民泊の予約状況をGoogleカレンダーで管理したい、という発想は自然です。追加の費用がかからず、手元のスマートフォンに入っていて、清掃を頼む相手とも共有できます。先に答えを書くと、Googleカレンダーが担えるのは「どの日が空いていて、誰がいつ動くのか」を見せる仕事までです。申込みを受け付ける仕事と、宿泊者名簿や定期報告のように残さなければならない記録は、カレンダーの外に置いたまま使うことになります。
境目を決めているのは二つです。ひとつは道具の仕様です。別の場所にある予約表を取り込む方法は「読み込み」と「URLで追加」に分かれ、どちらを選んでも自分のカレンダーから相手の予約表を書き換えることはできません。もうひとつは制度の数え方です。人を宿泊させた日数は正午で区切って数えるのに対し、カレンダーの終日イベントは真夜中で区切られます。見た目と算定が半日ずれます。
先に、確認できなかったことを書きます。仲介サイトが配っているカレンダーの更新間隔を、横断して示した公的な資料は見つけられませんでした。無料で使える予約管理ツールの機能範囲を集計した公的な統計も確認できていません。そのためこの記事に、同期が何分で終わるという数字も、製品名の入った比較表もありません。書いてあるのは、Googleのヘルプと観光庁の公表資料で裏が取れる仕様と要件、そこから決まる使い方の線引きだけです。受け皿そのものを選び直す段の確認項目は民泊の予約システム比較、自社サイトで申込みを受けるときの受付条件は民泊の予約フォームの作り方にあります。
カレンダーが担えるのは、空室と作業を見る層だけ
予約管理という言葉は、実際には三つの別の仕事をまとめて指しています。申込みを受けて空室を確定する仕事、空いている日と担当者の動きを見せる仕事、そして記録を残して報告する仕事です。この三つは、必要な道具が違います。
ひとつ目は、受け付けてよい申込みかどうかを判定し、受けた時点で在庫を減らす仕事です。Googleカレンダーには、年間の日数枠や定員を超える申込みを弾く仕組みも、受付と同時に空室を閉じる仕組みもありません。ここは予約フォームか、住宅宿泊仲介業者・旅行業者の画面が受け持ちます。
ふたつ目が、カレンダーの本来の持ち場です。どの日が埋まっているか、誰がいつ清掃に入るか、鍵の受け渡しが何時かを、関係者それぞれの画面に出せます。ここだけは、ほかの道具より速く始められます。
三つ目は、宿泊者名簿を作って保存し、二ヶ月毎に報告する仕事です。これは保存期間と備付けの要件がある記録で、予定表の自由記述欄とは性質が違います。
この切り分けができていれば、カレンダーを使うかどうかは小さな決定になります。危ないのは、真ん中の層だけを担う道具に、上と下の仕事まで担わせてしまうことです。空室の板に申込みの受け付けを兼ねさせると二重予約が起き、記録まで兼ねさせると個人情報が共有相手の画面に残ります。
取り込み方は三つで、そのあとの更新の向きが変わる
仲介サイトや別の予約表にある予約を、Googleカレンダーへ持ってくる方法は三つです。どれを選ぶかで、最初の1回だけ合うのか、あとから入った予約も追えるのかが変わります。
ひとつ目は、ICSファイルの読み込みです。Googleのヘルプは、パソコン上のICSファイルとCSVファイルを使って予定を読み込めると案内したうえで、読み込んだ予定は2つのアカウント間で同期されるわけではないと明記しています。つまり、読み込んだ時点の写しが置かれるだけで、相手側に新しい予約が入っても、こちらは変わりません。あわせて、予定を読み込んでもゲストと会議のデータは読み込まれないとも書かれています。
ふたつ目は、公開されているカレンダーのURLを登録して購読する方法です。ヘルプは、リンクを使ってカレンダーを追加できるのは相手のカレンダーが一般公開されている場合に限られると説明しており、追加したカレンダーは画面左の「他のカレンダー」に並びます。相手が更新すれば反映される経路ですが、こちらから相手の予約表へ書き戻すことはできません。
三つ目は、人が手で写す方法です。公開も購読も要らず、どの項目を写すかも自分で決められます。そのぶん、写し忘れがそのまま空室の穴になります。
三つに共通するのは、Googleカレンダー側が常に下流にいることです。下流にいる板は、上流で入った予約を止められません。二重予約を防ぐ力は、カレンダーではなく「申込みを受ける窓口をいくつ持つか」で決まります。窓口が二つ以上あるなら、どちらが正かを決め、もう一方には在庫を渡さない形にするしかありません。カレンダーにできるのは、人が見て気づく速さを上げることまでです。
共有の権限は五段階。何が見えるかを先に決める
カレンダーを人に見せるときは、権限の段階を選びます。ヘルプに並んでいる区分と、相手にできることは次のとおりです。予定の詳細欄に書いた内容がどこから見えるのかも、この段階で決まります。
| ヘルプの表記 | 共有相手にできること | 予定の詳細欄の扱い |
|---|---|---|
| 予定の表示(時間枠のみ、詳細は非表示) | カレンダーで予定がある時間枠のみを確認できる | 見えない |
| 予定の詳細の表示 | 予定の名称、日時、場所、説明などすべての詳細を確認できる | 見える |
| 変更可能(限定公開の予定を、予定の有無としてのみ表示) | 非公開ではない予定を編集できる。非公開の予定は編集できない | 非公開以外は見える |
| 予定の詳細を変更、表示可能 | 予定を編集し、その予定を共有している他のユーザーを確認できる | 見える |
| 予定の変更および共有の管理 | 開始時間と終了時間が設定された予定やタスクを完全に管理し、カレンダーを他のユーザーと共有できる | 見える。共有相手も増やせる |
実務で効いてくるのは、いちばん上といちばん下の差です。清掃に入る人へ渡したいのは「その日に作業があるかどうか」だけであることが多く、時間枠だけを見せる段階で足ります。逆に、ひとつでも上から二番目以上を渡すと、予定の説明欄に書いた文字がそのまま相手の画面に出ます。権限を広げてから中身を書き足すのではなく、書かない項目を決めてから権限を割り当てます。
いちばん下の段階は、共有の相手をさらに増やせる権限です。運営代行や清掃業者に渡す場合、こちらの知らないところで共有の範囲が広がりうるという意味になります。誰に渡すかを記録に残しておくと、あとで範囲を戻せます。
正午で区切る数え方と、終日イベントの見た目はずれる
ここからは制度側の話です。観光庁は住宅宿泊事業を、宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が180日を超えないものと説明しています。そのうえで、数え方を1日=正午から翌日の正午まで、1年間=毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までと示しています。
Googleカレンダーの終日イベントは、暦の日に合わせて真夜中で区切られます。したがって、2泊の予約を終日イベントで2マス分置いたとき、マスの境目と算定上の境目は同じ場所にありません。マスを数えても、報告する日数にはなりません。
ずれが実害になるのは、枠の残りが少なくなった時期です。チェックインが午後、チェックアウトが午前という普通の滞在でも、正午の区切りをまたぐかどうかで数え方が変わります。カレンダーを集計の台にするのではなく、別の場所で正午基準の集計を持ち、カレンダーは見るための板として割り切るほうが安全です。日数の数え方そのものは民泊の180日規制で扱っています。
宿泊者名簿を、予定の詳細欄に書かない
予定の説明欄は自由に書けるので、宿泊者の名前や連絡先をそこへ書きたくなります。ここは止めたほうがよい場所です。理由は二つあります。
ひとつは、求められている形が違うことです。観光庁は、宿泊者名簿の記載事項を宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日とし、宿泊者が国内に住所を有しない外国人であるときはその国籍及び旅券番号を加えるとしています。名簿は届出住宅、または住宅宿泊事業者の営業所もしくは事務所に備え、3年間保存します。宿泊者全員を記載する必要があり、代表者のみの記載は認められません。電子データで作る場合も、紙で出力可能な状態にする必要があるとされています。カレンダーの予定は、この備付け・保存・出力の形で管理するようにはできていません。
もうひとつは、前の節で見た権限です。詳細まで見せる段階で共有すれば、名簿の項目はそのまま相手の画面に出ます。清掃の担当へ日程を渡すだけのつもりで、氏名と連絡先まで渡すことになります。
外国人の宿泊者については、旅券の呈示を求めたうえで、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することとされています。写しの保存によって、名簿の氏名・国籍・旅券番号の欄への記載を代替することもできると案内されています。写しを保存する運用にするのであれば、保存先はカレンダーではなく、名簿と同じ場所になります。記載の実務は民泊の宿泊者名簿、宿泊者の情報をどこへ集めるかという整理は民泊の顧客管理にあります。
定期報告の数字は、カレンダーの予定からは出てこない
住宅宿泊事業者は、二ヶ月毎に宿泊日数等を都道府県知事等へ報告します。観光庁は報告事項を、届出住宅に人を宿泊させた日数・宿泊者数・延べ宿泊者数・国籍別の宿泊者数の内訳とし、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月における事項を報告するとしています。提出は民泊制度運営システムにログインして直接入力するか、定期報告データのCSVファイルをアップロードする形です。同システムでは、宿泊者名簿と宿泊実績定期報告データを作成できる電子宿泊者名簿の配布も行われています。
この4項目を、カレンダーの予定から作れるかどうかを見ると、線がはっきりします。
| 報告事項 | カレンダーの予定から出せるか | 出どころにするもの |
|---|---|---|
| 人を宿泊させた日数 | 出せない。マスは真夜中区切りで、算定は正午区切り | 正午基準で数えた集計 |
| 宿泊者数 | 予定に人数を書いていれば数えられるが、書き漏れが分からない | 宿泊者名簿 |
| 延べ宿泊者数 | 出せない。泊数と人数の積を予定が持っていない | 宿泊者名簿 |
| 国籍別の宿泊者数の内訳 | 出せない。国籍を予定に書けば名簿の項目を共有面へ置くことになる | 宿泊者名簿、または旅券の写し |
4項目のうち3つは、名簿の側からしか作れません。残るひとつも、書き漏れを検出できない形でしか出てきません。つまり定期報告は、カレンダーを経由せずに名簿から直接組み立てる工程になります。ここを分けておくと、報告月に慌てて予定表をさかのぼる必要がなくなります。
予約スケジュールは面談枠の道具で、宿泊予約の受け皿ではない
Googleカレンダーには、空いている時間を相手に選んでもらう「予約スケジュール」があります。ヘルプは、個人のGoogleアカウントまたはWorkspaceアカウントで使えるとしたうえで、一部の機能には対象となるGoogle Workspaceサブスクリプション、またはGoogle Oneメンバーシップが必要と案内しています。Stripeアカウントとカレンダーを連携すると、予約の支払いをリクエストできるとも書かれています。予約をリクエストしたときにGoogleアカウントにログインしていない利用者には、確認コードが送信されます。
決済まで用意されているため、宿泊予約にも使えそうに見えます。ただし、この仕組みが前提にしているのは「空いている時間枠を1つ選ぶ」申込みです。宿泊の申込みは、泊数と人数と居室の組み合わせで在庫が動き、受ける前に日数枠や定員の判定が必要で、受けたあとに名簿の項目が要ります。枠を押さえる道具としては足りますが、受付条件の判定と記録を伴う受け皿にはなりません。問い合わせへの折り返しや内見の日程調整のように、面談枠を渡す用途であれば向いています。
使うと決めたときの順序
最後に、設定の順序です。順番を間違えると、権限を広げたあとで個人情報を書き足すことになり、相手の画面に残ります。
この五つを決めてしまえば、Googleカレンダーは安全に使えます。空室の板として置き、清掃と鍵の担当に時間枠だけを渡し、予定の説明欄には物件名と作業の種類しか書かない。申込みは別の窓口で受け、日数の集計と二ヶ月毎の報告は名簿から作る。無料の道具に期待してよいのは、見える化と共有の速さです。記録の義務を一緒に背負わせようとした時点で、どの道具を使っても破れます。
どこまでを人が持ち、どこからを仕組みに載せるかという切り分けは民泊の業務効率化でも扱っています。カレンダーの外に受け皿を置く段になったら、民泊の予約システム比較の確認項目から見てください。
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