仲介業者の登録が必要 | 観光庁「よくあるご質問」 |
この表で経路を選び分けるというより、自分がどの行に入っているかを確かめるために使ってください。複数の仲介サイトに載せつつ自社サイトでも受ける、という組み合わせは珍しくありません。そのときは1行目と3行目の両方の確認が要ります。
仲介を任せられる相手は、登録を受けた事業者に限られる
集客を始めると、「掲載を代わりにやります」「集客を代行します」という申し出を受けることがあります。ここで効いてくるのが先ほどの第12条です。委託先が登録を受けていない場合について、観光庁は、業務改善命令等の対象になるとともに、50万円以下の罰金(法第75条)等が科されると説明しています。不利益は委託した住宅宿泊事業者の側にかかる形で書かれています。
注意したいのは、申し出の名前ではなく中身で判断することです。第12条が相手を限っているのは、宿泊の契約の締結について代理や媒介を任せる場面です。写真の撮影や説明文の作成だけを頼むのか、宿泊者との契約の成立まで担わせるのかで、話が変わります。相手が何を担うのかを契約の前に書面で確かめ、契約の代理や媒介にあたる部分があるなら、観光庁のリストで登録を確認します。判断がつかないときは、届出先の自治体の窓口に確認するのが確実です。
もう一つ、仲介業者の側にも掲載の決まりがあります。観光庁は住宅宿泊仲介業者の禁止行為として、住宅宿泊事業法の届出、旅館業法の許可、特区民泊の認定等を受けていない物件を仲介サイトに掲載する行為を挙げています。あわせて、住宅宿泊事業者からの届出番号を確認せずに仲介サイトに掲載することは、届出をした者であるかどうかの確認を怠る行為とされています。つまり、登録を受けた仲介業者のサイトは、届出番号が無い物件を載せられない仕組みになっています。集客を届出より先に始められない理由がここにあります。
どこから手を付けるか。4つの段を左から順に決める
ここまでの決まりを並べると、集客の準備には順番があることが分かります。前の段が決まっていないと、次の段で止まる、という関係です。
1段目は、届出番号を受け取ることです。観光庁は、仲介業者による適法性の確認のため、都道府県等から送付された届出番号等の記載されたメールの情報を、仲介業者へ正確に通知する必要があるとしています。届出の受理から開業までの流れの中で、この番号が届くのを待つ期間があります。集客の準備を先に進めていても、掲載の公開はここで止まります。届出から営業開始までの確認事項は届出後に営業を始めるまででまとめています。
2段目は、経路と委託先を決めることです。前の節の表で自分がどの行に入るかを決め、仲介を任せる相手がいるならリストで登録を確かめます。自分で募集する経路を選ぶ場合、仲介業者が担っていた条件の提示を自分で行うことになります。その違いは自社予約とはで詳しく扱っています。
3段目は、掲載する料金や紹介文、口コミの集め方を整えることです。ここは次の節で見るとおり、経路に関係なく同じ決まりがかかります。4段目は、日数と報告を束ねることです。経路を2つ以上使うなら、この段を最初から設計しておく必要があります。これは最後の節で扱います。
料金と口コミの依頼には、どの経路でも同じ決まりがかかる
経路を選んだあとに作るのは、料金の表示と、宿泊者の声を集める仕組みです。どちらも、仲介サイトに載せるか自社サイトで出すかに関係なくかかる決まりがあります。
料金について、国税庁は、事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額を含めた価格(税込価格)を表示することが義務付けられていると説明しています。対象の媒体は、店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告などを問いません。表示の例として「11,000円(税込)」が挙げられています。自社サイトとSNSで料金を出す場合も、同じ書き方にそろえておきます。予約ページに載せる項目の具体例は自社予約サイトの作り方で並べています。
口コミについては、消費者庁の告示が関わります。消費者庁は、令和5年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法違反となると説明しています。対象は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」で、規制されるのは広告主である事業者です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはならないとされています。つまり、口コミや紹介を頼んだ側の宿が責任を持つ形です。
消費者庁のQ&Aには、宿泊施設の集客にそのまま当てはまる問いがあります。Q6は、サービスを利用した後に予約サイトの口コミ投稿を行うことを条件として、サービスを割引価格で提供する場合を扱っています。
Q6の答えは二段になっています。投稿の内容について指示が無く、割引程度の対価であれば、表示内容の決定に関与しているとはいえず、通常は「事業者の表示」に当たらないとされています。一方で、「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることを条件にした場合は、事業者が投稿の内容を決定しているといえるため「事業者の表示」に当たり、事業者の表示であることを明瞭にしなければ告示に違反するとされています。星5ではなく、サービスの品質や内容、価格等の取引条件について推奨するコメントをすることを条件にする場合も同様です。
インフルエンサーに無償で泊まってもらい、感想の投稿を頼む場合はQ5が近い問いです。やり取りの内容、無償提供の内容と目的、取引関係の有無などを考慮して判断するとされており、一律には決まりません。事業者の表示に当たる場合の書き方について、Q11は、表示内容全体から事業者の表示であることが明瞭になっていればよく、「広告」「PR」といった語に限られないとしています。「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で書く方法も適切とされています。
なお、予約サイトごとに口コミの投稿や依頼についての独自の規約を置いている場合があります。この記事では各社の規約までは確認していません。掲載している予約サイトの規約は、それぞれの公式ページで確かめてください。SNSで予約につなげる導線そのものはSNSから直接予約を受ける方法で、地図や検索からの導線はGoogleからの直接予約で扱っています。
経路を増やしても、日数と報告は届出住宅ごとに1つ
集客の経路を2つ3つと増やすと、予約の入口は増えます。ところが、住宅宿泊事業としての上限は増えません。観光庁は住宅宿泊事業を、旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が180日を超えないもの、と説明しています。この算定は届出住宅ごとに行い、1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午までです。
経路ごとの管理画面は、その経路で入った予約しか持っていません。仲介サイトAで何日、仲介サイトBで何日、自社サイトで何日という数字を合計して180日に照らすのは、住宅宿泊事業者の側の仕事です。数え方や迷いやすい場面は民泊の180日ルールで詳しく見られます。
報告も同じ単位です。観光庁は、2か月ごとに宿泊日数等を報告する必要があるとしており、報告は民泊制度運営システムにログインしたうえで、直接入力するか、定期報告データ(CSVファイル)をアップロードして行います。報告データには届出番号、報告対象期間、宿泊日数、宿泊者数、延べ人数、国籍、宿泊日が含まれます。どの項目も経路別ではなく届出住宅の単位です。報告した数字が全国でどう集計されているかは民泊の宿泊者数は何を数えた数字かで扱っています。
だから、経路を増やす前に、全経路の予約を1か所に集めて数える台帳を用意しておくのが順番として先です。台帳は、日数の残りを見るためにも、2か月ごとの報告を作るためにも、宿泊者名簿と突き合わせるためにも使います。名簿の記載事項と保存は民泊の宿泊者名簿にまとめています。
経路を選んだあとに読む記事
ここまでの4つの段が決まれば、次はどの経路に力を入れるかの話になります。自分で募集する比重を上げたいなら、定義と登録の要否から自社予約とはを、仲介サイトへの偏りを減らしたいならOTA依存を減らす方法を読んでください。
経路ごとの手数料の水準、経路別の予約の割合、掲載してから最初の予約が入るまでの期間は、今回参照した公的資料では確認できませんでした。仲介業者の料金は、観光庁の説明によれば各社が定めて公示するものです。比べるときは、掲載を考えている事業者の公示を1社ずつ確認し、確認した日を控えておいてください。改定があるため、数か月おきに見直すのが安全です。
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