観光庁は2026年10月7日、令和8年度「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」の採択結果を公表しました。公募情報のページに書かれているのは、審査の結果、採択事業者を決定しましたのでお知らせいたします、という1文です。採択結果そのものは、同じページに置かれた一覧のPDFで示されています。
空き家を宿にする話として目に入りやすい発表ですが、この事業が見ているのは一般的な空き家ではありません。事業の特設Webサイトが対象として挙げているのは、地方温泉地等の観光中心地にある大規模な廃屋と、すでに撤去された土地です。廃屋の側には延べ床面積と使用停止からの年数という要件が置かれているため、戸建てや一室を宿にしたいという規模の計画とは、入口の時点で道が分かれます。
この記事では、観光庁の公募情報ページと、事業の特設Webサイトに書かれている範囲を整理します。あわせて、この事業が扱う建物の規模が、住宅宿泊事業法でいう「住宅」からどれだけ離れているのかを、観光庁の民泊制度ポータルサイトの記載で確かめます。当サイトは採択一覧のPDFと公募要領のPDFの本文を確認していないため、採択された事業者の名称と件数は書きません。公開ページに記載のない項目は、推測で埋めずにそのまま並べます。
公表されたのは「審査の結果、採択事業者を決定した」というお知らせです
採択結果のお知らせのページは、最終更新日が2026年10月7日です。本文は短く、この事業において審査の結果、採択事業者を決定したのでお知らせする、という内容だけが置かれています。採択結果は「採択一覧(10月7日時点)」というラベルのPDFとして公開されています。
ラベルに時点が入っているのは、この公募が一度で締め切られる形ではないからです。同じページには、引き続き申請を順次受け付けております、という案内が続きます。さらに注記として、予算の上限に達した場合は受付を終了する場合があります、と書かれています。今回の公表は募集が終わったという知らせではなく、審査が進むたびに採択先が積み上がっていく途中の状態を示したものと読めます。
問い合わせ先として示されているのは、この事業の事務局の電話番号と、特設Webサイトのお問い合わせフォームです。あわせて観光庁観光産業課も連絡先に並んでいます。制度の説明と申請の実務が事務局側に寄せられている形で、実際に要件や経費の区分を調べる先は、観光庁のページではなく特設Webサイトのほうになります。
| 採択結果のページに書かれていること | 記載 |
|---|---|
| 最終更新日 | 2026年10月7日 |
| 公表の内容 | 審査の結果、採択事業者を決定しましたのでお知らせいたします |
| 採択結果の示し方 | ページに置かれた「採択一覧(10月7日時点)」のPDF |
| 申請の受付 | 引き続き申請を順次受け付けております |
| 受付の終わり方 | 予算の上限に達した場合は受付を終了する場合があります |
| 問い合わせ先 | 事業の事務局(電話・お問い合わせフォーム)/観光庁観光産業課 |
| 採択された事業者名・件数 | 一覧のPDFに掲載。当サイトは本文を確認していません |
対象になる廃屋は、延べ床面積と使用停止からの年数で絞られています
特設Webサイトは、この事業を廃屋の撤去や再生を通じて地域の魅力とにぎわいを取り戻し、持続可能なまちづくりを支援するものだと説明しています。対象として挙げられているのは、地方温泉地等の観光中心地における大規模廃屋と、すでに撤去された土地です。
廃屋の要件は3つに分かれています。延べ床面積が概ね2,500㎡以上であること、使用停止が概ね5年以上であること、そして地方温泉地等の観光中心地に所在していることです。数字が入っているのは前の2つで、ここが実務上の分かれ目になります。延べ床面積2,500㎡は、客室数が数十の規模の旅館・ホテルを想像しておく大きさです。住宅を転用して始める民泊や、戸建て1棟を一棟貸しにする計画は、この下限に届きません。
もう一方の、すでに撤去された土地については別の要件が置かれています。地方公共団体による撤去等が概ね5年以内であること、そして新たな宿泊施設等が竣工前であることです。建物がもう無い土地でも対象になり得る一方で、撤去の主体と時期、そして再建がまだ終わっていないことが条件になっていると読めます。民間が自力で解体を終えた土地がどう扱われるのかは、特設Webサイトのこの記載からは分かりません。
補助の相手として挙げられているのは、廃屋等の再生に取り組む民間事業者と、地方公共団体です。民間事業者が単独で申請できる形になっているため、地域の協議会に入らなければ応募できないという書き方ではありません。ただし1次支援の補助対象経費には協議会運営費・会議費が含まれており、地域の関係者を集めて計画をまとめる前提が置かれていることは読み取れます。
支援は1次と2次に分かれ、補助されるものが違います
この事業のつくりで特徴的なのは、計画をつくる段階と、実際に壊して建て直す段階が別の支援になっていることです。特設Webサイトは、1次支援と2次支援で補助対象経費を分けて示しています。
1次支援の補助対象経費として挙げられているのは、エリア再生計画策定費、協議会運営費・会議費、エリア再生計画策定委託費、事前調査費、専門家招聘費、そして構造調査費とアスベスト調査費です。補助率は2/3と示されています。ここに構造調査とアスベスト調査が入っている点は、長く使われていない大きな建物を扱う事業らしい並びです。解体の見積りを取る前に、どれだけの費用がかかるのかが分からないという状態そのものに、支援の対象が当てられています。
2次支援では、廃屋の撤去・減築費と、相乗効果を発揮する周辺事業費が挙げられています。補助率は経費で分かれており、撤去費は2/3、周辺事業費は1/2です。周辺事業費のうちコア事業については2/3で上限1億円と示されています。計画をつくったあと、壊すところと、壊した跡をどう使うかまでが同じ事業の射程に入っている形です。
申請の実務の重さも、提出書類の並びから見えます。1次支援の提出書類として挙げられているのは6種類で、申請書・費用積算書(申請様式第1号・第2号)、本事業の支援を受けたい理由を説明する書類、廃屋等の要件該当性を示す書類、廃屋等の権利取得の調整状況を説明する書類、後継事業者の意向を確認できる資料、そして1次支援で補助を受けようとする費用内容及び見積書です。権利取得の調整状況と後継事業者の意向が、計画段階の支援ですでに問われています。誰が所有しているかはっきりしない建物を、とりあえず調査費だけもらって調べるという使い方は想定されていない、と読めます。
周辺事業の上限は、延べ床面積の区分で変わります
上限額についても、特設Webサイトに区分が示されています。1次支援と2次支援を合わせた上限は最大6億円です。このうち周辺事業の上限は延べ床面積に応じて最大3億円とされ、3,000㎡未満は1億円、3,000〜5,000㎡未満は2億円、5,000㎡以上は3億円という3段階になっています。
面積の区分が上限に直結しているため、同じ温泉地でも、扱う建物の大きさで支援の枠が変わります。対象になるかどうかの下限(概ね2,500㎡以上)と、周辺事業の上限が変わる境目(3,000㎡と5,000㎡)は別の数字なので、混ぜて読まないほうが安全です。
| 周辺事業の上限(延べ床面積の区分) | 上限額 |
|---|---|
| 3,000㎡未満 | 1億円 |
| 3,000〜5,000㎡未満 | 2億円 |
| 5,000㎡以上 | 3億円 |
| 1次支援と2次支援の合計 | 最大6億円 |
この事業は「住宅を使う民泊」とは別の枠にあります
2,500㎡という下限が置かれていることは、この事業が民泊の制度とどの位置関係にあるかを示しています。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業法でいう「住宅」の要件として、台所・浴室・便所・洗面設備という4つの設備を備えていること、そして現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋のいずれかに該当することを挙げています。年間提供日数の上限は180日です。
長く使われていない大規模な廃屋は、この居住要件のどれにも当てはまりません。したがって、この事業で再生された建物を宿泊施設として使う段になったときに関わるのは、住宅宿泊事業法の届出ではなく旅館業法の側です。同じポータルサイトは、旅館業を宿泊料を受けて人を宿泊させる営業と定義し、営業の種別として旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業を挙げています。どの種別で許可を取るのかによって、構造設備の基準も手続きの相手も変わります。その違いは簡易宿所と民泊の違いと民泊と旅館業法の関係に整理しました。旅館・ホテル営業を選ぶ場合に何が変わるかは小規模ホテルの開業で扱っています。
では、2,500㎡に届かない空き家はどの枠で扱われるのか。宿泊の補助事業ではなく、空き家の制度の側になります。国土交通省は空家等対策の推進に関する特別措置法について情報を公開しており、市町村が担うものとして支援法人の指定等や空家等活用促進区域の設定を挙げています。空家等・特定空家等・管理不全空家等といった区分の判断基準は、同省のガイドラインに示されているとされています。実際に市町村が支援法人を指定して空き家の管理・活用を動かしている例は、当サイトでも前橋市が空家等管理活用支援法人を指定した件として扱いました。規模が小さい物件を探している段階なら、見る先はこちらになります。物件側の条件の立て方は民泊の物件の選び方にまとめています。
| 建物の規模・状態 | 公開資料から読める扱い |
|---|---|
| 延べ床面積 概ね2,500㎡以上・使用停止 概ね5年以上・地方温泉地等の観光中心地 | この事業の対象として示されている廃屋 |
| 地方公共団体による撤去等が概ね5年以内で、新たな宿泊施設等が竣工前の土地 | この事業の対象として示されている土地 |
| 住宅の4設備を備え、居住要件のいずれかに該当する家屋 | 住宅宿泊事業法でいう「住宅」。年間提供日数の上限は180日 |
| 宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行う施設 | 旅館業。旅館・ホテル営業/簡易宿所営業/下宿営業の種別がある |
| 上記に当てはまらない空き家 | 空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく市町村の取組の範囲 |
申請の終わり方が2つあることを、先に知っておく
1次支援の公募期間は、令和8年7月1日から令和9年2月26日までで、随時審査と示されています。期日まで日があるように見えますが、終わり方は1つではありません。観光庁のページには、予算の上限に達した場合は受付を終了する場合があります、という注記が置かれています。期日より先に枠が尽きる可能性が、発表の側から明示されているということです。
今回の採択結果が「10月7日時点」として出されたのも、この仕組みの表れです。審査が随時行われ、そのたびに一覧が更新されていくため、公表された一覧は、その日までに決まった分の記録ということになります。これから申請を考える立場では、一覧の件数が増えていく速さそのものが、残りの枠を推測する材料になります。
特設Webサイトの1次支援のページは、申請を検討する事業者・地方公共団体に対し、公募要領を確認のうえ、できる限り早期に事前相談を活用するよう勧めています。事前相談の窓口はフォームと電話で用意されています。要件該当性と権利取得の調整状況を書類で示す必要がある事業なので、物件を押さえる交渉と並行して相談を始める形になります。
この発表と公開ページで確かめられなかったこと
確かめられたのは、審査の結果として採択事業者が決定したこと、採択一覧が10月7日時点のPDFで公開されていること、引き続き申請を受け付けていること、受付が予算上限で終わり得ること、そして対象の要件・補助対象経費・補助率・上限額・公募期間・提出書類です。採択の中身に関わる項目は、一覧のPDFか公募要領の側にあります。埋めずに並べます。
| 知りたくなる項目 | 公開ページでの扱い |
|---|---|
| 採択された事業者の名称 | 一覧のPDFに掲載。当サイトは本文を確認していません |
| 採択された件数 | 一覧のPDFに掲載。本文には書かれていません |
| 採択された地域・温泉地 | 本文には書かれていません |
| 審査の観点・評価の項目 | 特設Webサイトには記載がありません(公募要領に掲載) |
| 「地方温泉地等の観光中心地」の具体的な範囲 | 記載がありません |
| 事業全体の予算額 | 観光庁のお知らせのページには記載がありません |
| 2次支援の公募期間 | 特設Webサイトの1次支援のページには記載がありません |
| 1次支援を受けずに2次支援だけを申請できるか | 記載がありません |
| 民間が自力で撤去を終えた土地の扱い | 記載がありません |
| 再生後の施設に求められる用途・条件 | 記載がありません |
公募要領はPDFで公開されていますが、当サイトはその本文を確認していません。応募の要件や審査の観点を調べるときは、特設Webサイトに置かれている公募要領を直接読んでください。
民泊・宿を運営する人が、いま確かめられること
1つめは、自分が見ている建物や土地が、この事業の入口に立てるかどうかです。延べ床面積が概ね2,500㎡以上か、使用停止が概ね5年以上か、所在が地方温泉地等の観光中心地か。この3つを満たさないなら、この事業ではありません。満たさないことが分かるのは悪い結果ではなく、探す先を空き家の制度や自治体の取組へ切り替えられるという意味があります。
2つめは、要件を満たしそうな建物が視野にある場合、権利の話を先に動かすことです。1次支援の提出書類に権利取得の調整状況を説明する書類と後継事業者の意向を確認できる資料が並んでいるため、所有者と話が付いていない段階では書類が揃いません。調査費の補助があるからといって、調査を先に走らせる組み立てにはなっていない、ということです。
3つめは、再生後に宿として運営するなら、営業の種別を早めに置いておくことです。大規模な廃屋の再生は、住宅宿泊事業法の届出ではなく旅館業法の許可の話になります。構造設備の基準と相談の相手が変わるため、計画の段階から保健所と消防に当たる前提で進めるほうが、手戻りが小さくなります。立地そのものの読み方は民泊の立地の選び方にまとめています。
この記事は、観光庁の公募情報ページ1件と、事業の特設Webサイト2ページ、観光庁の民泊制度ポータルサイト2ページ、国土交通省の空家等対策のページに書かれている範囲を整理したものです。申請の可否や要件の当てはめについて判断が必要な場合は、特設Webサイトの事前相談の窓口と、宿泊施設としての営業については所管の保健所に確認してください。
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