mui Lab株式会社(本社:京都府京都市、代表取締役:大木和典)とAirbnb Japan株式会社は、京都市内でホスト不在型のリスティングを運営する協力ホストを対象に、騒音センサー「Minut(ミニット)」を1年間無償で提供する実証実験を開始したと発表しました。mui Labのプレスリリースは2026年10月13日、Airbnbのニュースルームの発表は2026年10月12日付です。設置数は約60施設で、機器と1年間のサブスクリプション費用は無償だと書かれています。
民泊を運営している側から見ると、この発表は騒音対策の話であると同時に、誰が気づいて、誰が動くのかという体制の話でもあります。ホスト不在型は、その場に事業者がいません。近隣に影響が及んだことを知る手段が事後の苦情しかない状態と、音が続いている最中に通知が届く状態とでは、取れる手が変わります。
ただし、通知が届くことと、法令で求められている業務が済むことは別です。この記事では、発表に書かれている条件を表記のまま並べたうえで、観光庁の民泊制度ポータルサイトが示す住宅宿泊事業者の業務と、京都市が公表しているルールに照らし、導入を考えるときに自分で確かめる点を切り分けます。当サイトはこの機器を使用しておらず、効果や他社製品との優劣を評価するものではありません。発表に記載のない項目は、推測で補わず「記載がありません」と示します。
実証実験として、京都市内の約60施設に無償で設置されます
発表によると、対象は京都市内でホスト不在型リスティングを運営するホストです。実施期間は各施設で機器の設置開始から1年間、設置場所はリビングルームや玄関とされ、寝室やバスルームなどのプライベート空間は対象外と明記されています。費用は機器と1年間のサブスクリプション費用を含めて無償です。設置数は約60施設で、引き続き参加ホストを追加募集する予定だと書かれています。
| 発表に書かれている項目 | 記載のまま |
|---|---|
| 対象 | 京都市内でホスト不在型リスティングを運営するホスト |
| 実施期間 | 各施設 機器設置開始から1年間 |
| 設置場所 | リビングルームや玄関(寝室やバスルームなどのプライベート空間は対象外) |
| 設置数 | 約60施設(引き続き参加ホストを追加募集予定) |
| 費用 | 無償(機器および1年間のサブスクリプション費用含) |
| 通知の基準 | 目安として約75デシベルを超える音が10分以上続いた場合 |
両社が目的として挙げているのは、トラブルが起きる前に回避できる仕組みが実際に機能するかなどをデータで検証し、今後の運用ルールづくりに活用する知見の蓄積です。約1年間に集積されたデータをもとに、騒音の発生頻度とホストの対応時間を定量的に検証するとしています。発表は、そうした仕組みが実際にどこまで機能するのかを示すデータが国内にほとんど蓄積されていない、という前提も書いています。つまり効果が確かめられた仕組みとして配られているのではなく、確かめるために配られているということです。開発元のMinut社(スウェーデン)とAirbnbは2022年から協業しており、日本国内で検証を行うのは今回が初めてだと説明されています。
通知の基準は、約75デシベルが10分以上続いたとき
センサーは、目安として約75デシベルを超える音が10分以上続いた場合にホストへ通知する設定だと書かれています。一瞬の大きな音では通知せず、この水準の音が一定時間続いた場合にのみ通知するため、通常の滞在や会話で通知が届くことはない、という説明です。75デシベルという水準については、日常生活の音と比べると電車などの車内や航空機の機内にあたると書かれており、出典として東京都環境局と環境省の資料が挙げられています。
見落とせないのは、発表自身が付けている注記です。センサーが捉えるのはリビングルームや玄関といった音の出やすい空間の音量であり、近隣の方が受け止める音の大きさは距離や建物の遮音性によって変わる、と書かれています。そのうえで、近隣への影響につながりうる兆候を早い段階で捉えるためのものであり、許容される音量の基準を定めるものではないとしています。通知が来なかったことを、近隣に影響が無かった証拠として扱える性質のものではありません。
測るのは音量と時間で、音声も映像も記録しないとしています
ミニットは、カメラを使わず、音声や映像の記録も行わない騒音センサーだと説明されています。測るのは音量と継続時間で、これに接続デバイス数と、赤外線による在室状況の検知を加えて室内の状況を推定する、と書かれています。宿泊施設に機器を置くときに最初に問題になるのは、ゲストの私的な空間をどこまで覗くことになるのかという点です。設置場所をリビングルームや玄関に限り、寝室やバスルームを対象外としているのは、その線引きにあたります。
あわせて、Airbnbのポリシーにより、センサーを設置する場合はリスティングページでの情報の開示を行う、と発表に書かれています。Airbnbヘルプセンターの監視機器のルールでも、宿泊施設の屋内を監視する防犯・監視カメラや録画・録音機器は設置できないとされる一方、騒音モニターは寝室・バスルーム・就寝エリアを除いて認められ、設置していることを知らせることが求められています。黙って置く使い方は、プラットフォームのルールの側で想定されていません。仲介サイトにかかわらず、機器を置くなら宿泊者が予約の前に知ることができる状態にしておく、と考えておくほうが安全です。
法令の側では、説明と苦情対応が事業者の業務として示されています
住宅宿泊事業法に基づいて民泊を営む場合、騒音にかかわる業務は、この発表とは別にもともと定められています。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者の業務として、騒音の防止、ごみの処理、火災の防止など、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項を、書面の備付けその他の適切な方法により宿泊者へ説明することを挙げています。苦情への対応についても、適切かつ迅速に対応すること、深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応する必要があることが示されています。
この2つは、センサーを置いても無くなりません。通知は気づくための手段であって、宿泊者へ説明する業務でも、近隣からの問い合わせに応える業務でもないからです。むしろ、通知が届いたのに誰も動かない時間があれば、記録の上では気づいていたことになります。導入を考えるなら、機器の仕様より先に、深夜に通知が鳴ったとき誰の電話が鳴るのかを決めておく必要があります。住宅宿泊管理業者へ委託しているなら、その対応が委託の範囲に入っているかを契約で確かめます(民泊の運営代行・管理会社)。
京都市では、家主が不在のときに駐在の要件があります
実証の場所が京都市であることにも意味があります。京都市は、住宅宿泊事業について独自のルールを公表しています。家主が不在となる住宅は現地対応管理者の駐在が原則必要とされ、駐在する場所は、住宅、住宅が存する建築物の内部、または徒歩10分で到着できる場所(宿泊施設から道のりで、おおむね800m以内)と示されています。営業できる日数は年間180日まで、住居専用地域では原則として1月15日正午から3月16日正午までです。届出の前には近隣住民への事前説明が必要とされ、宿泊実績は2か月ごとに報告します。
| 京都市が公表しているルール | 記載 |
|---|---|
| 家主が不在となる住宅 | 現地対応管理者の駐在が原則必要 |
| 駐在する場所 | 住宅、住宅が存する建築物の内部又は徒歩10分で到着できる場所(宿泊施設から道のりで、おおむね800m以内) |
| 営業できる日数 | 年間180日まで |
| 住居専用地域 | 原則1月15日正午から3月16日正午まで |
| 近隣住民への事前説明 | 必要 |
| 宿泊実績の報告 | 2か月ごとに宿泊日数、宿泊者数等を報告 |
つまり京都市でホスト不在型を営む場合、通知が届いてから現地に着くまでの時間は、もともと制度の側で短く設計されています。センサーの通知は、その駆けつけを呼び出す合図として働きうる、という位置づけで読むのが素直です。逆にいえば、駐在の体制が無いまま通知だけを受け取っても、対応は完結しません。自分の物件が家主居住型と家主不在型のどちらにあたるかは、委託が必要かどうかも含めて先に確かめておきます(家主居住型と家主不在型)。
この発表で分からないこと
発表は実証実験の開始を知らせるもので、参加の手続きや結果の扱いについては書かれていない項目が残ります。埋めずに並べます。
| 知りたくなる項目 | 発表での扱い |
|---|---|
| 参加の申込み方法・窓口 | 記載がありません(追加募集予定とだけ書かれています) |
| 参加できるホストの条件 | 記載がありません |
| 無償提供が終わったあとの費用 | 記載がありません |
| 検証結果の公表時期・方法 | 時期の記載がありません(関係者と広く共有したいとしています) |
| 他地域での実施時期・地域名 | 記載がありません |
| 京都市の関与の有無 | 記載がありません |
| 通知を受けたあとの対応手順 | 記載がありません |
募集について書かれているのは、引き続き参加ホストを追加募集予定であること、今後は京都市内および他地域でも参加ホストを追加募集し、実証実験の規模を広げていく予定であることまでです。応募の窓口や条件、無償提供が終わったあとの費用、検証結果をいつどんな形で公表するのかは、いずれも書かれていません。京都市がこの実証実験に関与しているかどうかについても記載がないため、市の制度や手続きと結び付けて読むことはできません。
民泊の運営者が、いま確かめられること
1つめは、自分の物件で騒音に気づける手段が何かを書き出すことです。いまは近隣からの連絡だけ、という状態であれば、気づく時点が「影響が出たあと」に固定されています。機器を入れるかどうかは別として、気づき方を1つしか持っていないことは把握しておく価値があります。
2つめは、宿泊者への説明の中身です。騒音の防止のために配慮すべき事項は、その届出住宅と周辺の生活環境に応じた内容を説明することが求められています。汎用の文例では成り立たないため、自分の物件の構造と近隣の状況から書きます。説明の置き方は民泊のハウスルールとチェックインの案内に整理しています。
3つめは、通知を受けたあとの持ち場です。遠隔で運営している場合、現地で動ける人がいなければ、通知は記録にしかなりません。誰がどこまでを引き受けるのかを先に決めておく必要があります(民泊の遠隔運営)。
この記事は、mui LabとAirbnb Japanの発表、観光庁の民泊制度ポータルサイト、京都市の公表資料、Airbnbヘルプセンターに書かれている範囲を整理したものです。制度の当てはめについて最終的な判断が必要な場合は、住宅宿泊事業の届出先である都道府県知事等の窓口(京都市内であれば京都市の受付窓口)に確認してください。
このメディアの運営元について
myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。