予約システムを比べようとすると、機能名を縦に並べた表に行き当たります。カレンダーの同期、自動返信、鍵の連携、料金の自動変更。どれも多くの製品に付いていて、横に並べても丸が並ぶだけです。差が出ないのは、比べる列が売り手の側の言葉で作られているからです。
先に決まっているのは、製品の機能ではなく自分が出すものです。住宅宿泊事業法の届出をして営業している限り、宿泊者名簿、二月ごとの定期報告、人を宿泊させた日数の管理は、どの製品を選んでも消えません。この三つをその形のまま出せるかで候補を絞ると、機能一覧では並ばなかった差が出ます。
先に、確認できなかったことを書きます。各社の料金や対応状況を横断して集計した公的な資料も、第三者が検証した比較表も確認できませんでした。そのためこの記事には、製品名の入った比較表も順位もありません。あるのは、法令と観光庁の公表資料から引いた確認項目と、自分で同じ条件を当てはめて埋められる照合表の型です。
比べる対象は、製品ではなく自分が出す書類
比較表の列を機能名で作ると、評価が売り手の説明の順番に引きずられます。順番を入れ替えるには、列を自分の側の事情で作り直すしかありません。届出をした住宅宿泊事業者に課されているものは、製品を替えても変わらないので、比較の軸として安定しています。
出すものは三つあります。宿泊のたびに記録する宿泊者名簿、二月ごとに都道府県知事へ出す定期報告、そして年間で数え続ける人を宿泊させた日数です。どれも提出の形式と項目が決まっているため、「できます」という答えでは足りません。その項目のまま出るかどうかが確認の対象になります。
機能で比べるのをやめるわけではありません。順番の問題です。出力で絞ったあとに残った候補の中でなら、鍵の連携や自動返信の差は意味を持ちます。逆にすると、名簿の欄が足りない製品を機能の多さで選んでしまいます。
基準線は、公式に配られている電子宿泊者名簿
比較を始める前に、無料で配られている仕組みを基準線に置きます。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、民泊制度運営システムで配布される電子宿泊者名簿について、住宅宿泊事業法で定められた宿泊者名簿と、二か月ごとに報告が必要となる宿泊実績定期報告データを作成することができると説明しています。複数の届出住宅を管理する場合でも、届出番号ごとに個別管理が可能とされています。
つまり、名簿と報告だけが目的なら、ここで完結します。有料の予約システムを検討するときに問うべきことは「名簿を作れるか」ではなく、この基準線に何を足すのかです。足されるのは、予約を受ける窓口、空室と料金の同期、連絡の自動化、鍵の受け渡しといった部分で、名簿と報告はその副産物として出てくる形になります。
基準線を置くと、判断が楽になります。有料の製品が名簿と報告でつまずくなら、その製品は基準線より下です。公式の仕組みで足りている部分を、わざわざ劣る形に置き換えることになります。
名簿と報告は、項目の形で出せるかを見る
項目は条文で決まっています。住宅宿泊事業法施行規則第七条は、名簿の記載事項を「宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日のほか、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号」としています。あわせて、作成の日から三年間保存すること、備え付ける場所を届出住宅か住宅宿泊事業者の営業所または事務所のいずれかとすることも定めています。
定期報告の中身は同じ規則の第十二条です。報告する事項は、届出住宅に人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳の四つ。観光庁は提出の期限を、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までと示しています。提出は民泊制度運営システムへログインしたうえで、直接入力するか定期報告データのCSVファイルをアップロードする形です。
| 出すもの | 決まっている中身 | 予約システムで確かめること |
|---|---|---|
| 宿泊者名簿 | 氏名、住所、職業及び宿泊日。日本国内に住所を有しない外国人は国籍及び旅券番号(施行規則第七条) | 六つの欄をそのまま持っているか。足りない欄を備考で代用していないか |
| 名簿の保存と備付け | 作成の日から三年間保存。備付けは届出住宅か営業所または事務所 | 契約を終えたあとに三年ぶんを取り出せるか。紙面へ明確に表示できるか |
| 定期報告の報告事項 | 人を宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳(施行規則第十二条) | 四項目をそのまま出せるか。宿泊者数と延べ宿泊者数を別に数えているか |
| 報告の期限 | 毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、前二月ぶんを報告 | 期限の前に期間を指定して締められるか |
| 報告の提出 | 民泊制度運営システムへ直接入力、またはCSVのアップロード | 届出番号、報告対象期間、宿泊日数、宿泊者数、延べ人数、国籍別宿泊者数、宿泊日が揃った形で書き出せるか |
この表で最初につまずきやすいのは国籍です。名簿の記載を求められているのは日本国内に住所を有しない外国人の国籍と旅券番号ですが、報告のほうは国籍別の宿泊者数の内訳を出します。予約の段階で国籍を受け取っていない仕組みだと、二月後の報告を作る時点でさかのぼって集めることになります。名簿そのものの運用は民泊の宿泊者名簿、報告した値が全国の統計としてどう公表されるかは民泊の宿泊者数にまとめています。
もうひとつ、宿泊者数と延べ宿泊者数は別の数です。同じ画面に出ているように見えても、片方しか持っていない仕組みなら、報告のときに手で計算し直すことになります。四項目のうちいくつが自動で出るかを、照合表の欄として数えておくと差が見えます。到着時の確認の手順は民泊の本人確認で扱っています。
日数は、正午から正午で数えられるか
観光庁は、住宅宿泊事業の年間提供日数の上限を180日としたうえで、1年間を毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日を正午から翌日の正午までと示しています。区切りが正午にあるため、暦日で足し上げると日数が合いません。暦の上では三日にまたがる滞在が、法の数え方では二日になることがあります。
確認するのは三点です。集計の単位が正午起算になっているか、年の区切りが4月1日正午になっているか、そして届出住宅ごとに分けて数えているか。三つ目は物件が一つのうちは差が出ませんが、二つ目の届出をした時点で効いてきます。合計だけを表示する仕組みだと、どちらの住宅が上限に近いのか分かりません。数え方そのものは民泊の180日ルール、複数物件での数える単位は民泊の複数物件管理で扱っています。
残り日数の表示も確認しておきます。上限に近づいたときに予約を止める判断は、残りがいくつかを知ってからでないとできません。表示が無い仕組みでは、別の表を自分で持つことになります。その手間は、導入後ずっと続きます。
名簿を記載するのが自分ではない場合
ここまでは、自分が入力する前提で書いてきました。委託している場合は前提が変わります。観光庁は、法第11条第1項に基づき住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する場合には、宿泊者名簿の記載等を住宅宿泊管理業者が行うとしています。家主不在型であれば委託が義務づけられるため、入力する人が自分ではなくなります。
委託しているときに見る項目は、自分で入力するときと別です。管理業者が自前の仕組みを使っているなら、自分が選べるのは製品ではなく受け取れるものの範囲になります。名簿の中身を自分でも見られるか、報告データを自分の手元へ取り出せるか、委託を終えるときに引き継げるか。三つのうち二つが「できない」なら、契約書の側で手当てすることになります。型の分かれ方は民泊の家主居住型と家主不在型、委託先との契約で確かめることは民泊の運営代行にまとめています。
預けたデータがどこに置かれるかを確認する
予約システムに名簿を入れるということは、宿泊者の個人データを外部の仕組みに預けるということです。個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、3-4-2で安全管理措置(法第23条)、3-4-4で委託先の監督(法第25条)、3-5で個人データの漏えい等の報告等(法第26条)を扱っています。預けたあとも、監督する側の立場は自分に残ります。
保存先が外国にある場合は、確認することが増えます。委員会の「ガイドライン(外国にある第三者への提供編)」は、法第28条第1項が外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を原則として求めていることを示しています。同意を得る場合に本人へ提供する情報として規則第17条第2項が挙げているのは、当該外国の名称、当該外国の個人情報の保護に関する制度に関する情報、当該第三者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報の三つです。相当措置を講ずる体制を整備した第三者への提供にあたる場合は、規則第18条第1項により、年に1回程度またはそれ以上の頻度で実施状況を確認することが求められます。
比較の列としては、保存先の国を公表しているかが最初の分かれ目になります。公表していれば転記するだけで済み、公表していなければ契約前に文書で確認することになります。どちらも照合表には入りますが、後者は確認の手間と、確認できなかった場合の扱いを決めておく必要があります。記載を確認できなかった項目を、推測で埋めてはいけません。
公表されていない項目は、空欄のまま残す
ここが比較表でいちばん崩れやすい場所です。料金が「要問い合わせ」の製品を、他社の水準から推定して埋めると、その一行だけが出典を持たない数字になります。当サイトでは、公式ページの表記をそのまま転記し、確認できなかった項目は「-」として残します。空欄が多い表は見栄えがしませんが、どこが不明なのかが読者にも自分にも残ります。
照合表は次の形にします。製品名を行、確認項目を列に置き、最後に自分が見た日を入れます。
| 照合表の列 | 入れるもの | どこで確認するか |
|---|---|---|
| 名簿の六項目 | 欄として持っている項目名。足りない項目はその名前を書く | 公式の機能ページ、または問い合わせの回答 |
| 名簿の保存と出力 | 取り出せる期間と、紙面へ出せる形式 | 公式の機能ページ、利用規約 |
| 報告データの出力 | 直接入力用かCSVか。出せない場合は「-」 | 公式の機能ページ |
| 日数の集計単位 | 正午起算か暦日か。記載がなければ「-」 | 公式の機能ページ、ヘルプ |
| 届出住宅ごとの分離 | 番号ごとに分けられるか、合計だけか | 公式の機能ページ |
| 保存先の国 | 公表されている国名。記載がなければ「-」 | 公式のセキュリティ・規約ページ |
| 料金 | 公式ページの表記そのまま。要問い合わせなら「-」 | 公式の料金ページ |
| 確認日 | 自分がそのページを見た日 | - |
この表に点数は付けません。編集部が付けた点数や星で並べた順位は、読者が同じ結果を再現できないからです。当サイトが順位を出すのは、並べ替えの基準が一つの公表値で、その値に出典と確認日があり、基準と単位を同じ場所に書ける場合だけです。予約システムの機能と料金は、現時点でその条件を満たすだけの公表値を確認できませんでした。だから順位はありません。
代わりに使えるのは、「-」の数です。同じ項目を同じ順で当てて、空欄が少ない製品が、少なくとも自分で検証できる範囲が広い製品だということになります。これは評価ではなく、確認できた量の記録です。OTA側の料率を同じ考え方で並べたものは民泊のOTA比較にあります。
確認の順序
着手の順に並べ直します。上から順に落ちた候補は、下の項目を見る必要がありません。
- 自分の型を確定する。家主居住型か家主不在型か、委託しているかどうか。入力する人が決まります
- 名簿の六項目が欄として揃っているかを見る。揃っていなければ、ここで落とします
- 定期報告の四項目と、民泊制度運営システムへ入れる形で書き出せるかを見る
- 日数の集計単位が正午起算か、届出住宅ごとに分かれているかを見る
- 保存先の国と、公表されている料金を転記する。確認できない項目は「-」のまま残す
この順序の利点は、落ちる理由がそのまま記録になることです。あとで別の製品を検討するときにも、同じ列を当てるだけで比べられます。機能一覧を見比べて感触で決めた場合は、次に見直すときに最初からやり直すことになります。
残った候補が複数あるなら、そこから先は運営の形で選びます。業務のどこを仕組みに載せ、どこを人が残すかという切り分けは民泊の業務効率化、自社サイトで予約を受けるときに揃える入力項目は民泊の予約フォームの項目、解除の条件の決め方は民泊のキャンセルポリシーの決め方で扱っています。
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