無料の予約システムを探しているとき、知りたいのはたいてい「無料のままどこまで使えるのか」という境目です。先に答えを書くと、その境目は製品の側ではなく自分の側にあります。年間に受ける予約の件数、届出住宅の数、予約を受け付ける窓口の数、国内に住所のない宿泊者をどれだけ受けるか。この四つが小さいうちは無料のまま回り、どれかが増えた時点で費用が出ます。同じ製品でも、規模が違えば答えが変わります。
料金を取らないプランが成り立つのは、受け取るものを別の形に替えているからです。替わりに出ていくのは、予約1件ごとの手数料、宿泊代金を受け取るための決済の費用、仕組みが受け持たない作業を自分で埋める時間、そして記録を持ち出せないことによる乗り換えの手間です。金額が0円であることと、費用が0であることは別です。
先に、確認できなかったことを書きます。各社の無料プランの範囲や料金を横断して集計した公的な資料は確認できませんでした。仲介手数料や決済手数料の相場を示す公的な統計も見つけられませんでした。そのためこの記事に、製品名の入った比較表も、料率も、順位もありません。書いてあるのは、法令と観光庁の公表資料で裏が取れる条件と、自分の数字を当てはめて判定する手順です。候補を機能で絞る段の確認項目は民泊の予約システム比較に分けてあるので、この記事では費用の出どころだけを扱います。
無料の対価は、お金・自分の時間・乗り換えの自由の三つ
無料という言葉が指しているのは、支払いが無いことではなく、支払う通貨が違うことです。通貨は三つあります。お金、自分の時間、乗り換えの自由です。
お金で払う形は、いちばん分かりやすく、料金ページに書いてあります。予約1件ごとの手数料、決済のための費用、無料の上限を超えたぶんの追加料金。金額や率が公表されていれば、自分の件数を掛けるだけで年間の額が出ます。見落としが起きるとしたら、率が掛かる金額の範囲くらいです。
自分の時間で払う形は、料金ページに出てきません。住宅宿泊事業の届出をしている限り、宿泊者名簿の記載、人を宿泊させた日数の集計、二ヶ月毎の定期報告は、どの仕組みを使っても消えません。無料のプランがそこを受け持たないなら、差を埋めるのは自分の手です。この支払いは、予約が1件増えるたびに少しずつ増えます。しかも、増えていることが請求書に出てきません。
乗り換えの自由で払う形は、使い始めてしばらく気づきません。名簿は作成の日から三年間保存します。記録を書き出せない仕組みに入れてしまうと、やめたあとも記録を取り出すために契約を続けるか、別の場所へ写し直すことになります。無料で始めた選択が、あとから選び直しにくさとして返ってきます。
三つは同時に効きません。順番があります。予約が少ないうちは、どの通貨でもほとんど支払いが発生しないため、無料のプランで何も困りません。困り始めるのは、件数か窓口の数が増えて二つ目が重くなったときです。そこで有料へ移ろうとして、三つ目にぶつかります。だから最初に確かめるのは料金ではなく、やめられるかどうかです。
「掲載無料」のサイトは、費用より先に委託先として使えるかが決まっている
無料で予約を集める手段として先に挙がるのは、掲載そのものに料金がかからない仲介サイトです。掲載料という意味では確かに無料ですが、その前に確かめることがあります。観光庁は、住宅宿泊事業者が民泊サービスの仲介を他人に委託する場合、住宅宿泊事業法上の登録を受けた住宅宿泊仲介業者、または旅行業法上の登録を受けた旅行業者を利用しなければならないとしています(法第12条)。
同じページは、住宅宿泊仲介業者でも旅行業者でもない相手に仲介を委託した場合、住宅宿泊事業法違反として業務改善命令等の対象になるとともに、50万円以下の罰金(法第75条)等が科されることがあるとしています。無登録の業者に仲介を委託した場合は、トラブル等があった際に十分な対応ができない可能性があるという注意も添えられています。掲載料が無料かどうかより先に、委託できる相手かどうかが決まっているということです。
確かめる場所も公表されています。観光庁は住宅宿泊仲介業者のリストと、民泊を取り扱う旅行業者のリストを同じページに掲載しています。それぞれ時点が付いていて、確認した時点では仲介業者のリストが令和8年6月22日時点、旅行業者のリストが令和7年3月末時点でした。登録は入れ替わるため、掲載を決めるときに自分でその時点を見ます。
一方で、仲介を使わない道も明示されています。観光庁のよくあるご質問は、仲介業者を通さずに事業者が自ら予約を受け付けてもよいかという問いに「可能です」と答えています。自社サイトでの受付は、仲介を他人に委託していないため委託先の制限が働きません。そのかわり、受けてよい申込みかどうかの判定を自分の画面で持つことになります。何を受け付けないかの決め方は民泊の予約フォームの作り方にまとめました。
| 予約を受ける経路 | 住宅宿泊事業法上の扱い | 費用の出方 | 確認する先 |
|---|---|---|---|
| 自社サイトで自ら受け付ける | 仲介を他人に委託していないため、委託先の制限は働かない。自ら受け付けることは可能 | 予約1件ごとの仲介手数料は出ない。決済とサイトを保つ費用が残る | 観光庁のよくあるご質問。受付条件は自分で決める |
| 登録を受けた住宅宿泊仲介業者に載せる | 法第12条が認める委託先 | 掲載が無料でも、予約が成立した時点で手数料が出るかを公表値で確かめる | 観光庁の住宅宿泊仲介業者のリスト |
| 登録を受けた旅行業者に載せる | 法第12条が認める委託先(旅行業法上の登録) | 同じく、掲載の有無と成立時の手数料を分けて確かめる | 観光庁の民泊を取り扱う旅行業者のリスト |
| どちらの登録も確認できないサイトに載せる | 委託すると法違反。業務改善命令等と50万円以下の罰金(法第75条)等の対象になりうる | 掲載が無料でも、費用の比較に入れない | 二つのリストに載っているかどうか |
表のうち、金額の意味での無料がいちばん近いのは自社サイトでの受付です。ただしそこで消えるのは手数料だけで、集客と受付の判定が自分に残ります。仲介サイトの料率がどこまで公表されているかは民泊のOTA比較、掲載の前に確定させる情報は民泊のOTA掲載方法、両方を併用するときの考え方はOTAと自社予約の併用にあります。
無料のプランで先に尽きるのは、お金ではなく自分の時間
予約が1件入ると、そこから四つの工程が動きます。名簿への記載、日数の集計、二ヶ月毎の報告、記録の保存です。観光庁は、宿泊者名簿の記載項目を宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日とし、国内に住所のない外国人の場合は国籍及び旅券番号を含むとしています。保存期間は三年間です。定期報告については、二ヶ月毎に宿泊日数等を報告する必要があるとし、報告のデータに届出番号、報告対象期間、宿泊日数、宿泊者数、延べ人数、国籍が並ぶことを示しています。
日数の数え方は、予約の受け方を変えます。観光庁は年間提供日数の上限を180日としたうえで、1年間を毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日を正午から翌日の正午までと示しています。区切りが正午にあるため、カレンダー上の泊数を足し上げても枠の残りは出ません。数え方そのものは民泊の180日ルールにあります。
ここで知っておいたほうがよいのは、公式に配られているものがあることです。観光庁は、民泊制度運営システムで電子宿泊者名簿(住宅宿泊事業者向けのソフトウェア)の配布を行っていると説明しています。この配布にかかる料金については、同じページに記載がありません。記載が無いことを「無料である」と書き換えることはしませんが、少なくとも名簿と報告のために別の製品を買う前に、公式の経路があることは確かめられます。
そうすると、無料の予約システムに名簿の機能を求めるかどうかは、質の問題ではなく口の数の問題になります。予約を受ける画面と名簿を書く画面が別なら、転記が1件ごとに発生します。同じ画面なら転記が消えます。無料のプランを選ぶときに数えるのは、機能の個数ではなく、自分が開く画面の数です。名簿そのものの運用は民泊の宿泊者名簿、どこまで仕組みに載せられるかは民泊の業務効率化で扱っています。
費用が出る引き金は四つ。料金ページで見る場所も四つ
無料から有料へ切り替わる地点は、製品ごとに文言が違っても、引き金の種類は限られています。予約1件ごとの手数料、無料の上限の超過、決済、連携と移行の四つです。この四つは増え方が違うため、年間の負担の読み方も変わります。
四つのうち、判断を迷わせるのは一つ目と二つ目の組み合わせです。月額の固定費を払う形と、予約1件ごとに払う形のどちらが軽いかは、月額を1件あたりの手数料で割った件数で分かれます。その件数より自分の年間件数が少なければ1件ごとの形が軽く、多ければ固定費の形が軽くなります。式に入れるのは相場ではなく、自分が実際に受けている件数と、その会社が公表している金額です。どちらも分からないまま「安いほう」を選ぶことはできません。
決済は、予約システムの料金とは別の事業者の料金として出ることがあります。現地での受け取りや銀行振込だけにすればカード決済の手数料は出ませんが、代金を受け取れなかった場合の扱いを自分で決めることになります。解除と返金の条件の決め方は民泊のキャンセルポリシーの決め方にまとめました。仲介サイト経由で受け取る手数料の消費税の扱いはOTA手数料と消費税で扱っています。
自分の規模を四つの数で先に出す
ここまでを使って判定します。見るのは製品の仕様ではなく、自分の四つの数です。どれも、今日の時点で数えられます。
| 数えるもの | 無料のプランで当たりやすい上限 | 当たったときに出てくる費用 |
|---|---|---|
| 届出住宅の数 | 無料で登録できる物件の数 | 物件を増やすための追加料金。届出番号ごとに日数を分けて数える必要も出る |
| 年間に受ける予約の件数 | 月あたりや年あたりの予約件数の上限 | 1件ごとの手数料、または上限を超えた段階での追加料金 |
| 予約を受ける窓口の数 | 連携できる外部サイトの数 | 窓口ごとの転記作業。または連携のための有料プラン |
| 国内に住所のない宿泊者の割合 | 国籍と旅券番号を受け取る欄の有無 | 到着時に書いてもらう段取りと、報告前の集計のやり直し |
四つのうち、最初に当たりやすいのは届出住宅の数です。1件のうちは無料で足りることが多く、2件目の届出を出した時点で、物件の上限と日数の数え方の両方が効いてきます。数える単位の分かれ方は民泊の複数物件管理にあります。
逆に、いちばん後から効いてくるのが国籍と旅券番号です。報告は二ヶ月毎なので、欄が無いことに気づくのは報告を作る段階になります。そこで遡って集めることになると、作業は件数ぶん積み上がります。欄が無い仕組みを選ぶなら、受け取る段取りを先に決めておくほうが安く済みます。
やめるときに、もう一度費用が出る
無料のプランでいちばん軽く見られているのは、出口です。名簿は作成の日から三年間保存します。保存の義務は、使っていた仕組みをやめても残ります。つまり契約を終えるときに、記録を自分の側へ持ち出せるかどうかが条件になります。
書き出せる形で持ち出せるなら、やめるときの費用は作業一回ぶんで終わります。書き出せないなら、記録を見るためだけに契約を続けるか、画面を見ながら写し直すことになります。どちらも費用です。無料で始める判断そのものは悪くありませんが、始める前に出口を見ておかないと、やめる自由が有料になります。預けた個人データの扱いと消去までの順序は民泊の顧客管理で整理しています。
委託している場合は、出口の持ち主も変わります。住宅宿泊管理業者が自前の仕組みを使っているなら、自分が選べるのは製品ではなく受け取れるものの範囲です。契約前に確かめる項目は民泊の運営代行にまとめました。
確認できなかったこと
各社の無料プランの範囲と、無料から有料へ切り替わる条件を横断して集計した公的な資料は、この確認では見つけられませんでした。そのため「無料で使える上限は一般にどのくらいか」という書き方はしていません。上限の数値は、各社の公表しているプランの説明で確かめてください。
仲介手数料と決済手数料の相場も持っていません。公的な統計を確認できないため、料率の目安は書きません。公表している会社の数値をそのまま転記し、公表していない会社は空欄のまま残すのが、この媒体の扱いです。
無料のプランと有料のプランで稼働率や売上が変わるという裏づけも、確認できませんでした。費用の話と、予約が入るかどうかの話は別の軸として扱っています。
無料で始めるなら、この順序で決める
最後に、決める順番だけ残します。上から順に見ると、途中で候補が落ちたときに理由が残ります。
- 予約を受ける経路を決める。仲介を使うなら、観光庁の二つのリストでその相手を確かめる
- 出口を確かめる。名簿と予約の記録を書き出せるか。書き出せないものは、無料でも候補から外す
- 自分の四つの数を書き出す。届出住宅の数、年間の予約件数、窓口の数、国内に住所のない宿泊者の割合
- その数を、無料プランの上限と突き合わせる。超える項目があれば、超えた時点で出る金額を公表値から出す
- 月額の形と1件ごとの形を、月額を1件あたりの手数料で割った件数で比べる
- 残った候補を、名簿と報告の出力で絞る。ここから先は機能の比較になる
この順序だと、無料かどうかは最後まで判断材料のひとつにとどまります。先に料金を見てしまうと、出口と自分の規模を見ないまま決めることになります。自社サイトで受けるという選択そのものを検討するなら自社予約とはから読むほうが早いかもしれません。
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