予約の受け付けを別の予約システムへ移すとき、つまずくのは機能の不足ではありません。切替の継ぎ目で、法令が求める記録が途切れることです。届出をして営業しているあいだ、宿泊者名簿、人を宿泊させた日数、二ヶ月毎の定期報告、そして本人確認は休みません。道具は入れ替えられますが、この四つは引き継ぐしかありません。
先に結論を書きます。切替日は、二ヶ月毎の報告の区切りから決めます。報告の期限が毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までで、対象がそれぞれの月の前2月と決まっているため、月の途中で切り替えると、一回の報告を二つの仕組みから集め直すことになります。継ぎ目がいちばん少ないのは、報告の区切りと日数の起算が重なる4月1日の正午です。
この記事が扱うのは、切替の日取りと工程だけです。候補の絞り方は民泊の予約システム比較、費用がどこから出るかは民泊の無料予約システム、手元のカレンダーで回る範囲はGoogleカレンダーでの予約管理にあります。製品の選定と機能の評価は、ここでは扱いません。
確認できなかったことも先に書きます。予約システム各社の移行作業の内容、必要な期間、移行の費用を横断して集計した公的な資料は確認できませんでした。乗り換えの件数や所要日数の相場を示す統計も見つけられませんでした。そのためこの記事に、製品名も、作業日数の目安も、金額もありません。あるのは、法令と観光庁の公表資料で日付が決まっている部分から逆算した、日取りの決め方です。
替えられるのは受け付けの道具で、記録の義務は残る
観光庁の公表資料を読むと、届出をした住宅宿泊事業者に求められている出力は四つに整理できます。
一つめは宿泊者名簿です。記載するのは宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日で、宿泊者が国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号も記載します。外国人の宿泊者については旅券の呈示を求め、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとされています。保存は3年間で、備える場所は届出住宅、または住宅宿泊事業者の営業所・事務所のいずれかです。
二つめは人を宿泊させた日数です。年間提供日数の上限は180日とされ、1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午までと示されています。算定は届出住宅ごとに行います。
三つめが二ヶ月毎の定期報告、四つめが本人確認です。本人確認は宿泊行為の開始までに宿泊者それぞれについて行い、対面か、対面と同等の方法としてICTを活用する場合は、顔と旅券が画像で鮮明に確認でき、発信地が確認可能なものとされています。
四つはどれも、予約システムの契約とは関係なく続きます。切替の計画は、新しい仕組みで何ができるようになるかではなく、この四つが一日も途切れないかどうかで組み立てます。
二ヶ月毎の報告が、切替日を縛っている
観光庁は、住宅宿泊事業者が毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月における、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳を報告するとしています。報告は民泊制度運営システムにログインしたあと、直接入力するか、定期報告データ(CSVファイル)をアップロードして行います。
期限と対象期間を並べると、一年が二か月ずつの六つに割れていることが分かります。切替日を置ける自然な位置は、この割れ目です。
| 報告の期限 | 報告の対象になる期間 | 期間の始まる日(切替を置ける日) |
|---|---|---|
| 2月15日まで | 12月・1月 | 12月1日 |
| 4月15日まで | 2月・3月 | 2月1日 |
| 6月15日まで | 4月・5月 | 4月1日(日数の起算と重なる) |
| 8月15日まで | 6月・7月 | 6月1日 |
| 10月15日まで | 8月・9月 | 8月1日 |
| 12月15日まで | 10月・11月 | 10月1日 |
割れ目の外側、たとえば9月の途中で切り替えると、10月15日までに出す8月・9月分が二つの仕組みにまたがります。日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳という四項目を、それぞれ二か所から出して足すことになります。足し算そのものは難しくありませんが、宿泊者数と延べ宿泊者数は別の数で、数える単位も違います。二つの出力を人が合算する場面は、作らないほうが安全です。
継ぎ目が一つで済むのは4月1日の正午
日数の側にも区切りがあります。1年間が毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までと示されているため、4月1日の正午に、数え始めが戻ります。
そして4月1日は、報告の区切りでもあります。4月15日までに出すのは2月・3月分で、4月1日からは次の対象期間である4月・5月分が始まります。報告の区切りと日数の起算が重なるのは、一年のうちこの一点だけです。ここで切り替えると、旧い仕組みは2月・3月分の報告を出し終えて役目を終え、新しい仕組みは上限180日を丸ごと持った状態から始まります。引き継ぐ数字がありません。
4月1日を待てない場合の次善は、偶数月の1日です。報告は一つの仕組みで完結しますが、年を数える途中なので、その時点までの日数と宿泊者数を旧い側から引き継ぐ必要があります。引き継ぐ数字があることを忘れると、新しい仕組みの上に出る残り日数が、実際より多く見えます。日数の数え方そのものは民泊の180日にまとめてあります。
切替日を決める順番
三つの判断を順に当てます。順番を入れ替えると、提出済みの報告をやり直す場面が出ます。
判断1は、直近の15日の報告を出し終えているかどうかです。出し終えていない状態で受け付けの経路を変えると、対象期間の途中で記録の置き場所が変わります。先に提出を終えます。
判断2は、4月1日の正午が近いかどうかです。近いなら、そこに合わせます。待つあいだは、いまの方法のまま運営します。
判断3は、住宅宿泊管理業務を委託しているかどうかです。委託している場合、記録が動く経路に相手が入っています。契約の取り決めを直すまで、切替日は確定できません。
旧い仕組みから持ち出すもの
名簿の保存は3年間です。切替は、この保存期間を短くしません。旧い仕組みの契約を終えるときは、そこに残っている名簿と旅券の写しを、自分の手元で出せる形にしておくことになります。
書き出しで確かめるのは三つです。名簿の記載事項である氏名、住所、職業、宿泊日、そして国内に住所を有しない外国人の国籍と旅券番号が、そろって出るか。旅券の写しが、どの宿泊者のものか分かる形で一緒に出るか。そして出したものを、届出住宅または営業所・事務所で示せる状態にできるか。備える場所として示されているのはこの二つで、クラウド上に置いた記録が備付けを満たすかどうかは、所管の窓口に確認してください。この記事では判断しません。
報告の側は、民泊制度運営システムの定期報告データ(CSVファイル)に含まれる項目が公表されています。届出番号、報告対象期間、宿泊日数、宿泊者数、延べ人数、国籍、宿泊日です。この形で書き出せるかどうかが、乗り換えのときの実務的な分かれ目になります。名簿そのものの実務は民泊の宿泊者名簿、宿泊者の情報の持ち方は民泊の顧客管理にあります。
並行して動かす期間に、数が合わなくなる場所
二つの仕組みを同時に動かす期間を置くなら、ずれる地点を先に決めておきます。
ずれの元は、一日の区切りです。人を宿泊させた日数は、正午から翌日の正午までを一日として数えます。一方で、予約を並べる道具は、日付が変わる時刻を午前0時として扱うものが多くあります。正午をまたぐ一泊を、二つの仕組みがそれぞれ一日として数えると、同じ宿泊が二日になります。逆に、切替の当日を両方が「相手が数えている」と扱えば、一日が抜けます。
決めることは二つです。切替の瞬間を正午に置くこと。そして、切替日の宿泊を数えるのはどちらかを、作業の前に書き残すことです。定期報告は数字で出すため、あとから「どちらが数えたか」を思い出す形にはできません。
新しい仕組みが契約の代理・媒介をするなら、登録を先に確かめる
観光庁は、宿泊サービスの提供に係る契約の締結の代理や媒介を委託する場合、住宅宿泊事業法上の登録を受けた住宅宿泊仲介業者、または旅行業法上の登録を受けた旅行業者を利用しなければならないとしています。無登録の者へ委託した場合は業務改善命令等の対象となり、50万円以下の罰金(法第75条)等が科されることがあるとされています。
予約システムの中には、自分の代わりに申込みを受けて契約まで進める作りのものがあります。切替先がその役割を担うなら、登録の有無が機能の比較より前に来ます。自分の判断で予約を受け、契約は自分が結ぶ形であれば、この委託の話には入りません。どちらに当たるか判断が付かない場合は、所管の窓口に確認してください。
委託しているなら、管理受託契約の情報提供を直す
観光庁は、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約において、定期的な情報提供について取り決めを行うよう求めています。予約システムを替えると、この情報提供が通る経路が変わります。
直すのは二つです。報告に使う数字を、どの形でいつ受け取るか。そして、名簿に記載するのはどちらか。経路を変えたあとに取り決めを直すと、変えてからの期間の記録が、どちらの手元にもそろっていない状態になりえます。委託の範囲そのものは民泊の運営代行で扱っています。
記録を預け替える作業そのものが、個人データの取扱い
名簿には氏名、住所、職業、旅券番号が入ります。切替の作業は、この記録を書き出し、運び、別の場所へ入れる作業です。手元に控えのファイルが増える、いちばん危ない期間です。
個人情報保護法第23条は、取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならないとしています。第25条は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合に、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないとしています。予約システムに名簿を置くことは、この委託に当たりえます。
漏えい等が起きたときの報告には期限があります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、速報は報告対象事態を知った後速やかに提出するものとされ、概ね3〜5日以内が目安とされています。確報は当該事態を知った日から30日以内で、規則第7条第3号の事態においては60日以内です。切替の作業中に起きた場合も、この期限は変わりません。作業に入る前に、誰が気づく役で、誰が出す役かを決めておきます。
切替のあとに残る手作業を、先に決めておく
新しい仕組みに載せても、人の手が残る工程があります。名簿の記載を確定させる判断、本人確認の結果を残すこと、二ヶ月毎の報告の送信、そして残り日数の見張りです。
残る工程を先に書き出しておかないと、切替の直後に抜けます。切替は、道具が変わる日ではなく、誰が何をするかが変わる日です。本人確認の進め方は民泊の本人確認、人の手を減らせる範囲の見極めは民泊の業務効率化にまとめてあります。
最後に、この記事で日付として確かめたものをもう一度並べます。報告の期限は毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までで、対象はそれぞれの月の前2月。日数を数える1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日は正午から翌日の正午まで。名簿の保存は3年間。切替日は、この三つの日付の外側には置けません。
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